グローバリゼーションなんて大層なことを
農園のインドネシア農業研修で議論している。
僕自身この言葉の意味も良く解らないが、
この現状のもとで、いろんなことが起きている事だけは
肌で感じている。
でも、その情報の多くは僕ら先進国にしか
ないということも、こうした議論をする中で
年々その想いを強くしている。

インドネシア農業研修プログラムでは、
いくつかの講座を用意しているが、
その中でも、インドネシアの子たちに
最も人気があるのが、
「農業とグローバリゼーション」だろう。
今年も9月からこの講座を始め、
これまでバナナやエビ・パームオイルなどの
商品を題材に授業してきた。
世界中に伸びきったサプライチェーンの中で
何が起きていて、誰がマージナルに置かれているのか、
それを途上国から来た零細農家の子弟たちと
一緒に見つめようという試み。

これらの中でも特にパームオイルが
みんなの関心が高かったので、
その問題の解決について少し議論を深めてみた。
まずパームオイルの構造的な問題はこうだ。
文化的に食用でないオイルヤシを
資金豊富な企業の開発によって大規模プランテーションで
栽培続けるインドネシアとマレーシア。
その周りには小規模ながらも、採油工場と取り巻くように
現地のパームオイル農家も無数に存在する。
無秩序に熱帯雨林を開発して
パームオイルの農地はさらに広がっていく。
パームオイルは加工され、
お菓子・インスタントラーメン・マーガリンなどの
廉価な食べ物を生み出し、
石鹸や洗剤などの生活必需品も生み出している。
パームオイルなしにはもはや生活が成り立たないところまで
僕らの生活に浸透しているのに、
その生産現場では、賃金・商品価格や環境などの問題が起きており、
それを見過ごせる状況ではなくなっている。
モノカルチャー的生産の効率化が独り歩きしだすと
そのゲームの中で人々はより多くの富を追い求め、
「持続可能性」などはどこかへ吹き飛んでしまう。
そして長く伸びきったサプライチェーンでは、
僕ら最終消費者には、生産現場で何が起きているのか
知らないまま、清潔感漂う店内で素敵なパッケージに包まれた
その商品を何のためらいもなく買い続けている。

この現状を解決するにはどうしたらいいのか。
途上国と言われる国から来た、
零細農家出身であるインドネシアの研修生と議論してみた。
まず問題を整理してみた。
ひとつは長く伸びきったサプライチェーン。
生産現場と消費の実情が全くお互いに想像がつかないまま
進行していくという問題。
こういった現状では、儲かるからとにかく拡大、
生産の効率化への特化といった
行動規範に陥りがちになる。
そのため環境にあまりよろしくない生産様式が
確立しても、それに対する批判は全体的にならないので、
とくに脅威にならず、継続される。

次にその効率化から生み出される
労働環境だろうか。
熟練した労働者による世代的な技術継承ではなく、
マニュアル化して誰でも簡単に労働が行え、
そして、出稼ぎや派遣などの
取り換え可能な安価な労働力に頼ろう
と考えるのは、たぶん今の健全な経営なんだろう。
パームオイルの現場もご多分に漏れず
そういう状況のようだ。
そこは低賃金で保障の少ない危険な労働現場だったりもする。
さらに僕らが見たDVDには無かったが、
インドネシアが政策として進めてきた
小規模なパームオイル農園支援から
構造調整政策に切り替わり、
今では中核農園に支援が厚く、
資本力で小規模農園を買い取り、大規模化へ向けて舵を切っている。
まさに農業労働者と大規模農業経営者の2極化の中でも、
こうした労働問題は今後拡大するだろう。

さてサプライチェーンから生み出された効率化は
持続可能性も無視する。
生産現場の環境が悪化して
生産が続けられなければ、またどこかほかへ行けばいい
程度の発想しかないのかもしれない。
ただこれは農家と企業の発想の違いではない。
小農であっても目の前の利に目がくらめば、
いくらでも環境破壊の主体になる。
いや、そっちの方が環境破壊につながっているのかもしれない。
程度の問題であって、
それぞれの生産様式の問題ではないところが
問題の複雑なところだろう。

これらの問題解決に
研修生の子たちは、とにかく国の規制が大切だと答えていた。
国家が開発を規制して、自然環境や労働環境を守る必要がある
というのである。
生産現場サイドの視点で言えば、
ある程度規制をかけていく必要はあるだろう。
購入者側から見ればどうだろうか。
3年生のクスワント君は、
有機農業といったラベルを作って、
環境に配慮したオイルにラベルを付けてはどうか、
と提案してくれた。
消費者はそのラベルを支持することで
健全な生産が続くというわけだ。
だが、フェアトレードの問題でも
認証を取るための知識やアドミ能力、そして資金が必要で
それらを小規模な農家が取れるかどうかは難しいところだろう。
大規模な農家は資本力があるので
その認証は取れても、小さな農家にも難しい。
それは淘汰される存在なんだ、と言われても
僕ら農家には、ああそうですか、と
感情的に納得は行かない。

そこでイラ君は、
生産農家で組合を作って、その組合が認証を取って、
小規模農家の自立に力を入れるという提案をしてくれた。
組合を作って大規模農家に対抗していこう、
という考えだ。
これは悪くない考えだが、
組合の運営はすこぶる難しく、
フリーライダーが出てくれば、
かならず商品の品質は低下する。
組合の運営に長けていて、
組合員への福祉も優先するような
ソーシャルビジネスの感覚に富む
リーダーや役員の存在は欠かせないだろう。

パームオイルではないが、
その存在として僕が期待するのが、
君たち研修生なんだけどね。

議論は、所詮、絵に描いた餅で
堂々巡りな観もあったが、
みんなと議論を通して、
持続可能で、小規模農家の組合として
地域全体で健全な生産をする方向へと
気持ちが向いていたのは、収穫があったと言えよう。

それを支えていく関係づくりとして、
僕にはまだやれることあると
確信している。
まずは、2015年のスタディーツアーだろうか。
食べる側と作る側が意見を交換できる場と関係、
それはとても素敵なことだと思う。
もう少しそれを意識して、
研修と農園の活動を広げていこう、
と僕も勉強になった。



関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ