いつものことだが、
1年が過ぎる頃から
インドネシア研修生の成長が始まる。
僕の教え方が悪いからか、
それとも人の成長とはそんな期間が必要なのか、
僕にはわからないけど、
ここに来た子たちは、皆、
1年を過ぎる頃から、
成長し始める。
今年の2月に来たジャジャン君も例外じゃない。

彼は、ここに来た当初、
有機農業を志していた。
理由は、農薬は毒で、
癌や病気が蔓延するのはそのせいだと言っていた。
ただ、
僕にはその因果関係が
あるかどうかはいまだに不明で、
その根拠あるデータを
まずは一緒に探すことにした。
彼の持っていたデータの多くは、
地元の農家の話だったり
一部のWeb記事だった。

ジャジャンの地元の農家の話では、
農薬を使う前は寿命が長かったという話だったが、
国勢調査の統計データ(ちょっと怪しいけど)は
それを支持していない。
またWeb記事は出典元を明記しておらず、
検証が不可能だったが、
出所をはっきりさせない記事は信頼に値しない。
そんな作業を繰り返している内に、
彼はインドネシアの農業研修生が必ず
一度は通過する“トウガラシ栽培”を志向するようになる。
このころには特段『有機栽培』を
声高に言わなくなっていた。
まぁ、また有機栽培の意味は
まわり回ってもっと健康的に捉える機会が
この研修の中ではあるので、
この時はそのままにしておいた。

さて、そのトウガラシ。
確かにインドネシアでは消費量も多く、
需要が高い。
雨季のど真ん中や乾季で水が無い時は
どうしても高値がつく。
その反面、市場が乱高下して読みにくい作物でもある。
病気も多く、連作も出来ない。
だからこの栽培で成功すると
それなりに大きな富になる。
だが、大抵は、みんなが作りやすい時期にしか
作ることが出来ず、
低価格で販売することが多い。
天候と周りの作付け量による博打的要素が満載の品目で、
とても小規模での栽培で安定収入は得られそうもない。
やり方次第では面白いのだが、
大抵の農家はあまりそういったリスクを回避することが出来ず、
もしくは回避する方向に意識と技術が向かわず
(それは資金的限界かもしれないが)、
失敗に終わるケースが多い。

少なくとも村々を回って集荷する買取商人に
販売するだけの市場しか考えず、
適期にしか栽培できないトウガラシ栽培は、
ほとんど富を生み出さない。
ジャジャンはその点を
上級生から指摘を受けた。

要は、何をどう作るのか、ばかりに目が向いているが、
それと同じくらい、いやそれ以上に、
何をどう売るのか、を考慮しないといけないというわけだ。

彼はそこから少し変わり始めた。
あれこれとネットや友人に販売先の情報を集め、
ある野菜の卸会社に行きついた。
今、日本で農業の勉強している強みを
プレゼンしつつ、その会社にとって必要な野菜は
何かを訪ねるメールを出した。
いきなりのメールなので、
当然、返事はない。
でも彼は
『これからもこうやってメールを出していこうと思います』と
意欲的だ。
まぁ、これがスタートラインなので、
ここからいくらでも変化していく必要はあるだろうけどね。
少なくとも、自分よがりにどれが売れそうかとは考えず、
何が必要とされているのか、
何をどう売るのか、
何が自分の、自分の地域の武器になるのか、
そんな風に考え始めているのは確かだ。

1年経つと研修生の子たちは皆、
成長し始める。
ジャジャンは、どんな営農を目指すのか、
彼の肩越しに、一緒にその地平を見つめていきたい。

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成長

1年で成長しだすってのはとてもわかります。僕もこの業界に入ってそういう実感がありました。農業のサイクルが1年周期だからだと思います。1年いろいろなことを経験し、次の1年を自然と考えるようになっています。忘れていることも多いですが(笑)
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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