電気自動車が今、農園のスタッフの間で話題だ。
車に関して言えば、特に関心はなく、
どんな車でもかまわないのだが、
農園のスタッフたちはそれなりにこだわりがある模様。
電気自動車そのものは、ほとんど関心もなく
これまでやり過ごしてきたが、
こうも職場で話題になると
それなりに個人的に考察しておこうかな。

電気自動車は、化石燃料に頼らない新しいカタチだ。
どうかんがえたって化石燃料に未来はない。
だから、電気自動車はある意味新しい未来の乗り物だった。
「だった」と答えたのは、3.11以前の論理だったからだ。
本当は、それ以前も原子力のいろんな問題があったために、
「だった」と答えるのは不適切なのかもしれないが、
少なくとも庶民の感覚では、それらの問題は
枝葉にすぎず、いずれ解決するような問題に感じられた。

しかし、3.11以降は少しばかり、いやある意味ターニングポイントと
なるような変化があり、その変化の中で電気自動車の意味は
確実に変わっていった。

論点を少し絞った方が良いのだろうが、
その前に、僕の立場を明らかにしておこう。
僕は原発反対だ。
それは循環を大切に思う農民だから。
農業はあらゆる天候や自然から切り離して、
自分たちでコントロールできるまで技術を進めてきた。
それが人工光によるレタスなどのプラントが当てはまる。
パソナの地下で栽培されている稲もそれにあたるだろう。

だが、このブログで何度も書いているが
それらが僕の目指すべき理想の農業のカタチでない。
僕が目指している農業は、
自然のエコシステムの中で、
それから大きく離れない形で、
循環と平衡を大切にする農業なのだ。
その中身の詳しいことは、この場では割愛するが、
循環と平衡の農業は、3.11で僕らが経験した
福島第一発電所の事故にはめっぽう弱い。
放出された放射能物質は、自然界の循環に乗っかって、
それ以外の場所や地域を
何十年にわたって汚染してしまうのである。
循環していくエコシステムを無視した
農業以外は、その地域では成り立たなくなってしまう。
福井は、原発立地県だ。
ひとたびその原発が事故を起こせば、
30キロ圏内ではないにしても、その近隣に存在する
うちの農園には大きなダメージを受けることになる。
僕らは、地域に根差した産業だ。
だから、ここは汚染されてダメなので、よそに行ってやろう、
なんて考えにはならない。
この「場」と一蓮托生なのである。
その覚悟の中で農業をしている僕らにとって、
原子力発電は、そもそもそのロジックからして相容れないのだ。

では、電気自動車の文脈はどうだろうか。
もともと原子力と密接につながって登場したのは
否定できないだろう。
原子力発電所は、ひとたび臨界に達すると
出力調整は容易ではなく、
ほぼフルパワーで発電を続けることになる。
だから昼夜の電力需要という短期的な需要差を
コントロールするために
比較的コントロールがきく火力発電で
その調整は行われてきた。
電気は貯めておけないという性質により
深夜電力の有効活用、いわゆる原発の深夜電力の
有効活用の一つとして電気自動車が生まれてきたのは
言うまでもない。

我が家も3.11以前の全く無関心時代に
新築をしてしまったため、深夜電力利用型の
オール電化住宅にしてしまったが、
今からやり直せるのならば、その選択はしなかっただろう。

あるレポートによると
電気自動車の間接的なCO2排出量は
原子力に頼らない場合、
ガソリン車やハイブリッド車よりも多いとある。
温暖化の影響は僕ら農家にも深刻だ。
温暖化の影響を受け、
ゲリラ豪雨が増え、春や秋に高温が続き、
冬は豪雪になりやすい。
自然と密接に歩む僕ら農家にはたまったものじゃない。
原子力も反対だし、地球温暖化も反対なのだ。

ただ勘違いしてほしくないのが、
電気自動車が元凶ではないということ。
化石燃料からの脱却という意味で、
電気駆動による自動車には未来があると思う。
ただ、その電気は何から発電されているのか、
そこに関心を向けたい。
地球温暖化を隠れ蓑にして、
電気自動車が普及する必要があるので(もしくは兆し)、
原発の稼働は必然だ!なんて論調がでてくることを
僕は恐れている。

社会が電気自動車を支持すればするほど
その論調はたやすく生まれることになる。
そんなことはないだろうという人もいるかもしれないが、
歴史がそれを証明しているではないか。

電気自動車の電気が原発でもなく化石燃料でもない
モノでない限りは、僕は批判をし続けるだろう。
ただ電気自動車が大きな流れになった時、
僕のような論調は瑣末としてその波間に消え失せ、
大きな勢力によって
原子力の正当化につながるのを恐れている。

この原子力エネルギーへの批判は、
現状を否定するわけではない。
よりよい明日を願ってのことなのだ。
事実、農薬の分野はレイチェルカーソンの批判を受け、
有機リン剤の農薬はほとんど姿を消し、
人間にほぼ無害なネオニコチノイド系の薬剤が生まれた。
それすらもミツバチなどに影響が出るとして
近年批判が強まっており、
それを受けてマクロライド系の新薬も生まれ、
ただの虫にもあまり影響の出ない薬剤が
少しずつだが出てくるようになっている。

だから、僕らは全体の空気を読んで、
「あまり批判しても現状が立ち行かないから」などと
解ったような顔をしないで、
しっかりと批判すべきことは批判しないといけない。
原子力発電所から出る廃棄物に
10万年の時間を有するという事実も
僕らは合わせて考えてつつ、その発電システムが
本当に未来永劫妥当なのかどうか、
批判的に検証しないといけない。

リーフなどの電気自動車を支持する人が増えれば増える程、
政権はハリボテの正義を振りかざしやすくなる。
僕らはもっと各論でしっかりと批判を繰り広げないと
全体的に社会が思いもよらないところに流されて
いってしまうように思う。
とくに3.11以降は本当にそう思う。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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メールは
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