ひさしぶりに、これも記録しなくては。
それは、僕らの勉強会の記録。
7月に暑さと仕事の忙しさから、
約2か月ほどお休みしていた勉強会だが、
9月から再開をしている。
メンバーそれぞれが持ち回りでプレゼンするゼミ形式。
学者みたいと思われるかもしれないが、
参加者は実践者ばかりなので、
突っ込みや批判&議論の展開は学術的ではなく、
実感のこもった肉体的で直観的なのが特徴。
そんなタフな勉強会に
夏休みの間バイトとして参加してくれた
深沢君も、バイト期間の最後に
勇気を出して発表してくれた。
その本は、これ。

吉田太郎 著 「有機農業が国を変えた」:小さなキューバの大きな実験


さて、キューバの有機農業は
これまでも勉強会で何度か取り上げている。
吉田太郎氏の本も、これで2度目だ。
前情報の無い方に簡単に説明しよう。
キューバは、社会主義圏内での分業を推し進めてきた結果、
食糧やエネルギーを自給できない国になっていた。
そんな小さな国が、ソ連崩壊後、孤立してしまう。
輸出用の砂糖生産や工業分野で外貨を得て、
それで国内需給分を輸入する。
自給率は40パーセントだったいうから、
どこかのヒノイズルクニと一緒だ。
欧米諸国の経済封鎖もあり、完全に立ち行かなくなっていた。
そんな中、輸出中心の近代化された農業から
地産地消的な有機農業に切り替え、
不死鳥のようによみがえったという
奇跡の有機大国キューバの話を書いたのが、
この本というわけ。

化石燃料に頼らず、トラクターから牛耕への転換や
自然農薬・天敵防除・堆肥などの技術を深め、
小規模のコミュニティ菜園などを行い、
完全に自給できるレベルまで農業を昇華させた。

キューバの成功の裏側には、社会主義国だったという
要因もある。
農産物などの生産物はすべて国へ販売しなければいけなかったが、
インセンティブとして20%は市場流通を許可された。
つまり、頑張った分だけ少しは得をするシステムになった。
また国有地ばかりだったのが、自分で耕作するのであれば、
私有地として認めたことも耕作意欲を高めた。
なんだか墾田永年私財法みたいだ。
まさにこれらは社会主義国だったから
インセンティブになったのであって、
今の日本にはまったく当てはまらない。
と深沢君もプレゼンで指摘してくれた。

この本の事例はどう捉えたら良いのだろうか?
エネルギーの次の新しい地平なのだろうか?
まさに原子力の未来に僕らは絶望しか見えない現状では、
こうしたエネルギーを使わない古くて新しい農業は
あるいは僕らのモデルになるのかもしれない。
だが、そのインセンティブはキューバのようには
得られないのも事実。
ではこれは、有機農業の優位性を語るものなのだろうか?
深沢君は、TPPといった広域経済圏に参加する流れの中で、
日本の農家が生き残る一つの方法だという。
だが、広域経済圏で「有機農業」がJAS法のように
国境を越えて新しく規定された場合、
途上国の廉価な労働力を使って生産された
廉価で高性能な有機野菜が
雪崩を打って日本のマーケットを席巻するのは
火を見るよりも明らかだ。
それもたぶん、「メイド・バイ・ジャパニーズ」だったりも
するんだろうな(僕もその一人になってしまうかもしれない)。
だから、これらの話は、そのままでは、
僕らにはあまり役に立たない。
賛美はすれども、ある特定の条件で生まれた
奇跡の物語でしかないのだ。

でも、僕はこのキューバの物語に触れれば触れる程、
その人々の豊かな暮らしとその未来の素晴らしさを
条件が違うと言うだけであきらめてしまう気になれない。

条件や刺激が揃えば、
人の行動はこうも変化できると言う
ある種の希望にも見える。
原発は無理だ。
大量生産大量消費も行き詰っている。
アベノミクスだって経済のパイを無限に拡大させることは、
実質的に無理だ。
僕らはどうしても今を頂点にゆっくりと下っていく社会にいる。
つまりそれは、熟成した社会。
その中で、本当の熟成した社会の在り方と
キューバの有機農業&予防医学に僕は未来を感じる。

ただキューバのような条件と刺激は無い。
その代り、僕らには資本主義の次のステージとして、
ソーシャルビジネスがある。
係り合いと金銭に限定されない価値が入り込んだ
まさに市場経済を凌駕して社会的価値を生み出すビジネス。
有機農業というキャッチーなテーマ自体には、
僕なりに反論と反感と批判があるが、
それはそれで修正を加える余地があるという意味で
別の議論に過ぎない。
地産地消的(コミュニティ主体的)な有機農業の価値は、
その条件と刺激になるんじゃないかと期待する。

少なくとも僕らが出来ることは、
無機的に流れゆく巨大流通に乗っかるのではなく、
有機的なつながりを個のレベルでたくさん作って行くことだろう。
それが場として力を持つ未来は、
まだ僕には描けないが、
すでに日本各地でその狼煙はあがっているように思える。

深沢君、大学1年生にしては、
とても素晴らしいプレゼンをありがとう。
面白い発表であればあるほど、
僕らの肉体的な直観は刺激され、
その先の未来をより明確に夢想することが出来るのだ。

僕らにとって刺激的なプレゼンだったように、
君にとって、この夏のバイトは
素晴らしい時間だったのであれば、とてもうれしいのだが、
どうだっただろうか?
また時間があったら遊びにおいで。
議論の続きをやろうじゃないか。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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