2013年の前期試験最後の発表者は
3年生のクスワント(以後ワント)。
彼の発表は、やっぱり3年生らしく、
地域資源の考察も深く、
また興味深いビジネスプランだった。

ワントが分析した地域は、
2年生のカダルスマン(以後ダルス)の村。
ダルスの村は、水源が豊富で稲作が盛んな地域。
村自体も大きく、
ちょっと大きめの病院があったりもする。
村の統計データでは、
農業を生業としている家が多いが、
一軒の農家の所有面積が30aもない状況で、
年2~3回の米作りではとてもそれだけでは
生活が成り立たない。
そこで男たちは、
女たちに田んぼの管理を任せ、
稲作の忙しい時期以外は街に出稼ぎに出ている。
大抵は、好景気で建設ラッシュに沸く土木業界に
日雇いの仕事をしているのが普通だ。

また村の統計では、
職業別人口は、主婦が一番多い。
そしてその主婦たち、のんきに遊んでいるわけではなく、
家の周りや村の周りにある庭(pekarangan)で
自給用の野菜をたくさん作っている。
ワントの調べでは、
カボチャや豆類などの野菜栽培だけでなく、
森で取れる果樹や木の実も多く、
Suwegという珍しいイモもとれるらしい。
半栽培で採取と栽培の中間のような管理を行い、
森の資源も豊富とのことだった。
それらの管理の多くが、女性たちの仕事だとのこと。

そこに目を付けたワントのビジネスプランは、
山や庭で取れた野菜や木の実の
ノンフライチップス作りだった。
この場合、事業主体は誰かというと、
ワントは、既存の女性グループがもっとも適任だという。
新たに会社を興したり、新しいグループを作るのではなく、
もともとあるグループを活用するべきだという。
人との関係や経験値を活用すべきだというのが
ワントの考えだ。
そこで目を付けたのが、KWTというグループ。
KWTとは、農家の女性グループのことで、
行政が支援して各村に組織されているが、
ダルスの村では活動が停滞中とのことだった。
そのグループを活用して、
主婦たちで自分たちで採取または栽培したものを使って、
ノンフライチップスを作ろうというビジネスアイディアだった。

販売市場も面白かった。
2015年には、バイクで1時間ほど離れたところに
大きなダムが完成する予定で、
ワントはそこが観光地になるとにらんでいる。
そこの観光地の土産物屋に
その女性グループでつくったノンフライチップスを
置いてもらうというアイディアだった。

ちなみにチップスをノンフライにしたのは、
インドネシア人は高コレステロールに悩まされており、
それの関連の病気での死亡率が
社会問題になっているからである。

ただノンフライでチップスを作る機械は、
とても高価だ。
そこでワントのアイディアとしては、
女性グループを支援する県の事務所と一緒に
活動し、県の支援を得ることが大事という。
機械の一部を助成してもらえるかどうかで、
どのくらいキャパがある機械を
買うか決まってくるという。

そして生産を始めたら、
農産物加工品のパメラン(博覧会)に出展して
女性グループメンバーの意識向上につなげるそうだ。


停滞中の女性グループが
自分たちの資源を利用して活動し、
近くにできた観光地で販売をしながら、
農産物加工品の博覧会で受賞をする。
なんだかそんなサクセスストーリーは、
まるでハリウッドの映画のようだったが、
これまで聞いてきたプレゼンの中では、
一番わくわくした。

ここまで話が来ると、机上の空論みたいだが、
絵に描いた餅を書き続けることに意味があると
僕らは思っているので、どんどん机上の空論を
進めていってしまう。

この場合、女性グループたちの初期のモティベーションを
どう作るかと、持続させていく方法、
その辺りもポイントになると思う。
アイディアに富むワントが
自分のアイディアを遂行させようと躍起になればなるほど、
女性たちはただただついていくだけの存在になる。
数名のキーパーソンとの出会いや、
アイディアの多くを
その人達から出してもらうのも必要だろう。
また、観光地での販売は、
お土産物屋に置かせてもらうのではなく、
できれば小さくても良いので店舗もしくは
土産物屋の中にコーナーを設けたい。
販売員も女性グループメンバーで
交替で行えば、
初めはモティベーションの無かったメンバーでも
客とのやり取りの中でやる気を養い、
新たなキーパーソンになったりもするからだ。
出来るだけ刺激にさらす、それが大事だ。
また、
採取や栽培した自家用の木の実や野菜を
どうブランディング化するかも大切になる。
この辺りは、先走らず、グループのアイディア優先で
あちこち先進地をみんなで見学してみるのも
良いかもしれない。

などと試験の講評そっちのけで、
僕の開発スイッチが入ってしまい、
議論はどうグループのモティベーションを維持して
動かしていくかに終始した。
いやはや、ワント君、とても楽しいプレゼン有難う。
こういう活動を行政以外で
君たちのビジネスとして出来たら
とても素敵だと僕は思う。

そんな視点で自分たちの資源を見つめることが出来る君を
僕はとても誇らしげに思う。





関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ