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インドネシア研修生の座学。
前期の必修は、農業構造比較論。
農業という表象だけを比べるのではなく、
それを支えている構造に目を向け、
それぞれを比較しよう、という座学。

今回は、自然資源について議論した。
ミクロな自然資源もあるが、今回は、
鳥の眼でそれぞれの地元を考察してもらった。

皆さんは、上空から自分の地域を
眺めたことはあるだろうか?
最近はネットの地図などでサテライト映像が
手軽に利用できるので、結構簡単に
鳥の眼で考察が出来る。
僕が協力隊隊員だった時には、
このネットサービスが無く、
その地域を一望できる高い山に登って
地域の地理的な把握をしたりもした。
その山を登るプロセスもとても大切なので、
時間があれば、ネットサービスだけに頼らず、
ぜひ近くの高台や山から
地域を見下ろしてほしいところだが、
今回はネットで考察のみ。

プレゼンを担当したのは
2年生のイラと1年生のジャジャン。
それぞれの地域のサテライト地図を出して、
地理的に考察してもらった。
1年生はさることながら、
2年生は昨年も同じ課題をやっているはずなのだが、
やはりこの鳥の眼で見ることに慣れていない様子で、
結局、地域全体の標高や平均的な勾配がどれくらいあるか、
などとなんだか良く解らないプレゼンをしていた。

ただ、川の流れや水源の場所などから、
水田になっている農地と果樹や野菜の農地が
地理的に影響を受けて分かれている点が
確認できたことくらいは、
まだこの考察の範疇だったと言えよう。
しかし、この鳥の眼の考察で大切なのは、
地域農業の生産様式が、
地理的にどう出来上がっているかを
考察することなのだ。
どこに水田があって、畑はどのあたりだけでは、
ちょっと浅すぎやしないか?

そこで質問を付け加えながら
それぞれの地域を一緒に考察してみた。
イラの地域では、「チレンブ芋」と呼ばれる
サツマイモの栽培が盛んだ。
チレンブ芋は、本来
チレンブ地区のさつまいものことだが、
そのお隣であるイラの住むランチャカロン地区でも、
その栽培が盛んなのである。
まず、産地が隣接しているので、
高値で取引されるチレンブ芋が
ランチャカロンでも盛んなのだろう。
さらに、チレンブ地区の火山灰土壌は、
なにも行政区域の区切りであるわけじゃない。
ランチャカロン地区にもサツマイモ栽培に適した
火山灰土壌の畑はあるのだ。
そこが、チレンブ芋栽培を支えている。
産地と市場とそれを生み出した土壌が同じという
地理的条件が成立して、
ランチャカロン地区の一部でも
チレンブ芋の栽培が盛んなのである。

では、ジャジャンの地区はどうか。
ジャジャンの故郷パシガラン村では、
伝統種の稲作が盛んだ。
あまり見られなくなったが、背丈が1m以上になる稲を
栽培し、その穂だけを刈り取る生産様式。
目の前の現象を伝統的だとみてしまえば、
それ以上進むこともないのだが、
もう少し地理的に考察をしてみよう。

パシガラン村には、東側に大きな川が流れている。
その川の豊富な水量があるため、
1年中米作りが出来るという。
緑の革命以来、効率性を求めた品種の場合、
たぶん1年間に3回栽培できるであろう。
だが、伝統種は栽培期間が長く、
どんなに水が豊富で1年中米作りが出来ると言っても
2回が限度だ。
だが、ジャジャンは言う。
「品種改良された高収量米よりも、伝統種は米粒が大きくて、食味も良いんです。1回の栽培での比較なら、新しい品種よりも伝統種の方が収量は多い」と語ってくれた。
ただ、新しい品種だと3回作れるので、
年間の収量を比較すると、新しい品種の方が収量は多いらしい。

でも、ジャジャンの村では伝統種を選ぶ。
それは、ほとんどの農家は米を販売のためではなく、
自家消費用と考えているからだと話してくれた。
農家世帯が持っている土地も1反程度しかないので、
販売したくても、余分がないとのことだった。
その一方で、山間の土地では、
たばこの栽培が盛んだという。
ジャジャンのおじいさんの時代から
栽培されているたばこは、それなりに換金性も高く、
その地区の主産業にもなっている。

このたばこ栽培に適した山間の土地と
それの市場(もしくは産地化に成功した経験)と
東側に走る水量豊富な川と
農家世帯当たりの水田面積の小ささが、
米の伝統種を栽培する生産様式を支えている、
と考察できる。
つまり、しっかりとした換金作物があるため
米生産に関しては、量よりも質(食味)を大切する
余裕があると言えるだろう。
さらに豊富な水量の川は、
気候変動で不安定になりつつある
雨季の長さの不安要素も排除できる。
3年生のクスワントの地区では、
川の水量が少ないため、雨季の短い時があることを考慮して
稲作では、栽培期間の短い新しい品種を栽培している。
本当は伝統種の方が美味しいと
解っていてもだ。
食味よりも、雨季が短いかもしれない
というリスク回避を重要視しての選択だ。
ジャジャンの地区では、それは無い。
だから、リスク回避よりも食味を重要視している。
環境がその地区に暮らす人々の志向に
大きく作用し、その価値観で農業の生産様式が
変化し、それが僕らの目の前に表象として
現れて見える。

鳥の眼でみると、
その変化が見えてきたりもする。
もちろん、これだけで説明できるわけでもないが、
一つの方法と言えよう。
しばらくは、研修生たちと一緒に、
鳥の眼で考察する練習をする予定だ。






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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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