インドネシア研修生の座学は、
今期もすでに始まっている。
新しく来たジャジャンと
2年生のイラ・ダルス対象で、
農業構造論という授業をしている。
農業と言う表象を支える構造は何か?
それをここ福井とインドネシア・タンジュンサリ近辺を
比べることで、単純な近代化論的
発展の未来想像図を打ち破り、
地域特有で個性を活かした発展の在り方を
見つけるヒントとしている。

さて、先日議論したのは人的資源。
ジャジャンはなかなか優秀だ。
彼の地域の農業を支えている人的資源と
日本のそれとを比べてペーパーにしなさいと
宿題を出していたのだが、
教育の統計データを載せて、それを基に議論していた。
日本は高学歴で
インドネシアは小学校どまりの人口もまだまだ多い。
新技術への対応の早さやその運営などについて、
教育レベルがある程度影響しているのではないか、
という意見は、まぁ、ある程度は当てはまるだろう。

他の研修生も、ジャジャンと似たり寄ったりで、
人的資源として「学校教育」について論じていた。
さて、果たして学校教育=人的資源なのだろうか?

ちょっと昔話をしよう。
僕が協力隊員だった時(1998年)、
村人への新しい技術普及として県事務所から
「赤わけぎ」栽培普及を命じられていた。
新しい作物だったため、栽培技術を研修する必要があり、
先進地だった東ジャワへ農家と県職員を送るプログラムだった。
僕の前任から続いているプログラムだったが、
研修に送ってもなかなか技術が定着しないのが
悩みだった。

その時の農家のセレクションは、
県の事務所と協力隊隊員で行っていたが、
その条件の一つが、
高い教育を受けていることが条件だった。
確かに、研修は座学も多く、
読み書きが出来なければ、そもそも研修にならない、
と思うのは普通だし、
理解力と言う意味で高い教育は必要かもしれない。

だが、僕の時は、この条件全てを
取っ払ってしまった。
そもそもセレクション自体を
県も協力隊もノータッチで、
住民グループの投票で決めてもらった。
その代表者がみんなの代わりに研修を受け、
技術を持ち帰ってくるというミッション性を
うーーーんと高めてからの投票だった。

そうして選ばれた農家数名の中に、
小学校を卒業していない農家が入っていた。
さすがに僕は困惑した。
読み書きが出来なければ、座学についていくのは
難しいだろう。
研修では毎日レポートや宿題も出るので、
それをこなすことも困難ではないか。
そんな不安を住民たちに伝えると、
彼らは笑ってこう答えた。
「彼は(読み書きのできない農家)、この村で野菜の栽培が一番得意なんだ。観察や経験が優れていて、初めての野菜でも上手に作る。研修に行く場所は、赤わけぎの産地なんだろ?だったら彼は、その周りの畑を見学して、農家と意見交換して、いろんな情報を持って帰ってくれるさ。確かに座学は厳しいかもしれないけど、実習もあるんだから、彼はその実習でしっかりと栽培法を学んでくるから大丈夫だよ」。

研修はある程度の学力が必要だと、
色眼鏡で見ていたことを
この時、気が付かされた。
確かに、大学の農学部を出ても
農家として立派にやっていけるかどうかなんて、
全く保証してくれない。
観察する視点を学問は養ってくれるとは思うが、
経験はそれ以上に養ってくれる。

事実、その彼は研修中に
積極的に農家から情報収集をして
研修所では教えてもらえない栽培のポイントを
持ち帰っていた。
彼が所属していた農家グループが、
その後の栽培でもっとも収量が多かったのも
偶然ではないだろう。

彼は、
県や僕らの偏見に満ちた眼差しで
農村の人的資源を考えていた時には、
決して出会えなかった人材と言えよう。

こういう多様な人材に出会えることこそ
人的資源を議論する意味があると
僕は思っている。
僕らはごく当たり前に、
学歴と社会での活躍は一緒じゃないと
解っているつもりだろう。
だが、
研修に読み書きができない人が、
場合によっては適当だと思えるだろうか。
あなたにも
人的資源=学校教育だという視点が、
どこかにこびりついていないだろうか?




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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