勉強会の記録をすっかり忘れていた。
遅ればせながら、
4月3日水曜日の記録をしよう。

この日の勉強会は、僕のプレゼンだった。
本はこれ。
賴 俊輔 著 『インドネシアのアグリビジネス改革』:輸出志向農業開発と農民。

年末年始にインドネシアへ旅した時に
お供にした本のうちの1冊がこの本だった。
インドネシアの農業トレンドと
その構造を掴みたい、というのが、
この本を取った理由。
さらに、今後TPPといったフリートレードが
加速して行く時代において、
国内問題だけでなく、
これら貿易志向が
それぞれの国の農業構造に与える影響も
考察するために選んだ。

本書では、スハルト時代から現在までの
農業政策・市場・社会構造の変化を読み解き、
グローバリゼーションが進む中で、
輸出志向型の農業が農村に与える影響を
考察している。

本書は米政策やパームオイル、そして水資源問題に
それぞれ章を分けて考察していて、
その間に通底する視点としては、
国家の役割の縮小という
経済危機後IMFの介入によって行われた
構造調整政策が見え隠れしている。

スハルト時代にコメ自給を命題として
農業政策が展開されたが、
IMF介入後(1998年)は、
BULOG(食糧調達庁)によるコメ市場寡占を
撤廃し、関税も撤廃(2004年に関税復活)している。
柔軟なコメ輸入によって需要を満たす方が、
国内備蓄を進めるよりもコスト安で、
政府による市場寡占を無くすことで
新たな競争が生まれることが期待されたのだろうが、
現状では、仲介業者による投機的な買い付けによって
農家からの買い取り価格は安値安定したままで、
市場価格だけが高騰する結果を生んでいる。
市場が需要を満たす機能ではなく、
利鞘を稼ぐための投機的な側面が前面に
出てしまっている。
市場主義経済の競争の方向性が
まさに負の方向へと向かってしまっていると言えよう。

本書のパームオイルの事例考察は秀逸だった。
国営企業時代は、
小農に対する技術支援や生活物資の供与など、
農家の育成に努めてきたが、
民間企業移譲に伴い、市場経済主義に偏りだした。
政府は民間の中核農園(搾油機能あり:大規模)支援に
力を入れているが、
小農と中核農園の関係は国営企業時代とは異なり、
技術支援もなくなり、その生産性も落ちてきている。
中核農園は豊富な資金を武器に、
既存の小農農園を買い取り、自社生産向上に力を入れ始めている。
そこには小農の底上げによる産地化によっての
協同組合による地域開発の思想は無く、
投資力がある
民間企業による生産の独占でしかない。
より効率的に生産と輸出を志向する農業構造が、
農業の2極化(大規模農家と農業労働者)を推し進めている。

ただとても残念だったのが、
稲作の現場とパームオイルの現場が
事例として分断されていることだ。
投機的なコメ市場の影響と
民間移譲で進行しつつあるパームオイル農家の変遷は、
どちらも構造調整政策の結果として
繋がりはあるものの、
そこに住む人々の社会には、
あまり目を向けられてはいない。
実際に、それらの変化でコミュニティや村が
どう変わっていったのか、
その辺りが、同じ農業者としてとても気になったのだが
その辺りの記述はとても少ない。

さて、本書と最近の時事とを組み合わせて考えてみると
あまり他所事ではない事態の進行と見ることが出来よう。
借金だらけの政府の役割は
当然縮小の一途をたどるだろうし、
農業への株式会社参入や6次産業化・TPPといったフレーズは、
農業の新しい地平のようにも感じるが
そこには市場主義経済のさらなる加速と
グローバル化が見え隠れする。
何もインドネシアの農民だけが
悲劇なわけではないのだ。
小農的な生産能力では、これら資金力・技術力を持った
外からの企業体に太刀打ちはできないことを
本書の事例として示している。
これは日本でも同じことだろう。
6次産業化と言っても川下をしっかりと
抑えている加工業者相手に、
農家のおっさん・おばはんが一朝一夕で取り組む加工が
かなうわけがない。
結局は川上として生産物を安く提供するだけの
存在に成り下がるか、
それも効率が悪いと判断されれば、
資本力のある企業体に
パームオイル事例のように、
農業経営自体を買収されることにもなりかねない。

勉強会ではここまで議論しなかったが、
昨日の新聞でも賑わせていた強い農業の記事で、
農家所得倍増を謳っていたが、
こんなことはいとも簡単なのだ。
「農家」の定義を変えてしまえばいいだけなのだ。
農業にもっと企業が参入出来るようにして、
それらも含めて「農家」の定義にしてしまえば、
所得倍増間違いなしさ。
市場規模を10兆円とかも、
既存の加工市場をそもそも農業市場として
ある程度換算してしまえば、
その作業だけで市場規模は拡大することになる。
定義と統計のマジックで
数年でこれらは簡単にクリアーできる。
だって、それだけのワードやフレームは
すでにここ数年で出来上がっているんだから。
後はTPPに乗っけて、
儲かる人はさらに儲かる、その恩恵が社会に波及する
という、使い古されて、
すでにこれにはフェアな精神が無いことを
事例として沢山経験してきたはずなのに、
まだまだこの論理を信じる人が多い「トリクルダウン」方式で
論理を展開すればOKというシナリオか?

とにかく、
農民抜きの農業開発と農業発展が
今後おおきく社会を変えるパワーに
なってくるだろう。
さて、僕はどう抗おうか。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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