有志による勉強会の記録。
2月20日(水曜日)の勉強会は、大和の番だった。
選んだ本はこれ。

佐川光春 著 『牛を屠る』

屠殺場で働いた著者のドキュメンタリー。
のちに小説家に転じた著者だけあって、
重いイメージの現場のドキュメンタリーを
スラスラ読めるような平易な文章でつづられているらしい。

僕たちは当たり前に、
毎日肉を食べる。
スーパーにも食べきれないほどの
肉が並んでいる光景も当たり前だ。
そしてそれが生き物だったという過去と
美味しいお肉という目の前の事実とは
情報が分断されていて、
僕らは過去を意識しながら、それを食べることは少ない。
いのちを食べるという意識すら
薄いかもしれない。

勉強会の議論では、
生き物を殺して食べるその行為について
集中して議論がされた。

メンバーの内、数人は自分で鶏を絞めて
食べたことのある経験があるが、
豚や牛となるとほとんどいない。
僕は協力隊の時に住んでいた山奥の村で、
牛を結婚式用に屠殺したのを
間近で見た経験がある。
村の親友のいとこ(双子)が
同時に結婚式をすることになり、
その時に牛を屠殺した。
葉のついた木の枝に水を含ませ、
それで牛の頭を何度もたたいて、
牛がもうろうとしてきたころに、
丸太の一撃が入り、
鋭い刀を首元に突き立てた光景は
今でも目に浮かぶ。

ちなみに、子供への割礼の儀式でも
村で行った場合、麻酔を使わず、
この葉のついた木の枝に水を含ませ、
それで何度も何度も子供の頭を
軽くたたいて、行っていた。
ビシャビシャの水浸しになるのだが、
その単純な繰り返しの行動が
だんだんと生き物の意識をもうろうとさせるらしい、
というのは余談。

さて、鶏を絞めるにしても、
始めはなかなかおっかなびっくりなのが
正直なところだ。
無事、血抜きを終えれば、
熱湯につけて羽をむしるのだが、
その工程を過ぎたあたりからは、
俄然、食欲がわいてくるから、
人間ってやつはなかなかの強欲だ。
羽をむしると、鶏じゃなく、
それが「肉」に見えてくるからだ。
食べる時は、もう鶏の意識は少ない。
肉を食べ、談笑し、酒を飲む。
そんな日常になっている。
ただ生き物をつぶして食べたという実感が
心の中に沈殿するのは事実だろう。

生き物をさばいて食べるような機会も
必要なのかもしれないと議論にもなったが、
なかなか子供に見せられるような光景じゃない。
事実、協力隊で住んでいた村では、
子供が屠殺を覗くのはご法度だった。

また屠殺の現場についても少し議論になった。
僕が居たインドネシアの村では、
イスラム教の地位の高い人が屠殺をしていた。
そういう人じゃないとできないような雰囲気だった。
だが、日本の歴史では、
部落出身者による差別的職業の象徴でもあった。
インドネシアでも街にあふれている肉は、
どこかの精肉場で生産されているのだろうが、
そこで働く人たちのステータスは
いったいどういう人たちなのか、
新たな疑問もわいてくる。
また命と言うよりも
効率よく食料を生産する現場において
効率性と合理化を推し進めすぎた結果、
そこに「命」が伴わない、ただ単なるルーティンな作業場と
化していること自体も、
僕らの食卓に並ぶのが命ではなく
ただの肉ということにも影響しているのかもしれない。

大和のプレゼンで、著者の命についてのくだりが紹介された。
「『いのち』などという目に見えないことについてあれこれ語るよりも、牛豚の匂いや鳴き声と言った、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させたままにしておくことの方がよほど大切なのではないか」と著者はいう。
屠殺場では、匂いや鳴き声が外に一切もれないように
厳重に管理されているとのことだった。
匂いも鳴き声もしない。
つまり僕らは『いのち』を知覚できないまま、
その肉を喰らうのである。

議論の最後は、
生産の現場と食卓との乖離だった。
僕ら生産の現場のリアリティは、
食べる側に一体どれだけ伝わっているのだろうか。
合理的で効率的な現代社会において、
それは伝わる必要が無い事なのだろうか。
僕らは、その波にあがらい、
伝える努力をし続ける必要があるだろう、と
今回の勉強会を締めくくった。



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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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