研修1年生の2人は、
今日で1年が過ぎたことになる。
なんだか早い気もするし、まだあと2年もあるのかと
思うこともある。
その2人が最近、なかなか面白い。
人が変わりだすのって、
やっぱり1年や2年は必要なんだろうな。

今回は、カダルスマン(通称:ダルス)について書こう。
彼は、今までのメンバーのように
農業に対する深度がそれほど深くは無かった。
知識自体もそうだが、
もともと農業に対する思い入れ自体も
若干薄い感じがあった。
彼の生家には、ほとんど土地が無かったし、
父親もミニバスの運転手だったりで、
農業とは無縁の人生だったのも
影響しているのかもしれない。
高校は農業高校に進んだものの、
卒業後の就職先は服飾関係だった。

そんな彼が、
毎月提出する月間レポートで
将来の夢として書いてくるものは、
どこか的外れなモノが多かった。
地域のリアリティをちっとも感じない、
ちょっと前に流行った
ブループリント型の開発プロジェクト案を
見せられているような、
そんな感覚だった。

自分の父親が祖父から相続した土地は、
水田ではなく、山肌の土地。
しかも、猫の額ほどの土地。
彼は当初、
「トウガラシ栽培をしたいです」
と言っていた。
これインドネシア人の定番の文句。
福井で新規就農者が何も考えずに
ホウレンソウやトマトをしたい、というのと
ほとんど同じ感覚。
ダルスの理由は、
「それはみんなが毎日食べるからです」だって。
当然、そんないい加減な答え方をしていると
僕に突っ込まれまくりになる。

サンドバッグになりながら、
次に彼が考えたのが、
精米所の運営だった。
「土地が無いけど、田圃の多い村なので、精米所を作って経営したいです」だって。
これは僕が突っ込む前に、
上級生から、
その地区に精米所が無いのか?という質問に
ダルスは
すでに大きいのが3つあります!
と元気よく答えて、またもサンドバッグに。
日本のような乾燥機が無いところが多い
インドネシアの精米所の場合、
一番確保しなければいけないのは、
天日で米を乾かすための日当たりのよい土地と
米を運ぶためのトラックだ。

僕がスラウェシの山奥に住んでいた時に、
ホームステイ先の家族が、
マレーシアの出稼ぎの大金をつぎ込んで
精米所を作ったのだが、
山間だったため、
天日用の広い土地の確保ができず、
精米機械の能力をフルに活かせなかったという経験がある。

また日本と違って、
インドネシアでは小規模の場合、
精米業者が米を確保するために
自ら運搬をしないといけない。
だから小さくてもトラックがないと
精米所は全く機能しない。

土地なしのダルスが
精米機と米を運ぶためのトラック、
そして天日用の広い土地を確保できるのだろうか。
研修で貯めたお金では、
たとえ精米機は買えても、トラックや土地まではとても無理なのだ。
3つ揃わないと、精米所としては機能しない。
しかも、むらの中にすでに稼働している精米所が3つある。
人口は増えても、土地は増えないジャワにとって
今後米の生産量がどんどこと増えていくことは
想像しがたい。

そんな突っ込みを受けて
ダルスは今月、別のプランを考えてきた。
それは『バナナ』。
バナナ栽培を行い、
生のバナナやバナナチップスなどに加工して、
ローカルマーケットに販売するというもの。
彼の家族が持つ斜面の土地は、それの栽培に向いているし、
気候も申し分ない。
加工に必要なバナナは、自分の土地では足りないので、
地元で確保するという彼の姿勢も共感できるし、
それなりにリアリティがあった。

僕は、バナナについてほとんど知らない。
生産構造やローカルマーケットのキャパシティ、
品種、病害虫、土壌条件、そしてその歴史。
そのすべてに無知だ。
ただ知っているのは、
コーヒーやエビ、そしてお茶と同じく、
バナナも従属した市場構造に置かれた品目の一つだということ。
グローバルバリューチェーンの大きい流れに、
生活と生産の変容とマージナル化をゆだねる産業だと言うこと。
これからダルスの肩越しに、
インドネシアのバナナの風景をしばらく眺めようと思う。

まずは、価格とローカルマーケットと
個人の経営レベルで必要な面積、
そして生産様式。
フィリピンのような協同組合型かつ
プランテーション型なのか、
それともインドネシアはバナナ輸入国なのか、
そして、巨大市場とローカルマーケットの
2重構造は存在するのかどうか。
その辺りから一緒に勉強してみようと思う。



関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ