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インドネシアの農業研修プログラムには、
卒業発表として日本語によるプレゼンがある。
研修3年生は、1年間かけて、
自分の営農スタイルに合わせて、
卒業研究が出来るよう準備している。
その研究した結果を
日本語で発表する場が、
福井農林高校の3年生が行う課題研究発表の場である。
毎回、その時間を十数分程頂いて、
研修3年生が、この1年の研究を締めくくる。
研修の仕上げともいうべき、最後の大きな山場なのだ。

今年発表したのはタタン君。
2010年に来日した彼は、
実家の農業を継ぎ、
果樹農家として大きくすることを夢として
この3年間勉強してきた。
なので、3年生の卒業研究では、
日本とインドネシアの果樹流通について
比較検討をする、という課題を立てていた。

彼は、来日当初から、
日本の農家が比較的自由に
価格を決めていることに驚いていた。
直売所やインターネット上では、
農家が直接価格を決めているという、
僕らには至極当たり前の現実なのだが、
彼から見ればそれは明らかに異文化だった。

どうしてそんなことが可能になるか?
自分たちインドネシアの農家が
自分たちで価格決定が出来ないのはどうしてなのか?
それをきちんと整理するために、
彼は3年生の卒業研究のテーマを
果樹流通における日本とインドネシアの比較に定めた。

彼は両国の農家と流通と消費者それぞれを
比較検討した。
インドネシアでは、果樹販売は庭先取引が多い。
果樹の収穫時期になると農家のところに、買取人がやってきて
価格交渉をする。
1個いくらという交渉ではなく、
収穫前の木や畑を買取人が見て、いくらかを見当をつける。
どれくらいの収穫量かは、農家も買取人も
正確な数字は解らないままの取引。
しかも農家は市況が解らないので、
値段交渉もほとんどできない。
さらに問題なのは、
収穫は、買取人が連れてくる収穫労働者が行うというもの。
農家は、ただ単に栽培をするだけで、
収穫は買取人の指揮の元で行われる。
秀品や優品などの品質、また大きさや規格で選別すれば、
高くなる可能性がある収穫後のすべては、
農家の手には無く、買取人のボーナスとなる。

農家が直接収穫して市場へ持って行っても、
買取人と市場の卸はつながっているため、
直接持ち込んでも買ってもらえないことが多い。
さらに市場までの輸送手段がないのも、
農家の立場をよりマージナルにしている。

市場では、明瞭な価格が解りにくい。
市況はラジオで放送されているが、
実際の地方のローカル市場での価格はあやふやなまま。
買取人がそのまま卸をやっている場合もあり、
市場では農家からの買取価格の1.5倍ほどで
取引されている。

消費者の意識も違う。
贈答用は輸入物を選ぶ傾向がある。
輸入果物の方が、選果されており、
品質が揃っているという意識がある。
市場で売られている国産や地元産は、
選別されておらず、
混ざっていて鮮度も逆に良くないのだとか。

「小さくても良いから、直売所を作って、お客さんに直接販売したいです。」
とタタン君は言う。
観光農園やインターネットでの情報発信も
積極的に行おうと考えているようだった。
それらすべては、農家が周縁化せず、
生産と消費がまっとうなつながりを持つための
試みと言えよう。
「直接売ることで、お客さんからの意見も直接聞け、農家の品質改善にもつながると思います。」
タタン君のまとめは、
とても単純なWin-winの関係だった。
それは、国や地域が違っていても、
僕ら生産者みんなが望む関係でもあった。

見事な卒業研究の発表だった。

追記:
本発表では、テューターとして佐藤高央が
多くのアドバイスと指導を行い、
大西康彦がプレゼンテーションの指導を行った。
両氏の指導のおかげで、本研究発表が
例年になく充実していたこをここに記録しておこう。

謝辞:
本発表でモデル農家としてお世話になった朝倉梨栗園さま、
市場流通を細かくご教授いただいた福井卸売市場の小西さま、
またアンケートにご協力いただいた多くの消費者の皆様、
本当にありがとうございました。
心より、お礼申し上げます。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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