ヘンドラとイルファンの畑を回りながら、
僕の中で温めていたあるアイディアが、
むくむくと顔を出し始めた。
それは、研修と帰国後の活動の成果を
世に向かって発信すること。

研修期間外で、僕が卒業生を支援することは限られている。
僕らはすでに「Yayasan kuncup harapan tani:耕志の会」という
任意団体を作り、
卒業生への技術的インフォメーション支援や
マイクロファイナンスを準備してきた。
今回の視察で、
マイクロクレジットを活用する卒業生の可能性を
探ることも僕の課題だったのだが、
今のところ大きな投資の予定は無く、
卒業生たちにはその存在のリマインドだけにとどめた。
またFacebookを活用した積極的な
情報交換をこれからも続けていこうと、
彼らとも共通認識に立てたのは良かった。

これらの議論を聞いていて、
タンジュンサリ農業高校の先生たちの食いつきは良かった。
この任意団体のFacebookページを
生徒にもインフォメーションを流して、
一緒に情報交換はできないかという
嬉しい申し出もあった。
高校での農業教育と研修と卒業生の活動が交差する場。
そんなものを夢見てきたが、
教育現場でそういうニーズがあるのなら、
話は早い。
どういう形でコラボするのかは、
これからの課題でもあるが、
まずは第一歩というところか。

インターネットを駆使した情報交換や
マイクロファイナンス以外にも、
卒業生を支援するという意味で
僕にはもう少し出来ることがある。
それはシンポジウムを開くということ。

どこか会場を決めて、
農業高校と卒業生、僕、
そしてこのプログラムを検証してくれる
第三者が集まって、
農村発展とアグリビジネスについての
意見交換会を開きたいと思っていた。
卒業生を売り込むまたとないチャンスなのだ。

P1040469.jpg


この話を卒業生と農業高校の先生が集まっているところで
打ち明けてみると、
皆の反応はすこぶる良かった。
ぜひ、会場は高校を使ってください、と校長先生。
学生の教育にもつながると、校長先生も乗り気だった。
卒業生は活動内容をプレゼンし、
僕は研修プログラムの内容を発表する。
そして、第三者から評価と提言を頂き、
活動と研修は次のステップへと移行していく。
研修だけを切り取って、
その内容を話し合うことに全く意味を感じていない。
僕らは連続した瞬間を生きていて、
それは研修が終わったからと言って
途切れてしまうモノじゃない。
研修は、その前の人生と経験、そしてその後の活動に
連続して埋め込まれているからこそ
力を発揮するのだと思う。
そしてそのサイクルは、
検証をすることで、さらに次のステージへと
僕らは変化していける。
そのためのシンポジウムなのだ。

ここでもう一つ解決しなければいけないことがある。
それは第三者による評価と提言。
農業高校の先生からでも良いのだが、
どうせなら結構偉いところからしてもらったほうが、
卒業生の「箔」にもなるし、当然、励みにもなる。

ということで、僕はバンドンを後にし、
ボゴールへと旅のステージを移した。
ここからは、妻は別の調査地へ向かい、
僕と娘の二人旅になる。

P1040699.jpg


ボゴールは僕の苦学の地。
この場所で僕は2年間、大学院生として過ごした。
楽しい思い出より、つらく苦しい思い出の多い土地。
でも、そこには僕が尊敬してやまない先生たちが居る。
その内の二人が、メラニ先生とサティアワン先生夫妻。
メラニ先生は僕の論文指導教官でもあった。
卒業して7年が経ち、
僕のインドネシア語もレベルが落ち、
活発なディスカッションが出来るかどうか不安だったが、
先生たちは、根気よく僕のプレゼンを聞いてくれていた。
先生たちのするどい質問が度々入り、
僕は7年ぶりに、あの頃のアカデミックな感覚に
半ば酔いしれていた。
批判的な質問で切り口が鋭いのに、
切られた時に見えてくる新しい視点の発見。
ただ批判するんじゃなくて、確固たる視点を持った人の
批判的意見は、気付きが生まれ、そこはとても生産的な場になる。
こういう心地よさは、最近、経験してないなぁ。。。
約5時間にも及ぶ有意義なディスカッションは、
とても至福な時間だった。
お二人の先生は、研修やアグリビジネスそのモノよりも
ネットワーキングにとても興味を持っていた。
少し先の未来なのかもしれないが、
先生たちが取り組んでいるネットワークに
僕らも参加させてもらえたら素敵だなぁ、と思えた。

さて、メラニ先生は、
「時期を指定されなければ、評価調査には協力するわ」と
快諾していただいた。
シンポジウム開催そのものが目的ではないので、
まずはメラニ先生のような方に、
きちんと批判的評価をしてもらい、
本当に卒業生とその周りの人たちに必要なことは
何かを共有したい。
そのための評価調査。
内容はこれから詰めないといけないし、
そもそも予算すらない。
僕の道楽でやっていることだから、
たぶん僕の財布でまかなうんだとは思うけど、
その予算にも頭を悩まさないといけないだろう。
とにもかくにも、とりあえず「第三者」となる協力者は
得ることが出来た。

ボゴールを離れる前に、
この研修で、
研修候補生の地域のポテンシャル調査を依頼している
アニ女史に電話をする。
彼女は、僕の大学院時代の同級生で、
僕らのプログラムの首席だった。
その彼女は、今、東ジャワの地方国立大学で教鞭をとっている。
もちろん、彼女もその「第三者」の1人。
評価調査やポテンシャル調査、そしてシンポジウムをやるなら、
一緒に農村発展に関する書籍でも出版しない?と彼女。
いいねぇ、それ!
何か形に残すのは良いことだと思う。

まだまだ夢みたいな話ばかりだけど、
卒業生がそれぞれの地域で行動を起こし始めているのは事実。
とても小さな取り組みだけど、
それをどうつなげていけば、
ある程度のうねりになるのかは、
これからの僕たちにかかっているんだと思う。
ほとんど僕が出来ることはないが、
あとほんの少しだけは、彼ら彼女らと
協働できるスペースがあるようだと
感じ取ることが出来た旅だった。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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