インドネシア農業研修の座学の話。
その中の総合防除の授業の話。
今回は、農薬での防除。
農薬での防除の方法に入る前に、
まず研修生たちを取り巻く農薬事情を
みんなで共有するディスカッションを行う。

受講生であるイラ君とダルス君が
すでに使ったことのある農薬を
レポートに書いてきてもらい、それを発表してもらった。
同じ高校の出身でも、随分と離れた地域の2人のはずだが、
ほとんど同じ農薬の名前を挙げていた。
殺虫剤では有機リン系と合成ピレスロイド系の2種で、
殺菌剤は有機硫黄系の1種。
除草剤は「値段が高いから使わない」とのこと。
彼らが挙げてくれた農薬は、
僕が90年代末に
インドネシアで農業指導していた時に
主流だった農薬。
いまだに、その名前が挙がることにやや驚いた。

その農薬が、どの害虫や病気に効くのかは、
彼らの知識はそこそこあり、防除回数や希釈倍率にも
答えることができた。
だが、その農薬の原体名や作用点は当然わからない。
彼らは優秀な成績で農業高校を卒業し、
イラは県の普及所でアルバイトとはいえ働いていた経験を持つ。
一般の農家に比べれば、
農薬の知識は高いはずだが、それでも解っているのは
上記の程度でしかない。

では、専門的な教育を受けていない、
一般の農家はどこで農薬の情報を得るのか?
彼らの話によると、
多くが農薬セールスマンと農業資材店らしい。
イラ君の友達でも、何名かが
外資系の農薬セールスマンとして働いている。
各村々でデモンストレーションを行い、
その場で農薬を販売していくセールスマン。
1回のデモンストレーションでの販売ノルマがあり、
それをクリアしていけば、ボーナスがもらえる仕組み。
基本給をかなり低く抑えられているので、
現地での実践販売での数字獲得が
生活していけるかどうかの瀬戸際になってくる。
もちろん、こういう販売では、
農薬の作用点や副作用はほとんど説明されず、
他の農薬との効果の比較は、デフォルメ化され、
効くか効かないかに特化される。
農薬資材店にもセールスマンは入り込み、
販売ボーナスの一部を農薬資材店にバックする。
もちろん農業改良普及員にもそのお金を流すことで、
県行政が作成する農薬による防除暦に
自社製品を組み込む活動や
現場での指導で、自社製品を有利に販売しようともしている。
まぁ、どれも想像できる当然のことだろう。
ヤクルトレディ的なセールスマンによる現地販売は、
時にBOPの成功事例のようにもかたられるが、
自社製品のみの偏った情報の場合、
なんだかあまり健全には見えないのは余談。

さて、こういう情報の出方になってくると、
当然、資金力で有利な会社の農薬が良く売れることになる。
農民が選択できることはほとんど無く、
農薬の情報を精査できず、
セールスマンの人柄くらいしか、
その判断材料はない。

だから、イラ君もダルス君も
「現場で使われている農薬の種類は、だいたい1,2種類だけです」
という答えになるんだろう。
「これが良い!」と
どこかで誰か(普及員・セールスマン・資材屋)が
言い出すと、その農薬をこぞって農民が買う。
数年して、他の製品にその立場をとられると、
その他の製品ばかりを使うようになる。
それが、彼らを取り巻く農薬の景色。

まぁ、ここらでも農薬についての知識が
どれくらいあって、その中でどんなふうに精査しているか、
と問われると、あまり変わらないかもしれない、
と思うこともあるのだが・・・。

この授業では、防除を総合的に考える。
だから、もちろん農薬だけに頼る防除はしない。
であっても、やはり農薬の情報をきちんと精査できるだけの
調査力と専門性を身に付ける必要はある。
その上で、相対主義的に
僕らの「価値」に沿って、
それぞれの防除を捉えたら良いと思っている。

僕らの団体で、ネットなどを駆使して
もっと農薬の情報を
一般の農家が理解できる形として提供できないだろうか、
とふと思うのは余談。
だが、この余談が膨らんでいかないかなぁ、と
思いを馳せる自分がいるのは事実。
もう少し時間が必要か。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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メールは
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