先週末から、大学院生が農園で
インターン中である。
海外へ調査に行くとのことで、
農業や農村について事前に学びたいと
やってきた。
また妻からは農村での調査をするにあたって
さまざまなポイントを指導。
僕ら夫婦だから出来る研修と言っていいだろう。

さて、その学生さんは地域資源に関心がある。
すでにエチオピアで予備調査をされたということで、
たくさんデータを持ち帰ってきた。
しかし、
帰ってきて改めてみれば、そのたくさん取ったはずのデータは、
本来自分が明らかにしようと思っていた事柄とは
関連性が見えにくいデータも多かったという。

こういうことはよくある。
調査前にしっかりと計画を立てて、
何を聞けばその事柄が明らかになるかも
何度も何度も精査しても、
いざ現地に赴くと、
インタビューの
時間や場所や使う単語の認識のズレや
インフォーマントの語りのツボなどに
大きく左右され、
それでも立て直しが出来るならいいが、
異世界の高揚感と大量の情報に混乱し、
自身を見失ってしまうことも多い。

それでも必死に
それら困難を振り切って、
計画通りに情報を集めてきても、
その事柄を明らかにするはずデータが、
その事柄だけを断片的に切り取ったモノとなってしまい、
そこに住む人たちのリアリティから
かけ離れたデータとなってしまうこともある。
帰国後に膨大なデータが
ゴミのように見えることだってある。
こうした喪失感は僕にも経験がある。

そうならないための訓練と
農村で農業を生業にしている相手のリアリティに
寄り添いながらインタビューを展開していけるための
農業の素地を身に付けるために、
大学院生は、ここにやってきた。

さて、ここでのインターンの中身についても
少しだけ紹介しようか。
その学生さんに農園を案内しているときの一コマ。
堆肥場を案内し、生ごみを堆肥化して利用していると説明した。
すると学生さんは、
堆肥の種類や作り方、
野菜によって堆肥を使い分けるのか、など、
堆肥にフォーカスを置いて様々な質問を投げかけてくれた。
そこで僕は、多様性を大切にする観点から、
土づくりの話をし、
微生物と土と植物の相互作用の大切さや、
それがさらには圃場内の多様性を生み、
総合防除的な視点から、
すべての虫を排除するのではなく、
多様性の中でバランスを取って、
特定の虫だけが繁栄しないのが
大切だと話をした。
学生さんはメモを取り、
堆肥から始まったインタビューは
総合防除やエコシステムにまで及んだ。

堆肥場から我が家までゆっくり歩きながらの
インタビューで時間にして10分程度。
家に着くと、先に帰っていた妻が一言。
「で、地域資源としての堆肥の話は聞けた?」
そこに意識が言っていなかった学生さんは
はっと我に返ったような顔をしていた。
堆肥にフォーカスが当たり、
その技術的なことをインタビューはできたが、
肝心の堆肥を中心にした
地域の資源の活用やマネージメント、
そこに関わる人々の息遣いは
まったく見えていない。

短時間のインタビューでは
そんなことは難しいとは思うかもしれないが、
そこに意識を置いて話を聞くかどうかで、
データの質が変わってくる。
その事柄を中心にした
人々の繋がりや農業の様式が
展開されないとやはりとってきたデータは、
地域資源と言うカテゴリでは
断片的になってしまう。

インフォーマントの語りのツボを押すと、
大量のデータが引き出される。
でもそのデータに押されっぱなしで
それを記述することにばかり必死になれば、
自分の関心からはどんどん離れていくこともある。

たまに
語りを遮る人もいる。
新聞の記者さん等でこういう人はたまにいる。
自分の書きたいことやストーリーがすでにそれなりにあって、
それに合う話だけを効率よく聞こうという場合がそれだ。
語りを遮られると、あまり気分が良くない。
最悪の場合、
調査者が何を聞きたいのかを
インフォーマントが先回りして察知してしまい、
それに合わせて相手が喜ぶように
饒舌に語ることにもなりかねない。
こうなったら、もう誰のリアリティなのか
さっぱりわからないことになる。

相手の語りに寄り添いながらも、
自分が明らかにしたい事柄を心のどこかにとどめ
少しずつインタビューを修正させていく。
そんなことを言うのは簡単だが、
ライブで進行していくインタビューでは
なかなか難しい。
だからフィールドノーツをしっかりとつけ、
その修正が大切になる。

農業を体験してもらいながら、
僕はインフォーマントとしていつでもどこでも
その質問に答える。
そしてその質問のやり方や内容について
妻が常にチェックを入れる。
学生さんは大変だろうが、
このインターンは、僕ら夫婦にとっても
とても刺激的なものになりそうだ。
関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
06 ≪│2017/07│≫ 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog |

FC2Ad

| Template Design by スタンダード・デザインラボ