母方の祖父が、
「これ徹君に渡してくれ」と言付かって、
叔母があるものを持ってきてくれた。

その電話を聞いた時、
さてはまたお気に入りの「おかき」を
大量に買い込んで差し入れてくれたに違いない、と思った。
そういうことがこれまでも何度もあったからだ。
孫はいつまでも孫なのだろう。
僕も巷で言う「いいおっさん」になってもまだ、
祖父はお菓子の差し入れをするのだ。

と思って受け取った荷物は、
お菓子ではなく、一冊の本だった。
『植物医科学』という題の本。
ラテン語と専門用語がずらりと並ぶ、
植物病理学の中でもやや前衛的な専門書。
ネットのアマゾンで、僕のおススメに
たまに出てきて、僕も少し気にしていた本。
しかし、今年で85歳になる老人が
送ってくるには、やや専門的すぎる。

祖父は何も病理学の専門家でもない。
特に何かの学問を修めてきたわけでもない。
ただ、会社勤めを早めに辞めて、
農業で生計を立ててきた人。
その中では、かなりの研究熱心で、
さまざまな取り組みをこれまでもしてきている。
菊中心の農業経営で、その分野での研究は当然のことながら、
それ以外にも海水を散布した米作りや、
納豆菌を利用しての野菜栽培etc.
それにしても、その本は専門的だったので
祖父に電話で確認をした。

祖父の話はこうだった。
先日、県外に用事があり電車に乗って出かけた。
たまたま近くの席に
県の職員の方らしき団体も座り、その話し声が聞こえてきた。
どうも農業の専門家らしいことは、話の内容からわかった。
その専門家たちが、とても良い本があると話していたので、
その題名を書き留めて、近くの書店で注文したのが、
上記の『植物医科学』という本だったらしい。
自分で読もうと思ったのだが、
開いてみると、専門用語が並んでいてとても読めない。
で、本棚にしまっておくのも、もったいないので、
僕にプレゼントすることにした、ということだった。

最近、祖父はえひめAIや納豆菌などを利用した
野菜栽培にはまっており、
植物病理の世界にも強い関心があるのだろう。
だから、県の職員の方らしき話は祖父のアンテナに
キャッチされたのだろう。
そして、それが85歳になる老人というところが素晴らしい。
農業は生涯現役と誰かの言葉だったが、
まさにそれを地で行く姿が、祖父だと思う。
こういう人が自分の祖父であることに
本当に誇りに思う。

と、同時に、こんな話を聞くと、
僕のアンテナは祖父のように感度良好なのだろうか、
と考えさせられる。
祖父のように、高くアンテナを張り巡らせているのだろうか、と。

僕も祖父に負けていられない。
祖父からもらった本は、
しっかりと読ませてもらおう。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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