インドネシア研修の記録をしよう。
2012年前期は、地域開発論以外にも農業構造論という
座学を行っていた。
生産様式を含めた農業の風景という表象を支える
さまざまな要因を一つ一つ腑分けしながら、
インドネシアと日本を対比させつつ、
近代化論的な単線的発展モデルを克服する座学。
文化相対主義的に個々の農業の価値に気が付けば、合格。
研修1年生の必修科目。

最終試験では、1年生のそれぞれが自分たちの地域の営農スタイルを
解説し、どのような要因によってそれぞれのスタイルが
形成されているかをプレゼンしてもらった。

カダルスマン君(以後:ダルス)の地域は、
やや開けた土地で、川が多く水源に困らない。
そのため、米作りが盛んで、水の入る土地では年に3回、
米が作付けされる。
土地が開けていると言っても、そこは西ジャワ。
でこぼこで水の入らない土地も多い。
そんな土地では、タバコ栽培が盛んだという。
タバコの買い取り商人も多く、
そこから資金を借りて栽培する農家も少なくない。
そんな営農スタイルの中に、
政府が砂糖ヤシの栽培プログラムを持ち込んだ。
緑化政策の一つということらしいが、
タバコ栽培があまり向かない山間の斜面の畑などで
砂糖ヤシの栽培が盛んになりつつあるという。
ダルス君の家は、水田をもたず、
タバコ栽培に適した農地もない。
山間の斜面の畑は、今は果樹を粗放栽培しているのみで
ほとんど管理らしいことは行っていないらしい。
彼は、
「いずれは資金をためて田んぼを買い、斜面の畑では高く売れる果樹を栽培したいです」と締めくくってくれた。

もう一人の1年生のイラ君。
彼の故郷は、前回のエントリーでも書いた
2年生のクスワント君の村に近い。
中学校は同じだったとか。

さてイラ君。
彼の地域では、実に多様な生産をしている。
トマト・トウガラシ・キャベツなどの野菜類、
バナナ・マンゴー・アボガド・マンゴスチンなどの果実類、
また香辛料類や養殖、鶏・牛・羊・ヤギなどの家畜などなど。
西ジャワのどこの農村でも見受けられるような、
販売と自給の曖昧な細かな生産を行っている。

その中でも、彼は米とイモと羊を大きく取り上げていた。
クスワント君同様、水の入る土地では米を作り、
そうでない土地ではサツマイモを栽培するのが主流らしい。
近くにチレンブというサツマイモの産地があるのだが、
その産地の影響で、サツマイモも高値で取引されることもあり、
イモの栽培も盛んとのこと。
そして最近流行なのが、羊。
彼はここに来る前に、スメダン県の農業事務所で働いていたのだが、
その時に羊普及のプロジェクトがあり、
彼の村に、2頭ずつ羊の貸与があったらしい。
羊の子供が増えれば、それを返すシステムで、
彼も2頭のメス羊を貸与されたという。
彼の話によれば、村では羊の繁殖ブームとのことで、
今後とも行政の後押しが続くのであれば、
どんどん発展していくのではないか、と分析してくれた。

また、近くの市場をあれこれと解説してくれたのだが、
街の市場に、農民自身が細かな生産物を
持っていくことはほとんどないという。
ほとんどが自給用で栽培されているため、
生産物が少ないことと、運搬手段を持たないため、
たとえ車を手配しても、儲けが出ないとのことだった。
果樹は、自給用の場合もあるが、多くが買い取り商人との
庭先取引で販売してしまうという。
生産規模も小規模とのこと。

換金目的としてはサツマイモと羊が、
もっとも有効だという。
そんなイラ君は、施設園芸に興味を持って研修に励んでいる。
「タヤさんのように、ハウス施設で野菜をたくさん作りたいです」と
プレゼンを締めくくってくれた。
なんでもベビーリーフをインドネシアでも栽培したいのだとか。

彼ら1年生が自分の地域を
自分で分析するのは初めてとのことで
やや難しい課題だった、と感想を述べてくれた。
ただ同じスメダン県と言っても、
少し離れているだけで、こんなにも風景が違うことに、
僕も含めて、研修生たちとその新鮮な驚きを
共有できた。

その驚きが、差異に気が付くきっかけであればと願う。
相対化して生まれる差異に気が付くから、
自分たちの個性が、ひときわ輝きだす。
何が輝きだしているのかは、
僕は研修生たちの肩越しに、彼らとこれから見つめていこうと思う。
さぁ、1年生諸君の準備は整った。
次の後期の座学から、
一緒に未来の良き営農のスタイルを
探していこうじゃないか。

関連記事

[別の状態」の可能性

フラッと感想だけ書きに寄せていただきました。

「どうして東南アジアやアフリカに興味があるの」と言われることがあります。
(現地にはずいぶん行ってません。半端な趣味人の「座学」です)

日々の暮らしの中で「現状でいい」と思えず、しかも「別の状態」のヴィジョンが
持てないときに、「別の状態」の、可能性を感じたいのだと思っています。
国内に興味がないわけではなく、国内もそんな目で見たがっているような。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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