FC2ブログ
インドネシア研修生の座学
「地域発展論」の続きを記録しよう。
最終試験では、
クスワント君(以後:ワント君)の帰国後の営農スタイルを
発表してもらった。

ただ単に農業を行うのだけでなく、
その営みが、その地域の問題解決につながっている事。
それがこの試験の条件。
ワント君が考えている営農スタイルは、
「アグロフォレストリー」。
農林複合経営とか、森林農業などと言われているスタイル。
その概念自体の詳しい説明は省略するが、
ここでは彼のプランを中心に書いていこう。

彼の住む地域は、西ジャワ州スメダン県の県都スメダンから
西に1時間ほど山に入ったところにある。
山間地だが、水源が少ない。
水の入る土地では田んぼをし
そうでない土地ではサツマイモを栽培している。
ワント君曰く、
「父が若かった頃は水も多く、水田が沢山あったのですが、今ではかつて水田だった土地もサツマイモ栽培に変わっています」とのこと。
確かに近くにサツマイモの有名な産地があるので、
それなりにサツマイモ栽培への関心が
高まっていることもあるだろうが、
それが変化の主要因ではなく、
彼は水源の枯渇がそれを招いたと考えている。

彼はプレゼンで、自分の故郷の小さな山々を写真で見せてくれたが、
その多くが、木が一本も生えていないはげ山だった。
頂上まで耕されて、畑になっているのである。
人口が密集しているジャワでは、そう珍しい光景ではない。
ワント君の地域でも農地は3反もあれば広い方だという。
人口圧と貧困が農地の限界にチャレンジしている風景とも言えよう。

そのはげ山、困るのは保水力。
雨は雨季になればそれなりに降るらしいのだが、
水は一気に山を駆け下りてしまい、
こんこんと湧き出る水源を作ってはくれない。
森を切り開き、すべてを畑にしてしまったからだ。
しかも、作物を支える表土が流亡するのも大きな問題らしい。
そのため、それらの土地では年々生産量も減っていく。
そして水源がなくなるため、今まで田んぼだった土地も
畑へと変化していってしまっている。

この問題の解決に、彼が考えたのが
「アグロフォレストリー」。
木を植えて森へと戻しながら、
その間で耕作をするというスタイル。
ただ、ちょっと経営的には難しい時もある。
植林した当初は、その間でいろんなものを栽培できるが、
樹幹が大きくなってくれば、当然、光を遮るので難しい。
野菜や穀類と果樹の組み合わせが多いのは、
樹幹が低いうちは、野菜や穀類を販売し、
高くなれば、果樹経営に変えるというのが
アイディアの一般的なところだろうか。
だが農家の立場からしてみれば、
野菜や穀類と果樹の経営は、
同じ農業で括られてはいるが、
経営的にまったく違うもので、
数年の間にその変化がやってくるような経営は、
できればしたくないのが正直なところ。

ワント君のアイディアは、
はげ山でアグロフォレストリー経営をし、
下部の農地の水源確保にもつなげるという。
しかし、経営的に難しいアグロフォレストリーが
果たして、その地域の社会的起業になりうるのだろうか?
政府が多額の助成金を出しても(果樹による緑化政策など)、
あまり成功例を見ないのに、
理念は素晴らしいが経営的に広がりを見せるのかどうか、
すこし不安もある。
ワント君は、そこもしっかりと考えていて、
果樹として植える作物をバナナとし、
その加工まで見据えてのビジネスプランだった。

ワント君の案は、バナナチップス加工も含まれていた。
徹底したエコを意識してか、
乾燥機は電気や石油燃料を使わず、
太陽光のみで出来るものを選んだ。
全国の農業高校のコンペティションで、
加工分野で学校の代表になったこともある彼らしい案だった。
生のバナナでは有利に販売できないし、
田んぼなどの農繁期と重なると作業も大変になる。
加工であれば、時期を見定めて販売できる。
エコなチップスは、それだけでストーリーとなる。
それが彼の案だった。

なるほど、面白い。
でも、脇はまだ甘い。
そうであるなら、アグロフォレストリーなんて
持ち出さなくても良いじゃないか。
バナナが儲かるのなら、バナナのプランテーションにした方が、
経営はより有利だ。
それに対し、ワント君はアグロフォレストリーと
プランテーションを自然に対する負荷で反論したが、
貧困にあえぐ農民に、自然保護なんて
念仏ほどの価値もないだろう。
たぶん、自然保護を真っ向から反対する人はいない。
でも、なぜかそれを皆やらないのには、
それなりの訳がある。
それをやれば、今よりも生活がぐっと良くなるような
手ごたえがすぐには得られないからだ。
かつて、僕がボゴールで学生をしていた時に、
ある人から、
「環境保護は、経営的な話になるとどうしても弱い。それは義務としてやらないといけない時もある。やる方にとってすべてが楽しいことなんてないんだよ」と教えてくれた方が居たが、
僕はそれではやはり先には進めない気がする。
この社会的ジレンマを抜け出すには、
その営利活動を行うことで、全体の問題解決につながるような
社会的起業が必要なのだと思う。
だとしたら、倫理的な問題だけではなく
(たぶん、それはもう議論し尽くされている)、
それをやる人たちにとって、もっと活力ある営利活動でなければ
魅力的じゃないのだ。

だから、僕は彼に宿題を出した。
バナナのプランテーションにならずに、
ワント君の言うアグロフォレストリーになる道を
この夏休み(座学の前期と後期の間)中に
レポートにして出してもらうことにした。
何が出てきたかは、またその時に記録しよう。

関連記事
Comment
Trackback













管理者にだけ表示を許可する

Comment form

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

プロフィール
05 ≪│2020/06│≫ 07
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
カレンダー(月別)
カテゴリ
月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

メールフォーム

Page Top

Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ