インドネシア研修生の話もたまにはしよう。
今学期(4月~7月)に開講した座学に
「地域開発論」というのがある。
社会的起業の要素を含みつつ、
農業分野で起業しようという授業。
研修2年生の授業。

毎回同じような事例を取り上げているのだが、
今回は、すこし切り口を変えてみた。
これまで社会的起業というのが曖昧だったので、
そちらの視点から、事例を比べてみた。
事例は、
上勝町の「いろどり」、
内子町の「からり」、
そして、「和郷園」。
この3つの内、いろどり以外は
その関係者から話を直接聞いたことが無いので、
資料(主にDVDや本)を元に分析をしたので、
実際のそれと当てはまらない部分もあるかもしれない。

さて、
僕らは常に何かの問題を抱え、
そしてその問題の解決法を探している。
かつて、協力隊としてインドネシアに赴任していた時に
インドネシアの農民の語りの中で良く出会ったのが、
「行政が悪いから」という政府依存型のセリフ。
問題が解決しないのは、行政がそれを行わないからだ、という意見。
まぁ、ある程度それは当てはまっているのだが、
動かないものを待っていてもしょうがない。
その後、大学院に留学した時は、少し事情が変わって、
NGOが無数に出現し、行政サービスの一部を大なり小なり
担い出していた。
社会の問題を、NGOが代わりに解決し始めていたのである。
それでも多くのNGOの友人たちは
資金確保に苦しみ、
ドナーの意向に左右されながら活動をしていた。

社会的起業は、NGO寄りなんだろうけど、
よりビジネスを意識させる。
ある特定のビジネスが成り立つことで、
それに関わる社会問題が解決されるという特徴を持ち、
そのビジネスを対象に銀行から融資を受けるだろうが、
どこかに政治色&宗教色を帯びたドナーが居るわけでもない。
(そういう場合もあるだろうけど、この場合は考察に入れない)
より自由な立ち位置だと感じる。

こういった考察の場合、
インドネシアやその近隣の方が事例が多いのだろうが、
僕の能力不足もあって、今回も日本の事例で
考察をしてみた。

さて、いろどり・からり・和郷園の分析だが、
ざっくり行うことにしよう。

いろどりは、地元JA職員だったカリスマ代表(横石氏)が、
高齢者でも参加できる新しい市場を求め、
つまもの市場のニッチを開拓した話。
関係者の多くが、始めからその市場の可能性は信用せず、
この代表のリーダーシップに成否がかかっていた。
現在(資料の現在)では2億円を超える売り上げあり、
多くの高齢者(特におばあちゃん)が参加し、
老いを活き活きと過ごす場の提供にもなっている。
「高齢者が5割いるというのであれば、その5割の人の出番を作ってやればいいんですよ」と語る横石氏の言葉は重い。

からりは、内子町の行政が開いた農家との勉強会の中で、
直売所の開設へと向かった事例だが、
直売の開設に、農家自身が出資者となったのが、
括目に値する。
いわゆる行政主導の参加型開発のような事例。
ただ実際に農家自身も出資することで、
直売所経営に直接かかわり、自分の出荷する野菜だけでなく、
直売所を含めた内子町の農業環境すべてを見渡せるような
機会を創り上げられたのが素晴らしい。
自分の作物だけでなく、
直売所をどうすれば盛り上がっていくかの視点も
各農家の語りに随所に見られた。
出荷農家同士の争いやいざこざが絶えない
行政主導もしくはJA主導の直売所とは、
やや趣が違うように感じた。

そして、和郷園。
木内博一氏が、トラック1台で始めた都内スーパーとの産直。
そこに周りの農家も巻き込みながら徐々に大きく商売をしていく。
流通の問題を、自分で運び、自分で売ることで解決しようとした。
その経験から、野菜の栽培現場と販売現場のギャップを感じ取り、
カット野菜などの加工業に力を入れ、
無駄なく野菜を食べてもらえるような提案をしている。
この場合、和郷園は株式会社にすれば、
より儲かるのだろうが、そこを農事法人組合のままにしているところが、
木内氏の参加農家に対する哲学を感じた。
「誰も脱落者を出さない」と話していた彼には、
金儲けというよりも、この地域に必要なビジネスとは何かを
考える姿勢があった。

いろどりは行政主導であり、
からりは行政型参加型開発。
そして和郷園は、完全なる民間の活力。
これらは、その地域とその経緯の違いであって、
どれがいいというわけではない。
ただ、どれにも共通していることは、
それぞれのビジネスがうまく回り出すと、
それに関わっている人たちの持つ問題を解決していくという事。
それはただ単に金銭面でというわけじゃない。
社会的起業と呼ぶには、若干、適切じゃないケースも
見られるが、少なくとも何かの問題解決のために
起こしたアクションが、そのビジネスにつながっているという点で、
考察に値する事例といえよう。

これらの3つの事例を研修2年生は、
DVDなどで見て、レジュメを作り、プレゼンをしてもらった。
これらの事例の成功のカギを分析し、
そこにあった問題をどう解決するビジネスにつなげたを
一緒に考えてきた。
この講座の最終試験では、2年生にプレゼンをしてもらった。
彼の故郷で、彼が帰国後の夢として持っているビジネスが、
どう地域開発につながっていくかのプレゼン。
次回は、その2年生の最終試験を記録しよう。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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