有志による勉強会の記録をしよう。
参加者は毎回10名前後だが、
いろんな方々が来てくれるようになった。
初めは新規就農者ばかりだったが、
県内でもリーダーシップを発揮している若手農家も
ブログを見てか、参加してくれるようになっている。
農家だけでなく、大手仲卸の社員も参加して、
ますます議論に幅が出てきたように思う。
我こそは!と思う方、いつでもおいで。

今回は、6月6日の記録。
発表者は、酒井君。
読んだ本は、これ。

宇根 豊 著 『有機農業の技術思想』 農業と経済2009年4月号より


技術や科学には思想がある。
たまに、それらは道具としてとても中立で、
それを利用する者の社会的・経済的・政治的要因で、
中立性を失うと主張する者もいるが、
その技術と科学が生まれてきた文脈と意図があるかぎり、
それらには何らかの思想が、初めからまとわりついている。

さて、宇根氏は小論考の中で、
農業労働が近代化することへのアンチテーゼとして
有機農業というものが誕生したが、
その技術は認証化されて瑣末なテクニックの問題として
括られてしまったことを批判している。
その上で、近代化精神の中で有機農業を捉えることに異議を唱え、
自然を把握する技術として形成していくことを提唱している。

無農薬・無化学肥料といった方向への技術ではなく、
自然を捉え、理解するための眼差し。
それが宇根氏の言う有機農業の技術思想なのだろう。
有機農業が生まれてきた文脈からすれば、
僕も同感である。

だが、今の有機農業の技術は、
2000年に日本農林規格(JAS)の中で認証を
受ける必要が出てからは、
その思想が一変した。
近代思想への批判性は消え、
決められた規格をどう合格するかに焦点が変わった。
そして表示を受けて、有利に販売できる差別化と相まって、
完全に近代思想の中に組み込まれてしまった。
宇根氏が嘆くのはそこだろう。

でも、僕らの方向性は、
どこかの時点でガラッと変化するものなのだろうか。
多くの思想論を読んで、最近は疑問に思うことも多い。
大航海時代に資本主義が形作られ、
イギリスで産声を上げた産業革命から近代化思想が生まれ、
それまでの世界とは一変したような
イメージの本は多いが、そんなこともあるまい。
たしかに、そこにコモンズとしての価値だったものを
勝手に取ってきては売りに行った二宮金次郎は、
現代では偉人として語られるが、
その時代のその周りの人からは
理解しがたい変人でしかなかったのだろうけど。
(金次郎が里山から薪を取ってきては街に売りに行く話)

でも連続した歴史の中で、
人々の現状打破と問題解決の力が、
次のフェーズを作ったともいえる。
瑣末な認証技術論になってしまったと有機農業を嘆く一方で、
そのアンチテーゼのおかげで、
慣行農業がより自然に寄り添う、
より人体に危険の少ない資材を使う方向へ向かっているのも事実。
有機農業と慣行農業は、もはや2項対立的ではなく、
その境界は限りなく曖昧でしかない。
すべてをフラットに変えていく近代性(モダニティー)は、
ここでもしっかりと生きている。

宇根氏の情念は解る。
自然への眼差しだ、と言うが、
これを読んでプレゼンした酒井君は、
上手くそれを言葉で理解はできなかった。
今、必要なのは、有機農業が本来どういうモノかを
議論することではなく、
また、2項対立的に存在させるために
次の候補を立てることでもなく(たとえば自然農法)、
僕らは、その情念を練り込んだ新しい分野を
確立させることじゃないかと思う。
宇根氏の論考は、僕も共感するし、
多くの農業者やその関係者が共感するところだろう。
だのに、その力が発揮できないのは、
その想いを形にできないのは、
その情念を一つの新しい地平として開拓できていないからだと思う。

今後の宇根氏にそれを期待したい。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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