新聞を読んでいて、最近違和感があるもの、
それは大飯原発の「安全性」。
安全性が確保できたから稼働させる、という一方で、
いやいやまだまだ安全性が確保できていない、と反論する。
なんだかまるで「安全性」が焦点になっている。
その議論の方向性がナンセンス。

安全性の議論が先行するのは、とても危ない。
なぜならこの議論の応酬は、
あたかも安全性を高めていけば、
リスクは無くなるという「ゼロリスク」が
存在しているような、
そんなイメージを人々に与えるからである。

たぶん、原発を稼働させたい側は、
議論を安全性に収斂させることで、
半ば、その目的を達成できたのだろう。
そして、本当は稼働した方が良いと考える人も、
それぞれの立場上、もろ手を挙げて賛成できない人も、
安心して反対の議論が出来るようになるのである。
なぜなら、「安全性」という議論を積み重ねることで、
ゼロリスク神話を再び社会的に築き上げて、
どこかの時点で稼働に賛成できるから。

僕は農業を営みにし、
その中で、食の安心安全について考えてきた。
そこでの議論では、ゼロリスクなど存在しないことを学び、
そしてその議論の目的は、
僕らがどのリスクだったら付き合っていけるのかを
話し合う場だということを学んだ。

だから、農薬のリスクは
急性毒性や慢性毒性、環境への影響も含めて
議論されており、その中でどのようなリスクなら
付き合っていけるかも含まれている。
しきい値の設定をどう扱うかなどで
やや賛成できない点もあるのだが、
おおむねそのリスクは受け入れられると
僕は思っている。

リスクがゼロなんてものはどこにもない。
必ず、リスクがある。
もちろん、安全性を高めていけば、
リスクは低減する。
だが、絶対にゼロにはならない。
農薬の場合、その種類は多種多様になっており、
一概にすべてがとても危険なモノとは言い難い。
天敵昆虫も農薬登録されているので、
それ自体も「農薬」に入るし、
デンプン糊や重曹と同じ成分のモノも
農薬登録されていて、その安全性は非常に高いといえる。
(といっても、重曹やデンプン糊を大量に食べれば死んでしまうけど)。

つまり農薬の場合は、安全性を高めることは、
人間や環境への毒性を低くすることになる。
この議論の場合、安全性を高くすればするほど
僕らへのリスクは低減していく。
では原発はどうか。

リスクは必ずある。
最悪の事態がフクシマだ、って僕らは経験した。
絶対壊れない、絶対安定して停止できるなんて議論の
「絶対」はゼロリスクの考え方で、
そういう方向ではダメなんだ。
いつかは必ず起こる自然災害に対して、
あるいは壊れてしまうであろう原発のリスクに
僕らは向き合えるのかどうかの議論が先であるべきだ。

電気が足りない、だからしょうがない。
こんなインタビューの声も新聞に紹介されていた。
電気と広大な廃墟のリスクは、並列して対峙させて
考えることができるリスク&ベネフィットなのか?

僕の農のスタイルは、この宇宙でも至極珍しい
「土」を資源として活用するところにある。
スプーン一杯に何億もの生命を含み育み、
崩壊と形成のダイナミズムを繰り返す「土」。
その偉大な土の性質を利用させてもらいながら、
その生き物である土を育みながら、
僕は農業をしている。
有機物をふんだんに投入し、
しっかりとした土づくりをして、その土が作物を育てる。
そんな自然のサイクルに合わせた農業は
放射能物質(セシウムなど)の餌食になりやすい。
自然の循環にセシウムが入り込んで来たら、
次から次へのその循環の中で汚染していってしまうからだ。

たとえ、実際の数値がどうであれ、
原発のリスクが実際に起これば、
社会的な差別を受けることは、
僕らはフクシマの件で良く解った。
それもこの場合のリスクの一つなのだ。
動かさないとしょうがない、と言っている人たちは、
原発のリスクが実際に起こった場合、
社会的な差別を絶対しないという信念を
はたして持っているのだろうか。

それらのリスクの議論はどこかに置いてきぼりなまま、
そのリスクをみんなが真正面から受け止めて
「しょうがない」とも思っていないのに、
「安全性」に特化して、
そして電力不足という脅し文句を前面に出し、
僕らの思考を奪い取る議論をみんながやっているように、
僕には思えてならない。

あなたは、原発のリスクにきちんと目を向けていますか?
そのリスクに付き合っていけますか?
あなたの家族や子供や孫にまで、
そのリスクに付き合わせても良いと思っていますか?


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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