たまには研修プログラムの授業の記録をしよう。
後期の授業の「農業とグローバリゼーション」という講義で、
「おいしいコーヒーの真実」というDVDを見た。
あらすじはこちらのリンクで)

さて、このDVDのメッセージは一体なんだろうか?
富のかけ離れた映像に圧倒され、
メッセージと本当の意味での解決策は、
良くわからないまま、という人は多いだろう。
事実、研修生たちも、日本語情報ということで
苦労があっただろうが、
問題の核心には近づけていなかった。

コーヒー1杯330円の内、エチオピアコーヒー農家が
手にする収入は、3円。
複雑かつグローバル化した市場流通の中で、
コーヒーを楽しめば楽しむほど、
途上国のコーヒー農家が虐げられていく、
ような作りの映画。
「搾取され続けている」というのが、
作り手のメッセージなんだろうとは思うが、
どう搾取され続けているのかがあやふやで、
それが問題の本質にまだ近づけていない。

コーヒーは嗜好品だ。
全世界中の人が楽しむのに、栽培できるのは熱帯地方に限定される。
コーヒーを販売目的で栽培する行為が
すでにグローバルなことなのだ。
全世界規模的に、なが~くのびきったバリューチェーンの中で
幾度となく売買を重ねる。
そのプロセスの中で、
コーヒーは生産され、選別され、ブレンドされ、加工され、
そして最後にサービスと共に消費される。

問題の核心は、
コーヒー生産者が、コーヒーの「価値」に近づけないという事だろう。
世界規模の市場流通からでは、
どのように好まれて、
どういうサービスと共に、
どのように消費されているかの
刺激は受けられない。
330円の内、コーヒー農家が3円というのは
金額的に不条理なわけじゃない。
生産するだけでは、
それ自体にはまだ価値が付帯していないという事なのだ。
そして真に不条理なことは、
その情報からマージナルに置かれて、
一切知りえない状況の中で貧困を強いられているという事であろう。

映画では、
タデッセという協同組合の人物が
農家の所得向上のために奮闘している。
情報をどこまで共有しているのか詳細はわからないが、
少なくとも「価値」という情報から
遠ざけられていた農家に、その情報を届けようと必死なのはわかった。

コーヒーは、そのままでは雑味も多い。
乾燥と選別がかなり重要だ。
そして、ブレンドすることで深い味わいにもなる。
ローストの加減も、かなり重要だ。
さらには提供される場所。
僕らはのどが渇くからCaféでコーヒーを飲むのだろうか。
音楽やすわり心地の良い椅子、落ち着いた店内の雰囲気、
リラックスして飲めるようなサービスと共に、
僕らは一時の休息をそこに得る。
それらすべてが、330円の中に凝縮されている。

この情景すべてがコーヒーの値段。

この風景すべてをコーヒー農家はどこまで
理解して生産しているのだろうか。
たぶん、ほとんどないだろう。
それは、
無知な状況に落とし込められてしまって、
情報にアクセスできなくされているからなのだ。
長くのびきったバリューチェーンの中で、
情報と市場に自由にアクセスできない農家。
これがグローバリゼーションの一端なのである。

希望は無いのだろうか。
いや、そんなことはない。
生産する側が、その価値の情報を得て、
それらの技を自分たちの生産物に付帯できれば、
330円の内3円という状況にはならないはずだ。
タデッセの目指すところはそこにあるのだろう。
フェアトレードの目指す点もそこにあるはずだ。

研修生への僕からのメッセージは、
君たちがタデッセであれ、ということ。
もしくはタデッセのような奴と一緒に仕事をせよ、ということ。

中間搾取の多くは、情報から取り残されることで発生する。
だから、君たちは
市場の価値をダイレクトに仲間の農家に届け、
生産現場の価値をダイレクトに市場と消費する側に
届けられるような農家になれ。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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