2年生のタタンは、
来年の卒業論文を何にしようか、
悩んでいる。
前回のプレゼンは、完全に失敗だったことは、
以前に記録した通り。
それは、
自分がやりたいことではなく、
無難にできそうなことを安易に選んでしまったためだった。

そこで今回は、彼は自分の関心があることを
とりあえずみんなの前で発表することにした。

彼の関心はやはり「果樹」。
果樹をやりたい、と月間レポートでも散々言ってきた。
だが、僕の農園では果樹が無い。
自家消費用で申し訳ないほどの柿とイチジクはあるが、
(一部は販売してもいる)
彼に果樹が何たるかを説くほど、
僕に知識も経験もない。
それに彼がやりたい果樹も熱帯のものばかりで、
それを題材にしたところで、
栽培が不可能どころか、
栽培技術&経験そのものが日本にはほとんど無いのだ。

そういう背景もあって、
彼は、ここで出来そうなことをと、
ある意味それは彼の優しさなのだろうけど、
前回のサツマイモという答えになったのだろう。

今回のプレゼンでは、やはり「果樹」をやりたいという。
ただ、実際の栽培技術ではなく、
日本の果樹農家の販売や市場を学びたい、とのことだった。
テーマは大きいが、彼の本音がやっと聞けた気がする。

では、
そもそも彼の地域はどんな果樹経営なのだろうか。

果樹経営と言っても、大規模果樹園というほどではない。
様々な果樹を場合によっては数本単位ずつ所有していることも
少なくない。
多い人でも数十本単位の果樹。
主となる作物は、「米」だと彼は言う。

ということは、米の方が売り上げは上か?
でも、どうやらそうではないらしい。
売り上げから見れば、米よりも果樹が多いとか。
なぜなら、
米はどちらかと言えば食用で、余れば販売するとのこと。
一般のインドネシアの農家の戦略と言って良い。
果樹は、換金目的で現金収入のためだとか。
では、どうして主となる作物は米なのか。
食べることを度外視して、
生産した米を全部売ったとしたら、
果樹よりも多くなるのだろうか。
タタンの答えは「否」だった。
やはり果樹の売り上げの方が上だという。

じゃぁ、どうして主となる作物が米なんだ?
その意識はどうなってるんだ?
ここまで来ると、そもそもの彼の卒論からずれて
僕の興味に突っ走っているようにも見えるが、
主体に寄り添いながら、その主体が見る風景を
一緒に眺めることを旨にしている僕には、
彼の卒論とこのやりとりは全然ずれてはいない。

彼の意識に近づくために、
ちょっと意地悪な質問をしてみる。
「じゃぁ、米を作っている田んぼ全部に果樹を植えたら?果樹の売り上げで、食べる米を買えばいいじゃん。もっと儲かるぜ」と僕。
するとタタンは、少し迷いながら、
そして言葉を選びながら答えてくれた。
「う~ん、でもやっぱり米を作ります。自分で作る方が美味しいし、安心だし。他人から買うと、その米が今年のじゃなくて去年やそのもっと前の米が混ざっているかもしれないし。それと作り手がどんな農薬を使っているかわからないじゃないですか」。
そうか、米の流通上の問題もあるのか。
そして、安心なものを食べたい、という意識も萌芽している。
インドネシアでも頻繁に食品偽装や
認可を受けない添加物騒ぎがあるので、
そういう意識は当然か。

しかし、古米や古々米を混ぜて安価な米や利ざやを増やそうというのは、
どこの国の米業者も同じというわけか。
ブレンダ―達の腕の見せ所は、
くず米や古米を混ぜても、
味品質をあまり落さないところにあるんだろう。
技術のベクトル自体が、
何か大きく間違っているように
感じる、というのは余談。

さて彼の話に戻ろう。
「それに田んぼ全部で果樹をすると集落から遠い田んぼでは、泥棒が多発します。それに集落の近くでなければ収穫物の運搬の問題もあり、やはり難しいですね」と彼。
然も有らん。
果樹の盗難は、日本以上だし、
日本のように農道がほとんど整備されていないので、
(土地改良がまったく行われていない)
収穫物の運搬が非常に大変なのだ。
村にも車は増えているが、
畦を歩いてしか運搬できないケースがほとんどなので、
農民の労働は想像を絶するほど過酷なのだ。

ちょうど彼の所有する畑で、集落に近くて、
水も豊富にある場所があるらしい。
だから、彼は、そこを果樹園にしようと
考えている。

つづく
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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