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今年の4月に来日した研修生のクスワントは
まだ雪を知らない。

配達の車の中での話。
車道の真ん中から融雪の水が、出ており、
それを見た彼は、
「雨が多すぎて、道路から水が噴き出しています。洪水です」
と騒いでいた。
たしかに排水能力をオーバーした場合、
そこここで水があふれ出ることはある。
インドネシアでは、そう珍しくない光景だ。
でもそれは排水機能がマヒしたわけじゃなく、融雪のための放水だった。
まだ雪は降っていないので、たぶん点検だったのだろう。
その話をすると、彼は興味深そうにその水を眺めていた。

その彼、突然、
「あの水って飲めます?」
と聞いてきた。
飲み水じゃないだろう。それに飲めるとしても、
車道に流れる水を一体彼はどうするつもりなのか。
さらに彼。
「雪を解かすわけだから、温泉?」
そんなことはない。冷たい水だよ、と答える僕。
水が冷たくても、雪は解けるもんだよ、ワント君。

さらに続く融雪放水帯を眺めながら、彼は、
「あれがシロップだったら良いのに」とつぶやく。
雪をカキ氷かなにかと勘違いしているらしく、
融雪の水がシロップだったら、その雪がそのまま美味しく食べられる、と
勝手に想像したようである。
「美味しい雪になれば、みんなが食べて雪は無くなるから、まさに融雪ですね」
と彼は嬉しそうに冗談を言っていた。

常夏のインドネシアでは雪は降らない。
その雪がもうすぐ、降ってくる。
雪をまだ見ぬ彼はとても待ち遠しいようだが、
2年も3年もいるインドネシアの子たちからは、
雪が待ち遠しいどころか、
雪に対して呪いの言葉しか出てこない。

クスワント君、
今を楽しみなさい。
もうすぐ君も雪をそんな風には見られなくなるかもしれないから。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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