インドネシアの研修生の話。
前期の授業の最終試験の真っ最中。
今回は、タタンのプレゼン。
タタンは、クスワントの地域でのポテンシャルレポートを元に、
ビジネスプランを立ててもらった。
授業でのポイントを踏まえつつ、
それでいて、そこから自由にはみ出しながら、
地域が発展していく社会的起業のプラン作り。

タタンは、クスワントの地域のポテンシャルレポートに加え、
独自にネットからの情報を得て、
クスワントの地域に3つの有力品目を挙げた。

サツマイモ
砂糖ヤシ
丁子
の3つ。

クスワントの地域では、もともとサツマイモが有名。
とても甘い品種があり、その栽培が盛んなのだ。
日本で言えば、糖度が普通のさつまいもの2倍ある「安納いも」に
良く似ているのだが、クスワントの地域のいもは、
それ以上の甘さをもつ。
そのイモを近くの幹線道路沿いで直売しようというのが
タタンのプラン。
インドネシアではよく、道路沿いに屋台を出して
野菜や果実の販売を目にすることがあるが、
タタンのプランは、それとは違っていた。
駐車場とトイレを完備した、ドライブイン型のお土産屋を建てて、
イモを入れる袋や竹籠などにもこだわって、
販売しようというプランだった。

次は、砂糖ヤシ。
インドネシアの砂糖のほとんどがサトウキビから作られている。
だが、一部、この砂糖ヤシ(aren)から取れる、
アレン砂糖というのが出回っている。
インドネシアの子たちに言わせると、
サトウキビから取れる砂糖は、「美味しくない」だそうだ。
だが、このアレン砂糖はとても美味いという。
たしかに、僕もインドネシアではお気に入りの砂糖で、
お土産にたくさん持って帰ってきたこともあった。
コクと香りが良く、料理にはもってこいの砂糖。
これで入れるコーヒーが好きで、
ボゴール農科大学に留学中は、そればっかり飲んでいた。
そのアレン砂糖、クスワントの村では
かつて生産が盛んだったとか。
それは元々、その村にたくさんの砂糖ヤシが自生していたことによる。
しかし、今では森林を畑に切り開いたり、
人の居住地が増えたりで、砂糖ヤシの植生が減り、
アレン砂糖の生産は衰退の一途なのだとか。
タタンはこれに目をつけて、
クスワントの村のアレン砂糖生産復活をプランとした。
このプランで大切なのは、砂糖ヤシの栽培だろう。
だが砂糖ヤシは、その実から発芽させることがかなり困難で、
その苗の大量生産は、無理だと他の研修生も思っていた。
だが、もともと森林の緑化に力を入れていた団体に
就職していたタタンは、この砂糖ヤシの育苗も
かつての会社で手掛けていたという。
クスワントの村に、砂糖ヤシの育苗所を建て、
苗の生産と販売を行うというのが、タタンのプランだった。
アレン砂糖で有名だったので、
砂糖ヤシの苗は売れるだろうという考えらしい。

最後が、丁子。
インドネシアでは、かなりポピュラーな香辛料。
クスワントの村では、一部丁子栽培もおこなわれているので
価格的に安定しているこの丁子栽培を推し進めるのが
地域発展のカギとタタンは言う。
インドネシアでは、たばこに丁子を混ぜたものが
主流で、丁子の消費量は意外に多い。
しかもクスワントの村の近くに、
たばこ生産の会社があるのだとか。
そこに丁子を卸せばいいという、ちょっと安易なプランを
最後にプレゼンしていた。

このてんこ盛りのプランを10分のプレゼン時間で
やるので、当然早口かつ上っ面の内容だった。
僕は始め、とてもわくわくしながらプレゼンを聞いていた。
タタンの選んだ3つの品目が、どう関係性をもって
地域発展のプランになるのだろうか、と。
しかし、中身はただ3つを並列したにすぎなかった。
それが有機的に相互補完することもなければ、
相乗効果を得ることもなかった。
まぁ、別にそうである必要性はないのだろうが、
3つである必要性も感じない。
なんとかく締りのないプレゼンというのが
率直な感想。

日本人有志の勉強会で得た知見から言えば、
地域ブランドに必要なのは独自性と統一性。
タタンのプレゼンには、その統一性がない。
そして3つも挙げることで、一つ一つの深さもなく、
どこかいい加減になってしまっていた。

また、アレン砂糖ではかなりいいセンスを見せてくれたのだが、
販売は、砂糖ではなく、ヤシの苗にとどまっているところも
とても残念。
砂糖ヤシの育苗所を建て、砂糖ヤシの里として
伝統的なアレン砂糖の販売に力を入れた方が、
僕には面白いと思えてしまう。
育苗所の存在は、砂糖ヤシの苗を売ることよりも
それがあることでアレン砂糖を
他よりも優位に販売することができるシンボルになるのである。
できないと思われている砂糖ヤシの育苗に成功し、
もともと昔から有名だったクスワントの村のアレン砂糖を
伝統的な製法で復活させ、統一イメージを創り上げ、
その販売に優位性を持たせる。
どこにでもある、といえば、どこにでもあるアレン砂糖。
古臭い昔の砂糖といえば、そういう砂糖。
でも、この砂糖の持つ良さは、ちっとも古臭くもないし
昔でもない。
今の文脈でも、十分すぎるほど魅力的だ。

そういったプレゼンをしてくれたなら、と
タタンに対する期待が大きかった分だけ、
すこしがっかりした結果だった。

こちらの教え方が悪いのだろうけど。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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