若手有志の勉強会。
今回は、ジェラートカルナの店長・大和の発表。
本は、これ。
野原由香利 著 「牛乳の未来」
普段、酪農には目が向きにくい環境ではあるが、
こうしてプレゼンして議論してみると
なかなか興味深くもある。
新しい興味を喚起してくれた大和のプレゼンに
大いに感謝!

さて、本書とプレゼンの中身。
本では、酪農の神様と名高い斉藤晶氏の山路酪農に
フォーカスを当てて、
そんなに素晴らしい酪農法がどうして周りに広まらないのか
それを不思議に思った著者が、関係者をインタビューして回り
酪農が置かれた状況を浮き彫りにしていくというもの。

本書を読んでいないので詳しくはわからないが
農業の工業化について批判がやや入っているのだろうか、
と想像する。

大和のプレゼンでは、
山路酪農は、牛を舎飼いせず、放牧して牧草で育てる方式をとっている。
山際を切り開くが、完全に森を無くさず、
牧草を牛が踏み埋めていくという「蹄耕法」で牧草地を作っていく。
これでは、僕の完全なる予想だが、
牛乳量は減りそうだし、放牧と乳搾りの手間は半端じゃないだろう。
しかし、工業的な循環に陥ってしまっている酪農が
再び自然の循環の中に戻そうというと
こういう方法になるのかもしれない。

蹄耕法ではなかったが、
僕がかつて協力隊員の任地(バルー県)で見たものは
まさに、こうした放牧の酪農だった。
その時は、農業のビジネス化と所得向上を目指して
日本のように牛を舎飼いすることを指導しようとしたのだが、
様々な要因により(それは技術的な問題だけでもなかった)
実現しなかった。
余談続きだが、その後、僕らが行ったバルー県の調査では
日本の酪農(福井県)に研修に行っていた若者が
日本式の舎飼いを試行錯誤で導入し、
牛の肥育事業を成功させていた。
それまで放牧していた牛よりも
早く太らせることができることで、
農業を事業化することに成功した。
辛いと思う作業も軽減し
経営的にも安定する。
それが自然の循環と違うなどと
僕は軽率に批判することはない。

農業の効率化をめざして、海外の酪農法を取り入れる若者には
斉藤さんの飼い方は周りあまり浸透していない。
効率よく作業をし、経営的に安定し、
農業であっても、他産業と同じだけの収入を担保し
プライベートも充実させたい。
そんな気持ちを僕はよくわかる。
そして、斉藤さんのやり方が
一緒に働く者に、大きな負担を強いるのもよくわかる。

農業の工業化を批判・非難するとき、
その自分の置かれた立ち位置に自覚的でない人々が多い。
食べ物がどうあるべきか
「倫理的」といえば、なんだか道理があるようだが
それが農業に対しての「ステレオタイプ」や「偏見」だったり
自分の食べ物にあまり自覚的でないまま
その責任を他人にゆだねてしまっている人が
気分的な批判をするのを、僕はあまり気持ちよく見られない。

大和のプレゼンに触発されて、
この週末、
一つのビデオを見た。
「キングコーン」。
補助と工業化の道をひたすら突き進み
増産がゴールだ、という命題に
ごみを作っているんだよ、と語る農家。
余ってだぶついているコーンを
無理やり化学の力で甘味料に換え
すべての加工品を廉価に変える魔法。
飽食と糖尿病の社会を生み出す魔法。
完全に手詰まり農業の方程式を生きる
トウモロコシ農家と酪農家が印象的なビデオだった。
(日本の大規模米農家もそんな方程式に突き進みつつある・・・)

大和は飼料コストの削減と搾乳時間以外は放牧することで
作業時間の短縮として、この方法に魅力を感じているようだった。
それぞれが、どういう想いを描いて
その技術を採用し、発展させ、
そして農を創り上げていくのか、とても面白い。
ただ、それを採用することで、
そのずーっと先に待っているものはなんなのかに
僕らはもっと敏感になる必要もある。
目の前の労働軽減と効率化だけでは
僕らは、道を誤ることもあるのかもしれない。

斎藤氏の酪農法を、
「哲学は素晴らしいが、酪農としては無理」と
大和がプレゼンしてくれたが、
その言葉が、いろんな意味で、
僕の中でぐるぐるとまわり続けている。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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