農業を志す若手の勉強会。
今回の発表は僕。
特別参加として、農村ステイの体験でやってきた
早稲田の学生と先生(各1名ずつ)も参加。

プレゼンした本はこれ。
佐藤寛 編著 『フェアトレードを学ぶ人のために』 世界思想社
この本では、
フェアトレードについて、
さまざまな分野の専門家が解説している。
これからフェアトレードを学んでいこうという初学者に
丁度いい一冊。

とくにWTOとフェアトレードのお互いの言う
「フェア」の違いについても良く解説されている。

たまに、TPPの議論などでフェアトレードの話を持ち出すと
そもそも自由貿易は「フェア」を目指している、と
指摘されるのだが、その目指しているフェアが
誰にとってフェアなのかを考えると
やはり条件が揃わない(もしくは揃えることが困難)途上国の農民には
とてもフェアとは思えない実情も
この本でそれなりにはっきりしてくるだろう。

さて、この本を取り上げた理由は
TPPの議論もさることながら、
普段の僕らの農産物の販売戦略(もしくは交換関係)とも
よく似ているからである。

フェアトレードがどういうものなのかは
ここで詳しくは説明しない。
ただ、ポイントは
「最低保証価格」
「前払い金の支払い」
「ソーシャルプレミアム(社会開発目的の割増金)」
なのであろうか。
最低価格保証とは、乱高下する市場価格の中で
生産に見合った最低額を保証し
生産者の生活を成り立たせるという意図がある。
前払い金の支払いは、これはJAの米の場合と同じで
出荷前仮払金のようなものなのか。
これも生産中に資金が底につきやすい小農を
助ける制度ともいえるだろう。
そして、これが一番ユニーク。
ソーシャルプレミアム。
価格の一部に、その社会の開発目的の資金が組み込まれていること。
奨学金に使われたり、労働環境の改善に使われたり、
その社会の発展に関係する活動につかわれたりする資金。
これらの3つの要素を眺めていると
そこには、買うことでその社会を支えようという
意思を強く感じる。

この本の主題は、たぶんフェアトレードの主題と同じで
この貿易システムが、貧困削減につながるかどうか、なのであろうが
僕がこの本を読んで感じたことは、
当然、そのことにも思考を巡らせはしたが
それ以上に、その販売戦略と交換関係の在り方である。
ラベル認証においては、有機認証制度と同じような問題を
これから抱えることになるであろうし、
既存の交換関係のオルタナティブとしての存在自体は
流通の中抜きと同じ問題を抱えることになるのかもしれない(もしくはすでに抱えている)。
ただ、そこにあるコアな部分では、
やはりストーリー(物語り)をどう買い手に伝えていくか
どう、価値を共有していくか、という
僕らと同じ悩みを抱えているようにも見えたことが興味深い。

システマティックで合理的かつ効率性の高く
大量に物を交換できる現代のシステムは
時として、そこに付帯する僕らの想いや買い手の価値を無視している。
その中で、僕らが知らず知らずのうちに
搾取する側にされてしまっていることが
このフェアトレードの登場ともいえるのだろう。
同じようなプロセスとしてかつては有機農産物もあったが
それ自体が、すでに認証制度化され、自在に思考を逡巡できない状況にある。
フェアトレードが、貿易の主となる場合も
その周縁性を失い、制度化され、批判する力と思考の逡巡を失い
鉄の檻の中で自由に選択できる権利を得るであろうが
自在さは失われていくのかもしれないのは、まぁ余談。

生産者サイドで言えば
僕がやっている農業研修事業の卒業生が、本当に農業で食っていく場合
それを僕がどう支えられるかという面で、
このフェアトレードという考え方は面白い。
また買い手との交換関係から言えば、
流通の中抜きだと言われたとしても、
この読めない巨大流通の中で
自分たちのこだわりを伝えたり、
買い手の価値に敏感になって自分たちが変化しながら泳ぎ切るには
この手法はとても面白いと思える。

また、早稲田の先生が
そもそもそのフェアトレードを必要としている消費者はいるのかという
質問をしてくれたのだが、
それはどこかに存在しているのじゃなく、
僕らとの関係の中で、創り上げるものなのだろうと思う。

農外分野から、農業にかかわってくる人たちの中で
僕ら農民が想像もしなったやり方で、様々なものをつなげ
成功していく人たちがいる。
それはもともとそこに需要があったからではない。
もしかしたらマッチングでもないのかもしれない。
そこにあるのは、提案力。
もともとニーズがあるのなら、僕ら農民だって困らない。
でもニーズがあやふやだけど、既存のモノに飽きているのが
現代の消費者なんだろうと感じることも多い。
その中で、悩む僕らを横目に
様々な提案力で、次から次へと新しい交換関係を成り立たせていく
若者が、最近、周りに多くなってきた。
だから、フェアトレードも
そのニーズがどうとかいう議論はすでに
問題じゃないのかもしれないと思うこともある。
新しい交換関係のを創り上げていく一つに、
僕はこのツールを使っていきたいと
本気で考えている。


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拝読しました

国がTPP加盟の方へ旗を振るので、自分も意見を固めねばと思い、経済手法としては文化的で好ましい「フェアトレード」と並べて検索したらこちらのblogに着きました。ワタシの近在ではブランドを確立した農家さんなどはTPP歓迎だったりします。迷う。二つのフェアの違いとご指摘の点が自分のわかりたいところのようにおもいます。完全解放はその二つのギャップがなくなった時に導入するのがフェアなのでしょう。記事をありがとうございました。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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