水曜日は勉強会だった。
記録が遅くなったが、その内容を記そう。
今回の発表は、
我が農園の超新星・太田君。
彼は寡黙で、言葉を発する前に飲み込んでしまうので、
彼の考えていることがなかなか僕には伝わらないのだが、
こういう勉強会が
彼の農業への眼差しを僕に見せてくれるいい機会になっている。

さて、彼が選んだ本はこれ。
水口文夫 著「家庭菜園の不耕起栽培」。

不耕起栽培を続けていくことで、土壌条件がよくなり、
土の団粒構造も増え、微生物や小動物も増えていく。
雑草防除が大変だが、それも数年から5年続けることで
雑草の発生も抑えられる、としている。
まさに理想的な農法だが、
太田君は、手間がかかりすぎる農法として
大規模な農家には向かない、と言っていた。

僕も不耕起には興味がある。
非常に面白い農法だと思うし、
やり方次第では、土壌を豊かにし、
さらに、耕転の手間も省けるので
除草の部分で手間がかかりすぎるとしているが
そこさえクリアーできれば、面白いかもしれない。

勉強会では、
実践されている人の事例をいくつか紹介した。
まず、トレンチャーを利用して
畑全体の不耕起を実践している農家。
野菜の作付けをする箇所だけを
トレンチャーで軽く掘り、そこに堆肥などを入れて
野菜の苗を定植し、畑を作る。
全体は耕起せず、草を生やしっぱなしにする。
そのため、作物への病害虫の発生が抑えられ、
かつ土壌が肥えていくというやり方。
ただ、農地が草だらけになるので
すこし勇気もいる。

マルチシートを利用した不耕起農法もある。
一度だけ畝を立て、あとは不耕起する農法で、
畝が草だらけになったら、そこに黒のマルチシートを敷き
熱と遮光で、草を枯らす方法。
1週間から2週間で草は枯れるので、
枯れたらシートを外し、そこに野菜の苗を定植するという方法。
とうぜん、その後草は生えてくるので、
随時除草は必要。
初期の耕転と畝立ての手間が省けるので魅力的だが
その後の圃場管理はやや難しそう、というのが
僕の意見。

勉強会では、しっかりと議論できなかったが
ここで一つ、考えないといけないことがある。
それは、不耕起を論ずるのなら
まず耕起を論じないといけない。
なぜ、僕らは土を耕すのか?を。

耕起するのが当たり前になっている視点から
不耕起を論ずるから、なんだかその農法が特殊で
とても前衛的、もしくは先進的、はたまた伝統的、もしくは回帰的に
それぞれの人がそれぞれの視点でとらえるのだろう。
だから、見えにくくなるし、理解しにくくなる。
だから必要なのは、そもそもなぜ耕起しているのかを
考えることじゃなかろうか。
そうすれば、不耕起もしっかりと見えてくる気がする。

僕の理解と学問と経験での話なので、
もし間違っていれば、大変申し訳なのだが
耕起は、土壌中の栄養分を一気に植物に吸わせるための
とても効率の良い方法、と僕は理解している。
インドネシアや日本、はたまた東南アジアの各国のフィールドで
僕はさまざまな農業の形態を目の当たりにしてきた。
循環型焼畑もあれば、粗放的な伝統的農耕、
SRIの水田、不耕起の小規模落花生畑、
アグロフォレストリーに小農の昆作栽培などなど
さまざまな農法と、そのこだわりを見てきた。
その中で、耕起を考えるに、
それは地下層に追いやられて、
土壌団粒の中に閉じ込められつつある有機物の
有効利用が、一つあげられるだろう。
耕転することで、空気が土壌中に入り、
土壌中で団粒の奥底に閉じ込められた有機物の
分解プロセスが再び始まるのだ。
適度な水分と空気で、土の持つ養分の再分解を
促進することで、そこに植える植物に
その栄養を一気に吸わせようというのが
耕起の考え方なんだろうと思う。
そして、表土が薄く、分解の早い熱帯の文脈では、
不耕起や移動型焼畑による栽培が有利な場合も多く、
今でも、それを採用している農民も多い。
一気に分解を進める耕起農法では、
肝心なことは、有機物の再投入が出来るかどうか
が鍵になってくる。
それが難しい場合、不耕起農法の方が
有利とも言えよう。

不耕起を自然農の一部として捉えることで
それに対する眼差しに色眼鏡をかけてしまうことがある。
本当は不耕起の方が良いのに、
今の条件では無理だから耕起している、といったネガティブに
捉えてしまえば、土壌中のダイナミズムは理解できなくなる。
耕起・不耕起、どちらかに優劣があるわけじゃない。
僕ら農民の置かれた環境と文化的価値という
文脈が違うだけなのだ。

その上で、僕は不耕起の持つ利点を
自分の農業環境に取り込めないかを考えたい。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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