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水曜日に移動した勉強会。
参加者が結構増えて、現在、8名。
インドネシアの研修3年生がおまけで参加しているのだけど、
彼を入れると、9名となる。
わざわざ三国の方からも、3名参加してくれていて、
短い時間ながらも、有意義な議論になっていて
楽しい。

そして、僕にはここで語り合うすべての事が
僕の今の農業のやり方を問われているようで、
たぶん、今、僕がいろんなことで悩みながら、
そして、走りながら考えているからだろうと思うけど、
だからこそ、ここで語り、ここで聞くすべてが
僕を肯定したり、僕を否定するのだろう。

今回のプレゼンは、
林君の番。
この4月に新規就農したばかりの彼は、
人生を農業に向けさせてくれた本、
杉山経昌 著 「農!黄金のスモールビジネス」
で、プレゼンをしてくれた。

農業に全く関係のない業種(外資系企業)から
農業に転身した著者が、以前の仕事で培った手法を取り入れ
徹底的なデータ化と情報化、最適化をもって
農業のこだわり経営を解説。
補助金によって方向性を左右されないために無借金経営を提唱したり、
農業で成功するためのベストミックスを
「経営管理:マーケティング:物作り=40%:40%:20%」と
考えていたりで、なかなか独特の哲学を持っているようだ。
大規模農業よりも小規模経営で、
しかも、自分の時給を3000円と設定しており
それ以下の仕事はしないという、
ちょっと???と思うところもある著者。
そうそう、雇用もしないらしい。

この著者から影響を受けて、
林君は、サラリーマンの時に培ったビジネススキルを駆使して
自分が正しいと思えることを
自分の責任で行っていける農業に
今後の未来を描いているようだった。

さて、この本。
林君のプレゼンはわかりやすかったのだが、
実際に読んでないので、なかなか議論しにくいのだが、
上記の内容は、
そのほとんどを、僕の批判のように僕には聞こえてくる。

無借金経営→ええ、僕は生命保険で返せないほど借金がありますよ。
物作り20%→僕はたぶん、60%以上かなぁ。
小規模経営→なし崩し的に大規模化へ。
雇用はしない→人ばかり集めちゃって、これからどうしようか。
時給3000円以下の仕事をしない→お金にならない仕事ばかりやっております!

と、まぁ、みごとに逆。
でもこれは一つ一つに僕なりに反論もある。
無借金経営だが、元手がまったくなかったので
借金しないと始められなかった。
大学の時にやっていたバイトが
人生で一番給料をもらっていた時代で(月に40万くらいあった時も)
それ以降は、協力隊で月々3万円程度だったし、
留学中も奨学金はあったけど、それでも8万円くらい。
そんな風に20代のほとんどを過ごしてしまった奴に
資金なんてほとんどない。
だから、著者のように退職金をたくさんもらって
農業を始めた人とは違う。

つぎに物作り20%について。
マーケティングが40%と著者は言っているが、
僕に言わせれば、マッチングということだろうか。
シェフやバイヤーの要望に応えようとすると、
物作りが20%では、干されてしまう。
直径4センチのズッキーニや
22センチのルッコラ、とセンチ単位で注文が来ることがある
僕の農園では、20%程度の物作りのスタイルでは
とてもやってはいけない。
マッチングをマーケティングと捉えるか
物作りと捉えるかによって、パーセンテージは
変わるのだろうけど、少なくとも僕のスタイルは
僕のスタイルとして機能はしていると思っている。

小規模経営と雇用しないについて。
家族経営を否定はしないし、その素晴らしさも知っているが、
農家長男として、家族経営の甘さや辛さは
これまで、いやというほど見てきた。
そしてそれは、自分の家族だけでなく、
いろんな国のいろんなシーンでも同じものを見てきた。
農家の長男からスタートした僕は、
その存在そのものを消し去りたい思いから、
初めから家族経営を否定して出発している。
広島の中川農園を見学してからは
雇用とある程度の規模の農園が、地域を活性化させている事例を
目の当たりにして、僕自身もそちらへシフトしたことは
否定できない。
インドネシアの研修生のプログラム継続と
帰国後の支援を考えると、経営規模の拡大はやむなしだった。
そもそも著者とは出発点も
そして目指しているゴールも違いすぎるという事か。

時給3000円以下の仕事をしない、とは
なかなかクール。
だけど、これは眉唾。
時給計算はある程度可能だろうし、
たぶん著者が言わんとしていることは、
農作業の最適化・合理化なんだろうと思うけど
その最適と合理の基準となる価値をどこに置くかが
問題にもなってくるんじゃないだろうか。
僕も手を抜ける所は抜くが、
自然はなかなか正直で、
手を抜いたところから、問題が湧き上ってくることが多い。
時給3000円以下の仕事をしないなんて言うと
販売金額の直結しない仕事をしないって聞こえてくるのだが
集落の仕事や共同作業なんかは
やらないってことなんだろうか???
すべてが販売につながるわけもないし、
圃場を農作業に最適で安全なものに保つための
お金にならない作業はどうなんだろうか。
販売じゃなく、その作業をしなかった場合の
損失金は計算できるので、
それを時給換算して3000円というのなら、
集落での共同作業による清掃作業も
十分、3000円以上って言えるけどね。
(その村に最悪居られなくなる状況を損失計算すれば)

なかなか面白い。
いろんな人の立場の考えがあるから
自分が揺らぐし、揺らぐ自分を眺められる。
揺らいだ分、そこに亀裂が入ったりもするが、
それらは、自分の次の課題だったりもする。
これからも、僕や参加者に亀裂と揺らぎが生じるような
そんな勉強会を主宰していきたい。


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「農!黄金のスモールビジネス」読みました

「農!黄金のスモールビジネス」読みました。

まったくの無から農業に入る人には、ぴったりの本なんではないでしょうか。

ただ、大企業と中小企業があるように、それぞれの生き方がありますので、
それぞれの強みを最大限生かせばいいのかもしれませんね。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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