水曜日は、田谷ゼミ。
今回は、同じ集落の若手も若手、コニシくんが初参加。
いろんな人がポツリポツリとだけど
参加してくれるので、刺激になって良い。

さて、酒井君のプレゼンは
福井県立大学学長だった祖田先生の本。
その中の第7章と第8章をとりあげてプレゼンをしてくれた。

「中小都市と農村の結合」と「作業教育食農教育の思想から」の
2章を取り上げて話してくれた。

「中小都市と農村の結合」では、
一極集中を批判し、ヨーロッパの田園都市論を展開。
32,000人の都市に対し(面積は1,000エーカー)、
5000エーカーの農地が広がる規模の都市を最適としている。
数字の根拠はわからなかったし、
そもそもその「最適」は、自給率での意味なのか、
それとも景観論の中での意味なのか、
いまいち不明。
都市計画と農村開発の混同じゃなかろうか、と
僕はやや批判的に聞いていた。

都市計画の一環で、こうした田園都市論のようなものが
あることは以前から知っていたが、
農地の効率利用の方面での話では、
やや同調できるのだが、
農村開発の分野においては、
やはり都市が中心となって
農村を結んでいくという従来のモデルから
脱却できていないように感じる。
以前、開発学会で聞いた「農村計画」のほうが
僕には刺激的だったし、
これからの農村と都市の開発は
その方向で、もっと進んでほしいと思っている。

さて、議論の中心となったのは
「作業教育職能教育の思想から」の方だった。
本の詳しい内容は不明だが、
酒井君は、体験を通じて農業の素晴らしさを
広めていきたいとしていた。

だが、そこには2つの問題点がある。
一つは、経営の主眼をどこに置くのか、と
もう一つは、農業のテーマパーク化の必要是非、であろう。

僕らが日々行っている生産活動は、
とても子供たちにとって面白いと思えることではない。
事実、僕は幼少の頃から、家の生業である農業の手伝いを
かなりさせられてきたのだが、
それを楽しい記憶として持ってはいない。
多くの農家の子弟が、記憶しているのと同じく
それは辛く、やや屈辱的な部分を持っていたりもする。
その作業自体に、人間形成という意味で
僕は多くを学んだが、
だからといって、今ちまたで言われているような
軽い感じでの食農教育とは合致しない。

持続可能や生物多様性などのキーワードは
僕らの幼少の頃には、それほどメジャーではなかった。
それよりも、目の前にある農作物を
できるだけ早く、できるだけ正確に収穫することを
求められていたし、今も、それは変わっていない。
その厳しさの中で、多くを学ぶことは知っていても
それは家族という関係の中や
仕事として農園に、農業に、帰属意識を持ちながら行う中で
得られるものであり、
体験としては、多分、多くの人間が戸惑うのではないだろうか。

収穫体験といったイベントは、
多くの人は喜んでくれる。
でも中長期で研修に来る人たちの多くは、
うちの農園では、とても悩んで、そして戸惑っているように見える。
それを超えた先に、
さらなる農業のダイナミズムを感じられるのだが、
数日や数週間の実習では、なかなかそこまでは得られない。

言葉による説明で、なんとなく解った気にもなれるかもしれないが、
僕ら自身、言葉で理解しているというより
体と感覚で理解していることが多いので、
それを説明する力も不足しているし
それらを表現する力も不足している。

実は、これが次の問題である
農業のテーマパーク化の必要是非につながってくる。

それらの労働の意味を知るよりも
農業という表面の楽しみをテーマパーク化してしまうという
考え方もあろう。
事実、観光農園等では、客の満足度をアップさせるために
さまざまな仕掛けをしている。
それらの多くは、実際の農業の現場では
ありえないような形であっても。

知り合いの沖縄の農家は
完全にテーマパーク化して、田植えやサトウキビ植えなどを
1日体験で植えてもらう事業を行っている。
だが、圃場の管理はぜず、
帰った後に、その圃場は、次の体験のために
きれいに整理してしまうのだとか。
表面的ではあるが、体験という場を大切にして
そこでの満足感を上げる努力は惜しまない感じだった。

前回の勉強会でも、
農業のことを考えすぎているのは農家で
そのこだわりは、消費者にとっては、
案外、どうでも良い事が多い、と
ヤマトが指摘した通り、
体験という場での満足度は高くなければならないが
その場から離れてしまうと、案外
淡白な関係しか得られないのかもしれない。

最近の事例の中では、
観光農園でも作業自体を体験できるものも多いらしいのだが、
どこまで実際農作業として体験できるのかは不明。
やはりそれらもテーマパーク化していかないことには
やっていけなのだろうか。
それとも、参加する消費者の方が
農家に寄り添う形で、つらい作業の中に
労働と農業の素晴らしさに、短期間で触れることを
可能にしているところもあるのだろうか。

昨年きた早稲田の学生は、
そういう意味で少し変わっていた。
僕らの日々の農作業を面白いと言って、
体験の2日間が終わってからも
1週間アルバイトとして働いていった。
決して時給は高くなかったし、
夏の一番暑い時期だったので、とてもつらかっただろうに。

その学生の受け入れは、
4年前からやっているのだが、
去年来た学生以外は皆、とてもつらそうに体験をし
帰って行った。
それが普通なんだろう。
体験のテーマパーク化していない、
実際の労働の中で受け入れるのだから。

だからこそ、体験でやりたいという酒井君は、
経営の主眼をどこに置くのか、それ自体を問われることになる。

たしかに、僕の農園でも収穫体験はやっている。
それ用に圃場を作ったりもする。
それはある意味でこちらの気分転換だったり、
狡い感じで言えば、広告だったりもする。
当然、子供たちや食べてくれる人たちに何かメッセージをと思って
やっているのだが、でも本当の労働の喜びはそっちのけで、
最近はやりのキーワードを並べ立てて
伝えているようで伝えていない自分に
ときどき嫌になることも事実。

食農教育とはなんなんだろうか?
僕にはよく分からない。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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