第57回JA全国青年大会で
青年の主張の部で発表をした。

結果は、新聞にも出ていたので
ご存知の方も多いかもしれないが、「優秀賞」だった。
全国から6人が勝ち上がってきて、
最優秀賞の1人を除いて、あとはみんな「優秀賞」。
まぁ、参加賞もしくは残念賞といったところだろうか。

結果がどうであれ、僕はベストの発表をした。
話していくうちに、原稿に沿ってしゃべっているのではなく
なんだかその場で、そのセリフを思いついて話しているような
そんな不思議な感覚だった。
1500人居たらしいが、それでも緊張はなかった。
ステージの上は、前回の富山と同じく
広く、見晴らしのいい、とても気持ちのいい場所だった。
ただ、その時と違ったのは、
僕に、もっとメッセージを伝えたいという
自分でもわからないそんな力と気持ちがあったことだろう。

時間は10分4秒。
発表時間は10分だったので、4秒オーバーだったのだが、
採点基準から言えば、10分5秒から減点とのことなので
ある意味、時間一杯一杯使って話をすることができた。
あれ以上の発表は、たぶん、もうできない。
(会場がさらに広くなれば、あれ以上の発表になる可能性はあるけど)
なので、あの発表で「優秀賞」というのであれば
それを受け入れるしかあるまい。

結果発表後の
応援に駆け付けてくれた方々の脱力した顔には
本当に、申し訳なかった。
みんな、1位を信じてくれていただけに
本当に残念そうだった。
「僕の力不足でした」とただただ申し訳なくて謝って回ったが
今でも、何が足りなかったのか、僕にはわからない。

いろんな方から、
「今までの青年の主張とは全く違っていた」と評価を頂いた。
それを僕は大切にしようと思う。

今まで応援してくださった皆様、
本当にありがとうございました。
最後の最後に、「優秀賞」という、
なんとも決まりの悪い賞になりましたが
自分の発表とその内容には、自信と誇りを今でも持っています。
これも皆様からたくさんの応援を頂き
叱咤激励があってこそ、実現したことだと思っています。
応援してくれたみんなに伝えたい、というそういう想いが
僕にあんな大層な場でも、落ち着いて発表できたのだと思います。
本当に、発表の時間もそうですが、
それに至るまでのすべてのプロセスの素晴らしい時間を
ありがとうございました。



最後に、発表原稿を載せておこう。

以下、発表原稿

『地域を創る「場」と風土』 田谷徹

僕は露地やハウス施設で多品目の野菜を作っています。経営は家族だけでなく、雇用もしており、10数名でにぎやかに農業をしています。本格的に就農して、今年で5年目になりますが、それまではあれこれと人生の道草をしていました。その道草で得た雑感を、今日の主題にかえて話したいと思います。しばらくですが、お付き合いください。

僕は農家の長男として生まれました。だからというわけではありませんが、大学では農学部に進学しました。しかし実は、家業の農業を継ぐことはあまり考えていませんでした。僕にはある夢がありました。それは青年海外協力隊に参加することです。外の世界を知りたい、という強い欲求と共に、父や母、祖父や祖母の労働の姿に尊敬はしつつも、土地に縛られ、つらい肉体労働が続く家業にあまり魅力を感じていませんでした。

大学卒業したその年に、僕は青年海外協力隊に参加しました。任地は、インドネシアのスラウェシ島でした。その島の田舎の県に配属されました。配属先からの要請は、貧困な地域で村おこしをしてくれということした。そこでは僕は、高く売れる新しい野菜の指導や直売などを推し進めていきました。失敗の連続でしたが、海外での地域開発の魅力に取りつかれました。海外で活躍できる人間になりたい、と強く思うようになったのです。
協力隊から帰国後、僕はインドネシアの大学院に入学しました。それは次の海外プロジェクトに参加するための準備でした。ですが卒業後、内定を頂いていたプロジェクトを断り、僕は地元に戻って農業を始めました。それは大学院の最後の課題である修士論文を書き上げる時、僕にある変化が生まれたからです。

修士論文の調査は、JICA(国際協力機構)がインドネシアで行っていた農村開発プロジェクトのある村で行いました。開発の政策や援助がどういった影響を及ぼしているのかを現地の住民目線で調べるのが目的でした。国家政策や海外からの大きな援助という影響を受けて、それらが主導で地域が変わっていくことを想像していたのですが、現実は違いました。住民はただ受身で流されているわけではなかったのです。そこでは、開発の影響を受けながらも、自分たちの地域を自分たちで作る姿がありました。こうした調査をしていて気がついたのですが、地域住民にとって、外からの援助や政策は、とても大きなインパクトです。でも、それを紡いで、自分たちの地域を創り上げてきたのは、そこに住む人々でした。調査のインタビューの時に、自分たちの地域の歩みを自慢げに語る農家の方々は、僕の目にはとても素敵に映りました。自分たちの地域を創り上げてきた自信と誇りに満ちていました。

そのことに気が付いた時、僕の生まれ育った福井にも目を向けてみると、やはり当然のことですが、僕の地元にも同じような人々の暮らしがあったのです。過酷な労働ばかりに見えていた農業と閉塞を感じていた地元の農村の風景が、実はまさに今、地域が創られようとしているダイナミックな場であることに気が付いたのです。僕も同じような農民として、地域を創り上げていく存在になりたい。そう思うようになり、地元に戻って農業を始めました。

地域を創り上げる、といっても、では創り上げる地域とは一体何でしょうか。主体ある地域を極めて鮮やかに表現するときに、「風土」という言葉を用いることがあります。風土とは、その地域の主体的な文化であり、社会であり、そこに暮らす人々の思想だと思っています。「風土」とは風と土の文字で成り立っています。つまり風と土で出来上がっているのが、その地域の主体と言うわけです。土とは、地元の人間のこと。僕ら農民のことです。土地に根を張り生きている存在です。そして風は、よそ者。風が吹くように外部からやってきて、違った視点でその地域に関わります。土だけでも、風だけでも風土は出来上がらない。この二つがあって、初めて風土が醸成されていきます。土である地元の人は、良く地元を知っているような気がしますが、長年住み慣れた地元を固定的に見る視点からは、新しい発想は余り生まれてきません。その地域の常識にとらわれないよそ者は、全く新しい視点で、その地域を見るので、奇抜な発想が生まれることがあります。ただそれがそのまま地元に合うかどうかは、かなり疑問もあります。地元の人間がそれを活かし、風と土の関係がうまく調和してはじめて、その地域の風土となるんだと思います。

地元に戻った時、それまで外ばかり見ていた僕を暖かく迎え入れてくれたのが、地元のJA青壮年部でした。そこでは、江堀などの共同作業をしたり、スポーツ大会などで懇親を深めたりしました。活動自体は、華やかなものではないかもしれませんが、それらを通して、上の世代の方々から村や農業のあゆみについて教えてもらいました。そこには、村や農業と関係を無くしてしまった僕ら若い世代を、再び村や農業に目を向けられるような交流がありました。そして同時に、上の世代の方々の語りの中には、僕がインドネシアで見た地域を創る土としての農民の姿がありました。

僕はまた、自分の地域に、風であるよそ者がたくさん来てくれるような場を自らも作ろうと思っています。2008年から、インドネシアの農業研修生を受け入れています。現在3名のインドネシア農民子弟が、僕の農園で研修しています。またアフリカのセネガルの青年を僕の農園のスタッフとして雇用しており、新規就農したいという日本人青年も3名受け入れています。彼らのよそ者の視点が、僕や地域の農業を強く刺激してくれます。そして日本人青年たちは、いずれこの地で独立し、一緒にこの地域を創り上げてくれる農民になってくれることを期待しています。

地域の農業発展の鍵は何なのか?
それは農業の技術的向上だけではなく、また経営的な改善だけでもなく、ましてや市場と言う限定的な取引の場の存在だけでもありません。当然それらも大切ですが、それ以上に、僕ら風土の「土」の人間が積極的に地域を創り上げていこうという想いと、そして、その想いを実現していける風と土が交差する『場』を作っていくことが大切なんだと思っています。その場とは、いろんな人々が訪れてくれる、また協働していける農業の現場であり、JA青壮年部のような、若い世代が再び村や農業と関係を創っていける活動の場なんだと思います。
外から吹く風をいっぱいに受け止め、それを地元の風土として還元していける、そんな農民を目指して、僕は土を耕し続けています。ご静聴ありがとうございました。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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