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インドネシア研修生の座学の話。
座学をやっていて
いろいろとおもしろいことは毎回あるのだが
早々書いている時間もなく、
よほど書きとめようと思わない限り、
このネタでエントリーを書かなくなってきている。
この活動が、僕の中心であるにもかかわらず・・・。
もう少し、意識を向けないと、と思いつつ
今回は記録しよう。

農業構造比較論の座学での話。
前々回に技術が生産様式に与える影響について考察し
その事例をインドネシアの農業の中から探し出し
プレゼンしなさいという宿題を出していた。
今年一年目のタタン(タン君:実名で書くことにしました)は
北スラウェシの地熱を利用した砂糖製造の事例を
インターネットで探し出し、
地熱利用技術が、そこの生産様式に大きく影響を与えていると
考察してくれた。
まぁ、事例としては、それでいいだろう。

次にイルファン(イル君)。
彼は2つの対照的な事例を持ち出してきた。
一つは、Sungai Baritoに住むある集団の農業様式。
その集団は、土に何かを加えると「毒」が出ると信じていて
化成肥料や農薬はもちろんのこと
有機肥料すらもほとんど投入しない。
植物残差も鋤き込むことはせず、当然、土を耕すこともしない。
雑草や稲わらは積み上げて、腐ったら、それを田圃に敷くだけ。
外部で品種改良された種は使わず、自分たちの集団の中で
継承されてきた品種だけを使う。
完全なる自然農法的な生活を、伝統的慣習の縛りの中で
行っている集団の事例。
もう一つは中部ジャワの生産組合の話。
野菜栽培の盛んな生産組合では、地元の農業企業とともに
品種改良を進め、さらに問題となっていた野菜の病気に対して
農薬会社とともに新薬を作り出し、
大いに生産性を向上させているという話。

イルファンの考察は、技術を受け入れるか受け入れないかで
ここまで様式が変わるという話であった。
考察はそれほど深くなかったのだが、
事例が面白く話が盛り上がった。

伝統的な自然農法を行っている集団は
はたして技術をつかっていないのか。
イルファンもタタンもヘンドラ(H君)も口をそろえて
受け入れていないという。
確かに外からの技術を受け入れてはいないが
自分たちが培ってきた技術を用いて
自然農法を行っているといえるだろう。
この両者の違いは、技術の方向性にある。

そこでヘンドラが次のような意見を言った。
伝統的な自然農法の集団の言う
投入することで出てくる土の「毒」の考え方は正しくないと思います、と。
彼はそれを迷信だ、と言った。
さらには、その迷信では世界にはびこる食糧難の解決にはならない、とも。
はたしてそうだろうか。
まずは迷信かどうかだが、
彼の意見が、今の自然科学に乗っ取って、
というのであれば、あるいはそうかもしれない。
しかし、その集団の持つ科学とは別の判断基準の中では
それは「毒」なのではないだろうか。
自分の持つ判断基準に対して無批判のまま
相手の価値を推し量ることはできない。

次に食糧難だが、それは農業の技術的な問題だろうか。
僕には分配の平等性の問題にしか見えないのだが。
たしかに今のようなモノカルチャー的大規模農業が進めば、
僕たちは、豊かな表土を失い
これまでの古代文明が滅びたように、今の生産様式では
世界を養えないかもしれない。
そういう意味でいうのであれば、
ヘンドラの言うことは実は真逆で、
不耕起で表土守っている自然農法的集団のほうが
より真実に近いと思う。
食糧不足と大量生産技術を結びつける考え方は
政治的ゲームでの駆け引きにしかすぎない。
若いヘンドラまでもが、そんなことを引き合いに出して
どこぞの国会議員の間抜けな答弁のような発言はしないほうがいい。

僕は以前、これらと似た事例を考察し
その生産様式の違いは、そこに住む人々の価値基準の違いであり
それを端的に言えば、最適か最大かの違いだと
書いたことがある。
伝統的自然農法の集団は、最適に過ごせることを目指し
中部ジャワの生産組合は、生産力が最大になることを目指した。
その違いだともいえるかもしれない。
しかし、中部ジャワの生産組合と農薬会社と開発した新薬が
もし、微生物農薬だった場合はどうなんだろうか。
現在農薬の開発は、より環境に配慮する形で行われており
天敵の利用や自然界に存在する菌を利用した微生物農薬も多く出回っている。
化学合成農薬と違い、その考え方の根本は
生態系的なバランスであり、害虫の全否定ではない。
自然科学が最大を目指す中で、
それが最適の中で得られることがわかってきており
その最適下で最大を目指すような科学技術に変わってきている。
僕らが目指すような最大の社会は
大きく回り道をしながら
伝統的自然農法を科学検証しつつ
その技術を普遍化させていくことで最大を求めていくのかもしれない。
もはや最適か最大かの議論は、不要な気もしてきている。

研修生が探してきた事例に刺激されて
とても面白い議論になったと思う。
こういう座学の日は、とても気分がいい。
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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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