今週末からインドネシア出張の予定だ。
研修卒業生のサイトを回って、
帰国から現状までのプロセスを
インタビューして回るつもりでいる。
また2015年に僕ら主催で
研修卒業生の村々を見学していく
スタディーツアーを企画していて、
そのための下見と、関係機関への協力要請も
今回の出張に含まれている。

さて、この出張に際して、
現在研修を受けているインドネシアの子たちと
一緒にビデオレターを作成した。
それぞれの近親者にあてたものじゃない。
それは卒業生たちにあてたビデオレターだ。

研修生それぞれは、
いつも迷いながらここ日本・福井で研修を続けている。
あまりにも違う環境と社会、
そして農業技術とその方向性の中で、
一体、これがどう役に立つのだろうか?と
不安に陥ることも少なくない。
僕の座学では技術なんて教えないし、
明確な方向も示さないで多様な考え方の提示ばかりだ。
そんな状況で彼らは卒業後の未来を直視させられ、
3年間も自分の夢を構築し続ける。
だから彼らは(特に研修1年生)いつも迷子のように、
自分の進むべき道はあっちかこっちかと
汗かきべそかき右往左往する。

そんな彼らが、
帰国して活躍しつつある(しようとして足掻いている)
卒業生たちに、ここでの研修で大切なことを
再確認したくて、
ここでつかんだ何かがどう役に立つのか、
それを知りたくて、
みんなで卒業生宛にビデオレターを作ってみた。

彼らのビデオレターでの質問は、
とてもシンプルだった。
ここで勉強した何が役に立ったのか?
ここにいる間にやっておけばよかったと思ったことは?
帰国した時、地元の風景は違って見えるのか?
また日本で勉強したいか?

個人的な悩みや問いもあった。
市場へのアクセスはどうすればいいのか?
資金はどうすればいいか?

住民のリーダーになった卒業生には、
どうすればみんなから信用を得られるのか?
住民の協力を得るには?
などの質問もあった。

これを携えて、
僕は卒業生の村々を訪ねようと思う。
本当は僕自身も
研修なんて偉そうなことをやっているが
いつも不安ばかりで、
こんなことをやっていても
はたしてどれだけの意味があるのだろうか?と
常に迷っている。
研修生の態度や言葉に心折れそうになることもある。
このビデオレターは、
ある意味、そんな僕のためでもある。

研修から離れて久しい卒業生が
冷静にそれらの質問に答えてくれるだろう。
その研修に対する眼差しが、
また僕らの明日を創っていってくれることを
僕は期待している。

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またこの日がやってきた。
インドネシア農業研修3年生
クスワントの成果発表の日。
毎年、福井農林高校で行われている
3年生の研究成果発表会にジョイントさせてもらって、
研修生が卒業研究で取り組んだ成果を
日本語でプレゼンしている。
今回は、ちょっとしたアクシデントがあった。
僕が1日間違えて覚えていたようで、
火曜日だと思っていた発表会は、
実は月曜日だった。
で、急きょ、昨日発表となった。

クスワントの発表は、
クローブ(丁子)のサプライチェーンについての研究だった。
クローブがどんな作物なのかは、
それぞれネットで検索してもらいたい。
彼は、地元でクローブを栽培していた。
そしてこれからもしていこうと考えている。
だが、そのクローブは、
仲買人が村までやってきて、
どんなクローブでもクローブでありさえすれば
すべて買い取ってしまう。
値段の交渉権はほとんど農家にはない。
彼には一つ疑問もあった。
クローブを香辛料として使っていることは
なんとなく知ってはいたが、
彼の地域ではそれを食する文化はなく、
タバコに混ぜるくらいの利用しか知らなかった。
だから、一体どこのだれがどんな風に
クローブを使用しているのか、それを知りたかった。
そこでクスワントは
最終消費地の一つと思われる日本で、
どう利用されているのか、と
いくらで売買されているのか、と問いを立てて
リサーチすることにした。

まずは、手当たり次第に
福井のカフェや外国料理店などを渡り歩いた。
そこでチャイやカレーなどに
クローブが使われていることを知った。
その仕入先も調べた。
業務向けの小売りでも情報を集めた。
そこで蕾がついているものが高品質だと
初めて知った。
クスワントは、
今までクローブを生産してきたのに、
そんな事実は、全く知らなかった。
その小売りも上野のスパイス業者から
購入していることを知った。
いろいろと見ていく内に、
クスワントが生産してから
日本の僕らがクローブ入りの料理を
食べるまでの間で、
少なくとも8回ほど売買が
繰り返されていることが解った。
クスワントが仲買人に販売する価格と
カフェが小売りからチャイの原料として仕入れる価格とで
10倍の違いがあることが解った。
サプライチェーンは長くなれば長くなるほど
価格がとてつもなく跳ね上がっていく事実を
クローブ農家の彼はつきとめた。

これまでもこういう議論を
研修プログラムの中で繰り返してきた。
その中で、こういったサプライチェーンを断ち切るには、
農家自身が移動力や
交渉力(クループ化を含む)を身に着けて
新しい市場販路開拓の必要性を議論してきた。
しかし、それらは論理的には理解できても、
事実として生の感覚では、なかなかわからなかった。
だから議論も現実味を持たず、
どこか空転していた。

だが、クスワントは、農家として
サプライチェーンを丁寧に見ていくことで、
全体像にはまだまだ近づけていないけど、
それでもその一端を掴み取った。
その想像図から彼は、3つの結論を得た。
一つ目は、品質を分け、良い物は高く売る工夫をすること。
栽培農家をグループ化して、仲買人ではなく、
市場へ直接販売するルートを探そうと考えている。
二つ目は、よくない品質(蕾のとれてしまったもの)のものを
粉加工して、いままでアクセスしていなかった市場
(たとえば香辛料の小売りやレストランなど)へ
販路開拓をしようと考えている。
三つ目は、日本で知ったクローブの料理や食べ方を活かして
ちょっとしたカフェを開こうと考えている。
大きな店舗ではなく、ちょっとした屋台風のカフェで、
インドネシアでは結構日常的なカフェ。
そこでクローブ農家が栽培したクローブをふんだんに使った
チャイなどを提供したいと思っている。

これまでクスワントは
クローブの全体像を知らされないまま
クローブ生産に携わってきた。
そこでは、品質で分けることもなく、クローブでありさえすれば
すべて同じ価格で買い取られていた。
そんな立場に置かれた農民の行為を発揮する機会は、
不可測に変動する市場価格に一喜一憂するかしかない。
合理的な生産を試みて
廉価で量をたくさん作ればいいのかもしれないが、
人口密度が高くなりすぎて農地を得にくい西ジャワでは
なかなかそちらの方に行為を発揮することは難し、
小さな農家個人で発揮できる行為でもない。
つまり、グローバルなサプライチェーンのなかで
彼らクローブ農家は、その情報から隔離された場所で
生産を繰り返してきたのである。
だから、それぞれの農家の創意工夫という能力は
発揮されず、というか、そういう機会を収奪されてきたのだ。

今回のクスワントの研究を
一緒に経験して思ったことは、
技術的な部分の改善以上に、
それぞれの農家の行為能力を発揮できるために
情報の変化もそれ以上に必要であることだった。
今回は3年という時間をかけて、
クスワントが市場やサプライチェーンなどを
自ら意識化することで、なかなかタフな研究を
やり遂げるモティベーションとなったのも
今回の大きな成果と言えるだろう。

多くの識者がグローバルサプライチェーンの弊害を指摘し、
多くの活動家がフェアトレードを実践しているが、
途上国の生産者が
日本までやってきて、そこのあるサプライチェーンを
丁寧にたどっていく事例はほとんど無いだろう。
ここから得た知見から
クスワントはまさに自ら行為能力の箍を外し、
考える農家として新しい行動を起こしていくのだろう。

彼のプレゼンは本当に素晴らしかった。
彼の未来に僕も期待したい。



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先週のことだが、
福井ケーブルテレビさんの取材を受ける。
旬の野菜ということで、
今一番彩がきれいで、ぷりぷりとして美味しい
ベビーリーフを紹介した。
(露地野菜でもよかったのだが、悪天候のためハウス内の野菜にしたのは余談)

これまでならば、
取材の対応は僕が引き受けていたのだが、
今回は大西と佐藤に任せることに。
ベビーリーフの主担当である大西の方が、
僕より現場の状況をしっかりと把握しているし、
野菜ソムリエ中級を取得した佐藤の方が、
野菜の理解力と発信力は僕よりも上だと思ったからだ。

二人の取材現場を見て、
なんだかしみじみしてしまった。
それぞれの農へのこだわりが、
化学変化を起こし、
それが僕らの新しい農業のカタチになる。
今回の番組は、
たぶんそれを皆さんに発信する
第一弾なんだと思う。
ぜひ、興味のある方は見てくださいませ。

あっ、放送予定時間を聞くの忘れていた・・・。



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遅ればせながら、
初詣に行く。
場所は、
大阪は太子町にある叡福寺。
あまりお寺にお参りに行ったりは
しないので、ぜんぜん詳しくはないのだが、
その数少ない参拝経験の中で、
もっとも好きなお寺がここだ。

聖徳太子のお墓があるお寺で、
多くの仏教偉人がここを詣でている。

凛とした空気と
あちこちに建っている伽藍が
どことなく調和を生み出してて、
長い時間居ても不思議と飽きない。

太子にやってきたのは、
妻の里帰りと妻の祖母の100歳を祝う会に
出席するためだった。
そのついでに、ここ叡福寺によったというわけ。

100歳を祝う会に出たこともあってか、
やはり人間は健康が一番だと思った。
昨年から足裏を痛め、
夏に「足底筋膜炎」と診断され、
「すぐに治ります」と近くのやぶ医者の
言葉を信じてそのまま放置したが、
ほとんど良くならず、
今日まで何かと不自由をしている。
たかが足の裏が少々痛いだけなのだが、
これが全体の生活や気分&精神にも
影響が本当に小さいのだが出てくるのだ。

だからなのか、
初詣ではついつい健康祈願をしている
自分に驚いた。
今までそんなこと気にもかけていなかったのに。

そうしたらその帰路、
遠い昔に忘れていたことを思い出した。
大学卒業を目前の頃、
協力隊に参加することに決めていた僕を
研究室の教授が珍しく部屋に呼び込んで、
こんなことを言ってくれた。
「田谷君、何事も『無事是名馬』だよ。どんなに優れていても、短期間では成果はでないんだ。健康でなければ、息の長い良い活動できない。」
その時は、教授も老いぼれたな、と
とても失礼なことを思っていただけだった。
でもそのことを今になって思い出してみると、
まさに「無事是名馬」だと思う。
スーパープレイを夢見ていたころとは違い、
その裏側には、積み重ねた凡事徹底という努力が
あることを僕はもう知っている。
そしてその凡事徹底を繰り返し行える条件は
やはり健康でしかない。
そのことを教授は凡庸な僕に
教えてくれたのだと、
いまになって身に沁みた。

でも健康祈願としては、叡福寺はどうなんだろうか?
短命で太く短く生きた天才・聖徳太子は
凡庸な人間の「無事是名馬」を
どう思うのだろうか?



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新年あけて間もないが、
アグリスクールプロコースで話をする機会をいただいた。
就農計画を立てている方や
すでに就農して5年未満くらいの方を対象にした講座で、
そのうちの一コマを僕が担当した。

しかし、
僕とて受講生の方たちと
あまり立場は変わらない。
こんな講座を担当するほど経験も知識もなく、
ましてや、経営については
僕が勉強したいくらいなのだ。

ただ、それほど立場が変わらないということは
参考になる話もあるかもしれないと思い、
自分の経営について、
また農法について話をした。

ちょっとでも参考になっていれば、
話した甲斐もあったろうが、さてどうだったのだろうか?

しっかし、
経営について講義依頼がくるとはなぁ~。
ちょっと自分でも驚きだった。

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2014年になった。
食っちゃ寝の正月も終わり、
やや重たくなった体に鞭打っての
仕事始め。

例年であれば、今年の目標なんてものを
新年早々考えたりもするのだが、
今年はなんだかそんなことを
立てること自体、
あまり僕の関心ではなくなっている。

大きな目標はある。
野望もある。
でもそれらは、僕から派生する場合もあれば、
ご縁のあった誰からか影響を受けて出てくることもある。
どちらにせよ、
僕個人という実体から発せられるものじゃないな。
相手とのインタラクションがあって
初めて、そういうことが生まれてくるんだと思う。

だから、
インドネシアの研修生が『こうしたい』と思えば、
それは時として僕の夢にもなる。
ここで働く人たちが『こんな風にしたい』と思えば、
それは時として僕の目標にもなる。
一緒に地域活動をする人たちが『こうしようぜ』と言えば、
それが時として僕の活動にもなる。
僕らの野菜を食べてくれる人たちが『もっとおいしい野菜を』と思えば、
それが時として僕らの営農のカタチにもなる。


たぶん、今年もそんな感じで
過ぎていくんじゃないだろうか。

僕とご縁のある皆さんが夢見る素敵な未来が、
僕の範疇で、そして僕にできることで、
それが一緒に現実になるように、
今年も一所懸命やっていこうと思います。








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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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