この前日本語試験の結果通知が来たばかりだと思ったら、
12月の試験の締め切りが、もう今週だという。
それはインドネシア研修生の話。

かすりもせずに落ちてしまった日本語試験(N3レベル)。
研修の3年生はこれまで
無条件で試験を受験で来ていたが、
あまりにも勉強をしていないようなので、
これからは日本語試験を受けるための試験を
農園で行うことにした。
この試験に受かれば、たとえ1年生だろうと
日本語試験にチャレンジできるルールとした。

で、さっそく昨日、その試験を実施。
いきなりN3レベルでは、
準備不足だろうし不公平なので、
その下のN4の模擬試験を代用して実施。

結果は、
2年生のイラが一番出来た。
3年生のクスワントは、その次だった。
といっても両者とも正解率は5割程度。
格下のN4のテストで、正解率が5割では、
とてもN3合格は厳しい。

この結果を受けて、クスワントは
自らN3受験をあきらめた。
受験したいと言えば、それを拒む権利は僕には無いので、
受けさせる予定でいたが、
彼は、
『今から猛勉強すれば、あるいはN3の試験に合格できるかもしれないですが、でもその分、自分の研究や研修座学の勉強はおろそかになってしまいます。僕は日本語習得を目的に来たわけではないので、研修も残りの半年になってきたこれからは、自分のビジネスプランや研究に集中したい』とのことだった。
クスワントの言い分も頷けるので、
それは了承した。

しかし、ここまで日本語が出来なかったことに
今更ながら愕然とした。
もう少し日本語学習にも
力を入れないといけないな、と反省した。
なんかいいアイディアないかなぁ。




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農園の今年の夏は受験ラッシュだった。
というのは、こちらのエントリーで書いた通り。

その結果が出ている。
まず、アルバイトの県大生。
無事、京都の超有名国立大学の大学院に合格!
素晴らしい&羨ましい。

次に、協力隊を目指す自主研修生の北野君。
これは周知のとおりで、
見事青年海外協力隊に一発合格。
練習のつもりで受けたのだけど、
受かっちゃったね。

そしてスタッフの佐藤。
こちらはかなり難関な試験。
野菜ソムリエの試験だ。
ジュニアソムリエではなく、
もう一段階上のソムリエを目指す。
1次試験の合格率が、うわさでは3割を切るのだが、
なんと彼は一発合格。
来週、2次試験に臨む。
福井県でまだ8人しか資格ホルダーは居ない。
しかも一発合格者は、過去一人だけ。
さて、彼が二人目となるか?

えーっと、ここで報告を終わりたいのだけど、
もう一つ試験があった。
それはインドネシア研修3年生の
クスワント君の日本語の語学試験。
N3というレベルで、昔の3級程度のレベル。
これはかすりもせず、不合格。
文法や語彙が全くできず、C判定の結果だった(合格はA判定)。
これまで、過去3人が挑戦したが
全員不合格。
ちなみにC判定で不合格は、彼が初めて。

もちろん、
日本語を習得することが彼らの最終目的ではない。
彼らの地元に戻り、そこで地域おこしをしていくことが
彼らの本当の目的なので、
これまで日本語習得はあまりうるさくは言ってこなかった。
だが、そういうことが甘えになっているのか、
どうしても日本人との接点も少なく、
異国に居ながらにして、その異国を理解しようとする
意識と力が乏しい。
それが語学試験の合否に現れている。
自分たちとは異質の社会を深く理解することで、
自分たちの社会の当たり前と常識を疑う目を
持つことが出来る。
ひいては、それが次のまっとうな社会への
発展にもつながるのだが、
彼らはそれに対して、ほとんど無視をし続けている。

インドネシア研修にもうひとひねりが
必要なのだろうな。


なにはともあれ、
農園のお受験ラッシュは、3勝1敗で幕を閉じた。


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連休は、結婚式にお呼ばれした。
近所の若手農家の結婚式で、
なんと人生初の主賓として挨拶もした。
これまでいろんなところで話をしてきて、
結構慣れっこのつもりだったが、
さすがに緊張した。

さてその挨拶では、
結婚で食の意識が変わることを
手短に話した。
短く話したのでちょっと伝わりにくかったかもしれないので
ここでちょっと補足。
新婚の頃は、今までと違って、新しく結婚した相手と
一緒に生活することになる。
しかもその相手は、シェアハウスみたいに
ちょっとした同居人ではなく、
その人のことを想って止まない相手なのだ。
まぁ、だから結婚するわけだけど。

そういう意識がMAXで向かっている相手と
と毎日食事をするといろいろと面白いことに気が付く。

歌の「セロリ」のように
違った環境で生きてきたわけなので
料理の嗜好や味や文化の違いが大きいかもしれないが、
面白いことは、それではない。
それは「たべごと」。
食べるという行為に、どこか味や機能ばかりに
目を向けてきたこれまでと違って、
相手との相互作用が食べる行為を通じて
記憶に残り出すという
僕ら人間らしい記憶の構造に気が付くのだ。

もちろん友人同士でも
そういう記憶は残るだろう。
野外キャンプの時に食べたカレーライスや
旅先でのB級グルメなどもあるだろう。
だが、意識がMAXで向かっている相手との
連続した毎日の中の「たべごと」は、
半端なく食に対する意識を変えてくれる。

食は、味や機能ばかりが注目されているが、
そこにもう一つ、その行為によって生み出される記憶にも
目を向けてほしい。
その食の根源を支える農業だからこそ、
味や機能だけでなく、
人のたべごとにも深くかかわっているんだ、という
意識を持って自分の農業を確立してほしい。
そんな期待を込めた話だった。

余談だが、
連休最後の日は、結婚披露宴記念日だったので
家族で近くのレストランで食事をした。
自分たち以外に3組のお客さんがいたが、
どの組も誕生日などの記念日だったらしく、
最後のデザートで花火のついたケーキが出てきたり
花束をレストラン側から受け取ったりしていた。
そのレストランは、
ここなら素敵な記念日を過ごせる、という
期待を皆から受けているのだろう。

特別な日を過ごす時に、
皆さんはどんな場所でどんなふうに過ごしたいと思いますか?
その場所の演出に
僕らが生産した野菜が使われることがあれば、
これほど幸せなことはない。
モノや場に込められたイメージや期待が
語らずとも醸し出す。
そんな風にみんなのたべごとを
支える一要素になれたら素敵だ。

人々の「たべごと」。
とても捉えきれるものではないが、
その端っこを結婚したことで見えてから、
僕の農業観は少し変わった。
近所の若手農家にも、その意識を大切にしてほしいな。
そんなことを思っての挨拶だった。



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先週のことで申し訳ないが、
10月14日のコンサートの音響さんが
会場となる低温倉庫を下見に来た。

というのも、
地域のJAの支店が移転するにあたって、
青壮年部&女性部主催で
新築移転を祝うアカペラコンサートをやるのだが、
その音響さんが
神戸から下見に来たというわけ。

さて音響さんは、
こういった倉庫でコンサートをするのは
初めてのようで、
とにかく音の跳ね返りがひどく、
どうやってやっていこうかと
頭をひねっていた。
まぁ、僕ら素人にはどうすることもできないので、
ここはプロにおませしよう。

いろいろと頭をひねっていたが、
暗幕をつかって音の跳ね返りを
防ごうということになった。

さてその音響さん。
倉庫のある環境に感動していた。
だだっ広い田んぼが広がる、
そのど真ん中にある低温倉庫で、
まわりに遮蔽物がほとんど無く、
明かりも少ない。
夜のコンサートでは、天気が良ければ
満天の星空になるだろうし、
どんなに大きな音を出しても、
文句なんて一つも出ない。
初めは、倉庫のシャッターを全部開け放って、
開放的に、満天の星空をバックに
コンサートをやろうか、と音響さんから話も出たが、
ただそれだと明かりに寄ってくる虫で
機材が痛むかも、となって、
その案はボツに。

さて、当日はどんなステージなるのだろうか。
みなさん、お楽しみに。


あれこれとみんなで創り上げていくのは
本当に楽しい。
このやり取りの中にいるのは、
たまらなく贅沢なのだ。



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2013年の前期試験最後の発表者は
3年生のクスワント(以後ワント)。
彼の発表は、やっぱり3年生らしく、
地域資源の考察も深く、
また興味深いビジネスプランだった。

ワントが分析した地域は、
2年生のカダルスマン(以後ダルス)の村。
ダルスの村は、水源が豊富で稲作が盛んな地域。
村自体も大きく、
ちょっと大きめの病院があったりもする。
村の統計データでは、
農業を生業としている家が多いが、
一軒の農家の所有面積が30aもない状況で、
年2~3回の米作りではとてもそれだけでは
生活が成り立たない。
そこで男たちは、
女たちに田んぼの管理を任せ、
稲作の忙しい時期以外は街に出稼ぎに出ている。
大抵は、好景気で建設ラッシュに沸く土木業界に
日雇いの仕事をしているのが普通だ。

また村の統計では、
職業別人口は、主婦が一番多い。
そしてその主婦たち、のんきに遊んでいるわけではなく、
家の周りや村の周りにある庭(pekarangan)で
自給用の野菜をたくさん作っている。
ワントの調べでは、
カボチャや豆類などの野菜栽培だけでなく、
森で取れる果樹や木の実も多く、
Suwegという珍しいイモもとれるらしい。
半栽培で採取と栽培の中間のような管理を行い、
森の資源も豊富とのことだった。
それらの管理の多くが、女性たちの仕事だとのこと。

そこに目を付けたワントのビジネスプランは、
山や庭で取れた野菜や木の実の
ノンフライチップス作りだった。
この場合、事業主体は誰かというと、
ワントは、既存の女性グループがもっとも適任だという。
新たに会社を興したり、新しいグループを作るのではなく、
もともとあるグループを活用するべきだという。
人との関係や経験値を活用すべきだというのが
ワントの考えだ。
そこで目を付けたのが、KWTというグループ。
KWTとは、農家の女性グループのことで、
行政が支援して各村に組織されているが、
ダルスの村では活動が停滞中とのことだった。
そのグループを活用して、
主婦たちで自分たちで採取または栽培したものを使って、
ノンフライチップスを作ろうというビジネスアイディアだった。

販売市場も面白かった。
2015年には、バイクで1時間ほど離れたところに
大きなダムが完成する予定で、
ワントはそこが観光地になるとにらんでいる。
そこの観光地の土産物屋に
その女性グループでつくったノンフライチップスを
置いてもらうというアイディアだった。

ちなみにチップスをノンフライにしたのは、
インドネシア人は高コレステロールに悩まされており、
それの関連の病気での死亡率が
社会問題になっているからである。

ただノンフライでチップスを作る機械は、
とても高価だ。
そこでワントのアイディアとしては、
女性グループを支援する県の事務所と一緒に
活動し、県の支援を得ることが大事という。
機械の一部を助成してもらえるかどうかで、
どのくらいキャパがある機械を
買うか決まってくるという。

そして生産を始めたら、
農産物加工品のパメラン(博覧会)に出展して
女性グループメンバーの意識向上につなげるそうだ。


停滞中の女性グループが
自分たちの資源を利用して活動し、
近くにできた観光地で販売をしながら、
農産物加工品の博覧会で受賞をする。
なんだかそんなサクセスストーリーは、
まるでハリウッドの映画のようだったが、
これまで聞いてきたプレゼンの中では、
一番わくわくした。

ここまで話が来ると、机上の空論みたいだが、
絵に描いた餅を書き続けることに意味があると
僕らは思っているので、どんどん机上の空論を
進めていってしまう。

この場合、女性グループたちの初期のモティベーションを
どう作るかと、持続させていく方法、
その辺りもポイントになると思う。
アイディアに富むワントが
自分のアイディアを遂行させようと躍起になればなるほど、
女性たちはただただついていくだけの存在になる。
数名のキーパーソンとの出会いや、
アイディアの多くを
その人達から出してもらうのも必要だろう。
また、観光地での販売は、
お土産物屋に置かせてもらうのではなく、
できれば小さくても良いので店舗もしくは
土産物屋の中にコーナーを設けたい。
販売員も女性グループメンバーで
交替で行えば、
初めはモティベーションの無かったメンバーでも
客とのやり取りの中でやる気を養い、
新たなキーパーソンになったりもするからだ。
出来るだけ刺激にさらす、それが大事だ。
また、
採取や栽培した自家用の木の実や野菜を
どうブランディング化するかも大切になる。
この辺りは、先走らず、グループのアイディア優先で
あちこち先進地をみんなで見学してみるのも
良いかもしれない。

などと試験の講評そっちのけで、
僕の開発スイッチが入ってしまい、
議論はどうグループのモティベーションを維持して
動かしていくかに終始した。
いやはや、ワント君、とても楽しいプレゼン有難う。
こういう活動を行政以外で
君たちのビジネスとして出来たら
とても素敵だと僕は思う。

そんな視点で自分たちの資源を見つめることが出来る君を
僕はとても誇らしげに思う。





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今週はわくわくが止まらない。
ということで、もういっちょ。
4番手のプレゼンは
2年生のカダルスマン(以後ダルス)。
ここ最近では、一番学力が伸びている子。

さて、ダルスは
3年生のクスワントの地域をプレゼンした。
彼もこれまでの研修生同様、
農業構造論で教えた要因ごとに
クスワントの地域を分析し、
そしてその分析結果とは別に
ビジネスプランが付属するという罠に陥っていた。
こうもみんながみんな同じ失敗を犯すと、
自分の教え方が悪いんじゃないかと
かなり落ち込む・・・。

それでもイラ同様、ダルスも分析した一部の情報が
ビジネスプランに活かされていた。
彼の立てたプランは、チレンブ芋のドドルだった。
といっても読者の方は解らんか。
チレンブ芋というのはサツマイモの品種。
西ジャワで有名なサツマイモ産地チレンブ村があり、
そこで栽培されている品種をチレンブ芋と呼ぶ。
糖度は高く、香りも良い。
インドネシアで一番有名なサツマイモと言っても過言ではなく、
個人的な見解だが、
日本で有名な安納芋なんて
その足元にも及ばないくらい美味しい。
そのサツマイモをドドルに加工して売ろうという。
ドドルというのはインドネシアのお菓子で、
うーん、ういろうみたいなものか?
いや、かなり違うか。
まぁ、詳細はそれぞれググってください。

クスワントの地域はとにかく雨が少ない。
ダルスの分析では、半分ほどが天水だよりで
雨が無ければ作物の栽培は厳しい。
そんな少雨でも比較的栽培できるのがサツマイモ。
で、チレンブ地域の隣ということもあって、
チレンブ芋をたくさん栽培している。
そして、規格Cと呼ばれるくずいもは、
ダルスのクスワントに対する聞き取りでは、
家畜のエサとしてしか使用されていないという。
そのくずいもをお菓子に加工しようというプラン。

しかも、ダルスの分析では、
村の若い人や女性の仕事が少ない。
そこでそれら女性の収入向上を目指して、
日々の生活の中で家庭にある道具だけで
作れるお菓子として、彼はドドル作りを選んだ。
しかも近くの大都市バンドゥンは、
彼曰く、ドドルの市場があり、
大量のドドルが販売されているとのことだった。
西ジャワにはガルッという地域がドドルで有名で、
そこのドドルが沢山バンドゥンでも販売されているらしい。
彼のプレゼンで見せてもらったバスターミナルや
土産物街にはドドル専門店のようなものもあった。

柔らかくて甘くて食べやすいドドルは
老若男女に愛され(歯の無い老人もOKだとダルス)、
くず芋も資源化でき、
チレンブ芋というブランドや味も利用して、
さらに村人のライフサイクルの中で
空き時間を利用して作れて、
特別な道具も必要ではないためリスクもない。
これがダルスのビジネスプランだった。

クスワントはこれに村の特産の
ヤシ砂糖とココナッツを混ぜて
100%ランチャカロン村のドドルとして
売り出せば面白いかもしれない、と
かなり肯定的な意見だった。

どこにでもあるドドルに
どれだけ競争力やインパクトがあるかは不明で、
販売につなげる点でやや不安はあった。
それでも彼の視点は面白い。
実は小規模家内加工業的な彼の視点は、
これが初めてじゃない。
これまでの彼自身のビジネスプランでも
多くがこの小規模の家内加工業の取りまとめをするという
視点で考えていることが多い。
だから、彼の発想は常に主婦のライフサイクルに寄り添い、
その空き時間を利用して、かつ、
台所にある道具で出来るモノを考案する。
たぶんそれは、幼いころから母が都会に出稼ぎに行き、
父がミニバスの運転手として家を空けることが多く、
家事の多くをダルスが担っていたことが
大きいのかもしれない。

生活に寄り添う視点が
彼のビジネスに上手く合致していくかどうかは、
僕にもかかっているのかもしれない。
もう少し販売面や共同作業に必要な技能などを
彼が考えていければ、もっと面白くなるような気もする。
ドドルはインパクトでは弱いが、
生活からスタートした点を大いに評価したい。

10分25秒のプレゼンは、ややオーバーしたが、
2年生らしく自分の視点を活かしたビジネスプランだった。


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今週はわくわくが止まらない。
試験期間で、毎日誰かがお昼休みに
プレゼンをする。
それが面白くてたまらない。

試験の3番手は2年生のイラ。
プレゼンをする地域は、1年生のジャジャンの地域。
イラもジャジャンのように
農業構造論の授業で解説した要因に合わせて
ジャジャンの村を分析していたが、
ジャジャンのプレゼンに比べて
比較的だが、それは羅列された情報ではなかった。
なぜならそこで分析された情報が
断片的ではあるが
彼が立てたビジネスプランに結びついていたからだ。

イラが立てたビジネスプランは、
乳牛飼育による牛乳販売ビジネス。
彼はグローバルな要因として
世界中の牛乳消費のグラフを見せながら
「今後インドネシアでも牛乳消費が伸びる可能性が十分あります」
とし、現状として牛乳の多くが輸入に頼っている状況も
説明してくれた。
確かに、フレッシュな牛乳が飲めるのは
都市部だけだし、だからと言って農村部に
フレッシュな牛乳のニーズが無いわけではない。
現に、彼がプレゼンをしてくれた中で、
近隣の畜産で有名な地域を説明してくれたのだが、
そこにいる彼の知り合いの事例では、
多くの村民がフレッシュの牛乳を買いに来るようだ。

またジャジャンの地域は畑作が盛んで、
米は年に2回栽培でき(場所によって3回)、
トウモロコシ栽培も盛んなため、作物の残渣も沢山でる。
それらは現在のところ、燃やされたりして
有効活用されていない、とイラ。
そこでその大量の残渣をエサにして
乳牛を飼おうというビジネスプランだった。

普通牛乳の場合、協同組合の集荷場所に
牛乳を集めておいて、協同組合が集荷して回るのが
一般的だ。
買い取り価格は交渉なんてものはなく、
一方的に通達されるのだが、
まだ総会などを通じて運営に参加できるので、
民主的といえば民主的か。
イラは、この協同組合出荷を主としながら
それでも出来るだけ多くを直販で行うという
販路を提案していた。
農村部や都市近郊でのフレッシュ牛乳需要が
高まってくることを考えれば、
直販でふり売りしても売れると考えている。
奇しくも彼は、この農園がある町内の牛乳屋さんを
見ており(明治との契約で販売&配達をしている)、
そのような個人宅との契約を取れればいいのではないか、
との提案だった。
その中で余る分は協同組合への販売にまわせば、
経営的にも安定するし、少しでも高額で売れると考えていた。

さらに彼のプランで面白いのは、
ジャジャンの村ではたばこ栽培が
その季節に行われているが、
そのたばこ栽培を季節労働であり、
価格が乱高下しやすく安定しないと批判的に考察。
そこでたばこ栽培をやめて、
その畑で乳牛の飼料を栽培すればいいと提案した。
乳牛は安定して牛乳を生産できるし
直販で価格も良い、というのが彼の主張だった。

ソーシャルビジネス的要素はなんだ?との問いに対しては、
まずそれをやる農家が成功すれば、
みんな真似をするとのことだった。
ただ乳牛をやその牛舎やふり売り用のリアカー付きバイク、
そして保冷用のボックスなどそれなりに投資が必要なので、
誰かそれなりに資金のある農家が成功しても、
そこにそれだけの投資をみんなが行えるのかどうかは不明だ。
しかも、価格が乱高下するとは言っても
生計戦略の中で確固たる地位を持つ「たばこ」の栽培を
止めてまで参加するリスクを冒せるかどうか。
またイラのプランは、農家のライフサイクルを
無視して進んでいるのもどうかと思う。
ジャジャンの村では、季節ごとの労働として
たばこがあるが、他の季節にはその季節の労働がある。
それらのサイクルをすべて乳牛飼育に換えてしまうのか、
それともそのサイクルと乳牛飼育が
並立するのかどうかの考察は無かった。
またたばこ栽培を含めた季節ごとの農作業労働と
乳牛飼育を比較した経営収支の計算がなく、
そこまで投資して本当に乳牛が儲かるのかどうか、
説得力に欠けていた。

さらにジャジャンの近隣の村では
乳牛を飼っているのに、
ジャジャンのところでは一切飼っていないことに対して、
ジャジャン個人の評価は
「乳牛飼育は臭いから」と言っていたのにも
少し注目したい。
そこに住む人々がその業に対する考え方や
価値観をもう少し丁寧に見ていく必要もあろう。
ただイラもその辺りは配慮して、
村から離れた場所に飼育場所を設定していたが、
他の研修生から
「牛が盗まれる!」と批判されていた。

9分55秒の時間ぴったりのプレゼンは、
2年生らしい考察とアイディアに溢れていた。
プレゼンの内容が素晴らしいと
僕らの議論も深くなる。
ただもう少し人々の暮らしのサイクルや
リスクを減らす工夫、そしてそれに対する価値感を
掘り下げてくれると良かった。
来年に期待したい。


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前回エントリーで書いた2013年度前期の試験。
ちょっと番外編で、2番手は
青年海外協力隊への研修中の北野君。

座学はインドネシア語で行われているので
彼は授業に参加でいないが、
他に時間を作って彼とも授業内容を
ダイジェストで解説してきた。
そこでこれから協力隊隊員としてセネガルに赴く彼に、
3年生のクスワントの地域で
アグリビジネスプランを作ってもらった。
ちょっとした隊員シミュレーションといったところか。

北野君のクスワントへの聞き取りで
クスワントの地域は、サツマイモが有名だとわかる。
またヤシ砂糖の生産もあり、
近隣から買いに来るくらい少し有名らしい。
北野君は、これら二つを合わせて
インドネシア版大学イモを作って
街のショッピングモールなんかで売ろう!というプラン。
ちょっとひねりを入れて、
インドネシアは暑いので、冷たいものをということで、
半解凍大学イモで販売とのこと。
冷凍庫も準備して、バイク輸送で村から街へ運ぶ計画。
授業主体は、プラン内では北野君本人だった。
簡単な収支計算では、1g=1円(100ルピア)で販売できれば、
他の既存のスナック菓子&スイーツと張り合えるという。

ただ問題は、イモが通年収穫できないということ。
イモの季節しか、イモが無い。
近くの大産地には貯蔵施設があるので通年で
イモの利用が可能だが、クスワントのような小さな産地では
そんな施設なんてないのだ。
北野君は、クスワントから買えない時期は
他の産地から買います、と言っていたが、
なんだかそれでは本末転倒にならないか?

大きな産地には当然くずいもも沢山ある。
規格Cと呼ばれる芋で、それらは二束三文だ。
そのイモを通年で定期的に購入する契約を結ぶことが出来れば、
よりビジネスとして安泰になるんじゃないか?
というかそのモデルによって利益追求するビジネスタイプの場合
(北野君のモデルがまさにそう)、
なにもクスワントの地域にこだわる理由が全くない。
こうしてランディングしたビジネスは、
その普遍性を武器に、
より効率を求めて、他の地域へと移っていくのである。

普遍性ではなく、地域間の差異に目を向け
そこにある「何か」を武器にしない限り、
ビジネスは果てしなく効率を求めて浮遊する。
ローカルな発展とビジネスを結びつける視点が
まだ北野君には無かった。
ちょっと残念。

北野君、
任地ではもっとローカルな部分に目を向けてね。



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前回エントリーで書いた2013年度前期の試験。
トップバッターは、1年生のジャジャン。
2コマの講座でたった24回の授業を聞いて、
地域農業と地域発展の可能性について知ることなんて
到底できないが、
少なくとも、それぞれの地域に優劣はなく、
そこにあるのはただただ差異でしかなく、
そしてその差異を
いろんな要因に混乱させられながらも
際立たせたところが、
ちょっとばかり素敵にみえるということが
解れば大したものだが、さてどうだろうか。

ジャジャンが取り組む地域は、くじ引きで
2年生のイラの地域だった。
授業の通り、彼はイラの地域の農業を
さまざまな要因によって支えられていることを
明らかにしていった。
気候・人付き合い・資金の出所・人材・政府の補助事業まで
さまざまな要因を挙げていたが、
彼が犯したミスは、
そのすべてにおいて、自分の地域と
もしくはそのほかの地域と比べることが一切なかったことだった。
だからそれらは、ただ単に羅列された情報であり、
その地域の農業を形作る、
差異を輝き放つ要因では一切なかった。
授業で教えた要因を順番に埋めることに終始し
それがどう意味づけされているのかに
彼の意識はなかった。

そうして分析された後に考えられた彼のビジネスプランは
どういう出来だったかは想像できるだろう。
彼の考えたビジネスプランはバニラ栽培。
イラの地域には村落の生活林が多くあり、
そこは再開発できない場所であるため、
農地として利用することが難しいが、
その森林を利用してバニラを栽培しようというものだった。

地域資源に目を向けそれをポジティブに換えたのは
それなりに評価できる。
だが、イラの地域農業を支える要因が明確に差異を
感じられないまま、
しかもそれらの分析された要因すらもビジネスプランに
有効活用しないまま、立てられたプランは
ありきたりで面白味もなく、
また安易な「生産組合」という言葉で
社会的起業に結びつけてしまうあたりに
思考の深さを感じない。

1年生は概してこんなものだ。
ジャジャンもここからスタートをする。
来てすぐのころは、
唐辛子やキャベツ・空心菜栽培という
日本で言うならば
ホウレンソウ栽培といったまさにメジャー級の
野菜栽培だけに固執していたころに比べたら、
少しは考えられるようになったのかもしれないな。
彼がどう成長していくか、
ある意味のびしろが多い分、楽しみだ。


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9月に入った。
なので、
インドネシアの農業研修プログラムも
動き出す。

8月はあまりの暑さと農作業の厳しさから
一か月夏休みにしていたのだが、
9月から授業を再開。

再開してすぐで申し訳ないのだが、
前期(4月~7月)の試験からスタート。
前期は全学年対象の授業で、
農業構造論と農村発展論という
漢字だらけで小難しい授業が2コマあった。
農業という表象を支える要因を分析する授業と
個性的に発展する地域は、
その要因のどこに特化していったのかを
分析する授業だ。
一つずつ試験をするのも良いが、
本当に理解しているかどうかを見るには、
この二つの座学を一度の試験でみるのが一番だろう。
ということで、試験は一つ。

試験は簡単。
「ある地域でのソーシャルアグリビジネスプランを作りなさい」
というもの。
研修生は全部で4名いるので、
それぞれ自分の地域ではない、他の誰の
地域ポテンシャルレポートを読み、
かつ、その誰かにインタビューをして状況を把握し、
その地域の農業の要因を分析して、
どこをディフォルメ化すれば、
地域を巻き込んだ面白いアグロビジネスになるか、
そのプランをプレゼンするというもの。
ね、とても簡単でしょ?

実際にやるわけでもないし、
その場所を実際に行ってリサーチ出来るわけでもないので、
結構突拍子もないプランがでてくるのも
この試験の面白さ。
さらに、誰かほかの人の視点で自分の地域のプランを
立ててもらうというのは、とても刺激的だ。
事情が分からないから、自分では思いつかないような
アイディアが出てきたりもするので、
それぞれの研修生にとっても
凝り固まった頭をほぐす役割もある。

試験の評価基準は特にないが、
時間内(10分)のプレゼンであること、
やってみたい!とうずうずするようなプランであること、
絵に描いた餅なのだが、出来るだけ本物にみえること、
が、なんとなくの僕の評価基準。
ありきたりで出来そうなことだけを
無批判にまとめてくるプランは、
最低評価なのであしからず。
もちろん、時間オーバーも論外。

さっそく1年生のジャジャン君から試験開始だ。
今週はブログで試験結果をお伝えしていこうと思う。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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