有志の勉強会の記録。
今回は、5月15日の分。
発表者は、若手のホープ・大ちゃん。
本は、これ。

坂手 康志・小々馬 敦 著 「通勤大学MBA ブランディング」

自分の農作物のブランディング化を目指す
若手農家の大ちゃんらしいプレゼン。
本書では、ブランドについて
解りやすく説明されていた。
ブランドとは、心の中に作る貯金箱で、
その貯金箱に入れるコインは、約束を守る行為なのだとか。
消費者からの信頼と期待を守り、
それが積み重なっていく中で、
ブランドが形成されるというわけか。
一朝一夕と言うわけにはいかないのだろう。

ブランディングのなかで大切なのは、
消費者の右脳、つまり直観的で情緒的な判断に
訴えかけられるかどうかで、
無意識に購買意欲を引き起こさせる、とのことだった。
ロゴによる視覚的なイメージや、
CMや歌などによる聴覚的な記憶も大切なのは、
この部分にあたるのだろう。

大ちゃんのプレゼンで
面白い図が紹介されていたので
ここでシェアしよう。


ブランディング 画像


ブランドの価値をイメージした図だが、
一番下位にくるのが、消費者にとって機能的便益。
そのものの機能や効能といったもので、
これは最低条件。
この機能や効能は、消費者に提供することが
最も容易だが、その反面、最も模倣されやすい。
その次に来るのが、情緒的便益。
消費者に感動や意外性を与え、
りくつではなかなか説明できない利益を
消費者が得る部分。
最上位に位置するのが、自己表現的便益。
そのブランドは、より個性的で、
消費者はそれを持つことでステータスまでもが
上昇するモノ。
自分が所有していることで、
自己を表現している価値までもが
上昇するモノ。
これは消費者への提供は容易ではないが、
同時に模倣も難しい。

と書いても、良く解らないので、
具体的な例(農産物)で考えてみるか。
たとえばリンゴ。
甘くておいしい、やビタミン豊富などは
一番下位の機能的便益。
まずこれはブランドの最低条件だろう。
リンゴの栄養価や甘さを強調しても、
自分のリンゴがブランド化するわけでもない。
なぜなら、誰でも模倣可能な条件だからだ。

青森県産のリンゴといっても、
あまり感動はないから、
気候的な条件で美味しくなっている場合は、
これも一番下位の機能的便益だろうか。

地元の生産者が作るリンゴになると、
すこし上位に来る気がする。
その人を知っていたり、
その地区に対する思い入れがある場合は、
ブランドが情緒的便益になってくる。
食べる度に、そのことを想いだし、
美味しさもますます加速する。

では、自己表現的便益とは?
奇跡のリンゴで有名な木村さんのリンゴは
たぶんこれにあたるんじゃないだろうか。
入手困難なリンゴを
毎日のように消費するスタイル自体が
その人のステータスの高さにもつながる。
リンゴじゃなくても、
食味検査で日本一となったコメや
はたまたワインでは、
テロワールの奇跡ロマネコンティなんかもそうだろう。
ベンツやシャネルなどのブランドも
それを消費する人のステータスの高さを
表現するのに一役買うわけだ。
これらは模倣が至極難しい。

つまり栄養価やその野菜の機能を
説明していても自分たちの農産物の
ブランド化にはつながらない、と言うことだ。
情緒的に訴えられる力と、
その貯金がたまっていくことで、
自己表現的便益を持つことが出来るかどうかが、
ブランディングに欠かせないということだろう。

日々の研鑽と
情報の発信とその共感を直感的にどう生み出すか、
そこが鍵なのだろう。




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有志による勉強会の記録。
5月8日は倉友君のプレゼンだった。
本はこれ。

安保 徹 著 「疲れない体をつくる免疫力」

農作業が忙しくなってくるこの頃、
いくら若いからといっても、
疲れが翌日までひきずることもある。
倉友君は、
「子供の頃よりも疲れやすくなっている」と感じ、
どうしたら疲れにくい体を作り上げていけるのかを
知りたいと思い、本書を選んだようだ。
同じような悩みは、僕ら農家にはつきもので、
とても興味のあるトピックだった。

さて、倉友君のプレゼンでは、
疲れない超人的な体なんてできないので、
疲れてもすぐに回復する体作りが大切だと
指摘していた。
つまりは体の免疫力を高めるということらしい。
ここでいう免疫力とは、白血球による治癒力を指す。
免疫力を発揮させるには、自律神経をバランスよく
整える必要がある。
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、
その両方がバランス良く働くことが
免疫力を高めるのだとか。

交感神経は、人が行動的・活動的に働く神経で、
この神経が活動中は、
白血球の内の細菌を攻撃する顆粒球が増すらしい。
副交感神経は、食事中や食後の休息中に働く神経で、
この神経が活動中は、
白血球の内のリンパ球が増えて、
加田らの異常細胞(癌など)のもとを攻撃するとか。

いろいろと細かい点でそれぞれの神経の働きや
問題点を議論できたが、
結局は、
早寝早起き、きちんと三食リズム良く食べ、
日光に浴びる環境で、適度な運動と休息をしっかりと取り、
お風呂に入って、バランス良い食事をする、
ということが疲れない(疲れてもすぐに回復する)体を
作る秘訣と言えよう。
当たり前のことを
当たり前にすることが難しい現代だからこそ、
こんな議論になるのかもしれない。



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円安の影響がじわりじわりと
僕らの生産現場にも出てきている。

野菜を出荷する時、普通、
鮮度を保つために袋やパックに入れて出荷している。
その資材の多くが、石油製品であるため、
円安の影響を受けて、原油価格が上がり、
最近、資材業者から「値上げさせてください」と
通達が来ている。
ほほう、これがアベノミクスでいう
物価上昇のシナリオの一部なのだろうか。
そういうことならば、
僕の出荷している野菜はこれから、
この資材高を理由に卸値も上がってくれないといけない。
そんなことがあるのだろうか???

物価上昇率2%と言われても、
100円の野菜が102円になったりはしないんじゃないか。
ただ消費税が上がった時に、
切のいい数字に合わせた時に出る差額で
物価上昇と言いたいんだろうか?
たとえば、スーパーの青果売り場で
消費税5%で198円(税込)だった野菜は、
税別で188.571…円なので、
8%では203.657…円になる。
10%だと207.428…円だ。
これだときりが悪いから、
218円や228円に値上がりしたりするんだろうか。
それとも198円のまま、「企業努力」という
生産現場への押し付けで終わるのだろうか。
たとえそれが内容量を減らすや安い資材への変更だとしても
1個から得られる純利益は減るので、
うちのような小さな企業体には結構きつい話だ。
減っていく地方人口の場合、
価格据え置きや低価格になっても
消費喚起自体が見込めないので、
純利益が減るのは確実に収益減につながるんだよ。

はてさて、
資材費高騰はデフレ脱却の前触れなのか。
景気回復の兆しがメディアを賑わせているが、
そのエセくさいトリクルダウン理論の恩恵が
僕らに回ってくるまで、
僕らは僕らのままで立っていられるだろうか?
そんな心配が最近、僕の頭をよぎっている。



関連記事
県民生協の会員さんたちが、
生産現場の視察として来園。
今月4回の予定で、すでに2回行った。
4回の見学会での来園予定は、80名。
こんな一気に食べてくれる側の人々
(しかも、意識の高い人達)と
会話を交わすチャンスは滅多にない。

ここぞとばかりに僕らの想いと
食べてくれる側の想いを交流させようではないか。

さて見学会ではベビーリーフについて
圃場を見てもらった。
まずは土づくりの話から。

いまどき、どの農家でも
「土づくりをやっています」とノタマフ。
堆肥入れています、と言っても、
まぁ、たいてい当たり前かもしれない。
ただ、うちは県推奨の1反2tの5倍である
10tくらい堆肥を入れている。
これくらい入れる農家は、あまりいないだろう。
では、なぜか?
ずいぶん昔だが、父に尋ねたことがあったが、
「経験からだ」と良く解らない答えをもらった記憶がある。
それではあまり伝わらないので、
最近では僕なりの答えを用意している。
もちろん、経験から導き出した答えというのも
大切なので、それはそれで尊重したい。

さて、何かの行為を行う場合、
もちろん自分たちの理想(もしくは目標)があるはずだ。
土づくりにおいて理想とは何か?
それは理想の土にすることなのだが、
僕はその理想の土を照葉樹林の土をイメージしている。
照葉樹林は、その樹木からのリターフォールなどで
有機物を蓄え、常に豊かな土壌生物相を育んでいる。
その有機的なやり取りが、
保水と透水という一見矛盾しているような
状況を創り上げ、
ドラスティスな環境の変化にも
上手に対応する柔軟性と力を持つ。
そんな土を僕ら農家も目指している。
では、その土壌を支えている
リターフォール量は一体どれくらいなのだろうか。
諸説あるだろうが、だいたい5tくらい。
だから堆肥も5tくらいとなるかもしれないが、
畑では、常に生産物を収穫して
外に持ち出してしまうので、
その倍の10tを入れている。
(リターフォール量はその年によって変化するので、10tくらいという見積もりもある)。
農業の要は、やはり自然を模倣すること
なんじゃないだろうか、と良く思う。

うちの農園の土づくりのもう一つの特徴は、
ケイ酸が多いということだろうか。
堆肥作りでは、もみ殻も大量に入れて
堆肥にするのだが、
このもみ殻にケイ酸が大量に含まれている。
普通、この辺りの土壌では
ケイ酸が不足気味なのだが、
うちの農園の土壌を検査すると
他の圃場の倍以上のケイ酸が含まれていると
言われる。
ケイ酸には、植物の細胞壁を強くし、
植物に必須養分である窒素・リン酸・カリウムの
吸収調整をしてくれる機能がある。
細胞壁が丈夫になれば、それだけ菌の侵入を
防ぐことが出来る。
事実、新しくたてたハウスでは、
病気(特にウドンコ病・白サビ病)にかかりやすいが、
堆肥を入れ続けて20年くらいになるハウスでは、
そんな病気はほとんど出ない。
当然、その分農薬散布は減るのだ。
さらに過剰な窒素吸収を防いでくれるので、
よく問題視される硝酸態窒素についても
効果があると考えている。
当然、野菜の味にも違いが出るだろう。

照葉樹林のような団粒構造と
豊かな生物相を持つ土壌と
ケイ酸を豊富に含むことで
野菜が健康に育つ。
自然の模倣とそれを科学することが
僕らの土づくりなのである。

続く


関連記事
初夏を迎え、
田んぼでは田植えが忙しいこの頃。
少し汗ばむ日も多くなり、
体が夏野菜を欲しているのが解る。
こんな季節にピッタリな野菜がある。
それはズッキーニ。

農園では、今、
ズッキーニの出荷が
最盛期にかかろうとしている。

さて、そのズッキーニ、
皆さんはどう食べていますか?

我が家ではもっぱら『生』。
サラダで食べるのが多い。

P1050209.jpg

薄くスライスして、
しばらく水につけて、
オリーブオイルとチーズとナッツとミントを
トッピングして、出来上がり。
とてもシンプルなのだが、
歯ごたえもよく、この季節にピッタリの味。

農作業も忙しくなるので、
日中は大量に汗をかくようになる。
そうなると、
どうしても晩酌に飲むワインは
軽めの白ワインが多くなる。
そんなワインにもピッタリの味。

P1050268.jpg

白身の魚と一緒にカルパッチョにしても
美味しいだろう。


生に飽きたら、
中を少しくり抜いて、
そこにひき肉を詰めて、
蒸し焼きにしても美味しい。

P1050261.jpg

もちろん、ラタトゥユにしても良い。
施設栽培のトマトはこれからが旬だし。
沢山作り置いて、スープやパスタや
お肉料理の付け合せにして、
最後はカレーにして食べる。

ズッキーニは、初夏の味。
本格的に暑くなると、収穫量は減ってきて、
実が出来なくなる野菜。
これから暑くなっていく季節を想いながら、
短い旬を楽しみたい。



関連記事
インドネシア研修生の座学。
前期の必修は、農業構造比較論。
農業という表象だけを比べるのではなく、
それを支えている構造に目を向け、
それぞれを比較しよう、という座学。

今回は、自然資源について議論した。
ミクロな自然資源もあるが、今回は、
鳥の眼でそれぞれの地元を考察してもらった。

皆さんは、上空から自分の地域を
眺めたことはあるだろうか?
最近はネットの地図などでサテライト映像が
手軽に利用できるので、結構簡単に
鳥の眼で考察が出来る。
僕が協力隊隊員だった時には、
このネットサービスが無く、
その地域を一望できる高い山に登って
地域の地理的な把握をしたりもした。
その山を登るプロセスもとても大切なので、
時間があれば、ネットサービスだけに頼らず、
ぜひ近くの高台や山から
地域を見下ろしてほしいところだが、
今回はネットで考察のみ。

プレゼンを担当したのは
2年生のイラと1年生のジャジャン。
それぞれの地域のサテライト地図を出して、
地理的に考察してもらった。
1年生はさることながら、
2年生は昨年も同じ課題をやっているはずなのだが、
やはりこの鳥の眼で見ることに慣れていない様子で、
結局、地域全体の標高や平均的な勾配がどれくらいあるか、
などとなんだか良く解らないプレゼンをしていた。

ただ、川の流れや水源の場所などから、
水田になっている農地と果樹や野菜の農地が
地理的に影響を受けて分かれている点が
確認できたことくらいは、
まだこの考察の範疇だったと言えよう。
しかし、この鳥の眼の考察で大切なのは、
地域農業の生産様式が、
地理的にどう出来上がっているかを
考察することなのだ。
どこに水田があって、畑はどのあたりだけでは、
ちょっと浅すぎやしないか?

そこで質問を付け加えながら
それぞれの地域を一緒に考察してみた。
イラの地域では、「チレンブ芋」と呼ばれる
サツマイモの栽培が盛んだ。
チレンブ芋は、本来
チレンブ地区のさつまいものことだが、
そのお隣であるイラの住むランチャカロン地区でも、
その栽培が盛んなのである。
まず、産地が隣接しているので、
高値で取引されるチレンブ芋が
ランチャカロンでも盛んなのだろう。
さらに、チレンブ地区の火山灰土壌は、
なにも行政区域の区切りであるわけじゃない。
ランチャカロン地区にもサツマイモ栽培に適した
火山灰土壌の畑はあるのだ。
そこが、チレンブ芋栽培を支えている。
産地と市場とそれを生み出した土壌が同じという
地理的条件が成立して、
ランチャカロン地区の一部でも
チレンブ芋の栽培が盛んなのである。

では、ジャジャンの地区はどうか。
ジャジャンの故郷パシガラン村では、
伝統種の稲作が盛んだ。
あまり見られなくなったが、背丈が1m以上になる稲を
栽培し、その穂だけを刈り取る生産様式。
目の前の現象を伝統的だとみてしまえば、
それ以上進むこともないのだが、
もう少し地理的に考察をしてみよう。

パシガラン村には、東側に大きな川が流れている。
その川の豊富な水量があるため、
1年中米作りが出来るという。
緑の革命以来、効率性を求めた品種の場合、
たぶん1年間に3回栽培できるであろう。
だが、伝統種は栽培期間が長く、
どんなに水が豊富で1年中米作りが出来ると言っても
2回が限度だ。
だが、ジャジャンは言う。
「品種改良された高収量米よりも、伝統種は米粒が大きくて、食味も良いんです。1回の栽培での比較なら、新しい品種よりも伝統種の方が収量は多い」と語ってくれた。
ただ、新しい品種だと3回作れるので、
年間の収量を比較すると、新しい品種の方が収量は多いらしい。

でも、ジャジャンの村では伝統種を選ぶ。
それは、ほとんどの農家は米を販売のためではなく、
自家消費用と考えているからだと話してくれた。
農家世帯が持っている土地も1反程度しかないので、
販売したくても、余分がないとのことだった。
その一方で、山間の土地では、
たばこの栽培が盛んだという。
ジャジャンのおじいさんの時代から
栽培されているたばこは、それなりに換金性も高く、
その地区の主産業にもなっている。

このたばこ栽培に適した山間の土地と
それの市場(もしくは産地化に成功した経験)と
東側に走る水量豊富な川と
農家世帯当たりの水田面積の小ささが、
米の伝統種を栽培する生産様式を支えている、
と考察できる。
つまり、しっかりとした換金作物があるため
米生産に関しては、量よりも質(食味)を大切する
余裕があると言えるだろう。
さらに豊富な水量の川は、
気候変動で不安定になりつつある
雨季の長さの不安要素も排除できる。
3年生のクスワントの地区では、
川の水量が少ないため、雨季の短い時があることを考慮して
稲作では、栽培期間の短い新しい品種を栽培している。
本当は伝統種の方が美味しいと
解っていてもだ。
食味よりも、雨季が短いかもしれない
というリスク回避を重要視しての選択だ。
ジャジャンの地区では、それは無い。
だから、リスク回避よりも食味を重要視している。
環境がその地区に暮らす人々の志向に
大きく作用し、その価値観で農業の生産様式が
変化し、それが僕らの目の前に表象として
現れて見える。

鳥の眼でみると、
その変化が見えてきたりもする。
もちろん、これだけで説明できるわけでもないが、
一つの方法と言えよう。
しばらくは、研修生たちと一緒に、
鳥の眼で考察する練習をする予定だ。






関連記事
有志による勉強会の記録。
今回は、5月1日の大和のプレゼン。
本はこれ。

長谷川 英祐 著 「働かないアリに意義がある」。

とても興味深い本ではあったが、
繁忙期のゴールデンウィークの合間と
月はじめが重なり、
昼ご飯を食べる時間を削って仕事をしたが、
勉強会に遅刻してしまい、
プレゼンは半分くらいしか聞けなかった。
ちょっと残念。

さて本書はアリの社会を観察することで、
興味深い考察をしている。
よく働いているように見えるアリだが、
7割が巣で休んでいるとのことで、
さらに全体の2割のアリは、
まったく働きもしないのだとか。

アリは遺伝で「反応閾値」が決まっていて、
その全体の中でその数値が高い低いで
働かないアリが出来上がるらしい。
なので、働かないアリだけを集めると、
その閾値の高低差で、
働くアリと働かないアリに分かれるのだとか。

働かないアリも、よく働くアリに不測の事態が起これば、
その交替要員として活躍するらしい。
不安定な要素だらけの自然に対して、
アリが勝ち得た知恵とも言えるだろう。

これは人間社会にも言えることで、
多様な社会が
不測の事態に対して強いとのことだった。
プレゼンを半分しか聞いていないので、
認識にずれがあるのかもしれないが、
ちょっとその話は、昇華しすぎではないだろうか。

多様な人材の社会が不測の事態に強いのは、
アリの社会から見た交替要員と言う意味ではなく、
ある方向性から見たら、
まったく生産性の無いことを
しているように見えることでも、
複雑な社会で起こる「不測」の多様さと
マッチしてくることなんじゃないか、と思う。
遺伝的に決まっていると言われると
なんだか運命決定論的で、
ちょっと僕としては受け入れがたいかな。


関連記事
インドネシア研修生の座学は、
今期もすでに始まっている。
新しく来たジャジャンと
2年生のイラ・ダルス対象で、
農業構造論という授業をしている。
農業と言う表象を支える構造は何か?
それをここ福井とインドネシア・タンジュンサリ近辺を
比べることで、単純な近代化論的
発展の未来想像図を打ち破り、
地域特有で個性を活かした発展の在り方を
見つけるヒントとしている。

さて、先日議論したのは人的資源。
ジャジャンはなかなか優秀だ。
彼の地域の農業を支えている人的資源と
日本のそれとを比べてペーパーにしなさいと
宿題を出していたのだが、
教育の統計データを載せて、それを基に議論していた。
日本は高学歴で
インドネシアは小学校どまりの人口もまだまだ多い。
新技術への対応の早さやその運営などについて、
教育レベルがある程度影響しているのではないか、
という意見は、まぁ、ある程度は当てはまるだろう。

他の研修生も、ジャジャンと似たり寄ったりで、
人的資源として「学校教育」について論じていた。
さて、果たして学校教育=人的資源なのだろうか?

ちょっと昔話をしよう。
僕が協力隊員だった時(1998年)、
村人への新しい技術普及として県事務所から
「赤わけぎ」栽培普及を命じられていた。
新しい作物だったため、栽培技術を研修する必要があり、
先進地だった東ジャワへ農家と県職員を送るプログラムだった。
僕の前任から続いているプログラムだったが、
研修に送ってもなかなか技術が定着しないのが
悩みだった。

その時の農家のセレクションは、
県の事務所と協力隊隊員で行っていたが、
その条件の一つが、
高い教育を受けていることが条件だった。
確かに、研修は座学も多く、
読み書きが出来なければ、そもそも研修にならない、
と思うのは普通だし、
理解力と言う意味で高い教育は必要かもしれない。

だが、僕の時は、この条件全てを
取っ払ってしまった。
そもそもセレクション自体を
県も協力隊もノータッチで、
住民グループの投票で決めてもらった。
その代表者がみんなの代わりに研修を受け、
技術を持ち帰ってくるというミッション性を
うーーーんと高めてからの投票だった。

そうして選ばれた農家数名の中に、
小学校を卒業していない農家が入っていた。
さすがに僕は困惑した。
読み書きが出来なければ、座学についていくのは
難しいだろう。
研修では毎日レポートや宿題も出るので、
それをこなすことも困難ではないか。
そんな不安を住民たちに伝えると、
彼らは笑ってこう答えた。
「彼は(読み書きのできない農家)、この村で野菜の栽培が一番得意なんだ。観察や経験が優れていて、初めての野菜でも上手に作る。研修に行く場所は、赤わけぎの産地なんだろ?だったら彼は、その周りの畑を見学して、農家と意見交換して、いろんな情報を持って帰ってくれるさ。確かに座学は厳しいかもしれないけど、実習もあるんだから、彼はその実習でしっかりと栽培法を学んでくるから大丈夫だよ」。

研修はある程度の学力が必要だと、
色眼鏡で見ていたことを
この時、気が付かされた。
確かに、大学の農学部を出ても
農家として立派にやっていけるかどうかなんて、
全く保証してくれない。
観察する視点を学問は養ってくれるとは思うが、
経験はそれ以上に養ってくれる。

事実、その彼は研修中に
積極的に農家から情報収集をして
研修所では教えてもらえない栽培のポイントを
持ち帰っていた。
彼が所属していた農家グループが、
その後の栽培でもっとも収量が多かったのも
偶然ではないだろう。

彼は、
県や僕らの偏見に満ちた眼差しで
農村の人的資源を考えていた時には、
決して出会えなかった人材と言えよう。

こういう多様な人材に出会えることこそ
人的資源を議論する意味があると
僕は思っている。
僕らはごく当たり前に、
学歴と社会での活躍は一緒じゃないと
解っているつもりだろう。
だが、
研修に読み書きができない人が、
場合によっては適当だと思えるだろうか。
あなたにも
人的資源=学校教育だという視点が、
どこかにこびりついていないだろうか?




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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