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西洋カブの花蕾を
なばなとして栽培してきたのだが、
そろそろそれも終わりに近づいてきている。

というのも、暖かくなってきたので、
収穫するよりも花が開花する方が
早くなってきてしまったからだ。

だからといって、
花が咲いてしまったら、
なばなは食べられないわけじゃない。
もちろん、市場価値は無くなってしまうので、
出荷はできなくなるんだけどね。

でもでも、
この少し花が咲いて居る位の方が、
実は春を感じられて、僕は好きだ。
花が咲いたなばなを
集めのベーコンとキノコと一緒に
パスタにしてみた。
独特の苦みと香り、
そして黄色の可憐な花が美しく、
食卓が一気に華やかになった。

少し暖かくなって、
農作業で汗をかくことも多くなってきた。
そんな体に白ワインが心地よく沁みる。

そんな晩ごはんだった。


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僕らのプログラムでは、
インドネシア研修生は、
農業だけを勉強するわけじゃない。
日本語もそうだが、料理を学ぶ講座もある。

昨年までは、週1回ペースで行ってきた料理教室。
簡単に作れるレシピで、
日本食に挑戦する講座だ。
この講座の発案は、
昨年4月からスタッフになった佐藤君。
農園に就職が決まってから、
アパートが決まるまでの2週間、
インドネシア研修生と寝食を共にした。
そしてその時に、
インドネシアの子たちが、あまり大したものを
食べていないことに気が付いたらしい。

栄養改善の必要性があるな、と
僕も常々思っていたところに、
昨年の夏、タタン君が入院する騒ぎがあった。
免疫が落ちていたらしく、
足に入ったばい菌が膿んでのことだった。
その時の先生のアドバイスに、
栄養改善もあった。

そんな経緯もあって佐藤君が、
料理教室を受け持つことになった。
そして、先日(3月22日)、
料理教室の最終試験が行われた。
研修2年生と3年生が、それぞれ一品を作り、
それについてプレゼンをする試験。
ちなみに、僕らの研修プログラムすべてに
評価をつけて証明書を発行している。
何を学んだか、をきちんと証明することも大事なのだ。

余談はさておき、
この試験にタタン君は、キャベツと油揚げの料理、
そしてクスワント君は、お好み焼きで挑んだ。
どちらも春キャベツが美味しくて、
味はとても良かった。
ヘルシーだったし、インドネシア人が食べても
美味しいと思える料理だったのが良かった。
さらにそれぞれのプレゼンでは、
野菜や料理の栄養などが説明され、
とても良く調べてあったと思う。

ちょっと前まで、
料理と言ったらジャガイモを煮るくらいのモノしか
食べていなかった子たちが、
美味しくて、しかもその機能までもきちんと
説明できることに驚きと感動があった。
それらは、
インドネシアの研修生たちの努力もさることながら、
それを指導してきた佐藤君の成果とも言えよう。

ここまで出来ると、僕も少し欲が出る。
料理のプレゼンで、キャベツの栄養や機能は
良く解ったのだが、
キャベツをせっかく扱うのなら、
そこに「春キャベツ」の意味をもっとこめてほしかったな。
季節と郷土と共にある料理。
そんな視点で彼らが味わい、そして
人に説明できれば、
僕は満点をつけただろう。
いずれにせよ、
本当に楽しかった最終試験だった。


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3つ目の記録は、
3月20日開催の
農園のスタッフ・佐藤のプレゼン。
本は、これ。

眞鍋 穣 著 『そうなんだ!アレルギー』:しくみと対処法をしる。

佐藤君自身アレルギーを抱えていて、
その仕組みについて知りたいとのことで、
この本をプレゼンしてくれた。

アレルギーが発生するメカニズムについても
説明があったが(IgE抗体が原因)、
議論の中心は、なぜアレルギーが増えているのか、だった。

本を直接読んでないので解らないのだが、
佐藤君のプレゼンでは、
食品汚染による複合汚染というのが主だったように思う。
輸入食品によるポストハーベストにつかわれる農薬や
食品添加物などで、アレルギーを起きやすくさせる
アジュバンド効果というのものがあるとの指摘もあった。
また早期離乳による乳幼児の影響などの指摘もあった。

農薬や食品添加物を標的にする話は
これまでも多く読んできたし、
「農薬」「食品添加物」といったカテゴライズ自体に
恣意的だと感じているので、
それらのモノ自体が直接的な原因なのかどうかは、
僕としては眉唾に思えてしまう。
ただアジュバンド効果は不勉強だったので、
もしそう言うものがあるのだとしたら、
どの化学物質(天然であろうが人工であろうが)が
そう言うものを引き起こすのか、少し勉強してみたい。

また早期離乳原因説だが、
母乳ではなくミルク神話の中で
育った僕ら世代から見たら、
早期離乳を原因とする考え方は、
ちょっと説得力は薄い。
(僕ら世代よりも今の方がアレルギーが増えているのを説明できない)。

ただ言えることは、
食品との関連では、
やはり腸内環境に影響をするということだろうか。
添加物が多ければ、雑菌が繁殖しない。
殺菌剤を多用すれば、農産物に付着する菌も減る。
うちの農園のように堆肥でしっかりと土づくりをすると
その農産物に付着している菌は、
他の農園のモノと比べて2倍以上だったりもするのだ。
あっでも、厚生労働省の基準値内なのでご安心を。

Facebookでもシェアしたのだが、
腸内環境が免疫や神経・脳に与える影響が大きいというのは
僕も勉強を重ねてきて感じていることの一つ。

腸内環境とその関係のリンクはこちら

食べ物が危険と言うよりも、
それによって回避されるリスクが、
逆に腸内環境を整えるのを阻害している可能性が
あるのではないかと最近は良く思う。
アレルギーは、
手軽さとリスクを許さない社会が生み出した病のように
僕には見えてならない。
ぜひ、佐藤君にはこの路線でプレゼンを続けてもらいたい。

今回、こうして3つの勉強会を
一挙に記録したが、
それぞれに通底するテーマがあることに気が付く。
僕らの生活環境は、
過度な利便性と合理性、
そして予測可能でゼロリスクの思想に
すっぽりと覆われている、ということ。
その思想に何を持って抵抗したらいいのか、
僕も考えさせられた。


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もういっちょ!
今度は若手のホープ、
小西くんのプレゼン(3月13日開催)。

本は、これ。
山下惣一 編著 『安ければ、それでいいのか!?』

でた!山下惣一!
これだけ沢山、農業勉強会をしていたのに、
今回が山下惣一初登場というのが、なんだか新鮮!
僕が大学生の頃だったら、
一番初めに出て来そうなものなのに。
これも時代か???

「安いモノには裏がある」的な、
やや暴露本に近い。
マクドナルドのハンバーガーは安いが、
原価65円のハンバーガーが
どう作られているのか、などが解説されていた。
そこには食べ物を食べ物として
扱っていないのではないだろうかと思うような
生産ラインが存在している。
長く伸びきったグローバルバリューチェーンの中で、
作り手と食べる側とは、
何の意識もなく、合理的な生産と消費にのみ従事する。
だから、それらが食べ物だろうが無かろうが、
特に意識にのぼってこないのだろう。

そして興味深かったのは、
勉強会に参加している20代の若い人たちにとって、
「だから、それが何?」的な感覚だった。
高い物なんて手が出ないし、
安くても安全とそれなりの品質が保たれていると
判断すれば別に問題じゃないんじゃない、
というその感覚は、
ある意味、至極まっとうな意見でもあり、
まさに僕らがそこから突き進めなくなっている点でもあろう。

僕らの消費行動は、
すでにそのモノの由来や
そこにある文化的なモノをあまり必要としなくなっているのだ。
というか、たぶん、
ずいぶん前からそれらはあまり必要ではなくなっていたのに、
あたかもそれが必要だという言い回しが、
行き過ぎた合理的な文脈の中で、
それを批判する唯一の手のように
擦り切れてしまうくらい再生産を
繰り返してきただけに過ぎないのかもしれない。
便利で合理的で、そして安い。
それは予測可能で、期待通りで、
イレギュラーとリスクを許さない、
そんな社会的な文脈のどこがどう間違っているのか、
感じることもないのかもしれない。

その感覚からはみ出そうと考えても、
科学と合理的かつ論理的思考に、
いとも簡単に否定される。
だから小西くんの安い物なんて
もう買わない、という感情(プレゼン)は、
あまり共感を得ないまま終わってしまった。

90年代後半に同じような議論をしてきた僕は、
ここ20年ばかりで、こんなにも議論の色合いや風景が
変わってしまうことに驚きつつも、
ジョージリッツァを今一度、読み返す必要性を覚えた。
僕も、もう少し力をつけ直して、
この問題に挑もうと思う。

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勉強会の記録が遅れ気味。
そこで一挙、3週分を記録してしまおう。
本当は、倉友君のプレゼンからだが、
その回は途中参加のため、レジュメもなく、
記録を断念。

ということで、その次の
山岸くんのプレゼン(3月6日開催)。
本はちょっと変わっている。
伊沢 正名 著 『くう・ねる・のぐそ』。

題名の通り、のぐその本。
著者は大真面目にのぐそを薦めている。
僕らは排泄物がどのように処理されて、
最終的にどうなるかをほとんど知らない。
本書では、人の排泄物量は1日に200~300gで、
年間に100kg近くなると試算している。
その排泄物は、処理場に送られ、水分のみ河川に放流され、
そして残りの汚泥は重油や天然ガスなどを使って焼却されて、
その灰はセメントなどの原料として使用されるらしい。
つまり、僕らの排泄物は大量のエネルギーを使って、
リサイクルするシステムになっている。

しかし、著者はキノコ写真家として山に入り、
仕方なくあちこちでのぐそをしてきた経験から、
排泄物がどのように分解されていくかを知り、
その素晴らしさを伝えようと活動している。
排泄物に集う動物や昆虫、そして菌類。
それは自然のエコシステムによる
無駄のない分解のストーリーなのだ。

僕らは自然から食べ物を得て、
そしてそれを排泄する。
だのに、排泄物は自然には帰さない。
著者はそれを批判していた。

生々しい排泄物の写真などが満載されており、
あまり人にはお勧めできないが、
僕らの生き方の底に蓋されている考え方を
排泄物を通して明らかにしようという前衛的な本であり、
またそれを感受しての山岸君のプレゼンだった。

議論は、「のぐそ」に引っ張られてしまったけどね。


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今、僕の中で、ニンジンが面白い。
昨年の秋に、いつも通り、ニンジンを播いた。
ムラサキやオレンジ、黄色のニンジンだ。
そうしたら、ムラサキとオレンジのニンジンは、
播種直後にゲリラ豪雨に合い、
すべて種が流されてしまった。
黄色ニンジンは、その3日前に播いてあったので、
豪雨の影響もなく、すくすくと育ち、
今年の1月から順調に収穫できた。
しかし、ムラサキとオレンジのニンジンは、
その後播きなおしたのだが、
大きくなる前に冬を迎え、
細くて小さなニンジンにしかならなかった。

市場出荷の栽培だけの話なら、そこでお終い。
失敗したね、豪雨なんてついてなかったね、
で終わるのだが、
食べるまでを考えると、もう少し先まで
話が続く。

その細くて小さいニンジンをかじってみると、
とても甘くて、皮ごと食べても臭みもなく、
そして美味しかった。

そこで縦にスライスしてみると、
ムラサキや黄色、オレンジ色のグラデーションが
とてもきれいで鮮やかだった。

これを味わわない手は無い。
ということで、さっそくクリームチーズと
フェンネルと一緒にサラダに。

ぶっとい人参には無い、繊細な味と、
その色の美しさ。
どこの誰だい、小さなニンジンは失敗だと決めたのは??

自然と付き合う僕ら農民は、
いつも自然に振り回される。
ゲリラ豪雨はどんなに気象情報を集めても
いつ来るのか良く解らない。
種が流された時、
そして播きなおしたニンジンが
大きくならなかった時、
経営的な損失ばかりを考えていたが、
自然に寄り添って、
足もとの小さなニンジンを食べてみると、
そこにも豊かさがあることに気が付く。

イレギュラーに怯え、
リスクばかりを回避する癖がついている
僕ら現代人をよそ目に、
偉大な自然が気まぐれにくれた
その繊細で美しく美味しいニンジンたち。

少量ですが、
直売所やおまかせ便で販売します。
皆さん、一緒に
自然の気まぐれを楽しみませんか?


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こういうニュースには、敏感になる。
「社長ら2人を殺害容疑 中国人実習生逮捕」
(毎日新聞3/15)。

広島で起きた悲しい事件だ。
インドネシアの研修生を受け入れているので、
他人事ではない。

福井でも、今年の2月に実習生が
配属先で暴力をふるったとして、
ニュースになっていた。
その時は、インドネシア人と言うこともあり、
すこし周りでも話題にもなった。

こういう時、僕がいつも思うのが、
一時受け入れ機関(いわゆる協同組合)の方々は、
一体何をしていたのだろうか、ということ。
僕ら二次受け入れ機関から監理費と言う名目で、
毎月多額の金額を請求される。
僕の農園では独自の研修プログラムを作り、
座学のカリキュラムと卒業研究、そして帰国後の事業計画作成など
ただ単に技術だけでない支援プログラムも用意している。
そんな場合でも、現行制度では、
協同組合に監理費を毎月収めないといけない。
僕よりもインドネシアに精通していて、
座学や実習に的確なアドバイスを頂けるのであれば、
その費用も致し方ないが、
現実には、そんなことはあまりない。
まぁ、うちは実質独自プログラムだし、
選抜や事業全体で独立性が高いので、
名目上の監理費なのかもしれないけど、
その他の第2次受け入れ機関では、
その実習生の国に精通している人は、
少ないだろうから、この「監理監督」が大切になってくるはずだ。

異国で生活するのは、
息を吸っているだけでもストレスに感じるものだ。
ましてや慣れない仕事に従事する場合は、
そのストレスは計り知れない。
農園でも、同じ作業を僕ら日本人と行っているが、
研修生だけが体調が悪くなることが多い。
医者の意見では、異国で生活する
ストレスが原因なのでは、とのこと。
症状が重ければ、しっかりと治療を受けてもらい、
復調するまで十分休息をとってもらうのだが、
その間のメンタル的なケアにも気を遣う。
僕にも経験があるが、
入院や通院も外国人にはとてもストレスフルな作業なのだ。

職場では、文化的な違いや言葉の問題で、
かならずミスコミュニケーションが生まれる。
その会話のズレは、双方にとってとてもストレスになる。
それをファシリテートできる人がいない限り、
今後、今回の事件は繰り返されるだろう。

外国人研修生を安い賃金と思っている経営者にも
問題大ありだが、その間に入る協同組合は、
監理費に見合うサービスを提供すべきだ。
「研修」としてのミスマッチが生まれる構造は、
労使双方の情報不足とコーディネート不足、
そして「長期海外研修制度」の形骸化というか、
完全に脱法的な制度設計によるものだと思う。
奇しくも、広島の事件が起きた次の日に
総理がTPPの参加表明をした。
フリートレードエリアは関税だけの問題じゃない。
そのエリア内では、物だけでなく、
金と人が自由に行き来するような制度設計なのだ。
僕らは、どう異国の人たちと共存するのか、
その覚悟をしっかりと持たないといけない。
ただ単に、南北問題を上手(?)に利用した
格安労働力とみなしていると、僕らの社会に未来は無いだろう。

広島の事件が報道された日、
僕らは、農業とグローバリゼーションの授業の
最終試験をしていた。
3年生のタタン君の発表があまりに素晴らしく、
地域を愛する眼差しと深い洞察、
そして僕ら異国人同士がどう付き合っていけばいいのか、
多くの示唆に富んでいた。
付き合い方を変えれば、僕らは多くのことが学べるんだ、と、
僕は声を大にして言いたい。
早く、みんなもそのことに気がついてくれたらいいのだが。


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もうすぐ帰国のタタン(2010年来日・第3期生)。
その夢は大きく膨らんでいる。

先日、最終の月間レポートをタタンは仕上げてきた。
彼の夢は果樹栽培とその販売。
3年生の卒業研究では、以前エントリーでも書いたが、
福井の果樹農家や市場、そして消費者の動向を
インドネシアと比較した研究を行った。
どうすれば、またどのような条件が揃えば、
僕たち農家は自由に、
そして豊かに農産物を生産し、
納得価格で販売できるのだろうか、
という、全世界中の農家が夢見ることについて、
タタンは一定の成果を報告してくれた。

そのタタンが、自分の営農について、
月間レポートで語ってくれた。

彼は以前からの計画通り、果樹農家を目指すのだが、
その品目の中心の一つにヤシの実を上げている。
それも若い実で、ヤシジュースの飲める実の
生産と販売に力を入れたいようだ。

僕らが南の島をイメージするときに、
欠かせないアイテムの一つが
ヤシの実のジュースだろうが、
思ったほどヤシの実ジュースは巷にあふれてはいない。
ジャカルタやバンドンの都会などで、
オシャレなショーウィンドウで、
ヤシの実を抱えながら、
そのジュースを飲む若者像は
存在しない。

そんな彼ら彼女らが飲む飲み物は何か?
それは、水のペットボトル。
ペットボトルの水が特別安いわけじゃない。
その方が便利と言うこともあるのかもしれないし、
気軽に手に入るというのもあるだろう。
後の処理も楽だし、すぐに飲める点も有利だ。

しかし水のペットボトルは、そこだけでなく、
インドネシアの生活の隅々までに入り込んでいる。
村の結婚式や会議、
簡単な屋台での食事まで、
ペットボトルの水が幅を利かせていることに
タタンは異議を唱えていた。
僕からすれば、ちょっと滑稽だったが、
身近な飲み物だったヤシの実ジュースの復権とでも
いうんだろうか、
彼は結婚式や会議のケータリング業者などに
売り込みをかけて、
ヤシの実ジュースを飲むのをスタンダードにしたい、と
どこまで本気なのかわからないが、
熱弁をふるってくれた。

しかし、
会議用の長机に座った、
ネクタイを締めた小難しい顔をした大の大人の前に、
ずらりとヤシの実にストローがささっている現場は、
ちょっと想像するのが難しい。

タタン君は、もともと直売を志向しており、
果樹園に併設する予定の直売所レストランで、
ヤシの実ジュースを売るのがヤシの実販売の主流においている。
ケータリング業者とはどこまで上手くいくかわからないが、
彼ららしい新しい発想も、またありなのかもしれない。
でも僕には、理解できないけど。


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有志による勉強会の記録。
2月20日(水曜日)の勉強会は、大和の番だった。
選んだ本はこれ。

佐川光春 著 『牛を屠る』

屠殺場で働いた著者のドキュメンタリー。
のちに小説家に転じた著者だけあって、
重いイメージの現場のドキュメンタリーを
スラスラ読めるような平易な文章でつづられているらしい。

僕たちは当たり前に、
毎日肉を食べる。
スーパーにも食べきれないほどの
肉が並んでいる光景も当たり前だ。
そしてそれが生き物だったという過去と
美味しいお肉という目の前の事実とは
情報が分断されていて、
僕らは過去を意識しながら、それを食べることは少ない。
いのちを食べるという意識すら
薄いかもしれない。

勉強会の議論では、
生き物を殺して食べるその行為について
集中して議論がされた。

メンバーの内、数人は自分で鶏を絞めて
食べたことのある経験があるが、
豚や牛となるとほとんどいない。
僕は協力隊の時に住んでいた山奥の村で、
牛を結婚式用に屠殺したのを
間近で見た経験がある。
村の親友のいとこ(双子)が
同時に結婚式をすることになり、
その時に牛を屠殺した。
葉のついた木の枝に水を含ませ、
それで牛の頭を何度もたたいて、
牛がもうろうとしてきたころに、
丸太の一撃が入り、
鋭い刀を首元に突き立てた光景は
今でも目に浮かぶ。

ちなみに、子供への割礼の儀式でも
村で行った場合、麻酔を使わず、
この葉のついた木の枝に水を含ませ、
それで何度も何度も子供の頭を
軽くたたいて、行っていた。
ビシャビシャの水浸しになるのだが、
その単純な繰り返しの行動が
だんだんと生き物の意識をもうろうとさせるらしい、
というのは余談。

さて、鶏を絞めるにしても、
始めはなかなかおっかなびっくりなのが
正直なところだ。
無事、血抜きを終えれば、
熱湯につけて羽をむしるのだが、
その工程を過ぎたあたりからは、
俄然、食欲がわいてくるから、
人間ってやつはなかなかの強欲だ。
羽をむしると、鶏じゃなく、
それが「肉」に見えてくるからだ。
食べる時は、もう鶏の意識は少ない。
肉を食べ、談笑し、酒を飲む。
そんな日常になっている。
ただ生き物をつぶして食べたという実感が
心の中に沈殿するのは事実だろう。

生き物をさばいて食べるような機会も
必要なのかもしれないと議論にもなったが、
なかなか子供に見せられるような光景じゃない。
事実、協力隊で住んでいた村では、
子供が屠殺を覗くのはご法度だった。

また屠殺の現場についても少し議論になった。
僕が居たインドネシアの村では、
イスラム教の地位の高い人が屠殺をしていた。
そういう人じゃないとできないような雰囲気だった。
だが、日本の歴史では、
部落出身者による差別的職業の象徴でもあった。
インドネシアでも街にあふれている肉は、
どこかの精肉場で生産されているのだろうが、
そこで働く人たちのステータスは
いったいどういう人たちなのか、
新たな疑問もわいてくる。
また命と言うよりも
効率よく食料を生産する現場において
効率性と合理化を推し進めすぎた結果、
そこに「命」が伴わない、ただ単なるルーティンな作業場と
化していること自体も、
僕らの食卓に並ぶのが命ではなく
ただの肉ということにも影響しているのかもしれない。

大和のプレゼンで、著者の命についてのくだりが紹介された。
「『いのち』などという目に見えないことについてあれこれ語るよりも、牛豚の匂いや鳴き声と言った、現実に外にはみ出してしまうものをはみ出させたままにしておくことの方がよほど大切なのではないか」と著者はいう。
屠殺場では、匂いや鳴き声が外に一切もれないように
厳重に管理されているとのことだった。
匂いも鳴き声もしない。
つまり僕らは『いのち』を知覚できないまま、
その肉を喰らうのである。

議論の最後は、
生産の現場と食卓との乖離だった。
僕ら生産の現場のリアリティは、
食べる側に一体どれだけ伝わっているのだろうか。
合理的で効率的な現代社会において、
それは伝わる必要が無い事なのだろうか。
僕らは、その波にあがらい、
伝える努力をし続ける必要があるだろう、と
今回の勉強会を締めくくった。



関連記事
Yayasan kuncup harapan tani 耕志の会 の
ニューズレター第4号の編集がようやく終わりました。

関心のある方、ぜひ下記のリンクからご一読くださいませ。

ニューズレター第4号

上手く読めないという方は、
ご連絡いただければ、
PDFデータでE-mailにて送ります。

サポーターも随時募集しています。
関連記事
1年も僕と一緒に農業をすると、
インドネシア研修生たちは、
いろんなことを考え、吸収する。
1年生のイラ君がそうだ。
彼のこの1年もダルス君のように
振り返ってみるか。

彼は、来日当初から
「僕は帰国したらベビーリーフをやりたい」
と月間報告書で書いてきていた。
インドネシアでもそれに近いものが、
ちらほらと見受けられるようになっているようで、
もちろん、食べやすくて、調理が簡単で、
手軽に食卓を飾ることのできる食材は、
それを支える技術や価値があるところでは、
僕らが思っている以上に浸透するに違いない。

だが、それを支える「技術」と「価値」は、
彼らの生活の近くに存在するのかどうか、
僕もわからないまま、過ごしてきた。

この1年、月間報告書と自主学習を通して、
彼は地元の気候でも栽培できそうな
そして若どりしても美味しい野菜をピックアップした。
その多くはレタス類で、
サラダで食べておいしい野菜ばかり。
種も地元で手に入るものばかりで、
雨よけにするかどうかの検討もしてきた。
こういう栽培の勉強は、彼らは御手の物だ。

そして、たいてい次は、マーケティングになる。
どんな市場を狙うのか、どういうプロモーションが必要か、
といった、ビジネス本に書いてあるような方向に向かう。
イラ君もその例外ではなかった。
彼は、少し抽象的なマーケティングの勉強から始めていた。
いわゆる経営学などに解説されているような
マーケティングの勉強の成果が、
月間報告書の中で、ここ半年ほど続いていた。

それは悪い事じゃないが、
抽象的な議論、たとえばマーケティングのコンセプトとして
生産・場所・価格・プロモーションなどに分析する議論を
延々と繰り返しても、
逆に彼のリアリティから
どんどん離れていってしまうような気がしてきた。
そして、この1月に彼の故郷である
ランチャカロン村を訪れた時に、
その乖離を確信した。

彼は頭がいい。
だから、ちょっと難しい経営学の理論なんかも
上手に利用して、それに合った部分だけを
報告書で抽象的に書くことが出来る。
なんだかしっかり勉強しているようにも見えるが、
実はそこにはリアリティがない。
世の中の秀才たちが上手くいかない理由が
この辺りにあるんだろうな、とたまに思うのは余談。

他の座学もそれなりにこなし、
彼自身、自分のプランも冷静な目で
見られるようになってきたのが昨年末ごろ。
だから、もう少し販売のイメージを
報告してほしいと注文をつけていた。
そして先日の報告書で彼は、
「ベビーリーフを消費者に直接販売する直販をやりたい」
と書いてきた。
農業とグローバリゼーションという授業の
影響もあるのだろう。
伸びきったサプライチェーンについて、
イラ君もいろんなことを考えているようだ。
そして、それは上級生も同じだ。
彼らにとっても、生産と販売は大きな課題でもある。
すかさず彼らから突っ込みが入る。
「イラが生産をするのなら、誰が販売を担当するんだ?」
「直接販売するための輸送手段は?」
などなど。
イラ君は、まずはバイクを買って、
顧客も数件の小さな規模から始めたい、と言っていた。
小規模を僕は否定しない。
でも、最低生活していける、
最低生産を続けられる規模ってやつはある。
バイクは、銀行のローンも充実しており、
社会にも広まっている分、
とっつきやすい輸送手段なのだろうが、
残念なら運べる野菜の量は多くない。
彼の言う小規模が、
その地域に合うのかどうかは議論の余地ありだ。

次に、ターゲット(顧客)。
直接販売する相手は誰かだ。
イラ君は、簡単に、近くの町や村の人と答える。
だが、それは一体誰なんだ?
ベビーリーフは、萎びやすい。
当然、熱帯では冷蔵庫での保存は欠かせない。
残念なら、彼の村で、もしくは近くの町でもいいが、
一般の庶民が冷蔵庫を持っていることは少ない。
実はこれが上記の「技術」の一部分。
そして、「価値」。
近くの町の人は、毎日サラダを食べる習慣があるのだろうか。

なので、僕は来月までに、もう一つ注文を付けた。
君の故郷・ランチャカロン村のリアリティがもっと反映した
プラン作りをしてみてください、と。

もっと上手に議論が出来る人ならば、
ここまで来るのに1年もいらないのかもしれない。
彼らが、彼らの持っている常識(受けた教育)から少し逸脱し、
自分の地域のリアリティに近づくには、
僕の力ではどうしてもこれくらいは時間がかかってしまう。

さて、これでダルス君もイラ君も準備は整った。
2年目は、彼らの地域のリアリティの中で、
もっともっと突っ込んだ議論を繰り返していこうと思う。




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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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