今年ももうすぐ暮れる。
ということで、気忙しいが、
今年を振り返ってみようか。
恒例の10大ニュース。

10位:初ニューズレター発行。
インドネシア農業研修プログラムの卒業生を
支援する会『耕志の会』のニューズレターを
ようやく今年から発行。
今年は忙しい中、3回発行。
卒業生や研修の様子をもっと多くの人に
伝えられたら、と思う。

9位:高志ミドリクラブを抜ける。
若手農業者が集う会(4Hクラブ)を今年抜けた。
協力隊から帰国した翌年(2001年)から
このクラブに所属していた。
入って間もないころは、ずいぶん周りからも
嫌われていたようにも思う。
名指しで罵声を浴びたり、
ケンカもした。
まぁ、喧嘩を売っていたんだから
しょうがないか。
いろんな経緯があって、2008年に
クラブのみんなと保育園とで体験田んぼを主催した。
人が協働して楽しい空間と時間を作り出すマジックを
協力隊以来、僕は再び体験した。
それに合わせて自分や他人も
成長するような時間。
この活動から、僕は多くのことを学んだ。
クラブの皆さん、
生意気でビックマウスの僕を
受け入れてくれてありがとう。
本当にお世話になりました。

8位:講演・ワークショップ・シンポジウムに出る。
今年は国際協力関係のワークショップで
話をする機会をそれなりに頂いたような気がする。
協力隊経験を話すのではなく、
今やっている研修プログラムや
地域づくりに関する話で、有意義な意見交換が出来た。
来年もいろんな方とディスカッションできたら
素敵だなぁ。

7位:インドネシア新研修生(5期生)来日。
今年2月、新研修生が来日。
今年は2名。
農園の諸事情やタンジュンサリ農業高校からの
強い要望で、一度2名の受け入れをしてみることにした。
そして、その2名に、イラ・ソバルナがいた。
彼は2008年に福井農林高校へ交換短期留学で
来日しており、その時に僕の研修を目の当たりにした。
彼が短期留学を終えて帰る時に、
「僕も田谷さんの研修に参加したいです」と
言っていたのを覚えている。
そして、研修参加可能な年齢になった彼は、
仕事を辞めて、この研修に参加してきた。
こういう巡り合わせは楽しいが、
それ以上に重い責任も感じる。
一層、充実した研修を創り上げていこうと思う。

6位:イルファン(2期生)帰国。
インドネシア研修生の2期生イルファンが、
4月に無事研修を終え、帰国。
最後の1年でぐっと成長したイルファン。
そして、今いる研修生の中でも
最も苦労人のイルファン。
帰国しても、日常に埋没することなく、
ここで語り合った夢に向かっていってほしい。

5位:たくさんの方が農園を来園。
今年はお客さんが多かった。
9月から11月までは、毎週途切れることなく、
誰かは見学にやってきた。
レストランのシェフや
野菜を買っていただいている方だけでなく、
農業や国際協力に興味がある大学生、
それらを研究している大学の先生、
放送部の大会で僕を取材したいと来た高校生たち、
公民館の講座で環境を学んでいる方々、
海外で活躍している国際協力実践者、
地域づくりで実績のある方々、
果てには、
インドネシア大使館の農業担当官や
JICA理事までも来園。
さらに、どういう伝手だったのか、
アメリカ国務省の方までも!?
とにかくお客さんが多かった1年。
来年も沢山の人が農園に遊びに来てくれますように。

4位:勉強会の主催。
農業や地域づくりに関心のある方を集めての勉強会。
毎週、1人ずつ持ち回りで読んだ本を発表する
ゼミ形式の勉強会。
今年は33回開催。結構やったのね。
酒なし、飯なしの勉強会。
こんなタフな勉強会に来る連中は、
本当にモティベーションが高いと思う。
こういう連中が、次の時代を創るんだと、
僕は確信している。
来年も農業や地域について熱い議論を重ねられたらと思う。

3位:娘、小学校へ入学。
ある意味、これが1位でも良い。
なぜなら自分の生活サイクルが随分と変化したからだ。
保育園のようにゆっくり登園&
夜遅くお迎えなんて出来ないからだ。
保育園は、こちらの生活に合わせて保育、といった感じだったが、
学校は、学校の時間に合わせて生活を変える、
といった印象。
そして、小学校に入ると娘は一気に
「小さなお母さん」になった。
休肝日にビールを飲むと怒るし、
お手伝いをしてくれる機会も増えた。
物分りもずいぶんと良くなった。
たぶん、いろんなことを我慢しているのかもしれないな。
1人のしっかりした人間として認め、彼女に合わせて
自分の生活も変えないといけないな、と思った1年。

2位:妻の海外出張。
娘も小学校に入って、しっかりしてきたこともあり、
妻の出張も徐々にだが増えている。
それで良いと思う。
彼女と結婚するときに、妻の周りの方々から、
「小國を福井に閉じ込めるようなことをするな」と
くぎを刺されたことを僕はまだ覚えている。
彼女でなければいけない仕事がある。
だから、結婚や出産でその機会が失われてしまってはいけない。
今年、短期だったが彼女が単独で久しぶりに
海外に調査に出かけた。
来年もそういう機会が増えると思う。

1位:協力隊OBの農園就職。
ボリビアに協力隊で行っていた佐藤くんが、
4月から農園で働くことになった。
協力隊帰国者に出していた求人を見て、
東京から福井に来てくれた。
常々、協力隊経験者を
この地域に埋め込んでいきたいと思っていたので
彼の就職は嬉しかった。
昨年、農園に来てくれた大西君も
今年はずいぶんと充実していたように思う。
本当に優秀な人材が揃ってきたように思う。
それぞれの想いをここで一緒に花咲かせられれば、
素敵だな。


スペシャル版:JICA理事長賞を受賞!
地元の福井農林高校と
インドネシアのタンジュンサリ農業高校の
交流のお手伝いや、
タンジュンサリ農業高校の卒業生対象の
農業研修事業、
また地域づくり活動が認められ、
今年、とても大きな賞を頂いた。
これは以前のエントリーでも書いたが、
本当にいろんな偶然とそれをつなぎ合わせてくれた
周りの皆さんのおかげだと思っている。
本当にありがとうございました。


だんだん10大ニュースでは
まとめられない1年になっている。
それだけ充実しているんだろうけど、
それだけ忙しくもなっている。
来年はどんな年になるのだろうか?

今年も1年、ブログに付き合っていただき
ありがとうございました。
コメントのレスもあまりできませんが、
気が向いたら、
エントリーに突っ込みを入れてくださいませ。
では、良いお年をお迎えください。
関連記事
遅れ気味の勉強会の記録(12月12日開催)。
今回は山岸君。
本はこれ。
船岡正光研究室 著 『緑のループ』:森林資源循環活用フォーラム記録集。

ざっくり言えば、
森林資源のリサイクルの話。
ただ、そのリサイクルの仕方が、
これまでのそれとは随分とちがう。
別次元の発想と言って良いだろう。

まず、森林資源がこの世界でどのようなサイクルを
本来するべきかをこの本では検証している。
樹木は、
炭酸ガスなどを光合成で取り入れ、分子構造を作る。
それが積み重なり、僕らの目に見えるような樹木になる。
これを山岸君のプレゼンでのサイクルに合わせて表現すると、
気体レベル→分子レベル→可視レベルという流れになる。
こうした循環の段階を踏んで
僕らの目の前にある樹木たちは、林業を通して伐倒され、
僕らの生活の一部になる(柱材など)。
そして、そのリサイクルは、
多くが焼却などによる発電等に回され、
一気に可視レベルから気体レベルへと戻されてしまう。
ここに船岡氏は本来のリサイクルの流れではないと
批判している。
リサイクルの循環も
可視レベル→分子レベル→気体レベルであるべきだと。

では、具体的にはどう循環させるのだろうか。
使用された木材(廃材)から高分子構造体を取り出し、
通常、僕らが使っているプラスチック製品のように
加工して使用するべきだというのが本書の要。
分子レベルをすっとばさなければ、
その分だけ、僕らの世界に樹木を構成する原子の循環が
早まるという考え方だろうか。
リグニンといった分子構造体を使って、
これまで石油に頼っていた石油製品を
樹木由来の素材で作り出す。
それらの製品も使用限度が過ぎれば、
最終的には気体レベルに還元され、炭酸ガス等になり
再び樹木の光合成代謝に利用される。

実際に研究は進んでいるようで、
プラントも存在するらしい。
これまで循環と言えば、せいぜいバイオマス発電や
堆肥化だったり、バイオエタノールくらいだったのだが、
高分子化合物として、石油から得られる素材に
取って代わろうというかなり野心的な取り組みと言えるだろう。
僕らの持つリサイクルに対するスキームを
根本から変えてしまうような発想で、
とても刺激的だった。

ただ、この技術が順当にリサイクルとして
使用されるのであれば問題はないが、
この社会ではよくあることだが、
海外の熱帯地域などに巨大な高分子生成プラントが作られ
伐採を促進してしまったりはしないだろうかと
やや危惧はある。
最適を目指さず、社会の根本が最大を目指す世の中では、
良かれと思う技術もかならずその思想の元に
捻じ曲げられてしまうのも事実だろう。

そういう視点までも僕らは共有できた意味でも、
今回の山岸君のプレゼンは、今年の勉強会の中でも
最高レベルのプレゼンだったように思う。
徹底して本を読み込んだ山岸君のプレゼンを
僕も見習わないといけない。


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かぶらの収穫が始まると、
農園ではいよいよ年末という空気が流れる。

毎年、お正月用だけ、かぶらを栽培している。
今年もその収穫が始まった。
井戸水で洗うので、水道水よりも
若干温かい。
外気温が3℃くらいだと、
逆に洗浄する水の方が温かったりもする。
作業は大変だが、
新年という勢いが作業場にあふれ、
いつもと違った活気の中での作業になる。

もうすぐ、今年も終わり。
皆さんはどんな一年でしたか?
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勉強会の記録。
今回は、集落の若手農家・小西くん(12月5日発表)。
本はこれ。
青木恒男 著 「青木流野菜のシンプル栽培」。

小西くんは以前にも青木氏の本を
勉強会で取り上げている。
その本で、青木氏の経営センスに触発されて、
もっと真似したいと思い、手に取ったのがこの本だとか。

青木氏の農業経営には
確固たる哲学がある。
如何にコストを下げるか?ではなく、
作物が育つのに最低限必要なものは何か?
からスタートし、その視点は徹底されている。
肥料も有機かどうかは拘らず、
必要なときは追肥で化学肥料を使う。
単肥の方が足りない要素を
補うのには適しているという考え。
耕起も、自分の圃場の土質から、
水持ちが悪くなったり、水はけが悪くなると考え、
ほとんど不耕起の栽培に切り替えている。
農薬も、ただ使うのではなく、
発生した虫を徹底的に観察し、
その生態を知ったうえで防除法を考えている。
人が作らない時期に栽培をし、
ミニサイズの野菜を密植で作る。
これらの農法には、
漫然と「昔からそうやっているから」とか
「他で良いと聞いたから」という、
一般の農家にありがちなぼやけた視点はない。
すべてに理由があり、
そして哲学がある。

青木氏は、もともと農家ではない。
他業種から農業に入ってきた人。
そういう人は、農家が共有している
なんとなくの常識を冷めた目で見ることが出来る。
小西くんは、
常識にとらわれない青木さんみたいになりたいが、
常識すら僕は知らないので、まずは常識を勉強したい、
と言っていた。
だが、僕は思う。
君も他業種から農業に入ってきたんだから、
君から見える農業の風景と
そこから派生する気持ちは大切にした方がいい。
農業の常識なんて、
この先の未来においては、ゴミみたいなモノだから。

関連記事
義姉の記事が面白い。
毎日新聞「発信箱:なくなれ、大黒柱信仰=小国綾子」
専業主婦なんていまどき希望する人なんていない、
と思っていたのだが、
そうでもないみたい。
ちょっと不思議。

学歴が高くなり、女性も男性も社会で活躍する機会が
昔に比べたら平らになった(と言ってもまだまだだけど)。
教育費や経済成長も関係するが、
それなりにフラットになったこの社会では、
晩婚と少子が特徴化してきた。
パートナーになる男女も、
結婚する前からすでに職について
その道で頑張っていることが多い。
だから、女子学生で専業主婦を希望するなんて
もうないんだろうと思っていた。
いろんな人生の結果として
専業主婦になることはあるだろうけど、
それは専業主夫であっても良いわけだし。
思っていたよりも、
意識はフラットじゃないらしい。

仕事とは何か、という議論は、
ここではそっちのけで、半分冗談の話をしよう。
最近、
「地域活性化を担える人材は、パートナーが別業種で働いている事」
などと言って回っている。
もちろん、半分冗談の話なので、
真剣に受け止められると困る。
さらにこれは、パートナーがいる場合に限定した話。
別業種という限定は、農業だけの話。
これはまた別の機会に。

大黒柱として、1人で家計を支えないといけない人は、
自分のビジネスや家計がどうしても優先になる。
先日の学会でも感じたのだが、
貧困削減とビジネスにおいて、
貧困削減を目的としてのビジネスなのか、
ビジネスの帰結に貧困削減があるのかによっては、
やっぱり少し未来が違ってくるようにも思う。
利益度外視では、生活がどうにもならないが、
目の前の利益に捕らわれていない方が良い時もある。
男性だろうが女性だろうがどちらでもいいのだが、
パートナーが仕事についていれば、
家計のリスクは分散できる。
どちらも地域おこしを仕事としていても、だ。
両者が仕事をしていればこそ、
どちらかが家事・仕事と固定化は難しくなり、
両方をそれぞれが分担することにもなる。
リスク分散の精神的余裕が仕事の中の遊びを生み、
目先にとらわれない未来を創造できる。
そして生活を通じた経験の拡がりの部分が、
人の幅を広げてくれて、
その視点が地域に活きてくる。

半分冗談でだが、
「地域活性化を担える人材は、パートナーが別業種で働いている事」
と半分は本気で思っている。


関連記事
遅れがちな勉強会の記録。
今回の発表(11月28日)は、倉友君。
本は、「身近な素材でつくるボカシ肥・発酵肥料」。

この本は農文協の「現代農業」という雑誌に
掲載されていた記事を集めたもの。
それぞれの記事に関連性は薄く、
本としてのまとまりは無い。

その本に引っ張られるように
倉友君の発表も、ややまとまりに欠けた。
本の細切れの記事の中から、倉友君は、
土着菌による堆肥作り、天恵緑汁、果実酵素液、を紹介し、
これを試してみたいとプレゼンしてくれた。
なぜこれら肥料を手作りしたいかについては、
たぶん彼なりに理由があり、それらの記事を読んだ時に
湧いてきた感動や共感、さらには
その時に思い描いただろう未来予想図が
あったのだろうと思うが、
「おもしろそうだったから」としか意見がいけなかったのは、
主催する僕の力不足&集中力不足。

もう少し掘り下げた勉強会にするためにも
事前学習と集中力を高めないといけない。

ただ、今回のテーマは実は僕の現在にとてもヒットしている。
それらの資材がどういう効果を与えるのか、
という意味ではなく、
それらの発酵をささえる微生物の世界がどうなっているのか、
ここ最近はよく考えるようになったし、
それらの本を手にすることも多くなった。
農業の現場では、自然を体感するシーンが多い。
病害虫といった目に見える現象もあるが、
土づくりのように、実際には視覚では感知できない
微生物と菌の世界が
とても身近に感じられるときがある。
土壌分析は、どうしても物理性や化学性に偏り、
今の僕にはとても不満の残る結果しか示してくれない。
微生物の世界をもっと僕は知覚したいと渇望するが、
なかなかそれを満たしてくれるモノに出会えていない。
倉友君のプレゼンで、
さらにその想いが強くなった。
彼に触発され、僕も微生物の本を
数冊ばかり購入した。
勉強会は、僕にとっても刺激な会である。


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先週末は、国際開発学会だった。
もともと協力隊で援助業界を少し眺め、
大学院に留学したのもその分野で
自分を試してみたいという想いがあった。
その頃に入った学会。
だからといって、
今の自分の農業とずれているとは思わない。
営農と地域づくりは強くリンクしており、
その地域づくりに海外での開発経験は、
強くいかされると感じている。
さらに言えば、同時代的にグローバルな問題を
個々が考える時に、海外での事例は、
何も遠い昔話でもなく未来や別ワールドでもない。
僕らは、海外からの資源や食糧に頼って生きており、
それと競合したり相互補完的だったりするのが、
自分の農業であれば、とても関係の深い話。
しかも、実務家と研究者が混ざり合っての学会ということで、
ここに一人くらい農民もいるべきだ、と
僕個人的に思っている。
ただ、その立場での発信はまだできていないが・・・。

さて、今回は
「貧困削減とビジネス」
「フェアトレードのインパクト」
のセッションを中心に参加。

これらのセッションを通じて考えさせられたのは、
開発援助の方から見れば、
どうビジネスを取り込めば貧困削減につながるのか、
がポイントになるが、ビジネス側から見れば、
当然最終目的は貧困削減ではなく、
自分たちの利益の最大化なので、
この辺りのギャップが
目に見えている場合はまだ良いが、
きらびやかな流行の言葉の陰に隠れてしまっていて
僕らの目には見えにくい場合もあるという事だろうか。
そしてこのギャップは、
大小があるとはいえ、僕の活動にも含まれる。
またフェアトレードでは、
個人的な営農へのインパクトではなく、
地域全体やその営農スタイルの多様化まで含めた発表があり、
大いに刺激を受けた。
フェアトレードは、遠くの未来になるだろうが
射程には入っているものの、
今回思ったことは、研修によって得た資金や技術・知識などが
研修生へのインパクトのみならず、
地域への変容にどうかかわっているのか
その辺りを考察する必要性があるということだ。
フェアトレードのフィリピンの事例では、
生計戦略の中で、資金の周りが良くなることで多様化し、
農外セクターへの投資などがみられるということと、
有機やフェアトレードの認証が
グループ化を生み、農地改革への力にもなっていたりもする。
研修事業では、長期海外研修制度に乗っかっているため、
研修生はそれなりの貯蓄し、それを資金として持ち帰る。
彼らの若さでとても手に入れられないほどの金額をだ。
このことが、彼らの営農もしくは農外セクターへの投資として
どういう行動としてあらわれてくるのかは、とても興味がある。
また自分の研修事業では、
社会的起業について時間を割き、
ビジネスすることで地域の問題解決につながるようなプランを
研修生には立てる練習を何度も繰り返している。
そういうことが、地域に与えるインパクトとして
どう見えてくるのだろうか。

そんなまとまりのないことを考えながらの開発学会だった。
今月末にインドネシアへ調査と仕事で行くが、
その時までに、今回の学会で得たモヤモヤした視点を
もっとシャープに研ぎ澄ませておく必要があるようだ。

関連記事
インドネシア農業研修の座学の話。
その中の総合防除の授業の話。
今回は、農薬での防除。
農薬での防除の方法に入る前に、
まず研修生たちを取り巻く農薬事情を
みんなで共有するディスカッションを行う。

受講生であるイラ君とダルス君が
すでに使ったことのある農薬を
レポートに書いてきてもらい、それを発表してもらった。
同じ高校の出身でも、随分と離れた地域の2人のはずだが、
ほとんど同じ農薬の名前を挙げていた。
殺虫剤では有機リン系と合成ピレスロイド系の2種で、
殺菌剤は有機硫黄系の1種。
除草剤は「値段が高いから使わない」とのこと。
彼らが挙げてくれた農薬は、
僕が90年代末に
インドネシアで農業指導していた時に
主流だった農薬。
いまだに、その名前が挙がることにやや驚いた。

その農薬が、どの害虫や病気に効くのかは、
彼らの知識はそこそこあり、防除回数や希釈倍率にも
答えることができた。
だが、その農薬の原体名や作用点は当然わからない。
彼らは優秀な成績で農業高校を卒業し、
イラは県の普及所でアルバイトとはいえ働いていた経験を持つ。
一般の農家に比べれば、
農薬の知識は高いはずだが、それでも解っているのは
上記の程度でしかない。

では、専門的な教育を受けていない、
一般の農家はどこで農薬の情報を得るのか?
彼らの話によると、
多くが農薬セールスマンと農業資材店らしい。
イラ君の友達でも、何名かが
外資系の農薬セールスマンとして働いている。
各村々でデモンストレーションを行い、
その場で農薬を販売していくセールスマン。
1回のデモンストレーションでの販売ノルマがあり、
それをクリアしていけば、ボーナスがもらえる仕組み。
基本給をかなり低く抑えられているので、
現地での実践販売での数字獲得が
生活していけるかどうかの瀬戸際になってくる。
もちろん、こういう販売では、
農薬の作用点や副作用はほとんど説明されず、
他の農薬との効果の比較は、デフォルメ化され、
効くか効かないかに特化される。
農薬資材店にもセールスマンは入り込み、
販売ボーナスの一部を農薬資材店にバックする。
もちろん農業改良普及員にもそのお金を流すことで、
県行政が作成する農薬による防除暦に
自社製品を組み込む活動や
現場での指導で、自社製品を有利に販売しようともしている。
まぁ、どれも想像できる当然のことだろう。
ヤクルトレディ的なセールスマンによる現地販売は、
時にBOPの成功事例のようにもかたられるが、
自社製品のみの偏った情報の場合、
なんだかあまり健全には見えないのは余談。

さて、こういう情報の出方になってくると、
当然、資金力で有利な会社の農薬が良く売れることになる。
農民が選択できることはほとんど無く、
農薬の情報を精査できず、
セールスマンの人柄くらいしか、
その判断材料はない。

だから、イラ君もダルス君も
「現場で使われている農薬の種類は、だいたい1,2種類だけです」
という答えになるんだろう。
「これが良い!」と
どこかで誰か(普及員・セールスマン・資材屋)が
言い出すと、その農薬をこぞって農民が買う。
数年して、他の製品にその立場をとられると、
その他の製品ばかりを使うようになる。
それが、彼らを取り巻く農薬の景色。

まぁ、ここらでも農薬についての知識が
どれくらいあって、その中でどんなふうに精査しているか、
と問われると、あまり変わらないかもしれない、
と思うこともあるのだが・・・。

この授業では、防除を総合的に考える。
だから、もちろん農薬だけに頼る防除はしない。
であっても、やはり農薬の情報をきちんと精査できるだけの
調査力と専門性を身に付ける必要はある。
その上で、相対主義的に
僕らの「価値」に沿って、
それぞれの防除を捉えたら良いと思っている。

僕らの団体で、ネットなどを駆使して
もっと農薬の情報を
一般の農家が理解できる形として提供できないだろうか、
とふと思うのは余談。
だが、この余談が膨らんでいかないかなぁ、と
思いを馳せる自分がいるのは事実。
もう少し時間が必要か。

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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
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