水曜日の有志の勉強会。
今回は、三国のクラトモ君の発表だった。
彼が選んだ本はこれ。
福岡正信 著「わら一本の革命」。
おおおお!自然農の王道書。

クラトモ君は、この哲学的な部分をとても気に入っているようで、
農本主義的な立場から、近代化や資本主義の行き過ぎに
批判的な意見を話してくれた。
機械文明の発達は生命文明の衰退とし、
やや反資本主義てきな雰囲気の中で
エコロジカルで共生的な社会を資本主義と折り合いをつけながら
実現させていってはどうかという
ちょっと壮大なプレゼンをしてくれた。

こういう議論をふっかけてくる輩が
これまでこの勉強会の中にいなかったので
とても刺激になって、良いのではないだろうか。
ただ、聞き手も勉強不足もあって、
なかなか議論が深まらない、というジレンマもある。

さて、この出されたとんでもない素材を、どう料理しようか。
僕の手にも余ってしまうのだが、
少しだけ意見を書いてみよう。
まず自然農。
不耕起・無除草・無農薬・無肥料が原則。
福岡さんはすでに亡くなってしまったし
この本もずいぶん前に書かれたものなので、
これ自体を批判していっても
自然農との対話にはならないのだろうけど、
僕はこの4つの原則が、どうしても受け入れられない。
それぞれの主義主張の立場から
この原則を眺めるから、可笑しなことにもなるのだろうけど、
僕がこれまで東南アジアの農村で見てきた、
とくに自然と調和しているような暮らしをしている農民たちの
実際とは、この4つの原則がほとんど当てはまらない。
そこで僕自身が感じたことは、
適度に自然をかく乱することで、
多様性が育まれること。
そして、その営み自体が
悠久の時の流れの中で、
すでに自然の一部に溶け込んでしまっている事。
自然を一部壊し、そして蘇生し、
その蘇生する力を借りて農を営む。
そんな暮らしの連続をまじかに見てきた。
ただそこにほんの少しだけの欲が生まれれば、
そのシステムがおかしくなっていくのも見た。
でも、そのほんの少しの欲は
僕らの持っている欲の何万分の一にもすぎないこともある。
ただ、明日の生活を良くしたい、という
小さな願いにすぎない場合もある。

その欲を僕は資本主義だなんて呼べないし、
それを僕がおかしいと指摘することもできない。
サイクルが狂ってきていることを
指摘しながらも、僕らが「より良い明日」を願うのは
肯定し続けていきたい。
そして、その「より良い明日」は、
性別や年齢や人種や民族で差別があってはならない。
近代化を機械主義的だとみてしまうと
なんだかわからなくなってくるけど、
モダニティは、すべてを平準化していくプロセスだと
僕は理解しているので、いろんな思想に越境し
スタンダードを押し付けてくるこのプロセスに恐怖を感じつつも、
僕らでは太刀打ちできない権威と偏った価値をぶち壊していく
その力に、実は希望も持っている。
ブラックボックス化を許さず、大家や権威を作らず、
すべてを真っ平らにしていってしまうこのプロセスに
今はとても尋常じゃないけど、僕らがまっとうに暮らせる
思想の種があるんじゃないかと思う時もある。

クラトモ君には、ぜひ次回もこういう議論をしてほしい。
ギデンズなんかを読んでくれると嬉しいんだけど。


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来客あり。
行政からの来客。
若者を支援する制度ができ、それについての説明を受けた。
とはいっても、僕が対象ではない。
残念ながら、ここでいう「若者」は、
29歳までらしい。
なんで???

では、なぜ僕のような「おっさん」のところに来たのか。
それは僕もよくわからないが、
農業関係で、若者のチャレンジを支援する機会はないかを
ヒヤリングに来たのだと、僕は理解している。

おもしろい支援制度だと思うが、
そもそも対象者はいるのだろうかと、少し心配にもなった。
そんな話をしていたら、
福井の若者がやや内向き傾向なんじゃないか、と
担当の方とそんな話で盛り上がった。

統計調査をしたわけでもないし
サンプリングして聞き取り調査をしたわけでもないので
場合によっては、この“福井の若者はやや内向き傾向”というのは
僕の偏見かもしれない。
ただ、僕自身、海外から戻ってから
自分のポジションを作るのに、ずいぶん苦労したし、
今も僕を白い目で見る人たちがいることは
僕も十分承知している。
その経験から、なんとなくだが
上記の印象はある。

そんなこともあるのか、
こうした制度がうまく活用されない、こともあるらしい。
誠に残念。
だったら、その意識を変えることに
この予算を使ったら良いじゃないですか。
鹿児島でやっていたようなカラモジア運動のように。
いきなりこちらから外に出て、視野を広めて、
内向き意識を変えよう、としても難しい。
まずは、いろんな人たちを呼んできて
その交流から始める方が良いのかもしれない。

担当の方は
昔やっていた青年の船のようなものを復活させたい、と
言っていた。
面白いかもしれない。
スタディーツアーを企画して、
とりあえず、みんなを連れて海外へ。
昔夢想し、そして一度挫折した福井の農民とインドネシアの農民の交流が
なんだか実現しそうな、そんな空気を感じた。
僕が見ているずーっと先の未来に、
そんな風景が、少しずつだけど見え始めている。

まぁ、でも僕は、
県行政によって「おっさん」にカテゴライズされているので
支援の対象である「若者」ではないのだけどねぇ~。


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来客あり。
10家族26名のお客さん。
うちの農園で収穫体験。

小さい子が多い団体さんだったので
収穫体験は、2つにしぼった。
オクラとフルーツホオズキ。

オクラの畑は、バンカープランツとして麦を
播いているので、一見してなんだか
草だらけの畑。

そのおかげで、やたらと小動物が多い。
子供たちは、カエルやコガネムシ、コオロギを見つけては
大はしゃぎしていた。

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フルーツホオズキの収穫体験は、
いつも盛り上がる。
なんせ、この食べ物自体に
スーパーサプライズがあるから。

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小一時間ほどの時間だったが
僕にとっても、参加者にとっても非日常の空間を楽しんだ。

こういう体験や行事は、日常に埋没してしまうと
その価値を見いだせなくなり、
仕事が忙しいから、と、そんな理由で断ってしまいがちになる。

でもこうしたやり取りの中から
自分が思った以上に、相手側は感動してくれるし
その感動が、僕らの農業の可能性でもあることに
気づかされる。

参加してくれた皆さん、ありがとうございました。

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この先を抜けると、トトロに会えそうな
そんなオクラのトンネル。

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この生業には、
ちょっとした日常に埋め込まれた美しさと楽しさがある。

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水曜日は勉強会。
農業を志す有志と、
うちの農園で研修&働いている若手が集まっての勉強会。
何も僕が講師をするわけじゃない。
みんなそれぞれが先生となる。
毎週、持ち回りでゼミ形式で
自分の農業の関心ごとや興味のあることについて
本や記事を読んでプレゼンしてもらうのだ。
準備はなかなか大変だろうけど、
こんな機会もなければ、
読み捨てにしてしまう知識ばかりで
身にならないのも事実。
それどころか、本すらも読まなくなってしまう。
どんどん頭が石になってしまい、
変化の多きこの世の中なのに
ただでさえ乗り越えていくのが大変な農業業界で
取り残されてしまうだろう。
ちょっと前置きが長くなったが、本題に入ろう。

今回の発表は大西君。
彼はちょっと変わっていて、
飛び込みでこの勉強会に参加してきた人。
こういう人が入ってくることで、
この勉強会も幅が出ると思っている。
ちなみに、紆余曲折あり、彼はうちのスタッフとして
今月から働く予定になっている。

さて、彼が選んだ本はこれ。
青山浩子 著 「強い農業をつくる」。

実はこの本は、以前、勉強会に参加するメンバーが
今ほど多くなかったころにみんなで輪読をしたことがある。
そのころのエントリーはこちら。
ナレッジマネジメント
農をブランド化せよ
農の仕組みを変えよ

本の詳しい内容は、以前書いたエントリーに譲るとして
ここでは議論の内容について記そう。
彼のプレゼンはよくまとまっていた。

まず、農業ビジネスについてだが、
様々な課題に奮起する農家の事例を読み込むことで
彼自身、農業への将来性を感じたようだ。
ただ同時に、何か特別なことをしなければ生き残れない分野なのかと
不安も感じたようだ。

次に、農のブランド化について。
田舎の農村風景から感じる美味しさや安心安全などの
「イメージ訴求」を彼は想像していたようだが、
この本で紹介されている事例は、
徹底した合理化や科学手法を用いてのおいしさと安全の証明によって
ブランド化を追求しているのである。
そしてそれを如何に食べる側に伝えていくかという
不断の努力が記されている。

最後に、マーケット。
団体や卸などへの委託販売ではなく、
供給過多になっている国内市場で、勝ち残るには、
オーダーメイドの農産物生産と流通の方向へ
シフトしていく必要がある。
そのため、生産時の原価算出は必要、と彼は言っていた。

なるほどね。

まず、1つ目の農業ビジネスについてだが、
確かに何か新しいこと・特別なことを始めなければ、
生き残っていけないのかもしれない。

そしてそれは、2つ目のブランド化にもつながることだが、
そのこだわりが、食べてくれる側に伝わらなければ
まったく意味がないということだ。
すべての消費者を対象にしても良いが
一部のコアなファン層を作るのも大切なんだろう。
オーダーメイドにシフトしていくのであれば、
きちんとした原価算出は絶対だが、
さらにコアな客層をしっかりと掴む必要性はある。

この本の議論を始める時に
僕は彼にこんな質問をした。
「強い農業というタイトルだけど、大西君はこの本を読んで、『強い』ってなんだと思いましたか?」
彼は、
「地域の中でぶれない、その地域の特色を生かしていることだと思います」
と答えてくれた。
だとしたら、僕らの目指す道はおのずと見えてくる。
何か新しい事は、売り方や伝え方に必要なのであって、
これまで長くにわたって繰り返してきたここの農業の営みは
さらにそれを加速させていけばいい。
有機にこだわった土づくりと
多種多様な品目を作りまわす農業。
僕はこの中に皆と共有できる・共感できる『強さ』を見出したい。

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大量にとれる吉川ナス。
今年は実のしまりも良く、評判も上々。
妻も特に今年の吉川ナスを気に入ってくれていて
食卓にもよく出てくる。

ただ、毎回、田楽やてんぷらだと
やっぱり飽きちゃう。

そこで。。。

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吉川ナスとアイコトマトとバジルのパスタ。
エビをワインで蒸して(レンジでチン)、
そのエビとだし汁を入れ、
スープストックと砂糖・塩で味を調えた
パスタ。
ナスが、エビやトマトのうまみをギュッと
受け止めて、まるで果実のような味に!
吉川ナスは、魔法のナスだ。



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もう一品はこれ。
揚げ煮なのだが、唐辛子と赤玉ねぎをちりばめて、
お酢を入れたアジアンドレッシング風。
少し夏バテ気味で、食欲がなくなっていたのだが
辛みと酸っぱさで、一気に解消。
揚げ煮は、吉川ナスの実のしまりの良さを
一番楽しめる調理法なのかもしれない。

これらの料理、
妻曰く
「野菜宅配便の内容で作れるものを意識した」とか。
先月から個人のお客さんに
野菜の宅配を行っているのだが、
その内容物で、作れるレシピなのだとか。

色も味も楽しい食卓でした。
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新人の歓迎会として、仕事場でBBQをする。
この7月から働き始めた新人は4名。
いずれも20代の若手ばかり(1名は学生アルバイトで19歳)。

昨年から、農園のメンバーがよく動く。
研修で来る子が増えたこともあって、
固定メンバーが少ないことが悩みだった。
今回の新人4名も、1名は研修。
それでも学生アルバイトは別としても、
他の二人には、期待したい。

若い人が少ないこの業界で、
これだけ若い人がやってきてくれるのはありがたいが、
なかなか居ついてもくれない、という悩みもまだ残っている。
労働環境が厳しいということと
ルーティンな仕事が多く、
その中に楽しみを見いだせないという人もいるだろう。
「やらされている」と思ってしまえば
ここでの労働ほどつまらないものはない。
僕が農業を始めたころ、父とうまくいかなかったのも
僕自身にそういう感覚があったのも
僕はまだ覚えている。

みんなそれぞれの想いを抱いて
ここまでやってきたのだから、
その想いをどうかここで花咲かせてほしい。
僕は、ただ経営者として
そしてインドネシアの研修事業プログラムの責任者として
全体の中で、うまく回ることのみに
その思考と労働を奪われてしまっていて
みんなの想いに
ほとんど答えられていないのが現状なのだが、
それでも縁あってここに来たのだから
ここで何か一つ、自分の思っている花を
自分の中にある花の種を
咲かせてほしいと思う。

今いる人も、そして今月から働き始める人も。


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水曜日は勉強会だった。
記録が遅くなったが、その内容を記そう。
今回の発表は、
我が農園の超新星・太田君。
彼は寡黙で、言葉を発する前に飲み込んでしまうので、
彼の考えていることがなかなか僕には伝わらないのだが、
こういう勉強会が
彼の農業への眼差しを僕に見せてくれるいい機会になっている。

さて、彼が選んだ本はこれ。
水口文夫 著「家庭菜園の不耕起栽培」。

不耕起栽培を続けていくことで、土壌条件がよくなり、
土の団粒構造も増え、微生物や小動物も増えていく。
雑草防除が大変だが、それも数年から5年続けることで
雑草の発生も抑えられる、としている。
まさに理想的な農法だが、
太田君は、手間がかかりすぎる農法として
大規模な農家には向かない、と言っていた。

僕も不耕起には興味がある。
非常に面白い農法だと思うし、
やり方次第では、土壌を豊かにし、
さらに、耕転の手間も省けるので
除草の部分で手間がかかりすぎるとしているが
そこさえクリアーできれば、面白いかもしれない。

勉強会では、
実践されている人の事例をいくつか紹介した。
まず、トレンチャーを利用して
畑全体の不耕起を実践している農家。
野菜の作付けをする箇所だけを
トレンチャーで軽く掘り、そこに堆肥などを入れて
野菜の苗を定植し、畑を作る。
全体は耕起せず、草を生やしっぱなしにする。
そのため、作物への病害虫の発生が抑えられ、
かつ土壌が肥えていくというやり方。
ただ、農地が草だらけになるので
すこし勇気もいる。

マルチシートを利用した不耕起農法もある。
一度だけ畝を立て、あとは不耕起する農法で、
畝が草だらけになったら、そこに黒のマルチシートを敷き
熱と遮光で、草を枯らす方法。
1週間から2週間で草は枯れるので、
枯れたらシートを外し、そこに野菜の苗を定植するという方法。
とうぜん、その後草は生えてくるので、
随時除草は必要。
初期の耕転と畝立ての手間が省けるので魅力的だが
その後の圃場管理はやや難しそう、というのが
僕の意見。

勉強会では、しっかりと議論できなかったが
ここで一つ、考えないといけないことがある。
それは、不耕起を論ずるのなら
まず耕起を論じないといけない。
なぜ、僕らは土を耕すのか?を。

耕起するのが当たり前になっている視点から
不耕起を論ずるから、なんだかその農法が特殊で
とても前衛的、もしくは先進的、はたまた伝統的、もしくは回帰的に
それぞれの人がそれぞれの視点でとらえるのだろう。
だから、見えにくくなるし、理解しにくくなる。
だから必要なのは、そもそもなぜ耕起しているのかを
考えることじゃなかろうか。
そうすれば、不耕起もしっかりと見えてくる気がする。

僕の理解と学問と経験での話なので、
もし間違っていれば、大変申し訳なのだが
耕起は、土壌中の栄養分を一気に植物に吸わせるための
とても効率の良い方法、と僕は理解している。
インドネシアや日本、はたまた東南アジアの各国のフィールドで
僕はさまざまな農業の形態を目の当たりにしてきた。
循環型焼畑もあれば、粗放的な伝統的農耕、
SRIの水田、不耕起の小規模落花生畑、
アグロフォレストリーに小農の昆作栽培などなど
さまざまな農法と、そのこだわりを見てきた。
その中で、耕起を考えるに、
それは地下層に追いやられて、
土壌団粒の中に閉じ込められつつある有機物の
有効利用が、一つあげられるだろう。
耕転することで、空気が土壌中に入り、
土壌中で団粒の奥底に閉じ込められた有機物の
分解プロセスが再び始まるのだ。
適度な水分と空気で、土の持つ養分の再分解を
促進することで、そこに植える植物に
その栄養を一気に吸わせようというのが
耕起の考え方なんだろうと思う。
そして、表土が薄く、分解の早い熱帯の文脈では、
不耕起や移動型焼畑による栽培が有利な場合も多く、
今でも、それを採用している農民も多い。
一気に分解を進める耕起農法では、
肝心なことは、有機物の再投入が出来るかどうか
が鍵になってくる。
それが難しい場合、不耕起農法の方が
有利とも言えよう。

不耕起を自然農の一部として捉えることで
それに対する眼差しに色眼鏡をかけてしまうことがある。
本当は不耕起の方が良いのに、
今の条件では無理だから耕起している、といったネガティブに
捉えてしまえば、土壌中のダイナミズムは理解できなくなる。
耕起・不耕起、どちらかに優劣があるわけじゃない。
僕ら農民の置かれた環境と文化的価値という
文脈が違うだけなのだ。

その上で、僕は不耕起の持つ利点を
自分の農業環境に取り込めないかを考えたい。


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ただ今、吉川ナスの出荷最盛期!
つやといい、大きさといい、実のしまりといい、
今年も自分で納得のいくナスを出荷中。

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昨年、このナスは、
あまり良いものを出荷できなかったけど
今年は、A品を出荷中。
ロッサビアンカという品種で、
中がクリーミーで美味い。

近くのJA直売所(Aコープ内も)で販売中です。
ぜひぜひ食べ比べてみてくださいませ

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研修生の月間レポート。
毎月、その月の自分たちの成果を記録し、
帰国後の自分の夢を語り、
その夢に向かって、来月の課題を自らが決める。
そういうフォームになっている。
自己学習が加速していく、そんなフォーム。
もちろん、我が妻のアイディア。

さて、そのレポートの形式。
研修生も随分と慣れてきたようで、
翌月の課題を決め、それに向かって自己学習をし
次の月のレポートでその成果を発表してくれるようにはなった。
満足いく議論もできるし、
帰国後を見据えた、こちら側の支援も
いろいろと考えるようになった。

だが、まだまだ不満はある。

彼らの自己学習の設定が、甘い。
インドネシアでの農業指導の経験でも当てはまるのだが、
どうしても思考が、栽培方法に限定されていくということだ。
帰国後にこういう野菜を作りたい、や
こういう果樹を手掛けたい、と具体的な計画を
語ってくれるようになったのだが、
どう売りたいのか、それを続けて生産できるのか、
加工するのか、など全くその思考に入ってこない。

生産重視でも構わないが、
多くのあちらの農家は、とりあえず作って
市場に全量出荷してみる、という程度にしか
マーケティングを考えない。
だから、収穫の時は、腐るほどその野菜があるが、
いったん収穫が終われば、全くない状態。
それも、周りが収穫できる時期に
同じように収穫するので、大抵の場合、
値が暴落していたりもする。
販売しようと思っている市場に
入ってくるその野菜が、どの産地で
いつの時期なのか、までリサーチしていれば良い方で、
それをかいくぐって生産するだけでなく、
ある一定の時期、毎日出荷することで
値段を決めた契約を商人と結んだりというところまでは
なかなか思いつかないようだ。
さらに言えば、所有農地に限りがあることを考えれば
輪作や昆作などで、いや地(連作障害)が出ないようにしながら
それでも通年で作る営農計画とマネジメントまで
考えてほしいものだ。

イルファンは、来月の課題に
ジャガイモ等の野菜栽培法をあげてきた。
タタンは、ヤシの実の栽培法。
そしてクスワントは、トウガラシ(チリ)の栽培法だった。

それはそれでいいのだが、
栽培法なんてそんな小さな部分にこだわっていては
あまり上手くいかない。
それも大事だが、それも含めたマーケティングと
農地の中で、いや地を出さずにどう作りまわすのか、
そして、他の主幹作物(米・イモ)との労働配分までを考えた
トータルなマネジメントにまで
その思考を伸ばしてほしいと思う。

来月のレポートでは、
とりあえず市場と圃場のデザイン(年間デザイン)までを
僕からの宿題として、みんなに課した。
どこまで出来るのか、それが現実的なのか、など
いろいろと問題もあるが、その考える癖をつけてほしいというが
この研修の意味でもあるので、
とりあえずやってもらうことにした。

さて、どんなものをかいてくるだろうか。

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全く更新できていなかったインドネシア研修生の座学。
少しまとめて更新しよう。

今期の2年生の授業に
「地域開発論」がある。
日本やインドネシアの事例を紐解き、
成功のカギを探るというもの。

徳島県上勝町のいろどりや
秋川牧園の事例が漫画で読めるようになっているので
それをテキストとして活用している。

いろどりの事例については何度も
この項目で議論を尽くしているのだが、
毎回、キーワードになるのが
「ニーズ」であろう。
つまものに対するニーズは、横石氏が取り組みを始めた当初は
顕在化されておらず、
いわゆる潜在的なニーズだったと言えよう。
その潜在的なものを市場化し、その成功が
いろどりの特徴ではないだろうか。

ビジネス講座などで、耳にタコができるくらい聞いた
「顧客のニーズを把握せよ」という言葉は、
時として、あまりあてにならないと感じることがある。
それは、その顧客自身、潜在的なニーズに対して
まったく無意識だからだ。

僕が手掛けている
ベビーリーフは、中身はすべてもともと栽培されていた
アブラナ科の葉菜類ばかり。
それを幼葉のうちに摘み取ってミックスするというだけのもの。
僕は、北陸でも早い時期にこの野菜の販売に取り組んだのだが、
それは、なにも消費者の要望があったからじゃない。
確かに、レストランなどの業務筋からは要望があったが
スーパーでは高単価として、どこもあまり乗り気じゃなかった。
しかし、実際に販売してみれば、
あれから10年経つが、今でも販売額は伸びているほどの
優良野菜の一つになっている。

何がほしいのか、顧客の要望がわかれば
それほどたやすいものはないが、大抵の場合、
要望自体がぼやけていて、当の本人ですら
何が希望しているものなのかもわからない場合も多い。
いろどりの成功は、
市場が無かった分野の市場化であり、
それを必要としていたかいないかは別として
その商品を手に取らせるほどの説得力が
その商品にあるということだろう。

秋川牧園の場合は、その逆とも言えようか。
安全志向の要望は、昔から消費者の中に根強い。
それを徹底して行うことで、その要望に応えようというのが
この事例のパターンだろうか。
抗生剤、遺伝子組換え、化学薬品などを
徹底的に排除して、それでもなおかつ
高品質の生産を行う技術が
その背景にあるからこそ、成功していると言えよう。
ニーズに対して、いっさい手を抜かず
一貫性を持って取り組むことが、
この場合の成功の鍵なんだろうか。

いろどりの場合は、
ニーズのないところにニーズを生み出すアイディアと
それを買わせる説得力であり、
秋川牧園の場合は、
ニーズに徹底的に答えていく努力と技術力なんだろう。

研修生たちが、帰国後に始めていくであろう
農業ビジネスは、これらの事例から何を学んで
何を実践していってくれるのか、とても楽しみである。


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ぜんぜんブログを更新ができない。。。
先週は、取引先への請求書発行で手間を取り、
さらに、ある機関紙での連載が1本と
新聞のコラムが1本あり、
ブログの更新が全くと言っていいほど
出来ていなかった。
反省。

さて
まずは、水曜日の勉強会から書くか。

今回の発表者は、ヤマト。
取り上げた本は、こちら。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

ドラッカーのマネジメントの要素を
簡単に把握するという意味で、キャッチーながらも
面白い選択だろう。

ヤマトのプレゼンでドラッカーのマネジメントについて
いくつか説明があったのだが、
その中でも自分の琴線に触れるものが2つ。
それは
「人に対するマネジメント」と「組織に対するマネジメント」。
インドネシアでの活動では、かつて
僕は、人の状況に埋め込まれた学習や
モティベーションについて非常に関心があった。
そのため、成果が見えやすいような活動をデザインしたり、
大枠だけ作って、あとは一緒に活動する農家に
内容とアイディアを出してもらったりしていた。
そしてそこにあったのは、
農業の専門家と参加農家という垣根を壊し、
こちらから参加農家に歩み寄ることだった。
その当時の僕は、ほとんど専門知識も持ち合わせていなければ
経験もなく、ただただ偉そうな若者だった。
だから、
トップダウン式の活動が全くうまくいかず、
サンドバッグのように打ちのめされてからは
比較的早く、専門家としての態度を捨て去れることができた。
それが出来てからは、活動の成果自身は
やや不満があるものだったが、それでも皆のアイディアが反映され
責任を共有できる緩やかな農家の組織にもなっていった。

だが、今はどうか。
僕は、自分の農園の経営者の立場で、
以前とは違って、
知識、経験、実績ともに、その立場を絶対化するのに
まったく困らないほどなのだ。
いつでも「専門家」として君臨できる。
というか、すでにしているのかも。
完全なるトップダウンで物事を決め、
時には、父の口出しさえも許さないこともある。

少人数の家族中心で、研修生とパートさんばかりの農園では、
そもそも他人のスタッフがほとんど居ない。
そんな状況も手伝ってか、
これまで組織や人のマネジメントにほとんど関心を示さなかった。
あれほど、インドネシアでは
意識的に取り組んできたのに。
(特に先輩隊員(後輩隊員も)の活動を目の当たりにしてからは)

昨年の10月から働き始めた太田君と
この7月から働き始める人が、スタッフとして
一緒にこれからやっていこうと思うのであれば、
僕は、またあの頃の自分を思い出さないといけない。
いや、あの頃以上に、僕はもっと組織や人に
意識的にならないといけないのだろう。
あの頃の状況と関係は、今とはまったく違う。
あの頃は、僕に知識や経験がなく、農家側にそれがあった。
だからそれを引き出す工夫をすれば、
そのマネジメントをすれば、よかったのだが、
今は、その逆である。
僕に知識と経験と実績が偏っている中で、
一緒に働くスタッフみんなに
高いモティベーションを持ってもらいながら、
彼ら彼女らの創意工夫をなんとか加えながら、
皆で成果を共有する。
そんなことが出来れば素敵だと思うが。

それぞれの立場で、それぞれがマネジメントについて
考えたのだろうが、
僕には、まるでヤマトの発表すべてが
僕に向けてのメッセージのように聞こえて
その場に座っている間は、とても耳が痛かった。

余談。
ヤマトはマネジメントのイノベーションに興味があるようで、
全く新しいコラボなどを考えているようだった。
新しい切り口とそれを顧客に説明する能力の二つが
求められるのであろう。
ジェラートを売っているのに、
旬を大切にするという彼のこだわりは、
それ自体が新しくもあるが、
ジェラートをその旬(夏)以外にも食べてもらわなければ
そのこだわりは伝わりにくい。
それを伝える力と、夏以外にでもデザートとして
もっと身近にジェラートを食べてらえるような工夫が
必要なのかな、と僕には思えた。


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昨年から、僕のお気に入りのナスがこれ。
果肉がとてもクリーミーで、てんぷらで食べても
口の中でとろけるようになくなっていく食感が
たまらないナス。

ナスという範疇から飛び出してしまっているナス。
それがこのナス。

そのクリーミーな食感を活かして
妻がスープにしてくれた。
こんなにクリーミーなナスのスープを
僕はほかに知らない。

ナス嫌い急先鋒の娘だが、
このスープは気に入ったようで
「おかわり~」と言っていた。

そんな魔法のかかったナス。
もうすぐ直売所で販売を開始しますのでお楽しみに。
個人発送を登録されている方にも
来週くらいから荷物にいれますよ~。
みんなびっくりしてください!!

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水曜日に移動した勉強会。
参加者が結構増えて、現在、8名。
インドネシアの研修3年生がおまけで参加しているのだけど、
彼を入れると、9名となる。
わざわざ三国の方からも、3名参加してくれていて、
短い時間ながらも、有意義な議論になっていて
楽しい。

そして、僕にはここで語り合うすべての事が
僕の今の農業のやり方を問われているようで、
たぶん、今、僕がいろんなことで悩みながら、
そして、走りながら考えているからだろうと思うけど、
だからこそ、ここで語り、ここで聞くすべてが
僕を肯定したり、僕を否定するのだろう。

今回のプレゼンは、
林君の番。
この4月に新規就農したばかりの彼は、
人生を農業に向けさせてくれた本、
杉山経昌 著 「農!黄金のスモールビジネス」
で、プレゼンをしてくれた。

農業に全く関係のない業種(外資系企業)から
農業に転身した著者が、以前の仕事で培った手法を取り入れ
徹底的なデータ化と情報化、最適化をもって
農業のこだわり経営を解説。
補助金によって方向性を左右されないために無借金経営を提唱したり、
農業で成功するためのベストミックスを
「経営管理:マーケティング:物作り=40%:40%:20%」と
考えていたりで、なかなか独特の哲学を持っているようだ。
大規模農業よりも小規模経営で、
しかも、自分の時給を3000円と設定しており
それ以下の仕事はしないという、
ちょっと???と思うところもある著者。
そうそう、雇用もしないらしい。

この著者から影響を受けて、
林君は、サラリーマンの時に培ったビジネススキルを駆使して
自分が正しいと思えることを
自分の責任で行っていける農業に
今後の未来を描いているようだった。

さて、この本。
林君のプレゼンはわかりやすかったのだが、
実際に読んでないので、なかなか議論しにくいのだが、
上記の内容は、
そのほとんどを、僕の批判のように僕には聞こえてくる。

無借金経営→ええ、僕は生命保険で返せないほど借金がありますよ。
物作り20%→僕はたぶん、60%以上かなぁ。
小規模経営→なし崩し的に大規模化へ。
雇用はしない→人ばかり集めちゃって、これからどうしようか。
時給3000円以下の仕事をしない→お金にならない仕事ばかりやっております!

と、まぁ、みごとに逆。
でもこれは一つ一つに僕なりに反論もある。
無借金経営だが、元手がまったくなかったので
借金しないと始められなかった。
大学の時にやっていたバイトが
人生で一番給料をもらっていた時代で(月に40万くらいあった時も)
それ以降は、協力隊で月々3万円程度だったし、
留学中も奨学金はあったけど、それでも8万円くらい。
そんな風に20代のほとんどを過ごしてしまった奴に
資金なんてほとんどない。
だから、著者のように退職金をたくさんもらって
農業を始めた人とは違う。

つぎに物作り20%について。
マーケティングが40%と著者は言っているが、
僕に言わせれば、マッチングということだろうか。
シェフやバイヤーの要望に応えようとすると、
物作りが20%では、干されてしまう。
直径4センチのズッキーニや
22センチのルッコラ、とセンチ単位で注文が来ることがある
僕の農園では、20%程度の物作りのスタイルでは
とてもやってはいけない。
マッチングをマーケティングと捉えるか
物作りと捉えるかによって、パーセンテージは
変わるのだろうけど、少なくとも僕のスタイルは
僕のスタイルとして機能はしていると思っている。

小規模経営と雇用しないについて。
家族経営を否定はしないし、その素晴らしさも知っているが、
農家長男として、家族経営の甘さや辛さは
これまで、いやというほど見てきた。
そしてそれは、自分の家族だけでなく、
いろんな国のいろんなシーンでも同じものを見てきた。
農家の長男からスタートした僕は、
その存在そのものを消し去りたい思いから、
初めから家族経営を否定して出発している。
広島の中川農園を見学してからは
雇用とある程度の規模の農園が、地域を活性化させている事例を
目の当たりにして、僕自身もそちらへシフトしたことは
否定できない。
インドネシアの研修生のプログラム継続と
帰国後の支援を考えると、経営規模の拡大はやむなしだった。
そもそも著者とは出発点も
そして目指しているゴールも違いすぎるという事か。

時給3000円以下の仕事をしない、とは
なかなかクール。
だけど、これは眉唾。
時給計算はある程度可能だろうし、
たぶん著者が言わんとしていることは、
農作業の最適化・合理化なんだろうと思うけど
その最適と合理の基準となる価値をどこに置くかが
問題にもなってくるんじゃないだろうか。
僕も手を抜ける所は抜くが、
自然はなかなか正直で、
手を抜いたところから、問題が湧き上ってくることが多い。
時給3000円以下の仕事をしないなんて言うと
販売金額の直結しない仕事をしないって聞こえてくるのだが
集落の仕事や共同作業なんかは
やらないってことなんだろうか???
すべてが販売につながるわけもないし、
圃場を農作業に最適で安全なものに保つための
お金にならない作業はどうなんだろうか。
販売じゃなく、その作業をしなかった場合の
損失金は計算できるので、
それを時給換算して3000円というのなら、
集落での共同作業による清掃作業も
十分、3000円以上って言えるけどね。
(その村に最悪居られなくなる状況を損失計算すれば)

なかなか面白い。
いろんな人の立場の考えがあるから
自分が揺らぐし、揺らぐ自分を眺められる。
揺らいだ分、そこに亀裂が入ったりもするが、
それらは、自分の次の課題だったりもする。
これからも、僕や参加者に亀裂と揺らぎが生じるような
そんな勉強会を主宰していきたい。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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