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インドネシアの研修生の座学。
農業構造比較論の金融的要因について。
マクロな意味での金融は扱っておらず(僕の手には負えない)、
この場合の金融とは、多くが農村での
農業資金のことを指して議論している。

その地での農業資金の貸し借りの在り様が
その地の農業を形作り、また社会関係を育んでいる。
端的に言ってしまえば、そういう話。
政策とも大きくリンクするが、政策的要因は
また別に詳しく議論をする予定。

さて、農業資金はどこから借りるのか。
研修2年生のイルファンと1年生のタタンに
宿題として、それぞれの地域の農業資金はどこで得るかを
レポートにまとめさせた。
当然、自己資金という農家も多いだろうが
イルファンのところは、
地元商人による貸し付けがもっともポピュラー。
政府系の資金もあるが、
地元の零細農家のほとんどは村内の買い取り商人から
資金提供を受けている。
1人の買い取り商人が、約100人以上の農家に資金を提供している。
マルクス主義の多い僕のいた大学院の先生たちは
これを従属関係だとして、批判と攻撃の対象として
その階級闘争に目を向けるかもしれないような関係が
イルファン君のむらにはある。

買い取り商人から資金を借りれば、
それによって作られた農作物は、すべてその商人に売らないといけない。
価格に対するネゴの余地はあまりなく、
その商人の言い値で買い取られる。
しかし、それは買いたたかれるのではなく、
唐辛子の例だが、キロ当たり100ルピアほど
市場よりも安いだけだという
調査を依頼したA女史の報告結果もある。

では、タタンはどうか。
その地域では、イルファンと違って
多くが稲作である(イルファンの地域は、稲作が無く、ほとんどお茶と野菜)。
そしてその稲作がつくっている農業資金がある。
まずはGadai(質入れ)。
田んぼを他の農家に質入れして、資金を得るというもの。
農業用の資金として借りることもあるが、
多くはそれ以外の大きな出費があった時に行われるのだとか。
これの面白いところは、金利が付かないこと。
質入れした田んぼは、お金を貸した農家が
質草として預かるが、当然その販売はできない。
そこで得た収量は、貸した側のものになるが、
場合によっては、借りた側がその田圃の耕作を続け
その手間賃を貸した側からもらうこともある。
少なくとも3年は質草として預けないといけないようで、
借りた金は、分割払いは不可。
僕がかつて協力隊としていた南スラウェシの農村は
分割払いが可だったのだが、不可なのが面白い。
金利が付かないので、貸す方もこれで儲けることは
あまりできないシステム。
まさにソーシャルセーフティネットの一つともいえるかもしれない。

さらにタタンの地域では
稲作のArisan:アリサン(頼母子講)がある。
アリサンとは、任意のグループを作り
そのメンバーから定額の金を集め、
その資金をメンバーの一人が総取りをするというシステム。
全員が1回ずつ総取りできるまで回すのが条件。
ただ、だれが総取りできるかは、くじで決める。
(胴元は、くじ無しで一番初めに総取りできる権利がある)。
インドネシアの各地で行われている。
そしてその多くが女性グループ。
でもタタンの地域では、農家のアリサングループがあって
コメの収穫後に集まり、くじを引いてその回の総取りのメンバーを選ぶ。
総取りの幸運を得た農家は、
各メンバーから、収穫された米を決められた量だけ
貰い受けるそうだ。
タタンが加わっていたグループは、
総取りできると全部で100㌔の米をもらえるのだとか。
もっと金持ちのアリサングループになると、
総取りの量が1トンを超えるのもあるらしい。
その総取りした米は、多くは農地購入資金や
農業用機械・資材の購入にあてられるらしい。

タタンの地域にも、買い取り商人からの資金提供がある。
しかし、イルファンとは違い、多くの買い取り商人が
作目まで指定してくるのが通常だとか。
つまり、トウガラシの買い取り商人から借りれば
その資金でトウガラシ以外は作付出来ないことになる。
価格に対するネゴは難しいとのことだが、
だいたい市場価格で売買される。
ただ、その売買された価格から20%の金額を
その買い取り商人が手数料としてとるのが通例だとか。

選択肢がほとんどないイルファンのところは、
作目は自由で、市場価格よりも少し安く買われていくだけで
高額の手数料はない。
この場合、どちらが自由度が高いかは
判断しがたいが、そのお金のやり取りが
その地域の社会関係を育み、その地域の農業の生産様式と
社会の在り様が、金融の在り様を形作っているのが
面白かった。

そういう視点から見れば、
買い取り商人との関係は、それぞれの地域で
ずいぶんと意味合いの違いものであることが、見えてくる。
どこから金を借りるのか。
農業をやっていくうえで、それは研修生らが今後悩む課題の一つだろう。
その関係に、自分たちの農の形も変わってくることを
忘れないでほしいと、僕は願う。


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田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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