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辺境の福井にいて
もっと中央の議論に参加したいと思っていた。
もともと農業なんて志向してなかったし
僕自身は農業は全く向いてないと
今でも思っている(父母や祖父母や叔父叔母に比べて)。

それがコロナ禍で、
そういう議論に参加する場がオンラインで出来てきた。
本当にありがたい。
結局東京かぁって思っていたけど
これなら福井からでも
議論に参加できる。

東京は知らねど水仙活けて足る 大塚邑紅

長くこういう時代だった。
ちなみに邑紅先生は、鷹羽狩行の狩の同人。
初めて俳句大会で特選にとってくれた先生。

本当に生まれるべき言説は中央では生まれない、
そんなことをインドネシア留学時代に
学友と先生と議論した。
そんな未来が、ようやく今、目の前にある。

この時代に地方にいる身として
そういう人材がたくさん地方にいるという意味で
時代に感謝したい。
だからこそ、僕らがこの新しい言説を作るだけの
人材足るのかは、批判されるべきだね。
ただ、結局中央との関係なのか、という意味では
この文脈全体を批判したいけど。


先月の末。
インドネシアに配置しているローカルスタッフから
報告書が届いた。
実習修了生のビジネスや生活の変化を
調査し、報告書としてまとめてもらった。
インドネシアは6月に入って移動制限がなくなったが
まだまだ感染拡大をしており、
安全面から今回の調査もテレビ電話で行ってもらっている。
そのため、情報が限定的で
社会調査に慣れていないローカルスタッフでは
事細かに聞くことができていない。

さて、
実習修了生の農業だが
前回でも書いたが
コロナ禍で流通が非常に不安定になっている。
ただ全体的に農産物の買取価格が落ち込んでいるわけではない。
たとえばキュウリは半額以下になったが
ナスは例年通り。
お茶の買取は買い取り商人の在庫があふれて
市場での売買も活発ではないことから
買取価格は15%減。
しかも現金買取だったのに手形に変わっており
その手形もここ2カ月換金できないという。
その一方でコーヒーの買取価格は例年通りで、
買取も現金だという。

小売は、実習生の地域だけなので
かなり限定的で都市部とは違うので参考データだが
野菜の価格は例年通りらしい。
お茶もコーヒーも価格の変動はないとのことだった。
ただ唐辛子だけは例年よりも4割安く、
農家の販売価格も半分くらいの値段しかつかないらしい。
同じように暴落してるキュウリは小売価格は
例年通りらしい。

実習修了生たちへのインタビューでは
買い取り商人が勝手に買取価格を下げているとみているが
ある農家のデータではナスもキュウリも同じ買い取り商人で
なぜかキュウリだけが暴落しているらしい。
収量が多い場合、小売りでも暴落するはずだが
小売りが維持されているということで
そうではないのかもしれない。

ただこれらの流通は規模も小さく
小さな変化に影響を受けやすい。
6月からの移動制限がなくなったと言っても
毎日1500人から2000人の感染確認者を
出し続けるインドネシアでは
感染への恐怖感が強い。
そのため経済優先といっても
お店はまだまだ閉店のところも多く
またお店自体もお客がすくないらしい。
限定的な流通網しかない小規模野菜商人の場合
こうした変化によって販売が大きな影響を
受けている可能性がある。

だが、お茶とコーヒーでいえば
規模の大きいお茶が影響を受け
規模の小さいコーヒーは影響が少ない。
貿易も影響しているのかどうかは
もう少し調べないとわからないが、
一律に影響が出ないのが
興味深い。












すでにインドネシアの感染確認者は4万人を超えた。
毎日1000人前後の感染確認者がでており
全く止まった様子はないし
まだまだ拡大していく勢いである。
その一方でNew Normal(新しい生活様式)を掲げ
経済活動を再開させようとしている。
事態は刻一刻と変わっているので
「今」をリモートで知ることの難しさがあるが
ローカルスタッフのタタンが送ってくれたレポートをもとに
実習修了生たちのコロナ禍の社会での現状を記録したい。

1期生のヘンドラと2期生のイルファンは
すでに記録した通り。

3期生のタタンはローカルスタッフ。
普段はタンジュンサリ農業高校の隣りの
ウィナヤムクティ大学の圃場助手をしている。
大学も休校で、今はタタンは地元に戻って
父の稲作や淡水魚の養殖の手伝いをしている。
給与は通常通り出ており、遅延もないとのこと。
在宅勤務となっているが、
タタンによると特にやることもなく、
何もしてなくても給与がもらえるので、気楽だという。
生活必需品は近くの商店やオンラインで買うとのこと。
オンラインでの買い物は一気に浸透した感じだ。
配送は移動制限があっても特に問題なく配達されるらしい。

4期生のクスワントは深刻だ。
耕志の会のマイクロクレジットを利用して始めた
タイティー屋は売り上げを1/3に落としていた。
その隣で妻がやっている軽食屋も売り上げは1/3に。
移動制限を受けていて
村の中で軽食や飲み物を提供する店は
逆に村人の需要を取り込めて売り上げが上がるのでは
僕は想像していたが
タタンの調査によると現金でのやり取りをしていた商人などが
キャッシュフローが順調でなかったり
農家が移動制限で販路を失ったりと
村の経済が悪化していることが影響しているとのことだった。
かつて1998年の金融危機時代には
村の経済がインドネシアを下支えしたともいわれていたが
今回は公務員や会社員の給与はそれなりに出ており
逆に農家は移動制限で売り先を失い
影響が大きく出ているように思われる。

5期生のイラは飲料水販売ビジネス。
ステイホームで飲料水の販売は
特に問題がないかと思われたが
飲料水販売の多くが飲食業だったイラは
売り上げを1/5に落としていた。
多くのレストランが営業中止に追い込まれていて
飲料水もそれに合わせて売れないという。
昨年、販売量を増やすために
2代目のピックアップ車に投資したばかりで
耕志の会のマイクロクレジットも利用して
飲料水の容器もかなり買い足していた矢先だった。
New Normalの生活は、
今後、イラの業種にどのような影響があるのか
注視していきたい。
ちなみに妻は公務員で、そちらの給与は通常通りらしい。

同じく5期生のカダルスマン。
彼は紆余曲折あり
ジャカルタのピザ屋で働いていた。
コロナでピザ屋が閉店しすべての従業員を解雇されると
彼も当然無職に。
知り合いの紹介で、建設現場の日雇いで
生計を立てているが、このままコロナが続き景気が悪化すれば
建設現場も少なくなっていくに違いない。
それよりもピザ屋の収入よりも減ってしまっている状況なので
当座はこの仕事でもいいかもしれないが
将来的には再考が必要かと思われる。

6期生のジャジャン。
彼が日本にいるときに立てたビジネスプランは
僕が乾季に水がないから難しいと
なんども問題視したが、結局は僕の指摘通り
彼は乾季に水にアクセスできず、
農業では食べていけない状況が続いていた。
昨年に特定技能の情報が入るといち早く
特定技能の希望者としてリストに登録したのもジャジャンである。
しかし、コロナで日本行きはとん挫。
というか、特定技能がほとんど日本で浸透していない状況で
手続きが不明瞭だったり
中間で高額マージンを取ろうという業者もいて
さらには受け入れ先も特定技能の特徴である
転職できるという条件に引っかかって
受け入れがほとんど進んでいない。
参加希望者が多くても、来日する人数が増えない背景はそこだ。
このまま日本行きを待っていてもしょうがないと考え
農産物の流通販売業を始めたのが
ちょうどコロナのはやり始めた4月だった。
移動制限の影響は、近くの市場がターゲットだったので
特に問題はなかったが
市場の営業時間が短縮されたことが
やや影響があったかもしれない。
昼夜逆転した生活による健康に対する影響が
心配でもある。

7期生のレンディ。
レンディとデデ(9期生)、ダニ(10期生)の3人は同じパガレガン地域で
お茶がメインの作物になる。
お茶は、流通がうまくいかず
現金買取から手形買取に変わり、2週間後以降でなければ
現金化できないらしい。
価格も15%ほど下落。
レンディの場合は、お茶農家へのお茶苗販売ビジネスを
耕志の会のマイクロクレジットを通じて始めていたが
農家に現金がなく、お茶苗を購入したいという農家がいなくて
お茶苗がタブつているとのことだった。
お茶苗は少々遅れても問題ないが
コロナの影響で販売が長期化した場合の
影響は今後注視したい。
それ以外にはデデもダニとも同じように
伝統的な唐辛子の価格はやや上昇し
こちらの販売益は増加している。
レンディはさらに同地域の集落長も務めていて
そちらの給与は問題なく支払われている。

8期生はイマン。
技能実習生を送り出す日本語学校で
日本語教師をしている。
コロナ禍で学校は閉鎖しているが
その代わりにオンラインで日本語の授業をしているという。
給与も通常通りらしい。
ただ農業高校などがオンラインで授業をしようとしても
結局通信インフラの問題でできていない状況なので
どこまで彼がオンラインで授業をしているかどうかは不明。
またこのままコロナの影響が続けば
実習生として送り出せないため
入学する人も減ることが容易に想像できる。
日本語学校の人件費削減となった場合に
N3しか持っていない彼はどうなるのか
かなり心配でもある。

今回の調査では
農業がかなり影響を受け
それ以外の職種、とくにホワイトカラーは影響が少ないという状況だった。
5月から6月の影響も調査中で
今後動向を注視していきたい。










4月3日に福井県で外出自粛の要請が出てから
僕らの営農は一変した。
業務向けの注文が99%キャンセルとなった。
3月の上旬までは、少し注文が減ってきたなぁ、と
いった程度だったが
中旬以降に東京や大阪などの都市圏の注文が激減し
そして4月に入り、福井でも外出自粛が出た瞬間から
まったく野菜の注文が入らなくなった。
とくにベビーリーフ・ルッコラ・わさび菜の3種は顕著で
現在、畑での大量廃棄も始まっている。

スーパーや生協などの宅配は好調だという。
農園の野菜はそこにも供給している。
だが、そちらの注文は減りはしていないが増えてもいない。
担当者から聞くところによると
サラダ野菜よりもブロッコリやキャベツ、大根などの
一般的な野菜の方が好調らしい。
少ない買い物機会で、長く保存のきく野菜が今売れているようだ。
農園では、楽しい食卓を演出するために
これまでサラダ野菜を中心に営農の柱を作ってきた。
今回、それがスポット的に影響を受ける結果となった。

独自の販売ルートを確立し
業務向けへの細かな需要にもこたえるような
生産体制を確立してきた農園では今、
そのすべてに逆風が吹いている感じだ。
これは平成30年豪雪で13棟のハウスが潰れた時よりも
大きな危機となっている。

行き場を失った業販向けの野菜たちは
スーパー等の市場で販路を見出せないかと
あれこれと考えるが
もともと一般市場向けと差別化を図ることで
その商品としての特徴を際立出せていたため
当然、価格的にも規格的にもスーパーには
なかなか当てはまらない。

では、それらの商品をあきらめ
売れるもの切り替えたらどうだろうか。
適者生存の考えから行けば
構造が変化したのだから、その構造に合わせて
自分たちも変化できたものだけが生き残る。
それは、この構造変化がどれくらい続くのかを
予想しなければならないという
一大決断を伴う難しさがある。
もし仮に、この危機がワクチンができるまで続くであれば
僕らは早急に自分たちの営農の再編成を行わないと
ここ数か月でつぶれてしまう。
だが、これが仮に2か月くらいで収まるのであれば
営農の形を変えてしまえば
元に戻ったときにまた
それらの市場を失うという困難が待ち構えている。
農業は、土を作り、種を蒔き、作物を育て、収穫する作業。
そこには何か月も前からの準備が重要で
今、作付けを変えたとしても
その変化は数か月後にしか結果が出てこない。
仮にそのころに元の構造に戻った場合
またそこから数か月かけて
元に戻す作業が待っている。
作物によっては来年まで対応できないものも
でてくるだろう。

一方で
こうした外食産業の崩壊という構造変化は
コロナ感染者数が減ったとしても
元に完全にもどるのだろうか?という疑問もある。
こういう業界は評判がとても大事で
もし収まっているコロナを再び自分の店で
クラスターを生み出してしまえば
社会的批判を浴びるのではないかと
お店を再開することに
二の足を踏むこともあり得るのではないだろうか。
いびつな形ながらも
ある程度は元に戻る力は作用するだろうが
それが元の形とはならないだろうな。

農園の商材の価格や規格の方向性を
今、まさに見直すときに来ていると感じる。
とにかく、僕らも大きな決断をして
変化に向けて進むしかないのだろう。




田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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