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今日が仕事納め。
いろいろあった1年。
本当にいろいろあった1年。
今日が仕事納めという感覚もなかったが
納品書を書き起こしていたら
今日が仕事納めという感慨がわいてきた。
そんな1年。

さて、
2年生のダダンの話。
彼のビジネスプランは乳牛事業と
カエラン(という野菜)の栽培事業が柱。
カエランはまだまだビジネスプランとしては甘く、
市場や栽培条件などかなり不確定も多く、
これからかなりディスカッションを繰り返すことになる。
その一方で
彼が自分の資源として認識している
乳牛事業は固い。
祖父(父は他界)の乳牛事業を
そのまま継承する形でのビジネスプランで
彼の経験値の無さや市場や人間関係など
あらゆるものをクリアーしている点で
これを主に置いている彼は
21歳にしては刮目すべき男児なのだろう。
ただ、将来像は甘い。
ダダンは
1年生で貯めたお金で祖父がもつ乳牛6頭(5だっけ?)に
3頭を足し、牛舎の建て増しも行った。
その投資は成功し
毎月、2,000,000ルピアの収入を彼は
日本に居ながらにして得ている。
それはいい。というか、素晴らしい。

ただ、彼の目標というか
夢というか
ビジネスによって得たい収入と
地位は乳牛20頭を飼育する農家。
なぜそれなのかはよくわからんけど
(この辺りが、最近自分が雑になっている点。ここ押さえる点であることは記録したい)
それを彼が目指すのなら、それに向けて
計算が必要になる。

その時に問題になることはいろいろある。
20頭を飼う牛舎の建て増し資金。
あと11頭の乳牛を買う資金。
その牛舎を立てる土地代。
そのあたりはイメージついていたけど
ダダンも僕も計算し始めて気が付いたけど
もっとも難解なのが
餌の供給だった。

11頭を買い足した場合、
彼の家族が所有している牧草地は
あと1.5ha足りない。
人口密集度が世界一の
ジャワ島では
個人農家は平均25aの土地しか所有していない。
もちろんそんな小さな土地では食べていけないので
若者の農村&農業離れは
日本の比でないくらいに加速している。
であれば、耕作放棄地や使われなくなった共有地が
あるようにも見えるが
そんな土地は1ミリも無い。
それどころか
高速道路や高速鉄道の開発ラッシュで
ダダンたちの村の土地は天井知らずに高騰中だ。
彼の試算では
11頭買い足すには
牧草地として400万円くらいの資金が
必要になるらしい。
ちなみに3年間実習生をして貯まるお金は
農園の子たちで、約180万円くらい。
実習生を3回くらいしないとたまらないお金。
しかも、インドネシアの銀行からの融資は
やろうと思えばたぶんできるんだろうけど
行為能力ってそういう風にはできていない。
ダダンが想像しないことは
ダダンの行動として起こりえないのだから
ダダンが想像しない銀行融資は、
僕の絵空事でしかない。

彼は、実習生の間に貯める資金と
その間も入り続ける乳牛事業の利益も含めて
計算してきたが
やはり1.5haの牧草地にはあと200万円くらい足りないようだ。
もうこれいじょう日本に出稼ぎに行かない前提で考えるならば
そのお金が現地で貯まるのは
どれだけ節制しても
10年以上かかる。
その間も経済成長5%以上のインドネシアの物価は
上がり続け
彼の目標値はどんどん
彼の想いよりもかけ離れていくだろう。
こういう計算はある意味ダダンのような若者には
絶望を生み出す。
そんなことは分かっている。
でもそこがなあなあだと
なんとかこのまま行けるんだって
勘違いする方が
数年後のもっと大きな絶望は回避できない。

で、ここからが僕のファシリテートの出番。
というほどのことはできない。
乳牛なんて技術的にも経営的にも知らないし。
でも素人でもできるのが、事実確認という方法。
餌って牧草だけなの?から始まり、
餌の種類とその入手方法を
ひとつひとつ丁寧に追う。
その時に、ひとつひっかかるのがあった。
それは稲わら。
年に3回もできるジャワの稲作では
稲わらは結構大量に田んぼにある。
ただあれも販売される資源だとか。
ダダンはその購入も含めて計算したが
それではランニングコストが高すぎて合わなかった、という。
だから自前の牧草地っていう発想なんだとか。
その時に彼が漏らしたことは
「稲刈りを手伝えばただで稲わらもらえるんですけど」。
これが僕にはヒットした。
え!?稲刈りを手伝えば、稲わらはただ?って。
だったら手伝えばいいじゃん。
ダダンはそんな暇はないっていう。
いやいや、ダダン、それを君がするんじゃない。
稲の収穫ビジネスユニットを作って
営利なしのぎりぎりで回して
稲わらをただで手に入れるビジネスだよ、これは。
つまりはこうだ。
ジャワの稲の収穫はまだまだ手作業だ。
それの手作業に土地なし農民が参加して
自分たちの食い扶持を手に入れるのが
伝統的互助のつながりでもある。
ただ以前からそれはソーシャルセイフティーネットとして
評価される一方で、僕には
貧困層の搾取だと思ってきた。
安い労働者を生かさず殺さずに
ある程度のボリュームで農村で飼い殺すやり方と
僕は思ってきた。
だから、農村で聞く互助の中身は
そうとう斜に構えて考察しないと
変な片棒を持たされると思っている。
収穫人の存在はまさにそれ。

で、あるなら、
ダダン、収穫人の収入を最大限にできるよう
収穫形式も機械化と効率化を図って
で、収穫人の待遇もずっとずっと良くして
さらに季節でしか回ってこなかった仕事も
西ジャワ全域の田んぼを商売対象として
ピックアップトラックとバインダーと
動力付きの脱穀を揃えて
収穫人にも近未来的な格好いいユニフォームを揃えて
仕事のイメージを変えつつ
季節に左右されない仕事と
給与制よる安定を作って、
収穫作業で儲けず(そうすれば収穫人の待遇は断然アップする)、
そこで得た稲わらを飼料として販売するビジネスが
ある意味完成するんじゃないかって。
あっと、事実確認からの勝手な飛躍は
ファシリテーターとしてあるべきじゃないけどね。

このビジネスならば
ざっくり計算しても
今から貯まるであろう150万円くらいで
十分始められる。
投資を自分の分野に限らず
外のビジネスにも目を向ければ
そういうことも可能になる。
牛を飼うことで
地元の貧困層の改善と
コメ収穫のソリューションを提供する。
ビジネスとはそうあるべきだと思う。





技能実習1年生のダダン。
実家は乳牛農家で、
彼もその跡をつぐ気でいる。
その彼が今月実家の乳牛を2頭増やしたいと言ってきた。

近所の乳牛で、妊娠している牛がちょうど
売りに出ているとのことだった。
彼は2月に来日して、10月までに40万円ほど貯蓄しており
それでその2頭を買おう言う計画のようだ。

最初はほかの会社で働いているインドネシア実習生から
20万円借金をして3頭の乳牛を買おうと
計画をしていたのだが
友人同士のお金の貸し借りはトラブルの元だと
憂慮していたのだが
結局は彼自身が貯めたお金のみで投資をすることになった。

僕は乳牛経営のド素人なので
見当違いをしているかもしれないが
彼のビジネスプランを見ていると
えさの量や質、それを確保するための牧草地の面積や
おからなどの食品残渣の確保と
乳牛の品種、
そして乳牛の飼育環境の3つが
たぶん乳の品質と量に関係すると想像している。
なので、インドネシアのダダンの故郷の場合、
乾季における餌の確保がまず
乳量確保の要因として大きいように僕は感じる。

ダダンも、近くの先進農家の乳量と比べて
実家のそれは7割から8割しかないと分析している。
先進農家との決定的な差は
所有するもしくはアクセスできる牧草地の広さだが、
高速道路開発に沸くダダンの故郷は
農地の価格が高騰し、牧草地の確保は容易ではない。
なので、今回2頭の乳牛への投資は、
ただでさえ足りない餌を
奪い合うことになりかねないという不安はある。

牧草地もしくは食品残渣などで
餌をどこまで確保できるのか、
またサイレージ等を利用して
乾季の餌をどこまでストックできるのかが
今後のカギになるのではないだろうか。
それと同時に
牛舎の環境改善についても勉強をしていきたい。

やや前のめりに投資する彼に
それらの宿題を出しつつ
今後を一緒に考えていこうと思う。






今年来たもう一人の青年を紹介してなかった。
ダダン・レスマナ。
19歳枠で採用した実習生で
タンジュンサリ農業高校の先生たちは
口をそろえて
「デデ・ユスフと同じレベル」と
太鼓判を押すほどの評価だった。
デデは第9期生で、2019年2月に帰国した子。
これまで来た子たちの中で、
僕が実習成績で最高得点を付けた子。
その子と同じレベルだという。
確かにデデと同じく
ダダンは生徒会長を務めていたし、
高校時の成績はビッグ3と呼ばれる
常に3番以内にいたらしい。
一緒にきたアリフの方が年上なのだが、
ダダンの方が年上に見えるくらい落ち着いているし
言動もしっかりしている。
こういう子を教育できるのは
この仕事の楽しみの一つでもある。

ダダンはなかなかの苦労人である。
中学2年の時、ランプンの農場労働者だった父を病気で亡くし
母と一緒に、母の実家に身を寄せた。
それはタンジュンサリ農業高校に通うためでもあった。
母の実家は乳牛で生計を立てている。
1990年より政府の乳牛プログラムに乗っかり
乳牛を2頭得て、今では9頭を飼育している。
ダダンは祖父の乳牛事業を手伝いながら
毎日タンジュンサリ農業高校に通っていた。
こうした苦労があっても
彼はそれを卑下せず、
素直に受け入れたからこそ優秀な人材に育ったのだろう。
彼は、この乳牛の頭数を増やすことを夢見ている。
日本にいる間に
乳牛の頭数を増やしたいと意気込む。

ただその中で
牛乳を集荷する組合の取り分が多いと
彼はすこし愚痴をこぼす。
祖父の受け売りなのだろうが、
組合がなければ大量に販売はできないだろうから
なくてはならない組織なのに。
ただ実際に経営としてどれくらい手数料が圧迫しているのかは
実は彼はあまり知らない。
まずはその経営の中身を知ること。
そして乳牛にかける祖父母の想いを知ること。
彼らの生計戦略とその思想を知ること。
さらに自分の目で見て
アクセスできる資源に有意なものがあるのかどうかに
気が付くこと。
その上で
薄利だとしても、損益分岐点を探り
どの頭数が経営規模の中でベストなのかを
見極めようじゃないか。
デデ以来の優秀な実習生の来日に
僕は毎日が楽しくてしょうがないのだ。





田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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