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技能実習1年生のダダン。
実家は乳牛農家で、
彼もその跡をつぐ気でいる。
その彼が今月実家の乳牛を2頭増やしたいと言ってきた。

近所の乳牛で、妊娠している牛がちょうど
売りに出ているとのことだった。
彼は2月に来日して、10月までに40万円ほど貯蓄しており
それでその2頭を買おう言う計画のようだ。

最初はほかの会社で働いているインドネシア実習生から
20万円借金をして3頭の乳牛を買おうと
計画をしていたのだが
友人同士のお金の貸し借りはトラブルの元だと
憂慮していたのだが
結局は彼自身が貯めたお金のみで投資をすることになった。

僕は乳牛経営のド素人なので
見当違いをしているかもしれないが
彼のビジネスプランを見ていると
えさの量や質、それを確保するための牧草地の面積や
おからなどの食品残渣の確保と
乳牛の品種、
そして乳牛の飼育環境の3つが
たぶん乳の品質と量に関係すると想像している。
なので、インドネシアのダダンの故郷の場合、
乾季における餌の確保がまず
乳量確保の要因として大きいように僕は感じる。

ダダンも、近くの先進農家の乳量と比べて
実家のそれは7割から8割しかないと分析している。
先進農家との決定的な差は
所有するもしくはアクセスできる牧草地の広さだが、
高速道路開発に沸くダダンの故郷は
農地の価格が高騰し、牧草地の確保は容易ではない。
なので、今回2頭の乳牛への投資は、
ただでさえ足りない餌を
奪い合うことになりかねないという不安はある。

牧草地もしくは食品残渣などで
餌をどこまで確保できるのか、
またサイレージ等を利用して
乾季の餌をどこまでストックできるのかが
今後のカギになるのではないだろうか。
それと同時に
牛舎の環境改善についても勉強をしていきたい。

やや前のめりに投資する彼に
それらの宿題を出しつつ
今後を一緒に考えていこうと思う。






今年来たもう一人の青年を紹介してなかった。
ダダン・レスマナ。
19歳枠で採用した実習生で
タンジュンサリ農業高校の先生たちは
口をそろえて
「デデ・ユスフと同じレベル」と
太鼓判を押すほどの評価だった。
デデは第9期生で、2019年2月に帰国した子。
これまで来た子たちの中で、
僕が実習成績で最高得点を付けた子。
その子と同じレベルだという。
確かにデデと同じく
ダダンは生徒会長を務めていたし、
高校時の成績はビッグ3と呼ばれる
常に3番以内にいたらしい。
一緒にきたアリフの方が年上なのだが、
ダダンの方が年上に見えるくらい落ち着いているし
言動もしっかりしている。
こういう子を教育できるのは
この仕事の楽しみの一つでもある。

ダダンはなかなかの苦労人である。
中学2年の時、ランプンの農場労働者だった父を病気で亡くし
母と一緒に、母の実家に身を寄せた。
それはタンジュンサリ農業高校に通うためでもあった。
母の実家は乳牛で生計を立てている。
1990年より政府の乳牛プログラムに乗っかり
乳牛を2頭得て、今では9頭を飼育している。
ダダンは祖父の乳牛事業を手伝いながら
毎日タンジュンサリ農業高校に通っていた。
こうした苦労があっても
彼はそれを卑下せず、
素直に受け入れたからこそ優秀な人材に育ったのだろう。
彼は、この乳牛の頭数を増やすことを夢見ている。
日本にいる間に
乳牛の頭数を増やしたいと意気込む。

ただその中で
牛乳を集荷する組合の取り分が多いと
彼はすこし愚痴をこぼす。
祖父の受け売りなのだろうが、
組合がなければ大量に販売はできないだろうから
なくてはならない組織なのに。
ただ実際に経営としてどれくらい手数料が圧迫しているのかは
実は彼はあまり知らない。
まずはその経営の中身を知ること。
そして乳牛にかける祖父母の想いを知ること。
彼らの生計戦略とその思想を知ること。
さらに自分の目で見て
アクセスできる資源に有意なものがあるのかどうかに
気が付くこと。
その上で
薄利だとしても、損益分岐点を探り
どの頭数が経営規模の中でベストなのかを
見極めようじゃないか。
デデ以来の優秀な実習生の来日に
僕は毎日が楽しくてしょうがないのだ。





田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

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メールは
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