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第5期生のイラくん。
農園の実習修了生の中で
ある意味、
一番の出世頭といってもいいかもしれない。

彼は、帰国後のビジネスプランでは肉羊の飼育を
計画していた。
彼の地域は水に乏しく
農地も少ないので、
自然、他の業種へ目が向いていた。
あの頃の僕は
自分でも何かを教えるという気は
もうさらさらなかったはずだが
その実際の行動と彼らが作っているプランを見ると
彼らとのインタラクションの成果として
野菜栽培に特化したビジネスプラン作りばかり
していたように思う。
これは批判するべき行動で
今は、その枠を飛び出して
彼らの生活世界の把握の中に存在する
ビジネスの種を育てる方法に変えている。
というのは余談。

で、イラ君。
当然、とってつけたような肉羊事業は
彼自身も実行に移さず、
帰国後に自分の兄と一緒に飲料水販売事業に
まい進することになった。
とっても面白い事業なので
これを福井にいるときから議論したかったなぁ、と
思っても、当時の自分ではそれに気が付く能力はなく、
ただただビジネスプラン作りという目的を達成するための
議論をしていたように思う。というのも余談。

インドネシアでは
飲料水は水道からは得られない。
生水のまま飲めば
症状の大小はあるが、お腹を壊すことになる。
飲み水は一度煮沸するか、
飲料水として売られているものを購入するかになる。
イラ君は、とても性能の良いろ過機を手に入れ
井戸水を飲料水として販売するビジネスを始めた。
このビジネスは、それほど珍しくはない。
どの街角にも
ろ過機を置いて、水を販売してる業者を見かけるからだ。
ただ彼は、その水販売を
SNSで注文を受けて、個人宅まで配達するサービスを始めた。
これも都市部ではあるのだが、
彼の地域では画期的だったと言っていいだろう。
それもあって、あれよあれよと成長し、
今では修了生の中では一番の稼ぎ頭になっている。
ただどういうわけか政治的ポジションは
あまり強くない。ま、余談だけど。

その水販売。
ウォーターサーバー式で、
サーバーに差し込むボトルに水を詰め替えて販売している。
ただ、彼のユニークなところが
サーバーは高く、電気も使用するため、
ボトルに直接蛇口を取り付けた
サーバー不要の商品も用意していて
それが農村部でバカ受けしているらしい。
今回、マイクロクレジットに申請が上がったのも
そのサーバー不要の蛇口付きボトルの追加購入のための
融資依頼だった。
1000ボトル購入したいらしい。

農村部での販売が中心だったが
大都市バンドゥンに隣接する学生が多くいる
エリアを新たに開拓して
そこにも水を供給したいらしい。
それに合わせて、すでに車は新調し
輸送力も高めたという。
彼くらいになれば
銀行からだって借りられるはずなのだが、
意外にも彼もまだ銀行から融資を受けた経験がなく
銀行融資に否定的だった。
金利が高いとか、担保が必要だとか、で。
なので、僕らの耕志の会のマイクロクレジットから
借りようと思ったらしい。

今回から耕志の会のクレジットは
民間金融に歩調を合わせる形で
最大2500万ルピアで、年利4%としたこともあり
彼の当初の計画では3200万ルピア借りる予定だったが
やや事業規模を縮小して計画書を出してきた。

審査といっても僕らは素人で
まだまだ経験が足りない。
なので簡単な審査方法をとっている。
プロポーサルを
修了生や実習生が所属するグループチャットの場に上げて、
ある一定期間自由に質問をするというもの。
借り手はその質問に迅速かつ正確に答える必要があり、
それに耐えた場合、融資をする。
答えに詰まったり、つじつまが合わなかったりすれば
融資はしないというルール。
みんなのお金なので
みんなが納得しないと貸さない。
ただ、質問するようにと促さないと
みんな沈黙しているのもこのルールの問題かもしれない。
このルールも、自分ももっと勉強して、
彼らの経験値も盛り込んだ形で
改正していきたい。というのも余談か。

9月13日に晴れて無事融資金を送金。
滞りなく事業が開始されたかどうかは来月の
ローカルスタッフが調査をする予定。
また一つ、新しい事業が始まったことに
喜びを感じている。



技能実習生とは
やっぱり出稼ぎである。
ただ、インドネシアの子たちを受け入れて思うことは
本当に会計や計算が苦手だなぁってことと
これまで受け入れてきた子たちが
実力はあるのだけど
まったく境遇に恵まれていないということが
共通している。

実習生で日本に来れば
無駄遣いしなければ、3年で約200万円は貯められる。
そのお金があれば
一回目の投資としては
それほど悪くないほどの事業を計画できる。
ただ、僕もそうなんだけど
彼らが僕以上に想像力も現状把握力もないので
3年の実習期間で現状把握の授業と
ビジネスプラン作りの指導をすることで
ある程度は会計に強くはなる。
あっでもある程度ね。
本当、少しだけ強くなるって感じ。

3年なんてそんなもの。
で、卒業生の中でも
素晴らしく成果を上げる子と
全然ダメな奴と
どうしても差が出てくる。
彼らが選んだ事業の良し悪しが
大きいのだけど、
それを選んだ本人の運によるところも大きい。

1回目の投資がうまくいけば
きっとその上がりで
そのまま順調に成長していくとは
簡単には思っていなかったけど
今、上手くいっていない子だけでなく
上手くいってた子も
壁にぶつかっている感じだ。
それは2回目の投資ができないからでもある。

今年から3期生のタタンを
ローカルスタッフに雇い、
数か月おきに
それぞれの卒業生の
事業調査&生計調査を行ってもらっている。
そこから見えたものは、
帰国後に投資した事業が成否だけでなく、
その事業のすべてで
次の投資を必要としていることだった。

インドネシアの農村で
投資を得るのはかなり難しい。
多くの場合が「知り合いから借りる」以外に
選択肢がないからだ。
しかも、慣習的な金融はどれもアコギで
Bagi hasilとかGadaikanとか
どれも金利でいえば10%や20%の騒ぎではない。
ただこれらのシステムは
貸し手も一緒にリスクを背負うようになっていたり、
借り手が徹底して破産しないためのものだったり、
完全な貧困に陥らないための
セーフティーネットと評価されていて
それの評価はある程度当てはまるとは思うが
事業を大きくするための金融商品としては
かなり物足りない。
というか、
その成長の芽を摘んでしまう制度だともいえる。
普通に知り合いから借りても
大抵、農産物集荷のブローカーだったりで
販売において従属的立場に置かれてしまうのである。

そんな彼らに
実は政府は以前から銀行による金融商品を
用意している。
その商品の詳しい紹介はまたの機会に譲るとして、
7%程度の金利で比較的簡単に借りれる
その商品には
なかなかアクセスしない。
その理由をはっきりとインタビューできたわけではないが
銀行の場合、担保が必要だったり
破産のリスクがあったり(慣習的金融にはこれがない)、
心理的にハードルが高いのかもしれない。

そんな状況に置かれている彼らが
特定技能への期待を抱いているのは
無理もないことだと思う。
技能実習で、まとまったお金を得た体験をした彼らは
やはり次の投資も出稼ぎでと考えるのは
自然なことなのかもしれない。
ただ
すでに事業を始めている彼らが
その事業に再投資をする手段として
また数年の出稼ぎに行くのって
僕はどうも納得がいかない。
その間の事業は停滞するし
それどころか最悪その事業自体が消滅するだろう。
それでは本末転倒だ。
だが、彼らのおかれている状況と
そこから派生する心理は
なかなか僕らの思考ではとらえられない。

今年農園では2トン車を新調する予定だ。
投資額としては600万円で
当然、銀行からの融資を得て購入する予定で
その話も進めている。
これが彼らの状況であれば
事業に必要な2トン車を買うために、
海外へ数年出稼ぎに行くって話になる。
こういう話をすると
卒業生たちは皆笑うのだが
実際に彼らの行動は
その笑い話のようなことになっているのが
難しいところだろう。

また別の機会に書こうと思うけど、
こうした彼らのような心理を利用した
悪質な海外労働詐欺もインドネシアでは
ちらほら散見される。
そんな詐欺に引っかかることなく
彼らの思考を自由に解き放ち
銀行からの融資で次の事業が展開できるには
いったい何が彼らと銀行金融商品の間で
断絶しているのかを突き止めなければならない。

日本にいるのがもどかしい。
現地にいれば、とついつい思考を飛躍させてしまうけど、
ここにいても出来る国際協力、
いや、ここにいないと出来ない国際協力、
福井の僻地の問題を同時解決する国際協力、
そういうものを目指しいるんだと
自分に言い聞かせつつ、
情報収集と対策を考えていくべし。




今年から始まった耕志の会のマイクロクレジット。
1回目の募集では、
レンディとクスワントがプロポーザルを提出した。
それぞれに卒業生や今いる実習生からの質問攻めに耐え
無事承認された。

クスワントの事業費が約8万円。
レンディの事業費は約24万円。
ローカルスタッフのタタンとも
両氏の事業のリサーチをどのようにしていくかも確認し、
先日無事送金し、現地口座で入金が確認できた。
いよいよ始まる。

今回のマイクロクレジットは
正直言って穴だらけだと思う。
プロポーザルの作り方や
返済金の管理から計画まで
問題が山積だ。
利子が無いというのも問題だとは思うし。
ただ
実習期間で貯めたお金だけでは
投資としては不十分というのも
この10年彼らの生計調査をしていてよく解った。
卒業生のほとんどが
それぞれの生計を安定させてはいるが
農村でリーダーとなるには
次の投資を必要としているのだ。
経済成長著しいインドネシアで
農村部での少額クレジットが
今後民間や政府でどこまでなじみやすいサービスが
出てくるかは注視していかないといけないが
同時に、僕らはアジアの成長を
一層推し進めていく必要があるし、
またそれらを僕らの成長にもつなげていかないといけない。
その一つが実習修了生へのクレジットだと思っている。

入金を確認した彼らは
さっそく計画に沿って動き出す。
今後はローカルスタッフの調査で
その動きを追っていきたい。




先月の出張で
技能実習修了生たちと総会を開いた。
その中の議題の一つに
余剰金によるマイクロファイナンスの実施があった。
その詳しい過程は以前書いたエントリーに譲ろう。
耕志の会インドネシア総会

さて、
その後、3名からマイクロファイナンスに対して
プロポーザルを提出したいと申し入れがあった。
クスワント(4期生)、イラ(5期生)、レンディ(7期生)で
イラは他の資金の目途がついたので結局
プロポーザルの提出は無かったが
クスワントとレンディから提出があった。

クスワントの事業は
カフェ事業である。
インドネシア全土は知らないけど、
少なくとも今西ジャワ、
とくにバンドゥン近辺はカフェブーム。
コーヒーブームもあってか、
タンジュンサリの田舎町でもカフェが沢山出来ている。
そして実はクスワントは
日本にいる時から将来のビジネスとして
カフェを開きたいと言っていた。
丁度日本で実習している時に
今の奥さんであるハナちゃんが
料理学校のお菓子コースで勉強してたこともあり
「いつかは二人でカフェを開きたい」と言っていた。
その月間レポートは今も大事に保管してある。
だから彼から提出されたプロポーザルが
カフェ事業だったことに、僕は感慨一入だった。

実は彼はちょっと前まで
タンジュンサリ農業高校で軽食屋も経営していた。
そこそこ儲かる仕事だったのだが
家族の事情で続けられなくなり
現在はその分の収入がない状況だった。
軽食屋に比べて事前の準備が少ない点や
小さいスペースでも運営できることもあり
また彼の夢でもあったカフェということで
ゆくゆくは自分の栽培しているコーヒーを
独自ブランドとして売り出したいとも思っているようで
今回の申請となった。

もう1点はレンディ。
破竹の勢いとはまさに彼のことで、
帰国してまだ3年目なのに
選挙で勝って集落長になったり、
農業ビジネスで成功して乗用車を買ったり。
正直、彼にそんなに才能があるなんて
僕は見抜けなかった。
その彼の申請してきたビジネスは、
お茶の育苗所だった。
彼の住む場所は高地でお茶の産地。
お茶なんていくらでも育苗していそうなものだけど
どうも事情が違うらしい。
お茶の育苗はとても簡単。
お茶の枝を挿し木すれば
それで苗が作れるので、誰でもできると言えばできる。
しかしレンディが目を付けたのはそこじゃなかった。
政府から発行される普及種ラベルの付いた
お茶品種を育苗するというビジネスだった。
このラベルは原種を管理している政府機関から
原種を普及種に栽培を許されている農場だけが
栽培を許されており、さらにその普及種も
特定の農場だけがそこからさらに普及種を栽培できるという仕組み。
これは日本の種子法でも定められているものに近い制度。
ちなみに僕は青年海外協力隊の時に
落花生優良品種普及事業として
この仕組みに係わったこともある。
一般農家では
まず普及種生産圃場の許可は手に入りにくい。
だからこそ、そこには大きな利権があり
そこに参入さえできれば
大きな商売になる。
で、どうしてレンディがその商売の利権に
食い込んだのかはまだ詳しくは調べてないが
彼にはそういう才能があるらしい。
(詳しくはこちらのエントリーへ

とはいえ、
すでに飽和しているようなお茶ビジネス。
どこにそんな市場があるのだろうか。
そこはレンディの抜け目ないところだろう。
コーヒー栽培は雨に弱い。
大雨が来ると花芽が落ちて実の収穫量が極端に落ちる。
2016年と2017年は同地域の雨季は長く
2年連続でコーヒーの収穫は皆無だったらしい。
コーヒーは1年に1~2回収穫されるが
花芽が落ちれば、収量はゼロになるリスクも高い作物。
その点、お茶は毎月少しずつ収穫があり
天候に左右されても全体では大きく崩れない。
政府系の工場が買い取ることもあって
価格も年間通して安定してる。
レンディは日本で貯めた資金で
コーヒーばかり作っていた地区に農地を買って
その一部でお茶栽培を作り始めた。
そしてそのようにリスク回避をするレンディを見て
その地区の農家はお茶栽培に今
乗り出しているのだという。
そこへレンディは安い品種も分からないお茶苗より
政府が発行する普及ラベル付きの
お茶苗を生産してその地区等に供給するというのが
今回の彼のビジネスプランだった。
すでにトライアルを終えており(昨年の10月に僕も調査した)、
計画も綿密で
必要資材も細かく計算されていた。
経験上苗の2割が損失することも計算もされていたし
それでも十分すぎるくらいの利益をえる計算だった。
日本でのビジネスプラン作りが活きている。
と自画自賛しておこうか。

さて
これらプロポーザルは
今から1週間
実習修了生のFacebookのグループメッセージ欄に
アップされる。
それを読んで、1週間の間
ビジネスをそれぞれ行っている修了生たち猛者が
そのプランを徹底批判する。
それに耐えれれば
インドネシア側での審査は終了だ。
日本ではそのプロポーザルを僕が簡単に説明し
皆からも意見をもらって
問題なければGWごろに資金をインドネシアに送る。
いよいよだ。
もうすぐ、次のステージのあたらしい事業が始まる。
その資金管理は、ローカルスタッフのタタンが担う。
これで技能実習の最終形にようやく突入する。

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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