久しぶりにブログをアップしようか。
インドネシア実習生ネタで。

今週は、インドネシア実習生への座学前期の
最終試験をしている。
農業構造比較論と地域発展論の二つの座学で
それらを一つの試験として行っている。

試験内容は
自分たちの地域を農業構造的に読み解き
そこから浮かぶ上がった新たな問題について
それを解決する社会的ビジネスを考えて
提案しなさい、というもの。

これまでも月間レポートで
自分たちの将来のビジネスモデルを検証してきたけど
試験ではそのモデル以外のものを
実現可能か不可能化はあまり問わず
とにかく問題を鋭く浮き彫りにして
面白いイノベーションを
リアリティたっぷりに考えてみるというもの。
どう?わくわくしない?

今回の記録はデデだ。
初めての試験で緊張していたけど
プレゼンもペーパーの出来も上々だね。
さすがは学年トップの学力で
元生徒会長だけあるね。
実践力もあり、企画力もある。

彼が考えたのは
野菜の移動販売システム。
トラックを改造して
電話やネットで出前を受ければ駆けつける。
また繁華街や住宅地を回り
店舗経営のリスクを低くしつつ
市場暴落や商人に買いたたかれるリスクも
低くしようというビジネスだった。
脆弱な流通網にニッチを見つけようという
人口密集地であるジャワなら
こういうのも面白いかもね。
コールドチェーンへのコストも
それほどかからないし
ゲリラ的に美味しいところを持っていけるかもな。
センス良いね。

でもね、デデ。
君の分析はダメだね。
農業構造の分析は一つ一つは
その通りかもしれないけど
それぞれが全体を説明しているに過ぎない。
で出来上がった全体は、
その一つ一つに必ずしもよってないってことかな。
人的資源で君は住民たちの低学歴を
統計データから問題視して
そして社会的認識から
農業をするのに学歴はいらないという
具体的な住民の話も入れてくれたけど
それがどうしてネガティブな分析結果になるのだろうか?
問題点として
それを取り上げる君の価値観こそが
僕には問題に見えたりもする。
デデのビジネスプランは
そもそもその低学歴化を解消するものでもない。
質疑と議論の応酬の結果
(イマンの質問が鋭くてよかった)、
住民が低学歴なのは、
経済的な問題も多くあるが
その中には住民が
求める農業の技術と経験を
学校教育の中で担保されないことに対する
経験知から来るのではないかと思う。
まさに農学栄えて農業滅ぶ。

そのあたりにも切り込んでいけるような
ビジネスプランだったら
及第点だったけどね。
今回は不合格ってことで
来年、頑張ってね、デデ。



デデの記念すべき第一回目の
月間レポートが提出され、
それについてディスカッションをした。
僕にとって10人目になる彼は
いろんな意味で特別だ。
だから、ちょっと気合も入る。

彼が帰国後に描いた夢は、
ありがちな夢だった。
お茶栽培をして、特産の伝統種のトウガラシを作って、
余裕があれば畜産もする。
そんな計画。
眠いね、それ。

彼は、レポートに課されている
僕への質問として、
日本の農業は若い世代や社会にとってどのように映っているのか?
という質問をしてきた。
なるほど。
その質問の意図と裏にある君の思考は
どんなんだろうね。
と問うと
「日本の農業は先進的なので社会的地位も高く、若い人も多いように思います。インドネシアもそんな風になったらいいと思っています。」
だってさ。
ははは、それはうちを見ているから
そう見えるんであって
農業界全体の話で行けば
インドネシアよりも沈没は進んでいるんだよね。

農業が農業生産だけに力を入れても
それが魅力的にはならない。
魅力のない産業は、やはり斜陽さ。
農業の魅力はどう醸成し、
それを社会にどうプレゼンしていくか、
は、それぞれ問題があるところでもあるけど
僕が思うに、
マニュアル化された生産だけを
がむしゃらにやっていても
多分、どんどん沈没が進むんだと思う。
今の若い人みんなが一定以上の稼ぎを求めているのであれば
たぶん給与をあげていけばいいのだけど
そっちの道だとしても
やはり低コスト化のぎりぎりを狙った生産体制を
創り上げても維持は難しいよね。
価値創出の一つに
僕はそのビジネスが社会問題の一つでも
解決するような提案のできるものであれば
そこに魅力が派生すると思っている。
そういう魅力を携えているから
若い世代の人がそこに夢を見ることができるってわけだ。
僕もずいぶん
そういう風に若いころは思ったもの。

だから、デデ。
君がどうにかしたいと思っている
社会問題としての農業のあり方は
間違いじゃないけど、
その解が君の農業ビジネスだとは
僕は思えないな。
大規模プランテーションの一部として
お茶を栽培して
空いた土地でトウガラシを栽培して、
畜産もする。
それって若い人が夢を見るような
ビジネスだと君は思うか?
僕に答えはないけど、
僕はそれがそう見えないとだけは解る。
ま、これが僕らのスタートラインってわけだ。

クスワント以来になるけど
社会的起業の要素を含んだ
農業のビジネスプランについて
一緒に頭を悩まそうじゃないか。
なぁ、デデよ。




デデユスフという男がやって来た。
2008年から受け入れを行ってきた
インドネシア農業研修もこれで9年目になる。
デデは、ちょうど10人目にあたる。
どんな結果になろうとも
目をつぶって10年は走り続ける。
そう決めての9年目。

デデは今回が来日初回ではない。
3年前に、福農とタンジュンサリ農業高校の
交換留学生として、福井に来ている。
僕もその時は通訳としてお世話した。
彼はその時から
「田谷さんの農業研修プログラムに期待です」と
異常なほどにアプローチを受けた記憶がある。
出稼ぎじゃないよ、勉強だよ、と
何度も言って聞かせた記憶も
まだ僕の中に残っている。
その彼が、来ることに決まった時、
正直、あまり嬉しくなかった。
高校生の時の彼の猛アプローチに
僕は辟易していたからだった。

ただ僕にどの子かを選ぶ権利はないので、
学校側が地域のリーダーになる人間だと思えば
僕はその子を受け入れるだけだ。
だから辟易しながらも
事務的に物事を進めた。

空港で久しぶりに合った彼は
やや長旅で疲れている様子だった。
笑顔は素敵だったが口数も少なく
僕と福井に向かう車の旅は
少し緊張もしている様子で
あまり話もしてくれなかった。

もうすぐ福井に着こうかという時に
彼はぽつぽつと身の上話を始めた。
彼が中学生の時、
同郷の人間が日本に研修に行くという話を聞いた。
それが2期生のイルファンの事だった。
苦労をして学校を進んだイルファンが
日本に農業研修に行くという話は
デデを魅了した。
彼の家もイルファン同様
とても貧しかった。
そして大抵貧しい家庭には
兄妹が多いのだが
彼の家もその例外ではなかった。
中学校が終了すると
彼の父親は高校に行くこと反対した。
すぐにお茶畑で働くことを強制した。
しかし彼は、どうしてもタンジュンサリ農業高校に行って
農園たやの農業研修プログラムに参加したい、
と意志を固めていた。
父や兄妹を説得し、
彼はタンジュンサリ農業高校に合格し
入学した。
成績優秀者でなければ研修参加資格はない。
彼は猛勉強をした。
生徒会長にもなり、
成績もトップクラスになった。
それもこれもすべて農業研修に
参加したい一心だった。
そして、念願かなって、
彼は僕の横に座って
福井を目指している。
もうすぐ福井に着く、
その高揚感が重い彼の口を開かせていた。
僕はただただ呆然とその話を
聞いていた。
長くやればいろんなことがある。
そんなことは想定内だったが、
こんなことは想定していただろうか。
僕らがやっていることは
それほどの事なのだろうか。
鳥肌が立った。

これから3年、
デデと一緒に僕も勉強をする。
彼の強い強い想いに
僕はどこまで応えられるのか
不安はあるが、
鍛えれば鍛えるだけ楽しみな若者かもしれない。
さあ、デデ、
君がその気なら、
僕も全力で行くよ。
覚悟しろよ。


田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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