今、ちょっとした流行が
農園にはあるようだ。
それは、「一眼レフカメラ」。
それを購入したいというブームというか
意識が今農園で顕在化している。
それはスタッフからインドネシア研修生までだ。
たぶん潜在的には以前から、
そういうモノに対するニーズはあったんだろう。
一眼レフカメラ自体、
何も今発明されたものでもないのだが、
ここ最近はみんなそれに憧れる
そんな空気が出来上がっている。
その言い出しっぺは
農園のスタッフだった。
それがどうこうというわけじゃない。
ただ、そのカメラを通して
僕はある目を背けたくなることを
目の前に突き付けられる結果になった。
それは別にカメラだったからじゃないだろうけどね。

スタッフ同士がカメラの話をしている分には
僕は何も思わなかっただろう。
それどころか、
僕もカメラは好きだ。
だから、みんなでカメラの話で盛り上がったろう。
というか、途中までは
その話で僕も盛り上がっていた。

だが、インドネシアの子たちも
買うことを考えている、ということを
聞いてから、僕のトーンは落ちた。
その時の反応は、
今思い返せば、
ある意味差別的だったのかもしれない。
そういう認識というか感情というか
そういう文脈というか関係というか
とにかく、僕はその中にいたことは確かだ。

3年生と1年生が一眼レフを欲しがっていると聞いたとき、
僕は
「そんなものは必要ないだろう」
と率直に彼らに言った。
なぜならそれはぜいたく品だし、
交換レンズの価格だけでも
彼らのインドネシアでの月収以上だ。
今は日本で研修しているから
インドネシアの月収の5~10倍の収入があるが
それは3年間という期限付きの話だ。
しかも、研修中に得たお金は
帰国後の自分たちのビジネスのためのお金だ。
一眼レフが、彼らのビジネスとして
お金を生み出すのなら、
それは必要な品として僕も同意するだろう、
みたいなことを僕は彼らに話した。
少しでもお金を有効に使ってほしい、
それが僕の願いだった。

ある意味それは正当な理由かもしれない。
だが、それを話しているときの
彼らの承服できない表情が
僕の脳裏から離れない。
そしてその表情から見た
僕の顔が僕にも見えてくるようで
話している間に
僕も気持ち悪くなってしまった。
そう、あまりにも真っ当な
そして正当な理由を出して
僕がしているのは差別だってことが
僕にも気が付いたからだ。
差別はいつも間違った考えの中にあるわけじゃない。
それどころかかなりの頻度で正当な理由や論理の中にある。

彼らはとても大変な境遇の子たちばかりだ。
お金がたくさんあって、
経済的に恵まれていれば、
どんな理由にせよ
そしてそれがどんなに素晴らしい研修だろうとも
海外実習制度に乗っかって
日本に来ることはなかっただろう。
事実、僕の農園に勉強に来たいという
知り合いのインドネシア人は多いが
それで彼ら彼女らがそのまま
僕の農園に技能実習生として来ることはない。

格差の平衡移動のように
その国から押し出されてやってきた彼らは
別にインドネシア人を代表しているわけじゃないが
ここでは彼らがその文化の象徴的な存在だ。
そしてそれぞれの分散もきわめて近似値に近い
個体が集まった
とても本国の母体から見れば
作為的なサンプル集団だが
それが僕の周りには
インドネシア人を代弁している場合も多い。
そしてその彼らが、
一眼レフカメラを買いたいと思っていることを
知った僕が起こした行動は、
まさに差別的だった。
欲しい物を欲しいと思うこともできない。
日本人には、それはあり得ても、
彼らにはそれはあってはいけない。
そんな化け物みたいな考えが
僕と彼らのインタラクションから
生み出されていた。

そしてその化け物は、
僕をどんどん追いつめる。
文化的な差異を認め合う
多文化共生こそ僕らの未来だ、と
僕は無垢な赤子のように信じていた。
だから、こうした研修を行う意義も
感じていた。
でも、その集団的な塊が
つねにその母体と同じような特色を有しているわけじゃなく、
その状況下に合わせてやってきている彼らのその特色が
まさに差別的でもあることに
僕は嫌でも自覚的にならざるを得ない。

たかが一眼レフ。
だが、そんなキーワードも
僕らにはこうした異質さを生み出す。
それが僕らの文化と格差の衝突だったりする。

何か答えがあるわけじゃないが
こういうこともあるという意味で
ここに記録しよう。







かなり前にあったことだけど、
忘れてしまわないうちに記録しようか。

農園にはインドネシアの実習生がいる。
その彼らは、
皆20代前半で、普通の成人男性であるので、
異国の地にいてもやっぱり恋はしたい。
いいな、と思う日本人女性に出会ったりもするだろう。
でも、
休日でも普段はインドネシアの友達と一緒に
過ごすことが多く、
なかなか若い子との出会いは少ない。
そんな中、近くのドラックストアーのレジにいる
大学生アルバイトの女の子が可愛いと
彼らインドネシア実習生の中でブームになった事があった。

しかも時間帯によっては、
集落の近くにあったファミリーマートでも
その子がアルバイトしていることが分かった。
(注意:集落の近くにコンビニがあった時の話で、
そのコンビニは今は無くなってしまった)。

そこでその子の気を引こうと
彼らは何度もそのドラックストアーやコンビニに
買い物の用事がなくても通った。
用事がないので、店内では手持無沙汰だ。
雑誌コーナーに行っては読めないマガジンを手に取り、
レジをチラッと見る。
お菓子を物色しているように見せかけて
レジをチラッと見る。
菓子パンを選ぶふりをしながら
レジをチラッと見る。
そんな繰り返しだったとか。
そのチラッと見る所作の中に
愛の眼差しを送っていたのだろう。
まぁ、そんな求愛行動は通じるはずもないのだが、
それが、チラ見をするたびに、
こともあろうか、そのレジの女の子と
目線が合うというのである。
しかもしっかりとこちらを見ていたらしい。
それが「あの子も僕に気がある」彼らの勘違いを生み出して、
行動が暴走した。

彼女がアルバイトで入っている日は
ほぼ毎日お店に行くようになり、
気を引こうとして店を出たり入ったりもしたらしい。
最後には彼女がアルバイトあがりまで
外の駐車場で出待ちまでしていたらしい。
ここまで来ると、ちょっと常識を逸している。
少なくとも日本では。
営業妨害だったり、ストーカーだと思われても仕方ないかも。

しかし、この恋は長くは続かなかった。
彼女がまもなく大学を卒業して
そこのアルバイトをやめたからだ。

このままで終わっていれば、
あるいは彼らにとっても恋の想い出だったかもしれないが
いろんなご縁の巡り会わせで
僕はその彼女とあるイベントで話をする機会があった。
で、自然、インドネシアの子たちの話で盛り上がった。
彼女から見えていた真実とはこうだ。

ドラックストアーでレジのアルバイトをしていた彼女。
ある日突然買い物客のインドネシア人から
話しかけられたとか。
それから買い物に来るたびに他愛もない会話を
していたらしい。
そのうち、もう一つのアルバイト先である
農園の近くのコンビニにもその子たちが来るようになった。
ただその時、一緒にいた店長から
彼らの行動がおかしいと言われたとか。
何も買い物しないのに、店内を物色してはこちらのレジを
確認していると言われ、
確かに行動が変だと気が付いた。
しかも外国人。
どうも万引きをする気なんじゃないか?と
店内のスタッフで話が出た。
その日から彼女は彼らが来るたびに
その行動を監視するようになった。
だから、
彼らが店内のどこから視線を向けても
彼女と目が合うわけだ。
それはお互いに恋心を抱いていたわけでもなく、
ただ万引きの疑いをかけられて
監視されていただけだった。

その後、そのインドネシアの子たちが
近く農園の従業員だとわかり、
その監視も以前ほどではなくなったらしいが、
それでも行動が変だったので
監視人物にはなっていたとのことだった。

こうしてインドネシアチックな恋のアプローチは、
恋愛に発展することなく、
異文化の文脈の中で
アジア系外国人に対するステレオタイプに当てはめられ
万引き犯としての監視される立場に
落とし込められてしまったのだった。

異文化は辛いねぇ~。




田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
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