レンディが帰国した。
来た当初、彼の営農規模に驚き、
その地域のポテンシャルの大きさにも
驚いた。
ジャワにもまだこんな地域があったのかって。

バンドゥンの南のパガレガン地区は
ジャワの水田文化によって
作られた村ではなかった。
調べていないからわからないが
おそらくオランダ植民地時代のエステート事業で
入植した場所なんだろう。
だから、この地区の彼らは米食ではあるが
水田を持たず、
エステートで得た所得で米を買う。
本当の意味でのプロレタリアートで
農民という言葉よりも
農業労働者もしくは農業経営者という方が
しっくりくるのかもしれない。
この生態的違いは、その思考も志向も
大きく変える。

レンディは3年間鍛えられるだけ鍛えたが
やはりバカだと思う。
でもたぶん彼は農業所得という意味では
成功するだろう。
個人的な資質ではなく
この地域の農業の生態と
それを相互補完し合う彼ら彼女らの
文化と思考がそれを可能にするだろう。

卒業研究での機械化への挑戦は
ジャガイモの土寄せだけという限定的な
視点で行われたが
それがすべての耕起に
トラクターを利用した場合
彼らの生産性は格段に向上するだろう。
その向上した成果は
より効率的な農業の志向に寄与するだろう。
1つの小さな成功と見えるものが
彼ら彼女らの運命を決定していくだろう。
その生態を下地にしながら。

ただ同時にその変化や変容にも
恐れる自分がいることに気が付いているのだろう。
科目の最終試験で
彼は機械化が進むことや新し技術によって
効率性は上がるが
それによって『本当の文化』が壊されると
プレゼンしてくれた。
なにをいまさらそこで立ち止まる?
本当の文化なんてものは
どこにもないのに。
変化への恐れは
僕にもある。
今やっていることは
僕の想像の範疇にあったこともあれば
全くなかった部分もある。
だから、時に立ち止まって後ろを向くと
とてつもない恐怖心に襲われる時もある。
でもそれが何を生むんだ?
ノスタルジックな感情は
他者と共有することで
その関係性を深めるかもしれないが、
変化と変容にブレーキをかけるような
ノスタルジーは百害あって一利なし。
本当の文化なんてものは
どこにもなく、
僕らはグローバルとローカルなさまざまな要因の変容に
つねにレスポンスを求められているんだ。
そのレスポンスを文化と呼べば
そうなんだろうと思う。

レンディさん。
君は良い意味でバカだと思う。
だからあまり考えず
目の前の小さな成功の続きを
追いかけなさい。
その先に何年も何十年も経ったら
君が今思うような、もしくは思ってもみなかった
答えのようなものが
たぶん後付けで
生まれているんだろうと思う。
それはポジティブなのかネガティブなのかは
僕には解らないけどね。
ただ、これだけは守れ。
立ち止まるな。
変化せよ。
つねに時代にレスポンスをせよ。
では、成功を祈る。


3年生のレンディ。
迷走だと思っていた彼は
政治家を目指すというGoing my wayぶりで
もはや僕には理解不能な道を歩み出している。
さて、
その彼の卒業研究。
迷走を書いたところでブログの記録は終わっていたが、
一応、迷走しながら今も続いている。
なんとか最終のめどが立ちそうなので
そろそろ記録しようか。

実は彼。
卒業研究開始の4月に入っても
プロポーサルを提出できなかった。
その前後にかなり指導もしたし
話し合いもしたけど
僕が彼の思考を理解しきれず、
また彼の思考から僕が見えなかったためか、
5月に入っても研究テーマが絞れ切れない状況だった。
双方にとって、本当に辛い時期だった。

そして決まったのが、
『農作業の機械化:ジャガイモ栽培の土寄せについて』
である。
彼の地域では、西ジャワ州内では比較的広大な土地を
耕作できる地域である。
緑化政策によるアグロフォレストリー的な
条件をクリアーすれば、
それなりの土地を耕作することが可能になる。
しかも高地。
だから熱帯でも、涼しい。
年間通して30度に行くことがまれで
15度から22度程度の気温。
まさに馬鈴薯には持って来いの場所だ。
事実、多くの農家が馬鈴薯栽培をしていて
お茶と共にこの地域の農業資源となっている。

そのジャガイモだが、
作業のほとんどが手作業だ。
広大に作るくせに、なんと除草の簡素化として
マルチ栽培まで地元の農業試験場や大学と一緒に
研究しているくらいで、
倒伏を防ぐために支柱まで立てての
ジャガイモ栽培ときたもんだ。
いやいやびっくり。
ところ変われば、だね。

彼のインタビューを繰り返している中で
どうして機械化できないのか?それが疑問だった。
それを書くと長くなるので
僕の感覚から一言でいえば
(現地を見ないで、彼の肩越しに彼の現実を考えると)
トラクターの導入金額というのもあるが
それが実際にどう自分たちの農業に
役に立つのかというイメージの無さなんだろうと
認識している。
ということならば、
それを研究課題として
実際にどれくらいコストがかかり
どのくらいメリットがあるのかを検証しようとなった。
ここまでが5月の話。

これを延々とやっていくわけにはいかないので
すぐに結論に行きたいね。
農園のジャガイモ栽培に
近くの農家の土寄せ用のハンドトラクターを借りてきて
2度の作業を鍬作業と共に行い比較。
スピードを測定したりした。
で、現地で買えるトラクターの価格を調べたりして
鍬作業でかかる人件費と比較した。

その結果。
減価償却でトラクター価値を考えると
ジャガイモ栽培の場合4.2ha栽培しないと
人力による土寄せのコストよりも安くならない。
結構ショックなデータで、
やはり人件費が安い国は、こうなるんだね~。
ただ、ここには数字のマジックがあって、
インドネシアの場合は4年で償却されるので、
トラクターの寿命と考えるとあまり当てはまらない。
これを現地感覚で
レンディは10年として計算しなおした。
ま、10年というのもちょっと無理な話だけどね。
せいぜい6~7年だろうな。というのは余談。

この数字で計算すると
2.1haで人力とトラクターとのコストが同じになった。
西ジャワ州の一般的な農家は
30a程度なので、中山間地の多いこの地区では
機械化はちょっと難しい。
ただレンディの地域は緑化政策のため、1人当たりの耕作面積は
かなり広い。
レンディも自分の父親との面積を合わせると
2.1haをクリアーできるのだ。

トラクター耕の利点はそれだけじゃない。
時短こそが最大の利点で、
2.1haをトラクターで作業する場合、
最大で144時間も時短出来る。
インドネシアの一般的な農作業労働時間は
1日6時間。
なので、24日分の余白をトラクターは生み出すことに
レンディは気が付いた。
この時間を何に充てるかは
彼がこれから結果を編集し発表に向けて
考えていくことになるのだが、
こういう余裕が農業経営を強くするということを
計算の中でもいいので、ある程度のリアリティをもって
実感してほしい。

僕はこれまでインドネシアで多くの農家と
ディスカッションをしてきた。
その中で、機械化の話は良くしたが
そのほとんどは一笑に付せられてきた。
もちろん、機械は壊れやすいし
使える場所は限られるし、
盗まれやすいし、
恨みつらみで壊されやすいし、
変な関係性を生み出すし
今までの関係性も壊すし
と言ったらきりがない。
でもさ、それもわかる。
もちろん、解っている。
嫌っていうほど。
僕も人類学や社会学の視点で
それらを眺めてきたし、そのことに対して
愛情もあった。
でもね、そんなことを言っていると
どんどん都市との
他産業との
ホワイトカラーワーカーとの
所得格差がどんどん広がっていってしまって
日本のように農への関心が
つねにノスタルジーな、
なんだか優しい目つきでみんなが見るような
そんな社会的地位に陥ってしまうのだ!
そんなバカなことがあってはいけない。
僕らは産業として独り立ちしているんだ。
その気概をもって、
農村の関係性を大事にするのは解るが
農村だから、それをことさら強調するのは
なんだか過保護というか絶滅危惧種を守るような
いわゆるダイナミックな変化の中に
身をさらさないことになる。

レンディの気付きは
きっと多くのインドネシアの農家に
前へ進む、つよい勇気になってくれると
僕は信じている。
だから頼むよ、レンディ。
ここまで調べて分かったのだから、
しっかりとした提言までまとめてね。



今日は気分がいい。
だからもう一つ書こうか。
技能実習生の座学の前期最終試験。
今回は3年生のレンディだ。

正直、
彼のプレゼン前に出してきた
レポートは最悪だった。
農業構造論的には
現状の分析が断片的というか
有機的に物事につながっていないというか
デデでも指摘したけど
分析のための分析というか。
つまり、僕が教えた項目を
埋めるだけの作業を彼はしていた。
もちろん1年生にはよく見られる現象だけど
それを3年の今になっても
やっていることに腹立たしかった。
だからこれまでも
彼はずーっと僕の中では評価が低かった。
その彼のレポートが
そういう具合でも
僕にはため息しか出ない。
そんな状況で彼のプレゼンを聞いた。

彼の現状把握のプレゼンでは、
森林政策の中での農業の継続が問題点として
挙げられていた。
緑化に務めるのであれば、
国有地を三セクが貸して
そこを農地として利用できる政策がある。
彼の地域はその恩恵のために
大規模路地園芸農業が可能で
その優位性を活かして
他の地域では出来ない
別次元のお茶栽培や
ジャガイモ栽培、さらには
コーヒー栽培に特化していた。
ま、そこはいいだろう。

で、その問題点として
その森林政策が打ち切られたら
農業が継続できないというところに着眼した。
また壮大な、解決できそうもない点に
着眼したなぁ~(センスないね)というのが、
僕の感想だった。
その解決策がまた失笑もので、
彼はコーヒー栽培を例に
それを大規模栽培しつつも、
村のお母さんたちの家庭菜園としてとりくむことを
ビジネスプランとして提案した。
おいおい、そんなもの家庭菜園でやっても
全体量を賄えなし、代替え案にもならんぜ。
キューバの夢を見すぎじゃね??
とそのプレゼンを聞きながら
僕は、もう溜息しかでなかった。

ところがだ。
彼はそれが代替え案ではないと言い、
それは大衆化させることで
自分の認知度を高める活動にすぎないという。
つまり自分が政治の世界に打って出るための
布石としてのビジネスプランだとさ。
おったまげたねー!もう!
椅子からずり落ちるかと思ったよ。
正統的な理由を付けて
それを社会運動化させて
それで儲けるわけでも問題解決するわけでもなく
自分が政治家となり
政策としてその森林政策や
その代替え案を考えだすんだというのが
レンディのビジネスプランの真の目的だという。

ああ、レンディよ。
僕は君を勘違いしていた。
君は論理的に考えられない小馬鹿だと思っていた。
この3年間、ずーっと思ってきた。
でもそれは違った。
君は大馬鹿だった。
3年生の大事な前期最後の試験に
そんな博打みたいなプレゼンを
してくるなんて。
僕が今まで君を叱ってきたそのすべてが
全く君を委縮させず
こうして広く羽ばたくその姿が
とても僕には美しく見えた。

君の分析や書いたものは幼稚だ。
ぜんぜん丸はあげれない。
でもそれは、僕の尺度での話で
君のような政治家は
僕は評価できないだけの話だ。
君は大きい。
そのまま大馬鹿を徹して進め。

こういう自由な発想と
根拠のない自信と
人を真顔で喰うような思考。
それが僕がこの研修で
君らに求めていたことだとすれば
君は僕の授業の試験という意味では
期待を大きく裏切って、
そして僕の想像以上の人間になろうとしている。

質問タイムでは
優等生タイプのデデとイマンが
穴だらけのレンディのプランに
ガンガン噛みついたが、
もともと同一の思考上に立てないのだから
君らがどう正統な質問をしても
通用しなかった。あたりまえか。
それだけ彼は大きかった。

3年になれば皆
それぞれに成長した姿を見せる。
レンディはレンディとして
その姿を見せてくれた
前期の最終試験だった。

レンディよ、僕は君のような人間を愛す。





今年もインドネシア研修生の
3年生であるレンディは迷走中だ。
3年になると卒業研究をするのだが
その計画書をこの4月までに提出しないといけない。
毎年のことなので、10月くらいから準備をするようにと
言ってあるのだが、
どうしても卒業研究をすること自体が
目的化されていて
必要のない、それなりに研究に見える、
そんな計画書を出してくるから
ちょっとウンザリ。
特にここ数年はその傾向が強い。
1期生から4期生までの
あのクオリティが懐かしい・・・。

さてレンディ。
ジャガイモの産地ということで、
ジャガイモの栽培について研究することになっている。
で、大変なのはアブラムシによる
ウイルス病だという。
その防除方法の勉強をするとのことだった。
ま、そこまでは良かったんだけど、
アブラムシの被害は全体の5%程度だっていうから
それなら防除しなくてもいいんじゃないか?
とそもそもの前提が崩れてしまった。
アブラムシの防除はなかなか厄介で
レンディは
「天敵防除をしたい」と
言っていたが
正直露地栽培で、まったく農薬をかけていなかった
ジャガイモ畑は、
たぶんもうそれだけで十分天敵は生息しているはずで
その天敵がいるから5%の被害なんじゃないかって思う。

そんな話をしていると
レンディは
ジャガイモのウイルス被害は全体の70%くらいがやられます
だってさ。
だとすると、えっとレンディ君、
それってアブラムシじゃなくて
アザミウマがウイルスの媒介者なんじゃないの?
アザミウマの防除だと、
ジャガイモで登録とれているとしたら
合成ピレスロイドのアグロスリンかな。
有効成分はシペルメトリンだね。
たぶんインドネシアにもあるよ、これなら。
ま、散布するしかないね、アザミウマなら。

で、銀マルチでジャガイモ作っているっていうから
たぶん、アザミウマの防除のつもりなのかもね。
ただ株が繁茂すると
太陽光の反射効果は得られないから
マルチする手間の方が大変そう・・・。
栽培法が若干違うので
その違いをまずは精査してもらって
自分でその意味に気が付いてもらえたらって思う。
僕がその答えをすぐに言っても良いんだけど、
それじゃ、勉強にならないからね。

こうしてレンディ君も
ぎりぎりになって
迷走することになりました。



なんだか最近は多産だね。
忙しくなればなるほど、
他にやらなきゃいけないことが
増えれば増えるほど
僕は書く。

ということで、
今回もインドネシアの研修エントリー。
月間レポートの発表はレンディの番だった。
ここで特別に記録したことは二つ。
一つ目は
ジャガイモの普及種イモを使った
優良品種の栽培について。
二つ目は
男女の格差について。

まずは一つ目についてだ。
レンディの地方はお茶栽培が有名だが
ジャガイモの産地でもある。
ただ病気の発生が多くて
それが頭を悩ましている。
レンディはその発生は品質の良い種イモが
手に入らないからだと考えていて、
それで原種農場等が生産している普及種子(ラベルあり)を
購入して、それを生産しようという計画だった。
で、種子も自分で生産して
品質が落ちるまでは普及種子の子や孫で
栽培をしたいというのがレンディさんの考え。

ふむ。
一見真っ当に見えるけど
これってやってみると結構大変だぜ。
17年前、南スラウェシ州バルー県で
僕が右顔面の神経が止まるくらい
苦労した経験から言えば、
その計画だけだと穴だらけだね。
まず、種子と青果物の生産は、
その方法やポストハーベストで違いが大きすぎる。
だから生産した青果物がそのまま
種子にはならない。
そしてそれがたとえ区別できたとしても
次に次作までの間の管理でも問題が発生する。
大抵は季節の巡りもあって
すぐに次作に移らない。
その間の保存がいい加減であれば種子は
その品質を低下させてしまう。
それ専用の施設が必要になる。
さらにこれが一番の問題だが、
普及種子で栽培された優良品種が
他のジャガイモと差別化されて
販売する市場があるのか?ということ。
大抵は、ジャガイモはジャガイモとしか
売買されない。
市場には専門業者だけでなく一般消費者も混在する。
専門的な評価をしてくれる業者も市場もそこにはいない。
これらすべて
17年前に僕が行った活動である
『平成10年度ラッカセイ優良品種普及事業』の
報告書の結論に書いてあることさ。
レンディのレポートは
机上の空論さ。
もう一回良く考えるんだね。
って、偉そうに言う僕も
その机上の空論を壮大なプロジェクトに落とし込み
実際に300人近い農家を巻き込んで動かしてみるまでは
ぜんぜん分からなかったけどね。
ということで、
この件は来月までの宿題になった。

さて、二つ目。
レンディにもイマンと同じように
人件費を計算するように宿題を出していた。
そして彼が計算したモノは
イマンと同じように全然
地域最低賃金に達していなかった。
批判はイマンと同じになるので
ここには記録しないが、
それよりもこの時に気になったのは
男女の格差だった。
日給が男だと25,000ルピア。
でも女だと20,000ルピア。
なんで男女差があるんだ???

この反応に向きになって反論したのは
イマンだった。
イマンは
「男と女とでは能力に差があるから給与に差があるのは当然。女は能力的に劣るから給与は安い」
とノタマフ。
まさか!性別で能力差があるなんてことはないだろう。
個人での差はあるかもしれないけど。
イマン、それ差別だぜ。
ジェンダー的差別だ!
法律的にそういう差を
つけていけないことも確認した後で
論理的にジェンダー的な差別は良くないと説明したが、
イマンもレンディも今一つ納得は
していなかった。
ただジャジャンだけは
僕の批判は真っ当だと理解を示してくれた。
農業も他産業と同じように
男女隔てなく雇用を考えていかないといけない。
日本の農業が衰退した原因の一つが
僕は家族農業のまま突き進んでしまったことだと思う。
その形態が悪いわけじゃないけど、
なあなあになりやすい関係性のままの業種体が
関係性を変容させていくようなイノベーションを
受け入れたり、自ら生み出すことはできないだろうね。
農場主のお父ちゃんが自分の妻や
長男の嫁にきちんとした給与を
払ってきたのか?と言えば、かなり怪しいね。
自分の家族という殻にこもって経営をするから
それが許されたけど
それを許してきたのが敗因ともいえるだろうね。
女性は力がない、そう言い張るイマンを見ていると
力がないのに農機乗るのはいつも男性という
訳のわからん構図もその後ろに浮かんでくるようだ。
僕の先輩で偉い人がいて
その人はそれがきちんとわかっているようで
「機械は妻がいつも乗るよ。俺はその補助で力仕事。それが一番合理的だから」
といつも言っている。
偉いよなぁ~。イマン、その先輩の言葉を
お前は理解できるか?
こうならないと君らの農業も
日本と同じように沈没するぜ。
で、レンディには宿題を出した。
作業内容に賃金格差はあっても良いけど、
性別による格差は無しにして、
しかも地域最低賃金を守って
それでも農業で儲かるようなビジネスプランを
立てること。
イマンと同じで
プランと実際は違うさ。
でもプランでも儲からないことは
実際では実現不可能だ。
意識の変化も必要だね。
彼ら技能実習生たちの
ジェンダーバイアスをまずは
取り除く作業にかかろうかと思う。
まだまだ道は遠いなぁ~。






海外技能実習生のレンディは
来年が最後の年。
ということで、農園たやの特別プログラムとして
この研修の卒業研究が待ち構えている。
いわば、大学の卒論みたいなものだ。

帰国後の夢が
ずいぶんと固まってきているこの時期から、
最後の年の卒業研究のプロポーザル作りが始まる。
昨日は、そのレンディの1回目のゼミだった。
彼の夢はシンプルだ。
広い農地と高地気候を武器に
鉄板価格のお茶を中心とした
高原野菜との複合経営だ。
もうこれだけで、
ほかに何の説明も要らない。
僕にも彼の成功は見えているくらいだ。
では、何を卒業研究にするのか?

彼は、彼の地域では手に入りにくいとしている
有機肥料について研究したいと発表した。
畜産が近隣にない地域であることと
彼の地域の農家は常に農地を広げている現状から
有機肥料の獲得は年々難しくなっているという。
また化学肥料も価格が上昇していて
経営を圧迫する場面もあるという。
そこで彼は、
どうしても栽培上で余ってしまう野菜や
その残渣を利用して有機肥料を作って
それで経費を浮かしたいと言い、
研究では自分で野菜残渣の肥料を作り
それを実際に使って野菜の比較栽培を行いたい
と発表してくれた。

なるほどね。
なんとなく、研究ぽくしてきたね。
レンディらしいと言えばレンディらしいかな。
では、ここから滅多切り開始だね。

まずは3年生のジャジャンがその批判の口火を切った。
「レンディが自分で肥料を作るっていうけど、そんな時間あるの?」
とジャジャン。
レンディは比較的規模の大きい経営を目指している。
そんな彼が肥料作りまでやっていられるのか?
というのがジャジャンの批判だ。
その批判にレンディは、
「労働者を雇うので大丈夫」との答え。
日雇いの労働者の賃金はずいぶんと安いらしい。
1年生のイマンは
まだまだ全体を見る力は出来ていないので、
彼のちょっと頓珍漢な質問を間に挟んだが、
僕も批判を緩めない。

ジャジャンと同じ方向で
やはり規模の大きい経営ですべてを有機肥料は無理だ。
あとその有機肥料にしたとしても
それを市場は評価してくれるのか?って辺りも疑問だ。
そもそも有機肥料をそんなに使っているの?
多くが化学肥料じゃないの?
で、化学肥料は高くなっているかもしれないけど
農産物の価格って昔のままか?
という前提から批判した。
レンディの答えでは、
農道がほとんど整備されていないので
鶏糞などの有機肥料では運ぶ量が多くなり
人力ではかなり無理があるという。
だから化学肥料の使用の方が多いらしい。

だとしたら、残渣を集めるのも難しいんじゃないの?
ってことも言えるね。
それに残渣は一定にならないので
肥料として必要量を確保しようと思ったら
そのために栽培しないといけなくなるよね。
そういう手もあるし
僕の農園ではある程度の堆肥を確保するために
そういう施設も仲間と一緒に持っているのは事実だ。
でもそこで作る有機肥料の資材は
畜産農家から買ったり
カントリーや米農家で出るもみ殻を買い取って
いわば自給というよりも資材を買って作っているのが現状だ。
自分で何から何まで準備することはない。
なんだかレンディのプランは
研究をするためのプランじゃないか?
それっぽく見せかけているだけで
現状を全く反映しない研究。
小手先だけの研究をする意味なんてないよな。
で、もう一つ注文を付けるなら
安い労働力って辺りも気になる。
規模を大きく経営するのなら
そこで働く人たちのことにも
もっともっと意識的になるべきだ。
高い賃金をしっかり払えるような経営のプランを
立ててこそ経営者なんだ。
辛い農作業を
安く請け負ってくれる人をこき使って、
その上に胡坐をかく。
そんなことをやっていちゃ
農業という産業が
インドネシアで他の産業から置いていかれちゃう。
家族の労働力を経営に反映させず、
満足に賃金も払ってこなかった日本のように。
もちろん僕も無批判ではいられない。
インドネシアの君らを受け入れている現状で
「安い海外の労働力を使っているじゃないか!」
という批判は甘んじて受けよう。
もっともっと賃金を払えるような
日本人のスタッフと同等くらいを払えるように
僕ももっともっと精進しないといけない。
そしてこの感覚が
僕の経営をここまで伸ばしてくれたのも事実だ。
売れないモノは売れる工夫をする。
でも売れなきゃやめる。
手を抜かず、でも質を落とさない方法も探す。
優秀なスタッフには全権委任する。
ま、自分の経営についてはまた今度書こうか。
閑話休題。

ということで、
レンディの1回目の発表は
サンドバッグのようになって潰れ去った。
研究をするようにみせるための研究なんて
時間の無駄をやっている暇はないのだ。
彼がどんな経営をやりたいのか、
その方向に寄り添っていく研究を
やるべきだ。
少し落ち込み気味だったが、
きっとこういう時間が
彼の意識を鍛えてくれると信じている。
次の発表が楽しみだね。
でも予告しておくけど、
次もきっとサンドバッグだよ、うん。
この作業は手を抜けないからね。
覚悟していてね。




今年で8期生を迎えた
僕らのインドネシア農業研修は、
じわじわと成果を上げている。
と思いたいのだが、
その実感はまるでない・・・。

今年1月に行われたスタディツアーでは
多くの方に参加いただき、
研修卒業生にも会い、
帰国後の彼らの話も見聞きしてもらった。
いろんな思いを抱いている卒業生たちが
頑張っている日常に感動してもらったのだが、
正直、それが結果につながっているのか?
と問われれば、僕には自信がない。
この農業研修の主目的は
地域を創る農民の創造だ。
自ら現場で考え、
自分の利益だけでなく、
その業が地域にとってどういうことなのかも
考えながら、その生産様式が
地域変容の一翼を担えるような
そんな人材の輩出を期待して
僕らの、そして彼らの貴重な時間を費やしてきた。

しかし、実際に地域でリーダーシップを発揮して
農業に打ち込んでいるのは
現状では一期生のヘンドラだけという
その結果が、僕を批判する。
ここに来る人材は
申し分なく優秀だ。
僕らのメソッドに問題があるのは分かっているが、
それ以上に
ここに来る子たちの貧困度が半端ないから、
そこから這い上がるだけでも
なかなか大変だと思う。
現状では、その貧困からあがいて這い上がろうとしている
まさにそのプロセスの最中だというのが
卒業生の現状なんだろう。
あと、やっぱりかなり賢い連中は
農業そのものに焦点を当てないね。
最初から農業をやって地域づくりをするんだ、
と意欲的だったのは一期生と二期生だけだったしね。
たぶん、その時は僕もそういうことを
熱く語っていたんだと思う。
どこかで修正が入り、
その分より現実的になったんだろうけど、
その分突出はなくなったのかもしれないと
自分を反省したい。

さて、こんな話をしたのは、
その反対の人材が今ここにいるからだ。
六期生のジャジャンと並んで
七期生のレンディはしばらくぶりに
農業に主眼を置いた研修生なのだ。
しかも、レンディは
地元の彼の農業基盤は
貧困層ではなく、やや上流に所属している
のではないか、と思われるような規模と
その生産様式には十分未来を感じることができる
農業形態を有していた。
この農業研修始まって
初めての農業で十分やっていけるような
そんな規模と資金を持った農業子弟が
やってきたことになる。

彼の地元は以前のエントリーでも書いた通り
バンドゥンから3時間ほど離れた高原地帯で
野菜やお茶栽培が盛んな農業地帯だ。
一般のインドネシア農民が持ち合わせている
米への情念なんて全くなくて、
儲からない米なんて作らず、
野菜とお茶とコーヒーで儲けて、
そのお金でお米を買えばいいと
言い放てる感覚も持ち合わせている
ニュータイプだ。

その彼はここに来てから
(厳密に言えばここに来ることが決まってから)
農地を買い足した。
自分の父とは別に
自分のお茶畑を作るために。
広さは父の茶畑の1.4倍。
農地はインドネシアで営農していたたくわえと
ここでの収入で支払った。
そして先日、そこに植えるお茶の苗
日本円にして30万円分の苗を
購入して、現地の雇人に植えてもらったという。
お茶は2年間は収穫ができないそうだが、
彼が帰国するころには、お茶の収穫が始まるという。
その売り上げは荒い計算だが毎月5万円以上になる。
経費等も差し引いても、
公務員よりも高い収入になることは想像できる。
帰国してすぐに彼は
農業でランディングができる
その条件と環境をすでに揃えてしまったのだ。
このスタートを切るために
他の卒業生は何年も
農業と他の産業との間で行ったり来たりと
右往左往するのにね。

彼の条件が良いということもあるが
彼はここに来る前から
帰国後の自分をしっかりと持っていた。
だから、ここでの収入もどこに使うかは決まっているし
ここでの自己学習の方向性も決まっていた。

僕はレンディの話を聞いて
思い出した。
そう、協力隊の時に自分が言っていたじゃないか。
研修はそれを行う前が8割だと。
方向性と未来像がその本人にモティベーションを与え、
研修はただ儀式的だったり、
実際に勉強をするにしても
それは決まっていることを学習する
いわゆる作業にすぎない。
研修もツールだとすると、
それを始める前に
どれだけ自分の地域を見られるのか
掘り下げられるのか
そこからどういう未来を見ることができるのか
それにかかっているんだ。
僕はそれをアカワケギの研修で
南スラウェシでそのダイナミズムを
感じたじゃないか!

でもそこに答えがあるとなると、
僕がここで研修前の作業を
研修中のここでしようという修正をしても
やはり結果が出ていないのだから
そのやり方じゃ、ダメだってことになるね。
分かっていたことだけど
やっぱりそういう風にはならないのか。

できることなら向こうに駐在して
その村のポテンシャルと
地域農業の未来像を一緒に描くところから
始めたい。
一人一人の未来と地域への考えとまなざしを
僕もその肩越しに眺めながら
議論をしたい。
そこから始められたら。
そこから始められたら。

でも、それは現実的じゃない。
そう思うのは、僕が弱いからかな。
五期生の帰った二人の考えに
ここ最近触れることが多く、
ちょっと気弱になっているんだろう。
なぜ、僕らの思ったような成果がでないのか。
だから他に間違いがあるように思ってしまう。

今年はジャジャンとレンディという
農業志向の強い2人がそろっている。
ジャジャンは、ほかの実習生と一緒で
なかなか帰国後のスタートを切れなさそうだが、
レンディにはその期待が高い。
もはや運だな、と思ってはいけないのだが
そういう風に考えてしまうようなのが
現状なんだろう。

すぐに現地へ行くというような修正は出来ないが
ここでできることをもう少し考えよう。
少なくともレンディの事例は
他の実習生とは違うところからスタートしているので
これを丁寧に事例化してみたい。






今年2月に来日したレンディ、
それなりに高校時は成績優秀者だったことと、
卒業してからそれなりの規模の経営をしている
父の農園で手伝っていたことで、
僕の中で彼への期待値は
いままでの誰よりも高かった。
だからだろうけど、
そのあとは肩透かしの半年だった。

とにかく彼はイレギュラーに弱い。
想定外を平然とこなせない。
21歳ということを考慮に入れれば、
たぶん普通の青年なんだろうけど、
僕の勝手な期待値が高かった分、
彼には申し訳ない半年だったかもしれない。
僕もここ最近は
務めて彼に期待をしないようにしてきた。

で、今月、提出してもらった月刊レポートに
ようやく彼らしさが顔を出し始めた。
毎回自分で学習目標を立てて
それに向かって自分で勉強を進めていくのだけど、
これまで彼の月間レポートは
自分が学習をしたことというより
自分が知っていることを書き並べたような感じで
しかも方向性もバラバラで
報告書を書くために、
その項目を埋める作業といった感じだった。
だが、今月は違っていた。
明らかに自分の地域の農業の問題点を
荒いけど掴もうとしていたし、
それに対してのアクションも正しかった。

彼の地域では野菜栽培が盛んだ。
で、自然、関心はその値段と収量に向く。
病害虫を減らし、肥料の効果を高め、
品質よくして高価格を狙う。
そんな方向性がある程度見えてきた。
今回のレポートでは、
病気と土。
これは農業をやっている者の
永遠のテーマだろうな。
土壌分析をしてphを調えて
主要素だけでなく微量要素なども
バランスよく含んだ土づくりに
彼も目がいっているようだ。
そこで彼が今回勉強をしたのは石灰資材。
安くてどこでも手に入って
使い方によっては病気の防除にもつながる
万能資材。
石灰をきちんと使用できるようになるだけで
それだけでもう別次元の野菜作りができるようになる。
彼のレポートの内容はまだまだ
深くなかったので
農業系雑誌の石灰特集記事を
来月までの宿題として彼に渡した。
これまでの彼だと
嫌がって受け取らなかったのだけど、
今回は自分の興味がきちんとその方向に
向いていたようで、
とてもうれしそうにその雑誌を受け取ってくれたのが
印象的だった。
少しずつだが、
彼が変わろうとしているのが見えてくる。
僕もこのポイントを逃さないようにしよう。





今年研修1年目のレンディ。
なかなか研修の感覚がつかめないようで、
インドネシア語で指示を出しても、間違えることが多い。
異文化での作業は、それだけで混乱するものだ。
これに慣れるまでは、どうしても1年くらいはかかってしまう。
それは研修だけのことではなく、
青年海外協力隊の場合も、学業の場合も、仕事の場合も、
たいていそれくらいの時間がないと
その文化が持つ微妙なニュアンスを理解できずに
間違える・ミスすることが多くなる。
というのは、余談。

今回の本題は、なぜ最大を目指さないのか?について。
レンディの前回の月間報告書で、
お茶栽培が一番儲かるのに
なぜか野菜栽培も経営の一部に取り込みたいと書かれていた。
営利を最大に目指したいのであれば、
野菜栽培は合理的な選択ではない。
なぜ、彼はビジネスプランという空想の世界でも、
最大を目指さないのか?
次の月間レポートまで待てずに、
すこし彼にインタビューを個別でしてみた。

彼の地域では、
一般的な農家すべてがお茶と野菜の複合経営だという。
もちろん、お茶にとって条件不利地だけを
野菜栽培にしているわけでもなく、
お茶栽培に適していても野菜栽培を経営に含んでいる。
お茶は全量、国の認可を得た業者が
一定の値段で買い取る形式で、
たくさん取れたからと言って価格が暴落することもない。
その一方、野菜は市場価格が乱高下する。
野菜価格が高止まりしたとしても、
短期的に見てもお茶のほうが利益が大きいし
作業も楽だという。
じゃぁ、なんで野菜を作るのか?
全部、お茶栽培じゃダメなの?

レンディはいろいろと苦労して
この問いに答えようとしてくれた。
まずは雇用人を維持するためだとか。
お茶栽培だけだと雇用人の仕事を作るのが
大変だという。
レンディのお父さんの経営では
2名の雇用がある。
お茶収穫だけだと、作業の少ないときは
野菜の作業に入ってもらうのだとか。
でも、インドネシアでは
お茶はオールシーズンOKな作物で
圃場内で収穫をリレーしていけるように
区画別に管理していけば、
ある程度は常に一定の労働を確保できると思うのだが。
だから野菜栽培は不要では?
この問いに、
レンディは答えられなかった。
言われてみれば、その通り、とのことらしいが、
それでも野菜栽培はしたいらしい。

で、彼らの価値観を少しのぞいてみることに。
お茶栽培ばかりしている農家はいるのかと聞くと、
その地方では誰もいないという。
お茶栽培だけをしているのは、
国から認可をもらったお茶買取業者(Pengusaha)の直営農場だけで
いわゆる一般の「農家(Petani)」は
お茶と野菜栽培をしている。
規模が同じでお茶ばかりを作っている農家と
野菜とお茶の混合の農家とでは、
どちらが地域のリーダーにふさわしいか?との問いには、
野菜とお茶の混合の農家だという。
じゃ、同じ規模でお茶中心で野菜栽培も少ししている農家と
野菜中心でお茶栽培は少しの農家だった場合は、
どちらが地域のリーダーとしてふさわしいかと聞くと
お茶中心の農家だと即答してくれた。
その違いは、やはりお茶中心のほうが安定経営で
その地域で一番大事な作物だからだという。
お茶ばかりの農家は、
農家じゃない、と彼はいう。
でもその理由は明確に答えられなかった。

そんな問答を繰り返していたら
彼は、「野菜栽培は『Hobi』なんです」と答えてくれた。
Hobiとは、つまり趣味。
好きだから作っているというニュアンスか。
なぜ野菜栽培がHobiなのか、
農業を経営しているのに、作物選択がHobiで決まるのか、
などなど彼の価値観にもっと近づきたかったが、
ここでタイムアウト。
次回、月間レポートにそのHobiの中身について
書いてきてくれることになった。

彼の言っていることは、僕自身の感覚でも
同じようなことがある。
僕も野菜栽培の中で、一番儲かるものを
最大化させていない。
リスク分散なんてことも言えるけど、
それで他に栽培している野菜の種類は
別に市場的に優良でもなんでもない。
僕が好きだから栽培しているだけだ。
でも、レンディの話がこの感覚と同じかどうかは、
もっと慎重にならないといけない。
同じだと思ってしまえば、
そこに潜む大事な価値を見逃すことになる。
もう少し彼の価値に
その差異を探しながら近づいてみてみたい。



今年来たレンディの月間報告書が
興味深い。
内容が深いというわけではなく、
彼の「常識」というその意識が
僕には面白い。

レンディの地域は、2期生のイルファンと同じ地域。
ジャワのスンダ民族の地域にしては、
ちょっと趣の違う場所。
米作りもしていないし(自然条件的にできない)、
土地もふんだんにある。

そのコミュニティーの行動規範や経済的倫理感を
見ていく場合、
同じスンダ人でもちょっと自然環境の違うところを
比較してみるとその意識がわかって面白いこともある。

レンディの地域では、
土地はたくさんあり、平均的な土地所有も1haもあり
イラやジャジャン・ダルスの地域の3倍も所有している。
しかも、まだまだ土地は余っていて
さらに大規模な開発もない(ダムや道路など)ため、
土地の価格も破格だ。
こういう土地の場合、
最適を目指す行動規範は、どうして最大を目指さないのか、
それが僕には不思議に思うことがある。
レンディの例もそうだった。

彼の地域では国も専売特許であるお茶栽培が盛んだ。
これはある程度の高地でなければ栽培できないため、
値段が高いからと言って誰でもどこでも始められるわけでもない。
また乾燥などのお茶工場といった大規模な施設がなければ、
そもそも無限にお茶は作れない。
そういった施設もレンディの地域にはそろっていた。
だから彼の月間レポートで
帰国後の農業ビジネスプランでも
お茶畑を買い足して、お茶栽培をすると書かれていた。
だが、しかし、
それにもう一つくわえられていた。
それとは別に土地を買い、野菜栽培もしたいとのことだった。
野菜の方が単価が高いかというと、そうではないらしい。
お茶がやはり断トツに高単価だという。
では、その土地はお茶栽培に向かないのか、訪ねると、
それも違うらしい。
野菜栽培に向く土地は限られているが、
お茶栽培はその地域ならば、どこでも可能だという。
森林公社から借り受けられる土地も
栽培条件には野菜と一緒にお茶も入っているので、
国の政策的にも制限はない。
では、なぜ野菜を栽培するんだろう?

レンディは答えに窮していた。
「だって、他の農家もみんなそうしているんです」
と答えていた。
お茶の方が儲かるのに、
なぜわざと損をする野菜栽培をするんだろう?
実はここに彼らの価値と常識が埋め込まれている。
レンディはその地区の規範と常識に沿って、
ある程度のお茶畑を持ったのなら
野菜栽培も始めようと思ったらしい。
だとしたら、その見えない規範と常識には
なにがあるんだろうか。
月間レポートのディスカッションでは答えられなかったので、
これは宿題となった。
来月の月間レポートまでに
彼なりに分析して答えてくれるようにお願いをした。

最適と最大の狭間がすでに壊れてしまった
僕ら日本人からしてみれば、
その行動規範と常識はとても奇異な行動に見えるが
そこにあるかもしれない、
血の通った価値を
僕もどこかで求めているのかもしれないな。
というのは、余談。
来月に続く。

ちょっと紹介が遅れたが、
農園で行っているインドネシア研修事業も
この前の2月で第7期生を迎えることができた。
つまり7年目になるってことか。

さて、その7期生でやってきたのが、
レンディ・アグンという若者。
6期生のジャジャンと同級生で
長身のイケメンだ。
学校の成績も良く、
成績優秀者だけの特典である
学費免除も受けていたようである。

その彼、
実は一昨年の第6期生の選考にも応募していたようで、
その時は最終選考まで残ったのだが、
条件が合わず合格できなかった。
(ちなみにこの時の合格者はジャジャン)

普通はそこであきらめてしまうのだが、
彼は今回の7期生選考にも応募し、
2年越しでその夢をかなえた。
応募総数24名の中から1名だけが合格という
僕の研修も狭き門になりつつあるが
それだけやる気と能力が高い人材が
集まってくるという意味では、
僕にもとても良い緊張感がある。

さて、
この研修は現地でのポテンシャル調査を
僕の大学院の学友だったアニ女史にお願いしている。
レンディの農村の調査報告レポートも
約80ページの厚さで届いている。
そのレポートとレンディ自身のインタビューでも
わかっているのだが、
彼は、とても土地持ちの
中級クラス以上の農家だってこと。
これは今までになかったケースで、
これまでの研修生は、
大抵条件不利地の農家だったり
そもそも土地所有していない農家ばかりだったのが
今回は、彼個人ですでに1.5haの土地を所有しているばかりか
車の免許もあり、一族では大型のトラックも所有している。
そればかりか、彼の叔父が大きなお茶の加工場も所有している。
それなりに大きなお茶農園一族の御曹司と
言った感じで、
僕が目標として掲げるあちらの農家所得を
彼個人で、すでに2倍以上上回っている状況なのだ。
なぜこの研修に参加したのか、
なぜこの研修に参加する必要があるのか、
その辺が僕には正直理解できない。

だが、
こういう人材もいてこそ
また議論も深まると言えよう。
これまでになかった若者・レンディは
僕らの議論に新しい風を吹き込んでくれそうだ。

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
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