インドネシア研修の新学期が始まった。
新しく来たクスワントが、日本語の1か月訓練を終え、
今週から実習に入れるので、
新しいスメスターを開始した。
日本語訓練は、長期海外研修制度の制度上、
必要らしいが、どうもそのクオリティに問題を感じるのは余談。

さて、今日は今期スメスターの説明。
授業は週に3回。
月曜日が農業構造論。
水曜日が地域開発論。
そして金曜日が3年生のゼミ。

さて、農業構造論では、何を勉強するの?
と、今年3年生のイルファンに問うと、
「農業の中身を分析し、比較検討できるためです」との答え。
うーん、わかったようでわからない答え方だが、
良しとしよう。
この授業が、僕の研修の最も基礎になる。
農業を下支えする要因をあぶり出し、
表象である農業そのものを地域ごとに比べるのではなく、
その要因や背景を理解し、比較することで、
自分たちの農業の進む道を見つけてもらいたいという授業。
相対主義的な視点を獲得するのが目的で、
妄信的に日本の農業を先進的として誤解している
インドネシアの研修生の考えを
軌道修正する授業。

地域開発論では、
日本の農業ビジネスの事例を2年生が漫画で読み、
そのプレゼンを行ってもらい、
成功のカギはいったい何なのか、を議論する。
農業構造論で腑分けされた要因ごとに見ることで
ぼんやりしていた成功の鍵がより
顕著になると思っている。
さっそく、2年生のタタンに、
徳島県上勝町の「いろどり」の事例本を渡す。
2週間後にプレゼンをしてもらい、議論する予定。

3年生のゼミでは、
今年3年生のイルファンが行う卒業研究のテーマに沿って、
文献や雑誌を読み、それをプレゼンしてもらいながら
議論する授業。
文献・雑誌は、インドネシア語は不可。
必ず、彼らにとって外国語で書かれたもの(英語や日本語など)。
最低2週間に1回はプレゼンをすることになっている。
(本当は1週間に1回にしたいのだが、研修生から『無理!』と言われてしまった・・・)。
先々週に、その課題は言い渡してあるので、
今週金曜日にさっそくゼミ開始。
今回は、オクラ栽培の畝間に、麦を播種して
バンカープランツとして利用するという農業雑誌の記事。
僕もすでに実践して久しい技術の一つ。
インドネシアでも有効だと考えられるので
是非、彼らと一緒にインドネシアのモデルも
考えていきたい。

この授業の合間に、
月間研修レポートの議論や
外部特別講師(協力隊OV)の講義などを
予定している。
また忙しくやりがいのある日々になりそうだ。



こういう項目を作っておいて
これまで一つもエントリーを書けていなかった。
日々忙しいというのもあるが、
それ以上に、どういう研修をすればいいのか
僕自身、かなり迷っている部分もあるということである。
走りながら考える、といえば聞こえはいいが
どういう研修をすべきなのか明確でない部分もかなりある。

だから
カリキュラムと言っても
かなり流動的。
180度方向転換もありうるのだ。

研修カリキュラムを定めるからには
研修の目的が無ければならない。

目的は一つ。
研修生がそれぞれの地域で、農業主体の地域発展に貢献できる人材に育成すること。

ではその目的に即して
必要な授業は何だろう。
現在用意しているのは、
農業構造比較論
地域開発論
農業とグローバリゼーション
生物多様性と総合的作物管理(ICM)論
の4つ。

一つ一つ簡単に説明しよう。

「農業構造比較論」
うちで学ぶ研修生が最初に受ける授業。
もっとも基礎的な授業。
授業の目的は、農業に対する相対主義的なパースペクティブを獲得すること。
農業という我々の目に見えている現象は、
表象にすぎない。
その表象同士をそのまま比較しても
たとえばインドネシアと日本の場合、その多くが
機械化された近代的農業の賛美に終わるだろう。
または有機農業の文脈においても同じで、
それら農業は揃った資材と機材によって支えられており
同じように近代的農業でしかない。
だから、表面だけ見比べれば
僕らは、先進‐後進の枠を乗り越えられず、
いつかは日本のような農業を夢見る研修生を排出し
単線的な近代化論的発展論に陥ってしまいがちになる。
それでは意味がない。

僕らは同時代を生きている。
そしてそれぞれに発展の道は異なる。
ここの農業が先進的に見えるのは、それを支えている要因が違うからである。
先進的じゃなく、それはユニークなんだ、という視点が必要なのだ。
ではその視点を得るにはどうすればいいのか。
その表象を支える要因を腑分けしていけば良い。
その要因の中で、それぞれの農業を比較していけば良い。
ミクロな要因からマクロな要因まで
その地域の農業を作り上げている要因はたくさんある。
それらに自覚的になることで、
自分の地域の、また他の地域の農業を
読み解くことができる。


「地域開発論」
この辺が僕の専門領域。と勝手に思っている。
研修生は日本語を読み解く力が、弱いので
農業ビジネスの成功事例のまんがなどをテキストにして
地域開発の鍵は何なのかを一緒に考える講座。
農業構造比較論で出てきた要因なども
ここで用いて分析してみることで、より理解も深まる。
最終テストには、
研修生の農村ポテンシャル調査のレポートを元に
自分の地域では無い地域のレポートを読んで
その地域の農業ビジネスプランを立てるというものを用意している。
そのレポートは、
大学院で同窓だったインドネシア人の友人に依頼しているものを使用。
ビジネスプランの重要事項に
社会的企業の要素を盛り込むことが絶対条件となっている。

「農業とグローバリゼーション」
ビデオを使っての授業。
遺伝子組み換えの現状や
ヤシ油やコーヒーなどの大規模プランテーションの現状、
キューバの有機農業のビデオなどを見ながら討論。
環境保護・市場自由化・労働搾取などの問題も議論する。
同時代性を強調し、僕らが持つ世界的な問題点を共有し、
ミクロに実践していこうという授業。
協力隊OVの体験談などもこの講座で話してもらっている。

「生物多様性と総合的作物管理(ICM)論」
化学合成農薬や化成肥料に頼らない新しい農業の地平を探る
理論的な農学の授業。
ただそれでいて、単なる有機農業信奉にも陥らないように気をつけている。
人間の健康から農を読み解くのではなく
エコロジカルシステムの一員として
永続可能な農業の視点から農を読み解く授業。
天敵の利用とただの虫に対する眼差しと
雑草の知識、作物の全体風景、輪作、混作などの
技術的な議論をするのが目的。
こういったものが
市場的に有利に販売できるかどうかは
この授業の範疇でもなければ
僕のポリシーでもないのであしからず。

上記の授業以外に
3年目になる研修生には
それぞれ自分の課題を設けて、研究を行ってもらっている。
毎週1回、その研修生がゼミの課題を作り、
皆でそれについて討論する講座も用意している。

また、毎月1回、
研修生それぞれが月間レポートを作成し、
その月の経験や疑問などを討論する時間も設けている。

半期に1講座(予定)。
2年で4講座の計算。
3年目は自己研究のゼミ。
なんとも少ない講座数なのだが
現状では、これで目一杯。

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
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