腸内フローラを観た数日後、
こんな電話をいただいた。

「いつもスーパーでベビーリーフを買っています。ラベルに軽く水洗いしてくださいって書いてありますが、それだけで本当に生で食べて大丈夫なんでしょうか?」

この方は以前にも
ベビーリーフに土がついていた、と
ご連絡をいただいた方だ。
連絡をくれるのはとても良いお客さん。
大抵の方は、そこで気分を害せば
もう買ってもらえないだけだからね。
で、その時は、
土耕で作っているので、
葉っぱに土が着くことはあります、や
きれいに洗っていただければ問題ありません、
と答えた。
それが気になるのなら、
生での食べ方をやめるか、
無菌の植物工場で育てられた野菜を食べるしかない。
こちらで過剰な洗浄をしたり
食の安全という意味で必要以上の
手を加えることは極力しない。
農園たやは、そういう方針だ。

さてお電話いただいた方は
食中毒や残留農薬を気にしておられるようで、
とにかく軽く洗っただけでも
汚れや農薬がとれるのか、と気にされていた。
正直に言えば、
水で洗ってもたぶん、
それらは取れないだろうと思う。
ただそれが本当に健康にとって
脅威なのかどうか、は別問題だろう。
農園で使用している農薬は、
細菌では微生物農薬が増えており、
人体に対しても影響の少ない農薬に切り替わっている。
有機リン系・カーバメイト系・合成ピレスロイド系の
いわゆる皆殺し剤の使用は控えている。
それらにしても
それらが人体に危ないと言いたいわけではなく
農園では必要以上に天敵やただの虫を傷つけない、
というそういう方針からでもある。
農薬は
厚生労働省と農水省のガイドラインに沿って
必要回数と日数と希釈率と量を散布している。
基準が安全じゃない!と言う方もいるだろうね。
そういう方面もできる限り勉強し、
最新情報を集めている。
ネオニコチノイド系のヨーロッパでの使用禁止についても
それを禁止してもミツバチの状況が
変わらないという現実も
僕らは情報として集めていて、
日本のガイドラインでは禁止になっていないような
事例もできるだけ追うようにしている。
その学問と知識と現場での判断で
僕らは農薬散布を行っている。
で、それら農薬が完全に分解されているかどうかも
確かに問題かもしれないが、
それ以上に洗って落ちずに経口摂取された場合の
影響についても僕らは、
急性毒性や慢性毒性
そして一日摂取許容量がどのようなものであるかも
それぞれの農薬について確認もしている。
だから安全とは言い切らないが、
安全を求める姿勢はこれからも続けていく。

次に食中毒。
農園では堆肥で土づくりをする。
化学肥料を使用しないし、土壌消毒も行わない。
だから土壌中の微生物量はたぶん多い。
以前、カット野菜の業者とコラボして
農園の野菜をカット野菜に混ぜて販売したことがあった。
その時、その業者が自社基準で
農園の野菜を検査したところ、
基準以上の微生物が検出されて
何度か再検査になった。
その原因の一つは、
その業者の自社基準の基準だろう。
監督官庁の基準の2倍の厳しさで
より安全性をアピールしていたのだが、
その基準で測ると農園の野菜は
たまに再検査になってしまうのだ。
必要以上に厳しい基準だっていうが、
他の業者から納入された野菜は
厳しい基準でもまったく引っかからないという。
なぜ農園の野菜はたまに再検査になったのか?
それは土づくりにある。
土壌中の微生物群を増やすような取り組みを
長年行っているので、
農園の土にはたくさんの生き物が住んでいると思われる。
その土に育まれて個性あふれる(と自分で言うのもなんだけどね)
野菜が育つのだが、
当然、その野菜にも微生物がたくさん住みつくのだ。
植物たちも自分たちだけで
栄養を土から摂取しているわけではなく
多くの寄生微生物との共生の中で
自分たちに必要な物質を分け与えながら
お互いに生きていると言うが
本当の自然の描写だろう。
だから微生物群の多い環境で育てば
野菜にも多くの微生物や菌が寄生していても
おかしくない。

そして、腸内フローラ。
滅菌抗菌思想とは逆の真実。
エコシステムの中で生産を続ける意義と意味が
そこにあるように感じる。
有用で植物と共生している菌と微生物群。
lgA抗体は30とも100とも言われている
世界中にある微生物群の中で
4つの群を選んで腸内に住まわせている。
僕らがこれからも付き合っていくべき
パートナーは、こういう身近なところの
昔からの取り組みの中にあったかもしれない。
と結論付けるのは、性急なのだろうか。

軽く水洗いだけで大丈夫ですか?
その方の問いへの答えは単純で明快だ。
それで大丈夫です。
これまでの方向性が
間違っていなかった、そんな風に思える。
もちろん批判的な視点で
僕もまだまだ研究を続けていこうと思う。
でも現時点でも、僕は自信を持ってこう答えよう。

それで大丈夫です、と。



以前に撮ってあった番組を見る。
NHKスペシャルの「腸内フローラ」だ。
今年の2月22日放送分で
ちょっと前だけどようやく時間ができたので観た。
自分の研究テーマの一つが微生物との共生だが、
その一つとして人と微生物の関係で
腸内環境についていろいろと文献を読んできたが、
この番組は、
それを簡単にまとめていて、とてもいい番組だった。

フローラとはお花畑のこと。
腸内に多様な細菌が住みついていて
その多種多様さと100兆以上という量の豊かさを
フローラ(お花畑)という言葉で表現している。
そんなに細菌が住んでいて大丈夫?って
思われる方もいるかもしれないが、
これが住んでいないと人は人らしく生きていくことさえ
ままならないのさ。
毎日の排便の1/3はその細菌群の塊だとも言われている。
腸内に共生している細菌は
僕らが食べたものを一緒に消化する。
その過程で彼ら彼女らもいろんな物質を発する。
その発した物質が
僕らにとって抗がんに必要な物質だったり
過剰な肥満を抑制したり、成人病予防につながったり、
老化を防いでくれたり、と、
僕らには無くてはならない物質を多く作り上げてくれる。
さらに、腸は第2の脳と言われており
脳の次に神経細胞が集中している場所でもある。
番組でも取り上げられていたが
細菌たちが僕たちの食べたものを分解する過程で
発せられる物質が電気信号化されて
その神経を伝って脳に刺激を送っているという
研究もずいぶんと進んでいた。
僕らの腸内の環境は、
つまりはそこにどういう細菌が住んでいるかで
僕らの思考や性格に大きく影響を与えているという
事実はとても衝撃だった。
僕らの思考は、僕ら自身の中にあるのではなく、
僕らの腸の細菌たちとの共生の産物とも
いえるものなのだ。
我思うゆえに我ありといったデカルトも
この事実を知ったらびっくりだろう。

ではその細菌はどのようにして
僕らの体の中で住むようになったのだろうか。
それは日々の食事の中で
取り込まれた細菌群を
腸管免疫を司るlgA抗体が
有益な細菌群を選んで
小腸の粘膜の中に引き入れ
そこに細菌のフローラを形成してきた。
世界には細菌の分類群(門)は30とも100とも
言われているが
腸内に住むことを許された細菌群は
(つまりはlgA抗体に小腸の粘膜内に引き込まれた細菌たち)
4つの群しかないという。
つまり長年の進化の歴史の中で
僕たち人類は多くの細菌の中から
4つの有益な細菌群と共存することを選んだということだ。
腸内フローラは
多様かつボリュームがあればあるほど
それは優れているという。
抗菌や滅菌が流行る時勢が
何かとんでもなく方向違いをしていると指摘する
研究内容がとても小気味よい。

その細菌群を育むために必要なことは、
まずは僕らの食事の質だ。
細菌群の栄養となるが食物繊維。
腸に良いってこれまで聞いてきた食物繊維も
便通が良くなるってだけだと思っていたが
いやいや、その細菌群のエサになると分かれば
これは積極的にとらないわけにはいかない。
そして過剰な抗菌滅菌思想を避けること。
ある分子生物学者は
週に2回は手を洗わないで食事した方が良い、と
言い切るほど
今は抗菌滅菌思想がはびこっていて
それが腸内環境を悪くしている。
ある程度菌を摂取することが
僕らの健康を支えることになる。
ただここで大事になるのが胃の調子。
胃では胃酸を出して多くの細菌が死滅してしまう。
それは人が食中毒にならないためでもある。
多量の菌を摂取し、その結果食中毒になっては
健康とはあべこべの結果になる。
暴飲暴食をさけ、快眠とストレス減で胃の調子を
整えたうえで、
僕らは適度に菌と共生する道を選ぶべきだ。
あとこれはまだ答えが出ていないが
僕は水道水の塩素が腸内フローラに
大きく影響しているとも考えている。
水道水の滅菌が腸内も滅菌してしまうのではと
思って、もう5年以上水道水を直接飲むことを避けている。
だけど、まだそれを明記している文献には出会っていない。

農園でバイトしている学生が
卒論のテーマとして
朝食と躁鬱関係を調べている。
朝食をとることと躁鬱との関係だが、
これはすでに答えが見えている。
腸内環境が人の思考や性格に大きく影響するのだから、
これは朝食と躁鬱は大きく関係しているだろう。
しかも大事なのはその内容、つまりは質かもしれない。
朝からしっかりと食物繊維をとり
しかも自炊しないとダメだ。
過剰な食品添加物によって滅菌された食べ物だと
(たとえばコンビニの弁当などなど)
やはり腸内環境には良くないだろう。
添加物がどう悪いのかはこれまでわからない部分も多かったが
細菌の繁殖を防ぐような添加物と
腸内環境との関係から研究しても
面白いだろうね。
そういう文献もまた探して読みたい。

腸内フローラ、新しいテーマが
また一つ僕の中に増えた。
そんな良質の番組だった。




僕の農園は無農薬ではない。
農薬散布はもちろん行う。
だが、皆さんが持っている「農薬=悪」という意識はない。
散布が常態化して、そういう感覚がなくなったわけじゃない。
積極的に農薬に向き合うことで、
一括りにされてきた「農薬=悪」に疑問を持っているだけだ。

ちょっと前のエントリーでゴッツAについて書いた。
農園の主流農薬である微生物農薬だ。
だが、微生物農薬だから安全って言いたいわけじゃない。
その農薬が人間に与える影響は、
化学合成だろうが微生物だろうが
大して変わらない。
場合によっては、
一本の煙草や一杯のコーヒーやお酒ほど
危険じゃない。

だが、ここで微生物にこだわる理由が
僕には少しだけある。
それは人に対してではなく、
虫に対してだ。

農薬はポジティブリストが導入されてからは、
使える農薬がぐっと減ってしまった。
リストになければ使えないし、
使用回数も制限を受ける。
ま、それは当然のことで、
ポジティブリストの議論以前が、
いい加減すぎたってことなんだけどね。
その頃は、結構有名な農薬の指南書でも
農薬の登録にない野菜にもで
こうこう判断してこうして使える、と
裏技的に書かれていたというのは余談。

さて、野菜の種類や回数制限を受けると
マイナー野菜をたくさん作っている僕は
やや防除に困る。
リストに載っていないマイナー野菜を
たくさん作っているからだ。
で、そんな時、微生物農薬は
とても重宝する。
なぜなら登録野菜がざっくり「野菜類」と
なっているものが多いからだ。
つまり野菜であれば、どれにでも使ってよい
ことになる。
ADI(1日の許容摂取量)やLD50(半数致死量)が
考慮されてのことなので、
人間様は大丈夫。
いらぬ心配はしないように。

で、ゴッツAもその一つ。
その効果は、
虫に菌が寄生して、体からカビが生えて死ぬ
というもの。
実際には、その条件をそろえないと効果が低いので、
これまでの化学合成農薬のように
散布するだけでOKというわけじゃないのが
やや面倒くさいのだが、
意外な効果も期待できる。
それは、害虫以外の他の虫への影響がすくないこと。
だから、この農薬を散布する圃場は
害虫を食べる天敵の昆虫が多い。

IMGP2461.jpg
これはアブラバチが
害虫のアブラムシに寄生した写真。
アブラバチがアブラムシの体内に卵を産み
その幼虫が薄皮一枚残して
アブラムシの体内を食べつくす。
金色のアブラムシが、その体内を食べつくされたやつだ。
食べつくすとエーリアンのようにその皮を破って
成虫になって、アブラムシに卵を産み付けていく。
1匹で300ほど卵を産むので、
いったんアブラバチが増えると、
アブラムシは僕が気付く前に、食べつくされていることが多い。

IMGP2466.jpg
もう一つが、この虫。
ヒラタアブの幼虫。
こいつらは貪欲な食欲で
コロニーを形成したアブラムシをすべて食い尽くしてしまう。
いったんコロニーを形成すると
増えていくスピードが速すぎて
アブラバチではなかなか対抗できなくなるのだが、
そんな時に現れるのが
このヒラタアブの幼虫。
コロニー丸ごと食べてしまうほどの食欲の持ち主。
この虫にかかれば、アブラムシの繁栄の道は閉ざされてしまう。

これらの天敵はとても敏感だ。
一回でも化学合成農薬をまけば
アブラムシよりも先に姿を消してしまうほどだ。
ゴッツAのような微生物農薬は
それ自体の効果は、言うほどではない。
条件がそろわないとあまり効果ないし
何度も散布しないといけない。
だが、副産物として
こうした天敵が害虫をやっつけてくれる状況を
作り出してくれる。
副産物と書いたが、
こっちの効果のほうが
素晴らしい防除結果を生み出す時もあるほどだ。

もう一度言おう。
微生物農薬だろうが化学合成農薬だろうが
人様への影響はほとんど変わりない。
微生物だから安心というわけでもないし、
化学合成だから危険というわけでもない。
ただ、
人様ではない、ただの虫に少し意識をして
(ポジティブリスト導入のおかげなんだけど)
こうして微生物農薬を使うと
圃場で起きているダイナミックな自然のやり取りを
観察できる。
僕はこの光景がとても好きだ。
ただそれだけ。



IMGP0326.jpg

金時草にアブラムシが大量に発生した。
乾燥気味のお天気だったからだろうが、
こちらの予測以上のスピードで、
アブラムシは増えていた。

これはさすがに防除しなければと思っていたのだが、
圃場をよくよく観察すると、
アブラムシの発生と同時に、
ヒラタアブの幼虫も大量に発生していた。

このヒラタアブの幼虫の食欲はすさまじい。
アブラムシのコロニーを全滅させてしまうほどの食欲。
しかも、次から次へとそのコロニーを狙って移動する。
そのスピードも速い。

これらの幼虫がさなぎになるころまで、
散布は一端控えよう。
散布するにしても、
接触毒の弱い、天敵に効果が薄い農薬を選ばねば。
ヒラタアブは、農薬に過敏で、
アブラムシが全滅する前に、彼ら彼女らが先に消えてしまうのだ。

ヒラタアブが活躍するのは、夏前のこの時期のみ。
暑くなれば、彼ら彼女らは影をひそめてしまう。
その次は、ヒメハナカメムシ類が出てくるのだけど、
それはもう少し先。

さて、
暑くなるまでのしばらくは、
この圃場は、ヒラタアブに任せることにしよう。
P4120002.jpg

金時草のハウスには、今、
アブラムシが大発生している。

なかなか防除しずらい害虫で
手こずっているのだが、
天敵も徐々に増えてきた。

天敵と薬剤散布のコンビネーションで
(薬剤は天敵に効果のないものを選ぶのがコツ)
どうにか、こうにか、
アブラムシを抑え込むことに
成功しつつある。

写真は、アブラムシに寄生するアブラバチ。
アブラバチが、まさに今、
寄生したアブラムシから飛び立とうとしている瞬間を
運良くとらえることができた。

なんだかエイリアンの一幕に似ているなぁ・・・。

今、シンクイムシの被害がひどい。
毎年、8月の下旬から虫との本格的な戦いが始まるのだが、
今年は、異常な夏だっただけに
虫の発生も少し異常に感じる。

その代表格が、シンクイムシ。
ここらではそう呼んでいるが、メイガのことで、
被害の代表格はマダラメイガである。

生長点を食害する虫で、
食われると、その生長点からの成長は絶望的になる。
外見ではすくすく育っているように見えるアブラナ科の野菜でも
良く見ると生長点だけを
このシンクイムシに食害されている場合があり
その場合、商品としての価値は全くない。

ブロッコリやキャベツのみならず
水菜、ルッコラ、ワサビ菜、そしてアブラナ科でもない金時草まで
幅広くやられているのである。
この虫の厄介なところは、
一旦生長点の中に入り込んでしまうと、
なかなか農薬が効かないことである。

8月の終わりから本格的に発生し始め
9月10日前後から2週間が最盛期。
今年は、例年以上の被害で
うちのあるハウスでは、水菜が半分以上やられてしまった。

農薬の防除だけでは、やはり限界があると感じる。
効果的な総合的な防除を
早々に探し出さないといけないのだが、
まだ決定打は見つかっていない。

P6220009.jpg

露地の畑に植えたフルーツホオズキ。
今年はどの畑でもアブラムシの発生が多くて
フルーツホオズキの畑でも、それは例外ではない。
白のマルチが、アブラムシのススで
黒く汚れるほど、発生しているのが解る。
こうなる前に、これまでは防除してきた。
単に忙しすぎて、手が回らなかったのでは?
と言われれば、身も蓋もないのだが
あえて防除せず、観察を続けてきた。

その結果・・・
P6220011.jpg
葉の裏に金色に輝くアブラムシのようなものは
寄生蜂に寄生されたアブラムシのマミー。
この畑には、購入した天敵を放ってはいない。
土着の天敵昆虫が勝手にやってきて
勝手にアブラムシに寄生し
勝手に駆除してくれている。
アブラムシもまだまだ発生しているが
天敵昆虫の密度が、すでに
アブラムシの発生スピードを抑えるほどなので
ここの畑のアブラムシ防除は
化学合成農薬による防除を必要としない。

天敵昆虫が増えるような仕掛けは
ほんの少しだが、この畑にしてある。
野菜の苗を定植する前に
雑草のコントロールと合わせて
麦のマルチをしたり、ソルゴーを播いたりして
天敵の住みかを作って来た。

全体からみれば、そんな仕掛けは
限定的で、あまり効果はないのかもしれない。
いつもならば、農薬を散布するタイミングだったのだが
周りの植生に天敵の存在を確認できたので
散布をぐっと我慢して、観察を続けてきた。
アブラバチ以外に
ヒメハナカメムシ
ヒラタアブ
テントウ虫(成虫・幼虫)
そしてカゲロウの成虫を観察できた。

自然というやつは良くできている。
耕起をし、マルチをして、特定の種だけを栽培するといった
畑づくりをしても、
それを包み込むように自然はすべてを覆ってくれる。
そんな感覚だ。
農耕という、その撹乱が
ある一定の範囲を飛び出しさえしなければ
こうして自然は包み込んでくれる。

同じように
ハウス施設の中でも観察を続けているが
そちらは意図的に天敵昆虫を放ち続けても
その効果は、限定的となっている。
露地の畑以上に天敵の住処や餌を提供しているにもかかわらず。
一つには、ハウス内の温度が、天敵にとって高すぎるのだろう。
たったそれだけなのだが
露地のようなファンタスティックな働きは
ハウスでは見られない。
人為的な囲い込みが
ある一定の撹乱を飛び出してしまっているということなんだろうか。

人間の感覚では
到底
そこまでは解らない。

P6090001.jpg

お札を圃場に立てる。
害虫が寄り付きませんように、と願いを込めて。

というのは嘘で、
これは粘着シート。
黄色に反応して、虫が寄ってきて、補殺するシート。

以前からこのシートは知っていたのだが、
効果が不明で、そんなもので防除できれば苦労はない、と
あまり導入する気はなかった。
だが、収穫間近のベビーリーフに
難防除のキスジノミハムシが大量発生してしまい、
防除できる農薬は、収穫間近では使用できないので
仕方なく、鰯の頭も信心から、ということで
個人的には、食害がこれ以上進みませんように、という願いを込めて
お札を立てるごとく
このシートを圃場に立てた。


すると・・・
キスジノミハムシ補殺

この通り。
びっくりするくらいキスジノミハムシがびっしりと補殺されていた。
こんなに効果があるものなのだろうか。
そこそこいい値段もするが
収穫が近くなってから発生する虫に対しては
農薬以外でそれなりに防除できるので
このお札、いや失礼、このシートは思った以上に
役立つことが分かった。

なんでもやってみないとわからんもんである。
農薬だけに頼らない防除法として、
今後、どんどん導入しようと思う。
金時草に導入した天敵農薬アブラバチの中間報告。
以前のエントリーでも書いたが、
金時草のように茎頂部を収穫するようなタイプの野菜には
アブラバチの持ち出しがおおくなり
結果として、それほど効果が無いのではないかと考えられた。
結局、天敵、天敵と騒いでいても
それは所詮、気休めに過ぎないのだろうか。
そんな不安を持ちつつも、ぐっと我慢をして
経過を観察し続けた。

5月に入り、ハウス内の気温がずいぶんと上がった。
そのこともあってか、アブラバチの活動も活発になり
かつ、孵化までのスピードも速くなってきた。
当初、アブラムシの増殖スピードの方が速かったのだが
5月10日を過ぎるころには、アブラバチに寄生された
アブラムシ(マミー)が多数観察でき、
現在では、その多くが孵化して、
さらにアブラムシに卵を産みつけている状況になった。

こうなったのは、やはりハウス内に植えた麦の役割が大きい。
金時草は、茎頂部を収穫で持ちだすため
アブラバチの寄生したアブラムシ(マミー)も一緒に
ハウス外に持ち出すことが多かった。
これではハウス内のアブラバチの数が一向に増えず
結局はアブラムシのハウス外侵入とハウス内増殖の
スピードにはかなわないように見えたのだが、
ハウス内に植えた麦の間で増殖したアブラバチが
結果として、ハウス内全てにいきわたり
たとえ、孵化前のマミーを収穫物と一緒に
ハウス外に持ち出したとしても
ハウス内のアブラバチの密度を一定に保つことができるようになった。
今回の麦のような役割をしてくれる植物を
バンカープランツと呼ぶ。

ムギクビレアブラムシのマミー


バンカープランツは、いわゆる天敵の住処。
それ自体は収穫しないので、ハウスの利用効率は
若干悪くなるようにも思われるが
農薬散布の労力や危険性からある程度開放されることを考えれば
利用しない手はない。
今回は麦を利用したのだが、麦にはムギクビレアブラムシがつく。
このアブラムシは主に麦ばかりを害するもので
金時草には害がない。
このムギクビレアブラムシを餌にして
アブラバチが増殖し、ハウス内にとどまっていてくれるため
今では、外から入ってくるモモアカアブラムシや
ワタアブラムシが、決定的な害を及ぼす密度になる前に
天敵(アブラバチ)の餌食となっている。

以前も書いたことだが、
非選択性の農薬散布をこの圃場ではやめたことで
他の虫たちもずいぶんと増えた。
ヒラタアブやナナホシテントウムシなどの
アブラムシを餌にしている捕食性昆虫も
容易に観察できるようになった。
人の手がずいぶんと入り込んで作り上げた生態系のバランスなので
これを維持するのは容易ではないのは想像できるが
なんとかこのバランスを維持していきたい。

ちなみに、
5月に入ってから暑い日が続き、いよいよアザミウマ類も
活発に金時草に害を与え始めた。
これを防除するためには、
タイリクヒメハナカメムシかカブリダニといった天敵を
新たに導入する予定でいるのだが
25度以上の気温で安定するとのことなので
今回は、ボーベリア菌というアザミウマ類に寄生する菌を
主成分とした農薬(ボタニガードES)を散布した。
2年前にもずいぶんと試した農薬だったのだが
その時は使い方を熟知しておらず、結果を得られなかったのだが
今回は、ハウス内の湿度が一定期間高くなるように
気をつけた結果、
アザミウマに寄生するボーベリア菌を観察できた。

天敵昆虫や菌類は、たしかに化学合成農薬に比べたら
使い方にコツがあり、容易に結果は得られない感じだが
それでもそれは、気休めではなく
しっかりとした効果あるものだと確信できた。
今後、他の野菜栽培でも積極的にこの技術を取り入れていこう。


3月30日に天敵農薬であるアブラバチを
金時草の圃場に放った。
それから1カ月ほど経ったので中間報告。

この間、圃場の内外ではアブラムシが大量発生し
園芸用ハウスの入口に植えてあるミントにも
大量にアブラムシがつき、それを目当てにテントウムシや
ヒラタアブを観察する。
ハウス内には、天敵を誘きこむために植えてある麦にも
ムギクビレアブラムシが大量発生し、一部の麦は
その甘露の汚れで枯れてしまったほどだった。

金時草の圃場にも麦が植えられており、
放ったアブラバチが寄生したアブラムシを
金時草だけでなく、麦でも確認できた。
ただアブラバチの寄生スピードは遅く、
次から次へと発生するアブラムシに追いつかない感じであった。
一つにはハウス内の温度が思ったほど上がらなかったことによるだろう。
4月の中旬まで夜の温度が低く、
アブラバチの活動がなかなか活発にならなかった。
寄生はしていても、ふ化のスピードが遅い感じがした。

放置すれば金時草がアブラムシにやられてしまいそうだったので
この間、2度ほど農薬散布を行う。
農薬と言っても、アブラバチに影響があってはいけないので
脂肪酸を主体とする物理的気門封鎖型の農薬を使用。
アブラムシの呼吸口を油(脂肪酸)で閉じて封殺するものである。

4月上旬過ぎから、アブラバチよりもヒラタアブの幼虫が
多数観察され、4月下旬には麦のアブラムシをほぼ全滅させてしまった。
金時草にも多数現れ、脂肪酸の農薬の難を逃れたアブラムシも
捕食していた。
この際、ヒラタアブの幼虫がアブラバチが寄生したアブラムシを
よけて捕食しているわけではなさそうで、
寄生されたアブラムシで、まだマミー化していないものも
一緒に食べられていると考えられる。
ヒラタアブとアブラバチの捕食者間の競合がおきていて
捕食スピードの勝るヒラタアブが
アブラバチごと食べている感じであった。

またアブラバチの発生が抑制される原因として、
金時草と言う野菜の特徴もあろう。
金時草は茎頂を収穫する野菜で、アブラムシの被害が集中するのも
茎頂部である。
そこに寄生するアブラバチは、
収穫と一緒に圃場外に持ち出される確率が高くなる。
ヒラタアブの幼虫も同様の可能性があるが
常に移動を続けているので、持ち出しにあう可能性は
アブラバチに比べて低いと考えられる。
アブラバチは、寄生した宿主を食いつくすまでは
茎頂部にマミー化したアブラムシと一緒にとどまるため
収穫後の袋詰めの作業中に
何度となくこのマミーを発見した。

ナスやキュウリといった果菜類などであれば、
茎頂を収穫するのではなく実を持ちだすので
アブラバチなどの天敵を圃場外に持ち出してしまうケースは
少ないであろうが、金時草などの
茎頂部を収穫するような野菜においては
天敵の利用もよくよく考えなければいけないようだ。

また天敵の購入においても難がある。
注文してから手元に届くまで、1週間と言われるが
休みなどの休日をはさむと、10日以上かかり
その間のアブラムシの発生スピードを考えると
実情になかなか合わないのが現状だろう。

以上、アブラバチ利用の中間報告。
露地の圃場や施設内で作業中に
カブラハバチの成虫を多数観察する。
昨日までは、まったく気がつかなかったのだが
今日になって大量発生。
昨年と時期もほぼ同じ。
カブラハバチの写真はこちら

カブラハバチは膜翅目の昆虫で
この幼虫が、アブラナ科の植物を食害する。
自然界でも、食欲旺盛なこの虫は、イヌガラシなどの
いわゆる雑草も徹底的に食害する。
栽培種の中では、うちのラインナップからいえば
水菜が好みらしく、他のアブラナ科に比べて
比較的害を受けやすい。
防除としては、この虫の成虫を防虫ネットなどを利用して
圃場に入らないようにするのも一つの手なのだが、
露地ではそれは難しい。

カブラハバチは、
いわゆる「あおむし」の仲間である鱗翅目に効果がある
微生物農薬BT剤は効果がない。
収穫前日まで使用でき、かつ、特定の害虫だけを防除してくれる
BT剤は環境にも人体にも負荷が少ないので
うちの農園ではよく使うのだが、
この農薬では防除できない。

この虫が目的で散布するわけではないのだが、
ネオニコチノイド系の農薬やアファーム乳剤でも
副次的に効果はあるが、それは至極一時的で
次から次へと産卵された害虫ステージに悩まされることになる。

天敵としてこのカブラハバチだけにターゲットに置いた昆虫(スペシャリスト)は
今のところ、僕の勉強不足かもしれないが、確認できない。
ジェネラリストとしてはクモ類などの肉食系の昆虫・鳥類などが考えられるが
発生スピードを考えると、初期にはそれらのジェネラリストでは
効果があっても、徐々に食べられるスピードよりも
発生するスピードの方が上回ってしまう。
この虫は、触れれば死んだふりをしたように丸くなって落下するのが
特徴で、鳥などの天敵から身を守るためだとも言われている。

カブラハバチの大量発生と言う、この狂ってしまった均衡を
戻す方法として、現在は、
天敵(ジェネラリスト)やただの虫に害がすくない薬剤を選択して
散布するしか、いまのところ、解らないのが正直なところだ。

ただ、アファームやモスピランといった
登録が拡大し続け、どんな作物にも汎用性の高い農薬が
登場してきている現在、
その慢性毒性であるADI値(毎日摂取しても大丈夫な値)が
一つの野菜では大丈夫でも、登録が多い分、いろんな作物にかかっていることを
考えれば、1日の摂取量が加算的になり、
結果としてその数値を超えてしまうのではないか
という心配もある。
(ただADI値は、本来大丈夫とされる数値に100倍を掛けているので、その心配はほとんどない、という専門家もいる)
たとえIPMの中で実践的に使われている農薬でも
その使用に対して過信は出来ない。

カブラハバチの耕種的防除、生態的防除、物理的防除も
よくよく考えなければ、
生産現場という上流では、農薬の基準を満たしていても
食する側がいる下流では、その基準が加算的になり、
結果として基準値を超えることも考えられる(複合汚染とはまた別の考え)。

とにもかくにも
今日、
カブラハバチの大量発生を観察。
今年もこいつとの戦いが始まったというわけだ。
3月中旬から農薬の散布を始めた。
物理的に虫の気門(呼吸口)を封鎖する農薬。
食品にも多く含まれているし、
食品加工の中で、添加物としても使われる脂肪酸が有効成分の農薬。
そして、3月26日より化学合成農薬も使用開始。
ネオニコチノイド系のモスピラン水和剤。
キスジノミハムシという小さな虫に、この散布以外に有効な手立てを
いまだに見つけられず、今年も散布。
熱水の土壌消毒も考えたが、コストと環境負荷の両面で折り合わず見送る。
物理的に補殺する粘着テープは試してみようかと思っているけど。

さて、それ以外に、
今年から大々的に導入しようと思っているのが、
これ↓

P3300030.jpg

これも農薬。
アブラバチというアブラムシに寄生する昆虫。
体長1ミリ程度の小さな虫が、1ボトルに250匹入っている。
これを本日、ハウスの中で放つ。

3年前から、ハウスの一部に麦を植え
このアブラバチが発生するようにしていたのだが
どうしても3月ごろに、アブラバチよりも先にアブラムシが大発生してしまうので
それを防除するために、アブラバチを買う。

この辺りにも、土着のアブラバチは豊富にいるのだが、
これまでの取り組みで実践してきた
ハウス内への麦の混作は、
その麦につくアブラムシ(ムギクビレアブラムシ)に
うまく土着のアブラバチが寄生してくれるかどうかは、
かなり運任せなところがあり、防除体系に組み込むにはやや不安定だった。
定期的に天敵を購入して放てば、それはそれで安定するとは思うのだが
コストの面と、天敵という特定の種を意図的に増やすという人為的操作は
やはり根っこの部分で、従来の農法となんらかわらない、と
やや批判的に考えていたため、今日まで導入をためらっていた。

そのためらいは、今も消えてはいない。

だが、
今年は導入しようと考えている。
昨年の露地で、大々的に麦とソルゴーを混作し
土着の天敵が多く発生したことが観察できた。
そして、それらが害虫防除の一役をかってくれたと高く評価している。
特定の昆虫だけを増やし続けることに、今も不安はあるが
化学的な防除だけからの脱却として、天敵の購入に踏み切った。

種を増やすという意味では、ハウス内にしても露地にしても
多品目の混作をこれまで通り続けていく予定をしているので、
それぞれに発生する害虫に合わせて、
さまざまな天敵を今後放していく予定でいる。
多種多様で、豊富な生物相の維持を目指して。


今年から始めた露地の畑に、
害虫防除用のフェロモン剤を設置した。
コナガ、オオタバコガ、ヨトウガ、シロイチモンジヨトウ、
ハスモンヨトウ、タマナギンウワバ、などに効果があるらしい。
虫が発するフェロモンを利用して
害虫とされる虫の交尾阻害を目的とした農薬。

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上記以外の虫に影響がほとんどないため
天敵やただの虫に害を与えることがない。
殺虫効果のある農薬の散布の回数も減らせるのだ。

麦やソルゴーをバンカープランツとして露地の畑に導入して
天敵であるアブラバチやヒラタアブ、ヒメハナカメムシなどが多く生息し、
また蛙や蛇もそれなりに棲みついている。
生物多様性をキーワードに作り上げていく畑は
見ていても面白いし、何よりそれが、人の手で作り出されていく自然の一部として
周りの自然との調和を感じられて、とても心地がいいのである。

フェロモン剤の設置を手伝ったインドネシア研修生も
生物多様性の視点で見た畑に関心を持っていた。
インドネシアでもPHT(Pengendalian hama terpadu:害虫総合防除)は
もう20年も前から、随分と議論され、また普及されてきている。
研修生の通っていた農業高校でも
そのための授業があるのだとか。
ただ、その実践はほとんど行われていない。
だからこの畑の取り組みが、とても面白いのだと思う。

かくいう僕も
本格的に取り組むのは今年が初めてなので
手探り状態ではあるのだが。

そんな畑では、今、ズッキーニが収穫最盛期。
そして、徐々にだが、福井の伝統野菜である吉川ナスやイタリアのナス、
加賀野菜の打木甘栗赤かぼちゃ、
フルーツホオズキ、ルバーブ、オクラなどが取れ始めるのだ。

夏至が過ぎ、いよいよ夏の暑さになった感じがするこの頃。
春先に猛威をふるったカブラハバチも、一段落したように思える。
今年は、僕の農園では例年よりもカブラハバチの害が
ひどかったようにも思えたが、みなさんのところではどうだろうか。

カブラハバチ、と聞いてもよく分からない方もいるかもしれないが
春先に出てくるオレンジ色の体に黒い羽根と頭をした2cmほどの虫。
この幼虫、まっくろの芋虫で、これも2cmほど。
問題となるのは、この幼虫。
食欲旺盛で、放って置くとで葉脈を残してすべての葉が食べつくされてしまう。
防除もなかなか厄介で、
アブラナ科の葉野菜が出荷時期を迎える春から初夏に向けて
大量発生するのだが
このアブラナ科の葉野菜で、カブラハバチの名で登録が取れている農薬が
ほとんどないのである。
だから、アブラムシやキスジノミハムシ、ハモグリバエ、コナガなどに
効き目のある農薬を散布することで、同時防除を狙うのが基本。

ただこの同時防除、少々難しい。
キスジノミハムシは、子葉がでるころから作物に着くので
本葉が少し出てきたときには、この虫に対しての農薬を散布しないといけないのである。
しかし、この頃は、まだカブラハバチはつかないので
キスジノミハムシと同時防除は難しい。

本葉が大きくなりだしたころにつくのは、コナガ。
このコナガとカブラハバチを同時防除出来ればいいのだが、
コナガはりんし目で、BT剤で防除出来るため
出荷前日まで農薬散布が可能になる。
(*注:出荷前日まで農薬をかけるのか!と思われる方は、BT剤について調べてもらえば、その理由が納得できるはず。解らない方は連絡をいただければ、農家の立場から説明します。)
しかし、カブラハバチは膜翅目なので、BT剤の効果はない。
アブラナ科の葉野菜が出荷を迎える頃に、
このカブラハバチが旺盛に食べ始めるのだが
出荷を数日後に控えた頃になると、カブラハバチに対して散布できる農薬はない。

そこで、僕は、ここ数年アファーム乳剤を使用することにしている。
カブラハバチの発生が旺盛になり、しかも葉野菜の生育期間が
比較的長期間になる春と秋だけ限定で。
夏は、生育期間も短くなり、食害を受ける前に収穫することが可能なのと
キスジノミハムシ対策として散布するネオニコチノイド系殺虫剤で
初期の防除さえできていれば、なんとか収穫まで
コナガ以外の虫の繁殖を抑えることが可能であるため
アファーム乳剤は使用していない。

さてこのアファーム乳剤。
有効成分はエマメクチン安息香酸塩。
この有効成分は自然物に由来し、
放線菌(Streptomyces avermitilis)から単離された殺虫活性をもつ薬剤とのこと。
接触毒もあるが、食害作用に重点をおかれた農薬であるため、
アブラナ科の葉野菜を食べないただの虫や益虫に対しては、
他の非選択性農薬に比べて影響が少ないと考えられる。

僕の防除の基本は、すべての虫の死滅ではなく、
人が耕作する畑という、非自然的な場所において
その非自然なるがゆえに、ある種の虫のみが繁栄してしまうという
狂ってしまった自然の均衡を
すこしだけ戻してやろうというものである。
そのため防除は、薬剤散布だけでなく
混作や輪作などの技術を用いて、天敵や益虫、ただの虫などの
生物多様性の畑作りを目指している。

ただそれでも防除しきれない虫がいるので、
その場合は、上記のように、時期を限って
自分なりに厳選した農薬を散布することもある。

今年は、ブログのワード検索でもカブラハバチで検索して
僕のブログを見に来る人が多かったように思う。
どこの畑でも苦慮しているようなので、
カブラハバチの防除が一段落した今、自分なりに総括として書いてみた。
他に、もっと良い方法をしっているぞ!という方は
ぜひ、教えてください。
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ズッキーニが収穫最盛期を迎えている。
一般的に出回っているズッキーニは、キュウリのように長細いのだが
僕が作っているのは、ボール型。
あまり売れないのだが、かわいい形に魅かれて、
ついついこの種を栽培してしまうのである。

長細いものにはできなかった調理法ができるので
ボール型も面白いとは思うのだが、
農民が圃場で考えることなど、スーパーの陳列棚や消費者の台所までは
届かないものだから、やっぱり普通のズッキーニの方が売れるみたい。

さて、そのズッキーニ。
色は、深い緑、黄緑、黄色の3色。
その内の黄色に、スリップス(アザミウマ)を確認できるようになってきた。
スリップスは、アザミウマ目に属する昆虫で
作物の害虫として名高い生き物である。
数ミリ程度の生き物なのだが、これがなかなかに侮れない。
うちで栽培しているトマトやナス、モロヘイヤなどなどを害し
虫の種類によっては少々防除がことなるので
なかなか手こずる相手でもある。

このスリップス、なぜか黄色が好きで、
黄色いものに寄ってくる習性がある。
で、ここ数日、黄色のズッキーニにその存在が確認できた。
今のところズッキーニに対して害を及ぼしていないようなのだが、
今後も観察が必要であろう。
圃場内にかなりの量の麦やソルゴーといったバンカープランツを入れているので
スリップスの天敵であるヒメハナカメムシ等は
すでに観察できているのだが、
要はその生態数の密度の問題なので、
天敵がいれば完全に大丈夫というわけでもない。

スリップスだけに忌避もしくは影響のある農薬というのも
ざっと見渡したところないようにも思えるので、
農薬散布をするかしないかは、もう少し悩むところでもある。
(ヒメハナカメムシを殺してしまっては、意味がないので・・・。)


最近、“カブラハバチ”で検索をかけて
僕の日記を見る人の数が、ぐっと増えた。
それだけカブラハバチの防除に困っているのだろう。

以前書いたエントリーでは、
結局途中からコナガの防除の話になってしまい
なんだかカブラハバチにBTが効くような話し方になってしまっていたので
ここで改めて書いておこう。

カブラハバチにBT剤は効果がない。
BTは鱗翅目に効果があり、
カブラハバチは、膜翅目。

有機リン系の薬剤であれば、カブラハバチをターゲットに
登録が取れているモノも散見される。

僕が使っている薬剤は、ネオニコチノイド系。
昨今、ネット上でもいろいろと騒がしい薬剤なのだが、
IPMの実践(薬剤防除だけでなく、耕種的・生物的に防除しようという考え)には、
これも欠かせない薬剤といえる。
天敵に影響が少なく、害虫となる虫には影響が大きい薬剤が
ネオニコチノイド系の農薬なのだ。
ただ、これは僕が栽培している品目に関していえることなので
それぞれの品目の中ではどうかは、それぞれが検証する必要があるだろうけど。

ハウスの周りに、ミントを植えている場所がある。
圃場内の生物相を豊かにするため、がその目的。
つまりは虫の種類を多種多様にすることで、
栽培品目につく害虫だけを繁栄させないでおこうというもの。

今年、そのミントを見つめる僕の目に変化が起きた。
ある業者が遊びに来た時に、
「おおお、こりゃ立派なミントだ。すこし出荷してほしいくらいだ」
と言われたのが発端だった。
それからミントは、生物相を豊かにするための植物から
換金できる作物になるんじゃないか?と
僕の意識が変化した。

そういう目でミントを眺めてみると、
アブラムシがかなり付いていて、とても出荷できるようなものじゃない。
虫の防除も必要になってくる。
しかも葉の大きさや色もいまいちで、
肥料をしっかりとやる必要があるだろう。
乾燥しすぎるようなので、散水も必要か。
などなどと思うようになった。

そこでアブラムシがまだついていない場所を収穫し
近くの直売所に並べてみた。
破格の価格ということもあり、それらはすぐに完売した。
面白いほど売れたので、調子に乗って、じゃんじゃん出荷するようになった。
そして本日。
直売所を担当している人から
「アブラムシがひどかったので、前回出荷された分は破棄しました」
と通達を受けた。
欲で目が曇っていたのだろうか。
生産者としてとても恥ずかしい通達だった。

アブラムシの農薬を散布すれば、そんな問題はなかったのだが、
僕にはそこへは踏み込めなかった。
なぜなら、そのミントは、もともとも目的を
「生物相を豊かにするため」であり、
アブラムシが増えれば、そのアブラムシを食べるテントウ虫や
アブラバチやヒラタアブが増えてくるのである。
そこに向かって農薬を使用すれば
それら天敵にも影響が出てしまうこともある。
だが、それを出荷するとなると別問題となる。
虫でやられている作物は、そもそも出荷なんてできない。
いくら無農薬だからと言っても
アブラムシでべたべたのミントを誰がお茶にして飲むのだろうか。
生物相を豊かにするための植物と出荷用の野菜とは
その思想の方向性がまるで違うのである。

ただまるっきり接点がないわけでもない。
このミントに限って言えば、露地に植わっているので
過乾燥になる5月を避ければ、アブラムシの被害は少ない。
農薬散布の必要性もほとんどないし、
そもそも生物相を豊かにするんだから
農薬の散布はNG。
ある時期の出荷を避けて、夏に向けてすこし剪定すれば
生物相も豊かになるという目的からもずれないだろうし
少量しか無理だろうが、それでも一部を出荷できることもあろう。

今回のミントの失敗から、僕は多くを学んだ。
もともとの目的だけは忘れてはいけない。
その範囲で、出来ることをやろう。
そう思った。
年末。
この時期、本来ならばカブの収穫で忙しい我が農園。
だのに、今年は暇でしょうがない。
雇い人が増えたから?
いえいえ、そうじゃありません。
露地栽培のカブが虫にやられて全滅したからであります。

例年、正月用のカブを年末に出荷して正月を迎えていた。
が、今年は赤カブ青カブの露地栽培の両方が、虫の食害に合い
ほとんど収穫できなかった。
赤カブに至っては、全滅。
畑全部、まるまるゴミになったのは初めての経験だった。
長年、カブの栽培を経験してきたうちのむらの年寄りたちでも
記憶にないほどの全滅ぶりだった。

収穫前まで、例年通り元気に育っていたカブだったのだが
実際に収穫作業に入ると、土の中に埋もれていた部分に
害虫の食害痕がいくつも確認された。

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中を割ってみると、食害は表面だけでなく
奥深くまで穴をあけているのがわかる。
こんなカブを出荷するわけにはいかない。
すでに契約をしていた仲卸の担当者に来てもらい
カブの食害を見てもらった。
結果、売り物にはならないだろうと判断し
すべて廃棄となった。

一体、何の虫がこんなふうに食い荒らしたのだろうか?
父やむらの年寄りに聞くと、決まって
「ハリガネムシや」と答えた。
ハリガネムシというと、針金のように細く
カマキリなどに寄生するあのハリガネムシのことであろうか?

まず虫を見つけなければ、何の虫なのか同定も出来ない。
ということで、土を掘りそれを笊に入れて、水で洗い流して
土の中の生物種を観察した。
糸ミミズとクモ類が多くいたが、穴をあけそうなハリガネムシの類は
見つけられなかった。
ただ、3ミリほどの大きさの蛹がいくつも見つかったのだが
それがなんなのかはわからなかった。

次に、食害を受けたカブをひたすら切ってみた。
何の虫かはわからないが、この時期であればすでに蛹になっているか
成虫になっているだろうが、万が一、成り遅れがいるともかぎらない。
40個ほどのカブの食害箇所を切ったところ
やはり成り遅れとみられる2匹の幼虫が株の中から出てきた。


PC250065.jpg

資料と図鑑で同定したところ
頭の方に3対の足があることと
形状と色から判断して
コメツキムシの幼虫であることがわかった。

生態の特徴としては
来年の4月から5月にかけて越冬した成虫が土の中から出てくるらしいので
それが大量に観察できれば、間違いなく、この幼虫の仕業だったといえるだろう。

防除としては、
土中のため薬剤散布での防除に頼るだけでは、効果が薄い。
雑草を繁茂させず、何度もトラクターで
耕起することが重要になってくるだろう。
今年の失敗を糧に
来年は、カブ栽培を成功させたいものだ。
カブラハバチの幼虫が出始める。
成虫の大量発生をこの辺りで観察したのは、大型連休の直後。
その後の大発生に気をつけて、これまで観察してきた。

作物の品種にもよるだろうが、
うちの農園の周りには、雑草のイヌガラシが結構生えていて、
僕の観察では、カブラハバチの幼虫は、うちの農園の野菜よりもまず先に、
そのイヌガラシに付く傾向があるように思える。
今回も施設近くのイヌガラシに大量に群がるカブラハバチを発見。
そのため、ハウス内の作物も見て回ると、ぽつりぽつりだが
カブラハバチの幼虫を見かけた。

カブラハバチはアブラナ科が大好きだ。
そしてうちの農園では、
ルッコラからワサビ菜、ターサイ、水菜、つまみな、西洋からし菜などなど、
多種多様なアブラナ科の野菜を栽培している。
中でもカブラハバチは、栽培品種の中では水菜がお気に入りで、
その水菜から付く傾向がある。
だから、施設内外の雑草のイヌガラシと施設内の水菜を特に気をつけてみていけば
初期の発生に気が付くというわけなのだ。

コナガも少々ひどくなってきたので、
今季初で農薬のBT剤を散布する。
BT剤とは、バチルス・チューリンゲンシス(BT)という細胞(菌)を
利用した殺虫剤のことで、微生物農薬の1つである。
農薬と言っても、化学合成農薬とはまた別系統。
有機栽培にも使用可の農薬の1つなのである。

BT菌の殺虫たん白は、アルカリ性の消化液で吸収され、効果が発揮される。
アオムシたち(鱗翅目の幼虫)は、消化液がアルカリ性であるため、このBT菌によって
食中毒をおこしてしまうというわけなのだ。
ちなみに人間の場合は、胃酸ともいわれるように、胃の消化液が酸性なので
BT菌の殺虫たん白は吸収されない、らしい。
散布作業をみていた友人のIさんは、

「つまりは細菌兵器によるアオムシくんの大量虐殺ですね」

とポツリ。
まぁ、そういうことなのだが・・・。
それでも天敵や他の「ただの虫」には影響もかなり少なく、
有機リン系・カーバメイト系・合ピレ系の農薬と違って、
圃場内の生態系を壊滅させることはないのだ。

散布にあたっては、
他の化学合成農薬と違って、薬剤が葉のクチクラ層に浸透移行して
作物全体に効果を発するわけではなく、
BT菌が付着した部分を害虫が食さない限り、効果が出ない。
そのため散布ムラがあると、効果が低くなってしまうのだ。
なるべく散布ムラがないようにするため、
散布時に静電気ノズルを使い、薬剤に静電気を帯びさせ
葉の裏面や全体にまんべんに付着するように、心がけている。

農薬を散布しないに越したことはないのだが、
どうしても単一の作物だけを、市場価値の高い商品作物として栽培する場合、
やむをえず農薬散布をしなければならない時がくる。

だが、初期発生を見逃さず、
適切で生態系にも配慮した農薬を選択し、
散布ムラもなく丁寧に作業すれば、
安全に、そして確実に防除はできるはずなのだ。

かつて青年海外協力隊の農業の技術顧問が
「圃場では、作物ばかりを見ず、周りに生えている雑草もよく見なさい」
と言っていた。
なんのことだか、その時は解らなかったのだが、
今にして思えば、
害虫も養分欠乏症も土壌酸度も、周りの雑草から学ぶことが多いことに気が付く。

肝心なのは
観察力と正確な判断と選択なのだろう。
今年も虫たちとの戦いが、本格的に始まった。
一昨年から、圃場でアブラバチを増やせないかどうか、試している。
アブラバチとはアブラムシの天敵の虫。
これを自在に増やせれば、アブラムシ関係の薬剤散布は
減らすことが出来るのである。
といっても、なかなかうまくいかないのだが。

アブラバチは農薬登録されていて(アブラバチAC)、
それを買って、増殖させてもいいのだが、どうせそういう虫は
周りにも居るだろうし、在来種の方が何かと都合が良い。
(お金かからないし、環境にも適合しているし、それにいくら天敵だからといって、そこに在来していない虫を人為的に増殖させるのは本意ではない)。

ということで、僕の農園に在来しているアブラバチが
寄ってきて、繁殖しやすい状況を作ることに。
方法は簡単。
圃場にアブラムシを増やして、アブラバチがやってくるのを待てば良い。
アブラバチは、アブラムシに寄生して増えていく。
なので、アブラムシをまず飼わないといけない。
ただ、そのアブラムシが、商品作物につくアブラムシだと、
非常に都合が悪い。
僕の主力商品はアブラナ科の葉野菜。
なので、これにつかないアブラムシだけを増やさないといけない。

そこで、
麦を圃場の一部(ハウス)に植えるのである。
麦には、ムギクビレアブラムシがつく。
このアブラムシは、麦にしかつかない。
なので、幾ら増殖しても、圃場内の商品作物には、それほど影響がない。

次にどうやってムギクビレアブラムシを増やすかだが、
アブラムシのつきやすい環境下で麦を育てれば良いのだ。
つまりは乾燥下で生育させればよい。
アブラムシが飛ぶ時期までに、麦も大きくしておく必要があるだろう。
そう考えると、麦を播く時期も自ずと決まってくる。

その結果、
今年、アブラバチによるアブラムシの壊滅状態を観察できた。
一時はアブラムシが多すぎて、アブラバチの寄生が追いつかない状況だったが
4月に入ると、アブラバチが盛り返し、現在では、アブラムシの方が劣勢である。
まだまだ自在に増やせるわけではないが、
天敵利用で、間違いなく、害虫防除が出来るという例を
自分で作り出せたことに満足。
このアブラバチを、このまま通年、僕の圃場にとどめる工夫が、
これからの課題である。


写真は、アブラバチに寄生されたアブラムシ(マミー)
マミー

当然といえば当然なのだが、アブラバチやカゲロウといったアブラムシの天敵がハウスの中で確認できるようになってきた。ただ、ハウスごとにその密度が異なる。

普段、ハウスの周りは除草剤などを使って、徹底的に除草している。しかし一部のハウスでは、実験的にミントを植え込んで雑草の繁茂を防いでいる。それらのハウスでは、ムギクビレアブラムシが大発生しない。徹底的に除草しているハウスでは、ムギクビレアブラムシが大発生して、天敵が入ってきてはいるが、手に負えない状態。そしてそれら両者の一番大きな違いは、『ただの虫』の種類の差である。ミントの緑に覆われているハウスでは、名前もわからない『ただの虫』が沢山いるのだ。

ハウス周りの徹底した除草は、病害虫の防除として一般的に言われているのだが、その『一般的に言われている』ことに疑問を感じるようになってきている。手法的なことじゃなくて、防除の考え方根本の問題のような気がする。
ハウス内にムギを播いている。
なにもムギを収穫するためではない。
ムギを『バンカープランツ』として、植えているのである。

簡単に言えば、ムギにつく害虫をもって天敵をハウス内に飼う、ということ。陽気の良いこのごろ、目論見通り、ムギにアブラムシ(ムギクビレアブラムシ)がついてくれた。あとはこいつ(ムギクビレアブラムシ)目当てに、アブラバチなどの天敵がハウス内に入ってきてくれるのを待つばかり。さらに贅沢を言えば、アブラバチなどを捕食する虫も増えてくれれば、ハウス内の虫がより多様化してくれるのだが。

ムギクビレアブラムシは、イネ科の植物以外には寄生しにくい。ので、ハウス内にある作物には寄生しない(ハウス内は主にアブラナ科の野菜)。しかし、アブラムシに寄生するアブラバチは、たとえ相手がムギクビレアブラムシだろうが、モモアカアブラムシだろうが、ワタアブラムシだろうが、頓着しないでバリバリとやっつけていく。つまり、作物についたアブラムシをどんどんやっつけてくれる、はずなのだ。そう、『はず』なのである。

何事もやってみなくちゃわからない。果たして、効果の程はどうだろうか。
P5210024.jpg

04 12
2007

そういえば、昨日、ブロッコリ畑に燕麦を播く。
ブロッコリ(スティックブロッコリ)は売るための野菜で、6月に収穫の予定。先週、定植した畑の周りを、燕麦でぐるっと囲むために、その種を播いた。目的はいろいろあるが(農薬のドリフト防止・風除け・猫の餌・わさわさと生えている燕麦が好き!などなど)、一番の目的は、生態的害虫防除。

秋収穫のブロッコリ畑に燕麦を試験的にとりいれたのだが、結果もまずまずよく、農薬散布も少なくてすんだ。『秋はもともとあまり虫はでない』と効果に対して素直じゃない父を横目に、せっせと燕麦を播く。

農薬の散布回数が少しでも減りますように。
03 26
2007

ついに出た。
何が?虫が。

ここ最近好調の売り上げを見せているベビーリーフに、ついに虫がついた。食害をしたのは、キスジノミハムシ。昨年もこいつにはさんざん苦しめられた。

今年は雪がほとんどなく、露地でもすでにこいつの活動は確認済み。それが今日、ハウスの中でがつがつと活動しているのを確認した。薬剤散布(殺虫剤)はしたくない。しかし、ベビーリーフは食害があると買ってもらえない・・・。これがベビーリーフでなければ、キスジノミハムシの多少の食害など、あまり気にはならないのだが。僕とキスジは、ベビーリーフ生産という関係の中で、ただの虫(キスジ)・その辺にいる生命体(僕)という関係から、害虫・大量虐殺をする凶暴な生命体に変わる。なんとも不幸な出会いだろうか。

さて、いつから散布を開始しようか。・・・はぁ。
今日、秋収穫予定のブロッコリー畑に、えん麦を播く。
『バンカープランツ』として。

日本に戻ってきてから、少しずつではあるが、研究していたことがある。それは、如何にして農薬散布を減らすか、ということ。極論を言ってしまえば、モノカルチャー化された工業的農業をおこなわない、ということなのだろうが、現在の僕には、まだその勇気も技術も決心もない。なので、これらをバランスよく共存させる形を探る必要があった。農薬は散布しないけど、売れる野菜を単一作付けで作る、というどうしても矛盾してしまう点のバランスだ。

そこで着目したのが、天敵。モノカルチャー化された畑では、生物のバランスが崩れてしまう。どうしてもその栽培されている作物を好き好んで食べる虫が、害虫として大量発生してしまう。もちろん、その虫を捕食してくれる虫も同時に増えたりするのだが、害虫防除という名の下で、農薬を散布すると、害虫は死ぬのだが、大概天敵も死ぬ。しかも、害虫の方が死ににくかったり、害を及ぼす密度まで固体数が回復するのも早かったりする。そしてまた、農薬を散布したりする。まさに悪循環。

春のブロッコリー栽培で、どのような害虫がどの時期に発生するか、よくよく観察した。そしてそれを捕食している天敵も観察した。1冊2万円もする天敵の図鑑や害虫の図鑑も買った。何冊も本を読み、また祖父母の話も参考にした。昔から出る害虫やその発生がひどくなる天気などなどについて。これが一番役に立ったかも。

で、取り入れたのが、バンカープランツ。横文字なのが少し気に食わないが、要するに天敵の住みかになる植物のこと。害虫は、このバンカープランツになる植物は食さないことが最低条件。僕が選んだ植物は、えん麦だった。ブロッコリーにつく害虫は、ヨトウムシやコナガといったアオムシのようなやつ。そいつらは、イネ科のえん麦は食べたりしない。えん麦には無数のクモ類が生息することになるだろう。そいつらがコナガやヨトウムシをどんどん捕食してくれる予定なのだ。ただ、これはあくまでも補助的なもの。総合防除の1つの要素でしかない。農薬散布をするにしても、農薬を天敵には作用しないものを選んだり、また害虫の発生時期をよく観察して散布することで、回数は減らせる。さらにブロッコリーの初期生育に気をつけて、害虫に負けない木をつくるようにする必要もある。

インドネシアにいた時、僕はIPMの効果をあまり評価していなかった。いまでもそういう横文字はあまり好きにはなれない。バンカープランツなんて言うが、祖父母に言わせれば、昆作だろうし、そもそも病害虫をできるだけ防除するために、祖父母たちは輪作の技術をのばしていっていた。僕は横文字の取り組みをするのではない。祖父母が確立していた農法に、すこしばかり僕なりのアレンジをしようというものである。それが、次の農法になればいいなぁ。そう思って、えん麦を播いた。
07 13
2006

キスジノミハムシ。そういう虫がいる。運悪く、人間から『害虫』と呼ばれ、大量虐殺されるの運命を歩んでいる。

数年前までは、うちにとって、この虫はなんてことない存在だった。野菜の食害はもちろんあったが、びっくりするほどの害でもなかった気がする。

しかし、販売ルートを新たに開拓し、業者が変わり、野菜の種類が変わり、業者の求めるものが変わった今、キスジノミハムシは、まさに『害虫』と呼べる存在になっている。とくにベビーリーフという野菜においては、もっとも深刻な害が出てしまっている。

一昔前だったら、きつくて強い農薬をがんがんかけて、まさに業界用語の『虫をたたく』の言葉がぴったりの農薬散布をすれば、それなりに効果があっただろう。しかし、今はそうはいかない。ポジティブリストなるものがあるからだ。

もちろんそのリストがなくても、以前から農薬の種類もずいぶん変えてきたし、使い方も気をつけるようになっている。出来るだけ無農薬を目指してもいる。

で、今。その虫をたたきたいのだが、出荷間近の野菜に農薬はやれない。今は泣く泣く、食害にあった葉をちぎりながら、ベビーリーフを収穫している。手間は今までの3倍以上。この季節、ハウスの中は40度以上にまであがるので、暑さも手伝って、気持ちが萎えるのは今までの10倍以上。

しかし萎えっぱなしにもなってはいられない。そこで収穫後の畑を太陽熱処理することにした。農薬に頼らなくても、害虫は防げるはず。輪作のローテーションを変えたり、混作したり、天敵を増やす工夫をしたり、太陽熱を利用したりなどなど。あと、そもそもその害を受ける野菜の栽培をやめるのも手だろう。

キスジノミハムシ。自然界では、ミリ単位のただの虫。ただちょこっと運が悪く、人間が栽培する作物をたまたま好んで食べるだけ。いやそれとも、人間が野菜を栽培するからキスジノミハムシが大量虐殺の目にあっても、その繁栄を謳歌しているのかも。いやいやもしかしたら、環境をいじりすぎた中で栽培される野菜だからこそ、キスジノミハムシが警鐘をならしているのだろうか。まぁ、そんなことはないだろうけど、ただでさえいじりすぎた環境なので、せめて僕は生物界の一員として、もう少しまっとうな方法で防除しようではないか。

田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

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