農園では直接レストランにも
野菜を卸している。
北は北海道、南は以前は福岡だったが
最近は大阪まで。
直接販売すれば、お客さんの反応も聞けて
それにサプライチェーンをショートカットすれば
それだけ利益も多い。
もちろん、クレームやら注文の細かさや
取引先が急に他へ移るなど
リスクは農協や市場出荷に比べたら
とても高い。
でも直接販売が
少なくとも僕の部門で100%なのだ(仲卸直接も含めて)。
そんな僕がJA青壮年部の部長というのは
やはり不自然だな。というのは余談。
これについてはまたどこかで書こうと思うけど。

今日の本題は
その直接販売を支えているのは
なんなのかってことだ。
それはインフラとしての話だが、
ネットと運送網というわけで
インターネットで瞬時に畑の様子が分かったり
収穫物を畑から個人宅まで
コールドチェーンでつなぎ
しかも時間指定で配送できるシステムが
あるから
お手軽&お気楽に注文ができちゃうってわけ。
検索ランキングなんかも気になるかって
言われれば
まぁ、そんなに飛び込みでお客さん来ても
出荷する野菜が足りていないから
それはそんなに気にならない。
今ある既存のお客さんに
よりファンになってもらえるような情報や
ストーリーを伝えるのに
僕らはネットを使っているだけ。
地域で商売をやっていくのなら
確実に紙媒体の方が大事だしね。
そういう意味では、
農園の紙媒体に対するアプローチも
もっと考えていかないといけないけどね。
(最近は連載も少なくなってきてしまったしね)

さて、
その直接販売を支えている
運送網が今回値上げを言い出している。
農園では佐川急便と契約しているのだが、
人手不足と輸送コスト高により
一律250円の値上げを言ってきた。
250円って微妙な値段だけど
決して高くはないからそれくらいはって思うかもしれない。
でも一束100円の野菜を売っている身としては
この250円は結構高い。
しかも昨年の7月にも値上げをしたのに、
また値上げだって。
農園だけを集中砲火しているのかって
疑ってしまうのだけど
担当者の説明だとエリアを区切って
交渉しているとか。
いろんな記事を読むと確かに運送業界は
かなり大変だっていうのは分かるが、
二年連続での値上げは
直接販売を中心にしてる業態としては
かなり辛い。

これまで既存の販売では
見えてこなかった需要や
聞こえなかった消費者の声を
インターネットは繋いでくれた。
でこぼこのない平坦なネット世界は
既存のインフラの整備の高さに支えられて
どんどん伸びていった。
それに合わせて僕らの農園も伸びた。
新しい時代の旗手といえば
いいすぎだけど、そんな感じもあった。
でも少子高齢化の壁に
物流は悲鳴を上げ始めた。
情報は何百倍も増え、
これからまだまだ増えていくだろうし
その質も問われて変化していくんだろう。
でも、実際に物を届けるその仕組みが
軋み始めているのは事実だ。
少子高齢化と
都市(東京や地域都市)への人口集中で
地理的距離とその商業圏は
いよいよ変化していく時代に入るだと思う。
物流が、社会が、今の課題を小手先ではなく
根本的に解決できなければ、
この市場は地域中核都市を中心に再編されるだろうね。
有名ではない福井県にいる人間としては
道州制で北陸州にでもなれば
商売の幅がひろがるんだけどなぁって夢想したり。

ま、
どこへでも比較的単価の安い農産物を届けていくには
ある程度のボリュームを作り出せるように
出荷者たちの再編があるだろうし
(それにJAが主体的になれるかどうかは、ま、あれだけどね)
無限に見えた広がってしまった市場はやや縮小し
カリスマ的な個人農家たちがしのぎを削るんだろうね。

さて、僕らはどこを目指そうか。
そこが次の思案どころだと思う。



なぜだか昔から
機械作業は男がやっていることが多い。
機械って体力の無いのを補助してくれるんだから
本当は、力のない者がやった方が良いと思う。
でもなぜか、男性が
この機械作業をしていることが多い。

現場を仕切っているのが男性の場合が多いから、
例えば、父や夫や社長や上司や正社員etc.
だからなのか、男性が機械を動かす。
で、それを補助しながら作業するのが女性で、
例えば、娘や妻や部下やパートってわけ。
だから構図的にも
社会関係図的にも
機械作業は
なんだか権威づけぽく映ったりもする。
農業をしていて
機械作業をすると
なんだか気分的に偉くなったような
そんな感覚が
就農当時あったのは
きっとそんな気分が
ぼくの潜在的などこかにへばりついていたからだと思う。
なので、読者の中で
そんな優越感がもし一ミリたりともあれば
それはそういうことなんですよ、と言いたいね。
おっと話がずれたか。

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で、今一緒に作業をしている
すーちゃんに機械作業を教えている。
といっても彼女はもうすぐインドネシアに
行ってしまうのだけどね。
それでも力がある方が補助作業する方が
だんぜん、効率がいいと気が付いた。
これが若手の男性スタッフと一緒に作業するのなら
やはり僕が機械に乗った方が効率良いかもね。
つまりは誰が一番動けるのか、と考えて
動ける人が補助をする方がいいってわけ。
権威づけとか関係性ではなく、
動けるかどうかかな。
あと熟練してくれば
丁寧な人の方が機械作業は向いている。
これは男女も関係ないと思うので
よく女性の方が丁寧だからいいっていう人は
それもやっぱりどっか潜在的に
変なものをへばりつけているんだと思うな。
もっとフラットに
そしてもっと合理的に
そして変なものがへばりついているかを眺めながら
機械作業をすると、
いつもと違う感覚になれるって話でした。



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金時草を刈り倒す。
まだまだ収穫できるし
モノもそんなに悪くない。
でも秋の気候が良すぎて
葉菜類の相場は大暴落中。
そんな中、あまり食べなれない
こういう野菜は苦戦する。
売り方次第では
まだまだ売れるけど
やっぱり夏のイメージが強い
この野菜は
夏で勝負した方が面白いので
潔く刈り倒す。
こういうのも廃棄っていうのかな?

あとこのハウスも早く片付けて
2月の商品が手薄なころに
出荷できる別の何かを播いた方が良いしね。

金時草刈り倒す作業を終えると
これでまた今年やらないといけない作業が
一つ減ったことになる。
もう気分は年末へと
向かっている自分に気が付いた。

腸内フローラを観た数日後、
こんな電話をいただいた。

「いつもスーパーでベビーリーフを買っています。ラベルに軽く水洗いしてくださいって書いてありますが、それだけで本当に生で食べて大丈夫なんでしょうか?」

この方は以前にも
ベビーリーフに土がついていた、と
ご連絡をいただいた方だ。
連絡をくれるのはとても良いお客さん。
大抵の方は、そこで気分を害せば
もう買ってもらえないだけだからね。
で、その時は、
土耕で作っているので、
葉っぱに土が着くことはあります、や
きれいに洗っていただければ問題ありません、
と答えた。
それが気になるのなら、
生での食べ方をやめるか、
無菌の植物工場で育てられた野菜を食べるしかない。
こちらで過剰な洗浄をしたり
食の安全という意味で必要以上の
手を加えることは極力しない。
農園たやは、そういう方針だ。

さてお電話いただいた方は
食中毒や残留農薬を気にしておられるようで、
とにかく軽く洗っただけでも
汚れや農薬がとれるのか、と気にされていた。
正直に言えば、
水で洗ってもたぶん、
それらは取れないだろうと思う。
ただそれが本当に健康にとって
脅威なのかどうか、は別問題だろう。
農園で使用している農薬は、
細菌では微生物農薬が増えており、
人体に対しても影響の少ない農薬に切り替わっている。
有機リン系・カーバメイト系・合成ピレスロイド系の
いわゆる皆殺し剤の使用は控えている。
それらにしても
それらが人体に危ないと言いたいわけではなく
農園では必要以上に天敵やただの虫を傷つけない、
というそういう方針からでもある。
農薬は
厚生労働省と農水省のガイドラインに沿って
必要回数と日数と希釈率と量を散布している。
基準が安全じゃない!と言う方もいるだろうね。
そういう方面もできる限り勉強し、
最新情報を集めている。
ネオニコチノイド系のヨーロッパでの使用禁止についても
それを禁止してもミツバチの状況が
変わらないという現実も
僕らは情報として集めていて、
日本のガイドラインでは禁止になっていないような
事例もできるだけ追うようにしている。
その学問と知識と現場での判断で
僕らは農薬散布を行っている。
で、それら農薬が完全に分解されているかどうかも
確かに問題かもしれないが、
それ以上に洗って落ちずに経口摂取された場合の
影響についても僕らは、
急性毒性や慢性毒性
そして一日摂取許容量がどのようなものであるかも
それぞれの農薬について確認もしている。
だから安全とは言い切らないが、
安全を求める姿勢はこれからも続けていく。

次に食中毒。
農園では堆肥で土づくりをする。
化学肥料を使用しないし、土壌消毒も行わない。
だから土壌中の微生物量はたぶん多い。
以前、カット野菜の業者とコラボして
農園の野菜をカット野菜に混ぜて販売したことがあった。
その時、その業者が自社基準で
農園の野菜を検査したところ、
基準以上の微生物が検出されて
何度か再検査になった。
その原因の一つは、
その業者の自社基準の基準だろう。
監督官庁の基準の2倍の厳しさで
より安全性をアピールしていたのだが、
その基準で測ると農園の野菜は
たまに再検査になってしまうのだ。
必要以上に厳しい基準だっていうが、
他の業者から納入された野菜は
厳しい基準でもまったく引っかからないという。
なぜ農園の野菜はたまに再検査になったのか?
それは土づくりにある。
土壌中の微生物群を増やすような取り組みを
長年行っているので、
農園の土にはたくさんの生き物が住んでいると思われる。
その土に育まれて個性あふれる(と自分で言うのもなんだけどね)
野菜が育つのだが、
当然、その野菜にも微生物がたくさん住みつくのだ。
植物たちも自分たちだけで
栄養を土から摂取しているわけではなく
多くの寄生微生物との共生の中で
自分たちに必要な物質を分け与えながら
お互いに生きていると言うが
本当の自然の描写だろう。
だから微生物群の多い環境で育てば
野菜にも多くの微生物や菌が寄生していても
おかしくない。

そして、腸内フローラ。
滅菌抗菌思想とは逆の真実。
エコシステムの中で生産を続ける意義と意味が
そこにあるように感じる。
有用で植物と共生している菌と微生物群。
lgA抗体は30とも100とも言われている
世界中にある微生物群の中で
4つの群を選んで腸内に住まわせている。
僕らがこれからも付き合っていくべき
パートナーは、こういう身近なところの
昔からの取り組みの中にあったかもしれない。
と結論付けるのは、性急なのだろうか。

軽く水洗いだけで大丈夫ですか?
その方の問いへの答えは単純で明快だ。
それで大丈夫です。
これまでの方向性が
間違っていなかった、そんな風に思える。
もちろん批判的な視点で
僕もまだまだ研究を続けていこうと思う。
でも現時点でも、僕は自信を持ってこう答えよう。

それで大丈夫です、と。



以前に撮ってあった番組を見る。
NHKスペシャルの「腸内フローラ」だ。
今年の2月22日放送分で
ちょっと前だけどようやく時間ができたので観た。
自分の研究テーマの一つが微生物との共生だが、
その一つとして人と微生物の関係で
腸内環境についていろいろと文献を読んできたが、
この番組は、
それを簡単にまとめていて、とてもいい番組だった。

フローラとはお花畑のこと。
腸内に多様な細菌が住みついていて
その多種多様さと100兆以上という量の豊かさを
フローラ(お花畑)という言葉で表現している。
そんなに細菌が住んでいて大丈夫?って
思われる方もいるかもしれないが、
これが住んでいないと人は人らしく生きていくことさえ
ままならないのさ。
毎日の排便の1/3はその細菌群の塊だとも言われている。
腸内に共生している細菌は
僕らが食べたものを一緒に消化する。
その過程で彼ら彼女らもいろんな物質を発する。
その発した物質が
僕らにとって抗がんに必要な物質だったり
過剰な肥満を抑制したり、成人病予防につながったり、
老化を防いでくれたり、と、
僕らには無くてはならない物質を多く作り上げてくれる。
さらに、腸は第2の脳と言われており
脳の次に神経細胞が集中している場所でもある。
番組でも取り上げられていたが
細菌たちが僕たちの食べたものを分解する過程で
発せられる物質が電気信号化されて
その神経を伝って脳に刺激を送っているという
研究もずいぶんと進んでいた。
僕らの腸内の環境は、
つまりはそこにどういう細菌が住んでいるかで
僕らの思考や性格に大きく影響を与えているという
事実はとても衝撃だった。
僕らの思考は、僕ら自身の中にあるのではなく、
僕らの腸の細菌たちとの共生の産物とも
いえるものなのだ。
我思うゆえに我ありといったデカルトも
この事実を知ったらびっくりだろう。

ではその細菌はどのようにして
僕らの体の中で住むようになったのだろうか。
それは日々の食事の中で
取り込まれた細菌群を
腸管免疫を司るlgA抗体が
有益な細菌群を選んで
小腸の粘膜の中に引き入れ
そこに細菌のフローラを形成してきた。
世界には細菌の分類群(門)は30とも100とも
言われているが
腸内に住むことを許された細菌群は
(つまりはlgA抗体に小腸の粘膜内に引き込まれた細菌たち)
4つの群しかないという。
つまり長年の進化の歴史の中で
僕たち人類は多くの細菌の中から
4つの有益な細菌群と共存することを選んだということだ。
腸内フローラは
多様かつボリュームがあればあるほど
それは優れているという。
抗菌や滅菌が流行る時勢が
何かとんでもなく方向違いをしていると指摘する
研究内容がとても小気味よい。

その細菌群を育むために必要なことは、
まずは僕らの食事の質だ。
細菌群の栄養となるが食物繊維。
腸に良いってこれまで聞いてきた食物繊維も
便通が良くなるってだけだと思っていたが
いやいや、その細菌群のエサになると分かれば
これは積極的にとらないわけにはいかない。
そして過剰な抗菌滅菌思想を避けること。
ある分子生物学者は
週に2回は手を洗わないで食事した方が良い、と
言い切るほど
今は抗菌滅菌思想がはびこっていて
それが腸内環境を悪くしている。
ある程度菌を摂取することが
僕らの健康を支えることになる。
ただここで大事になるのが胃の調子。
胃では胃酸を出して多くの細菌が死滅してしまう。
それは人が食中毒にならないためでもある。
多量の菌を摂取し、その結果食中毒になっては
健康とはあべこべの結果になる。
暴飲暴食をさけ、快眠とストレス減で胃の調子を
整えたうえで、
僕らは適度に菌と共生する道を選ぶべきだ。
あとこれはまだ答えが出ていないが
僕は水道水の塩素が腸内フローラに
大きく影響しているとも考えている。
水道水の滅菌が腸内も滅菌してしまうのではと
思って、もう5年以上水道水を直接飲むことを避けている。
だけど、まだそれを明記している文献には出会っていない。

農園でバイトしている学生が
卒論のテーマとして
朝食と躁鬱関係を調べている。
朝食をとることと躁鬱との関係だが、
これはすでに答えが見えている。
腸内環境が人の思考や性格に大きく影響するのだから、
これは朝食と躁鬱は大きく関係しているだろう。
しかも大事なのはその内容、つまりは質かもしれない。
朝からしっかりと食物繊維をとり
しかも自炊しないとダメだ。
過剰な食品添加物によって滅菌された食べ物だと
(たとえばコンビニの弁当などなど)
やはり腸内環境には良くないだろう。
添加物がどう悪いのかはこれまでわからない部分も多かったが
細菌の繁殖を防ぐような添加物と
腸内環境との関係から研究しても
面白いだろうね。
そういう文献もまた探して読みたい。

腸内フローラ、新しいテーマが
また一つ僕の中に増えた。
そんな良質の番組だった。




06 18
2015

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「だが断る」に続いて
こういうTシャツも気に入って着ている。
それは、
「他力本願」。

ネガティブな意味が先行していて
ひと任せや他人依存などという意味で
使われることが多い。
が、本来はそうじゃない。
仏教用語としての
他力本願の他力とは阿弥陀如来の力。
阿弥陀如来から差し伸べられている力を
感じて本願に達するという意味だろうと理解している。

が、現代風に考えると
これは相互作用(インタラクション)ってことになる。
他者との相互作用があって
僕らの願いがかなう。
他人とのご縁があって
その協力と協同で
そこに成果が生まれる。
自分が我を張っても
独りよがりじゃなにも生み出さない。

農業も一緒。
どんなに技があっても
天候ひとつでだめになる。
僕らが作物を育てるわけじゃない。
育つ作物の能力を引き出すお手伝いをする。
それが農業。
だから自然という他力との関係で
本願に達する。

食べてくれる人たちが居なければ
育てた作物も本願を全うできない。
美味しいといってくれる人たち。
僕らを信頼してくれる人たち。
そういう人たちとのご縁で
僕らは農家として生活を成り立たせることができる。

また農地やそれに付帯する設備、
そして生活の場としての農村も
そこに住む人たちとの協力があって
初めて自分にとって心地よい場となる。

写真はこの前の消費者交流の活動。
これもJAの指導員さんたちの理解と協力、
青壮年部の部員さんたちのそれぞれの想い、
そしてその場を楽しみたいという参加者の方々の
インタラクションによって生み出された。
だからこのTシャツを着ていった。

すべてはインタラクション。
それが他力本願。
僕らの能力がいかに発揮されるかは、
個人に秘めている力なんかじゃなくて、
他者との関係によって解放される。
それが、他力本願。


06 05
2015

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6月。
衣替えの季節。
作業服も一気に夏服へ。

今年、夏の作業服をどうしようか迷っていた。
昨年まで気に入って着ていた夏服は
6年前に購入したもので
さすがに傷みも目立ってきたので、
今年は新しくしようと考えていた。
機能性の高いウエアを買ったのだが、
ちょっと薄手だったので
真夏になるまでは
その上からTシャツを羽織ろうと
考えた。
でも適当なTシャツを持ち合わせていない。
そこでネットで調べていると
こんなTシャツが。
「だが断る」。

漫画が元ネタの言葉らしいのだが
この言葉が自分の心に響いた。

今年はいろんな役を引き受け
とにかくスケジュールを調整するのに
困難をきたしている。
さらに取材や執筆依頼もあり
本業の農業がかなりおろそかになっている。
事実、全量出荷を目指していたレタスは
すでに1/3を出荷したのみで
あとは腐るに任せるといった具合だ。
優秀なスタッフたちが
それぞれの受け持ちの野菜の生産を
しっかりやってくれているだけに
自分が担当の野菜との差が激しく
農家としても精神的によろしくない。

で、決めた。
みんなのお願いは理解しよう。
その役やその会議が大事なのも分かる。
その行事に参加することの意義も分かる。
それは理解する。
だが、断る。

これから夏野菜最盛期。
この夏服を着ている間は、
僕は農民に戻りたい。


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スタッフと飲む。
これまでスタッフとの飲み会では
それぞれの目標なんかを話し合ってきた。
昨年はやらなかったのだが、
今年は新人も入ったことだし、
また以前みたいに、
みんなの目標なんかも書いてみようか。

新人のすーちゃんは、
・1年の農業のサイクルを知る
・社会の動きを知る
・時間外の時間を有効に使う(自己学習の時間)
だってさ。
いい子だねぇ~。
真面目だねぇ~。
農業のサイクルをまずは知ろうね。
旬が巡っていくそのダイナミズムを
ぜひここで感じてほしい。
そしてここに来て思ったのが
自分が社会について何も知らなかったということも
いいじゃないか。
知らないを知る。
だから学ぶ。
農園たやは野菜も人も育てる農園さ。
だから君が持っている花を
ここで咲かせようという努力をするなら
僕らは協力を惜しまない。
その花が咲くころに、きっと次のステップが
見えてくると思うよ。

で、仕事外の時間を勉強に費やしたい、だって。
そうさ、20代は勉強だ!
たくさん本を読んで、
たくさん集まりに参加して、
悩んだり困ったり汗かきベソかき。
青春だね。
こういう感覚が
今の農業界には少なすぎるんだ。
君を採用して本当に良かった。

4年目になるたかちゃんは、
もうちょっと具体的だ。
っていうか、彼はもう4年目になるんだねぇ。
・身体を壊さない
・人に野菜の魅力、農園の魅力を伝えていくために学ぶ実践する
・生産管理を頑張る
が目標とのこと。
彼はどうしても体が弱い。
風邪をひく回数も多いようにも思う。
だが、病気を理由でなかなか休まないので
無理をしているような気がして
ちょっと気が気じゃない時もある。
体を大事に、農作業に打ち込むのは賛成だ。
僕らは体が資本だからね。
それと彼のもっとも大きな特徴は
野菜ソムリエだってこと。
そのコミュニティにも所属していて
そこの自主的な勉強会を通じて
農業の魅力を伝えるスキルを高めようってことらしい。
いいねぇ~。
どんどんやっちゃってください。
そういうのって楽しいし、
モティベーションも高まるよな。
そして何よりも
外に向かって発信しようという
彼の意思がとても素晴らしい。
農業の素晴らしさをどんどん伝えていこう!
ってことで、農園のブログも書いてね~。

生産管理を頑張るとあるが
それは今年から農園の主力葉菜類の栽培管理を
彼が担うことになったことによるものだろう。
ベビーリーフは大西。
主力葉菜類は佐藤。
肝心要の作物の管理は
どんどんスタッフに任せようっていうのが
僕の方針。
彼のアイディアや考えが
その栽培の幅を広げてくれると期待している。
けど、体は大事にね。

さて、農園のエースになってきている大西は
こんな目標だった。
・体調管理(肉体改造含む)
・ベビーリーフ11時切り終り
・虫との戦い
5年目にもなると、
その目標はディテールにこだわりが出る。
僕が足底腱膜炎に悩むようになって久しいが
それを見ていてか
体調管理+筋肉をつけるというのが彼の目標らしい。
何十年も酷使しても大丈夫のような
体を作りたいとのこと。
そうだね、無事是名馬だよな。
ベビーリーフ11時切り終りというのは
タイムマネジメントと栽培管理のことだ。
その時間までに収穫を終えるためには
いつも切りやすいベビーリーフを用意することと
注文に合わせたタイムマネジメントが必要になる。
マネジメントを意識したスタッフが
増えれば増えるだけ僕らは次のステージの農業が
できるようになる。
そこに目が行く彼は、やはり農園のエースだろう。
そしてその品質管理を徹底するために
虫との戦いが
これから待っているというわけだ。
頼もしいね。

僕の目標は単純。
健康・体験・チーム力の3つ。
無事是名馬で
今年もたくさんのお客さんを受け入れて
いろんな体験を通じて
開発教育や食育に係わろうと思う。
で、こういう次元の農業を実現させるには
僕らのチーム力が大切になる。
農業は生産だ。
だけどその生産の中に、
ただモノを作るだけでなく
地域も人も
ローカルにそしてグローバルに
育てることができる
農業であってほしいと僕は願う。
個人じゃ決して到達できない高みに
僕らはチームで挑みたい。

さぁ、気合も入った。
これから農繁期の真っただ中に突入するが
今年もその状況をみんなで楽しもうじゃないか!



野菜をスーパーなどで買われている方は、
野菜の価格が高いなぁ、と
思っているのではないだろうか。

3月と4月上旬は
全国的に雨が多く、
野菜に病気が出たり傷みが出たりして、
この時期豊富にあるはずの
品目が品薄になり価格が高騰しているというのが
その理由だが、
市場には結構野菜が増え始めていて、
農協を通じて卸売に出荷している野菜については
そんなに高値になってはいない。
でもスーパーの野菜の値段は下がらない。
なぜか?

それは先週まで市場価格が
本当に高い時期に
(店頭価格も高かったんだけど)
仲卸やスーパーが損を出す形で(もしくは薄利で)
野菜を店頭に並べていて、
その分、損が出た分を回収しているのが
今週というわけ。
しかも、ゴールデンウィークに入るから、
否が応でも食材への需要は高まるから
この店頭での高値は維持されたままだろうね。

そんでもって、
GW明けはお金を使い果たした市民が
買え控えをするのもわかっていて、
そこで生産量を回復させた野菜が
市場でだぶつき、
価格暴落も目に見えている。
そこでの損も計算に入れての価格なんじゃないかな。

だから、僕らも
今、この時期は逃さず
たとえ手持ちの野菜をすべて出荷してでも
気合を入れて野菜を出荷するノデアリマス。

昔、見学に行った広島の篤農家さんは、
「野菜やろうっちゅうなら、動く時に動ける奴だけが成功する」
と言っていた意味は、
こういう時に感じるね。
だから、僕らの営農は
明日がどんなに忙しいかはわからなくて、
その日の朝に、どっと入ってくる注文で
その日その日が決まっていく。
これが野菜専科でこなしている農家の日常なんだ。

さぁ、今朝は、携帯の電話が鳴りやまないので、
ものすごく忙しくなりそうだ。
世の中の動きがそのままダイレクトで
自分たちの営農にリンクさせているから、
ま、そうなるよな。

今日も頑張ろう!



今年から野菜の苗の販売をやめた。
農園では、これまで、
たぶん祖父母の代から
野菜の苗をこの春先に栽培し販売してきた。
父の代には、
苗販売の最盛期には
農園の販売額の1/3を占めるほどの
大きな収入源になっていたこともあった。
福井市だけでなく、鯖江や敦賀まで
野菜の苗を運ぶトラックに
僕も一緒に乗っていった記憶があるし、
昨年まで僕もその配達をしていた。
だが、それを今年からやめた。

ホームセンターで苗を購入する人が増えたことや
そこへ卸すルートを農園が確保してこなかったこと、
またスーパーなどに入っている園芸店が
そことの競争に負けたことや
そもそもそのスーパーも大型店に淘汰されたなどの
時代の変化を大きく受けて
農園の苗販売の規模は縮小の一途をたどった。
苗販売の最盛期には
花壇用の花苗も多く栽培し
父も母もガーデニングやハンギングの資格を取って
そっちの方向でやっていこうという
時代もあった。

時代の変化で野菜苗の市場を徐々に失い、
そして僕がその野菜苗の栽培・販売に
全くといっていいほど
興味を持っていなかったこともあり、
僕らの営農のベクトルは
年を追うごとに
こだわりの野菜に特化した農園に様変わりしていった。
明確なビジョンが僕にあったわけじゃないが
苗の販売の方法や
その見せ方やそれを支える環境が
『時代』に乗り切れなかったのかもしれない。
だが、農園の野菜苗の栽培・販売が
実は僕らの多品種栽培の技を
育ててくれた。
品種に敏感になったのも
この経験が大きいようにも思うし
それだけの野菜の品種をそろえることができたのも
自前の育苗技術がしっかりとしているからとも
言えるだろう
(あっでも、昨年は吉川ナス、今年はズッキーニで失敗しているけど)。

そして今年。
その野菜苗の一般販売をやめることにした。
これまで野菜苗が占有していたハウスは、
僕らの多様な野菜栽培に向けられ
増産体制は一層強化された。
たぶん、この方向性も
このまま永続的に
繰り返されることもないのかもしれないが、
僕らはしばらく
この方向で特化し、尖っていこうと思う。

農園の野菜苗をこれまで購入つづけてくれた
お客さんには
『とても残念』と声をかけてもらうことも多く
その意味では大変申し訳ありません。
時代のニーズに合わせて僕らの営農も
生き残るために大きく変化していこうとしています。
その流れの中での苗販売の終了ということで
ご理解いただければ幸いです。



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4月1日。
エープリルフールだけど、
このエントリーは嘘じゃないよ。
4月1日は新年度。

農園の経営的には
1月からすでに今年の経営がスタートしているので
行政的な新年度はあまり関係がないのだけど、
今年はこの新年度が
大きく関係する年なのさ。
それは新卒採用のスタッフが
農園で仕事を開始するから。

これまでも農園では
いろんな方を採用してきたが、
新卒の子は初めて。

定年帰農も良いし
地域への愛着で帰農するのも良いし
Iターン、Uターンも良いと思う。
で、それと同じくらい
新卒の子たちが農業に入ってくるもの大事だと
僕は思う。
農業という産業が力を失っている現状は
そういう新しい考え方や視点を持った人材が
流入してくる流れが昭和の時代に滞ってしまった
ことにも原因があるように感じているからだ。
もちろん、転職して農業界に来る方や
定年帰農の方も新しい考えや視点を有しているが、
だが、それは時代的・世代的には新しくないのさ。
新卒は、もうそれだけで
時代的に世代的に僕らが得ることができない
視点を有していることになる。
そんなものに価値なんてあまりないと
僕は若いころは思っていたけど
年がいったのか、最近はそういうことが
とても農業の分野では大事なように感じる。
社会と同時代的に
同じ視点を持つ若者を農業界にも呼び込むことが
とても大事なのさ。

ということで、
新卒の子が農園に入社。
インドネシアに留学経験もあるので、
僕には見えない世代の目で
捉えたインドネシアがここで展開されたら
面白いだろうな~。




今年2回目の農園開放BBQイベントが
この前の土曜日にあった。
その日はいろいろとイベントが目白押しの一日だった。
まず
僕らが主催する「耕志の会」という団体で
インドネシアへ
農村スタディツアーを行こうと企画していて、
その募集説明会を13時から開いた。
説明会の参加人数は10数名。
参加してくれた人の反応もまずまず。
ただ1週間も仕事を休めないなどの理由で
なかなか踏ん切りがつかない人も多かったかな。

14時からはBBQ前の農園見学会。
20名近くの方が参加してくれた。
みんなで食べようと用意した野菜の圃場と
こだわりの土づくりの基本である堆肥場を見てもらった。
ぐっと野菜へのモティベーションを高めてから
15時、いよいよ農園のBBQ食べよう会に突入した。

今回も40名以上のお客さんが来園してくれて、
みんなで野菜をたらふく食べた。
ちなみに用意した野菜は次の通り。

ベビーリーフ(サラダ)
金糸ウリ(ナムル)
乾燥カラフル大根(ナムル)
ジャガイモ・インカのめざめ(おにぎり)
トウモロコシ(茹でて)
バターナッツ(BBQ)
金時草(BBQ)
イタリアンナス(BBQ)
ツルムラサキ(BBQ)
オクラ(BBQ)

なかでもインカのめざめを入れて作った
おにぎりが栗ごはんみたいな食感で
大好評だった。
それとオクラとバターナッツ。
野菜嫌いの子供もたくさん食べてくれた。

作る側も食べてくれる側も
みんなで一緒に食べるのは本当に楽しい。
うちの野菜を買ってくれているという人がほとんどで、
それぞれの方がそれぞれ方たちに
うちの野菜について講釈をたれている場面が
僕にはたまらなく贅沢な時間だった。

恒例の農園バンド「農園たや~ず」の演奏もあって
とても盛り上がった会になったかな、
と自己満足。
P1090876.jpg


準備はとても大変だけど、
余計な仕事ばかりが増えてしまうのだけど、
会計は赤字ぽいのだけど、
僕らにはこんな時間も必要なんだと思う。
だから、またやろう。

皆さん、また一緒に楽しく食べましょうね。
ご参加いただきありがとうございました。


ちょっと腹が立つことがあったので、
書かずにはいられない。
それは苗泥棒。

この時期、農園では白菜やキャベツの苗を
販売している。
セミプロの方が多く、
買っていく量もそれなりに多い。
今年は白菜の苗は天候で遅れたが、
キャベツの苗は早くに仕上がり、
白菜の苗を買いに来たお客さんの中には
キャベツの苗は売り切れて買えなかった人もいた。

その中の一部のお客さんは、
農園で栽培するために準備していたキャベツの苗、
つまり販売用ではなく、栽培用の苗を
少しでいいから分けてほしい、と言われる方もいた。
できればお分けしたいのだが
こちらも農園のキャベツを待っているお客さんもいるので
苗を必要以上にお分けすることはできなかった。
大抵の方は、説明するとご了承いただけるのだが、
なかにはとても卑怯な方もいる。
そう、分けてもらえないからといって、
盗んでいく輩だ。
今年の春も苗泥棒の被害を受けたので
警察にも被害届を出している。
パトカーの巡回ルートにも入れてもらった。

だが、今日、
またしてもキャベツの苗を分けてもらえないと分かった
お客さんの中で、
こっそりうちの苗を持ち帰った人がいた。
しかし、その苗はキャベツではなく、
僕が栽培しようと準備していたロマネスコだった。

ちなみにロマネスコとはこういう野菜。
IMGP0984.jpg


1枚のシートに128本の苗があったのだが、
それをそのシートごと持ち去っていた。
うちに来るセミプロの方はほとんどが露地栽培だし
キャベツということだと確実に露地の畑に
定植するだろう。
今からそれを定植すると
1月中旬ごろに収穫ができる。
そのころに大量にロマネスコを出荷する人がいれば
その人が苗泥棒だ!
うちの苗のお客さんは
多くが福井市内と坂井市からやってくる。

そこで皆さんにお願いがあります。
福井市や坂井市にお住まいの方で、
近くの直売所で普段はそんな変わった野菜を作らない農家が
大量にロマネスコを出荷しているのを見かけたら
ご連絡くださいませ。
こちらも日々市場や直売所でチェックはいたしますが
よろしくお願いします。

もしくは、その盗人が128本も定植しない場合、
盗んだ苗は転売するかもしれません。
キャベツだと言われて譲り受けたのにロマネスコだった、
という噂を聞いたりしたら
ぜひご連絡くださいませ。


また一つ山を越えた。
それはお盆需要の発注分を
なんとか納品できた、ということだ。

農業にはいろんな営農サイクルがあり、
それによって農繁期の時期が変わる。
「夏=忙しい」「冬=ひま」という
既存の農繁期の概念自体
そもそも最近の農業では当てはまらない。

うちの農園の生産様式でいえば、
GW、お盆、クリスマス、年末&年始
この4つのイベントの前が
最も忙しくなる。
こういうイベントの場合、
瞬間的に忙しくなるわけだが、
3月や4月のように人が移動する時期は
その月を通して、全体的に忙しかったりもする。

さて、イベントの一つ、「お盆」を
今回無事納品することができたというわけだが、
お盆前にやってきた台風の影響もあって
今年は特に野菜が不足していて、
駆け込みの注文も多かった。
一部の品目では
想定以上の発注があったため
お盆明けに収穫する予定だった
畑まで収穫してしまい、
お盆明けからはそれらの品目は
欠品になってしまうほどの注文量だった。

さて
機械力に頼らない
多品目の野菜栽培の僕らは、
人手をどれだけ揃えられるかが
この時期のカギになる。
好都合なことに、
この時期学生が夏休みになるので、
その大学生をどれだけ揃えられるかが
ポイントにもなる。
今年もイレギュラー的に、
とてもいい学生たちと巡り合えて、
臨時のアルバイトに手伝ってもらいながら
なんとか大量発注をこなすことができた。

「イレギュラー的に」と書いたが、
昨年も今年も、ある大学をターゲットにおいて
募集しているのだが、
どういうわけか、その募集が独り歩きして
その大学ではない学生がやってくるのだ。
そしてイレギュラー的な縁が
とてもいい出会いばかりで、
今年のお盆イベントも助かったというわけ。

いろんな人とのご縁で、
なんとか今年のお盆も乗り越えられた。
これから3日ほど農園はお盆休暇になるので、
骨休めするとしよう。

7月は福井では野菜が売れない。
それは2つの理由から。

まず一つ目。
それは暑いから。
暑いと食欲も減退するし、
台所で火を使って調理しようという気にならない。
だから、
外食や中食がこの時期は強い。

二つ目は、里山資本主義だから。
というのは、正当な評価かどうかは
わからないが、
とにかく家庭菜園がこの時期最盛期を迎える
というのは事実。
県民総家庭菜園といっても過言ではない
この田舎の県では、
この時期、自分の庭や畑で採れた野菜が
既存流通を超えて
まわりまくる。
取れすぎてどうにもならないキュウリや
トマトやナスやウリやその他もろもろの野菜が
近所へのおすそ分けという名を借りて
行ったり来たりする。
夏野菜のパワーはすさまじく
たとえ1本2本だけの苗しか植えていないとしても
とても食べ切れないほどの収穫があるのも
この時期。
だから、
7月の福井卸売市場の青果売り上げは落ち込む。
経済として発展しないが
里山資本主義という便利な言葉があるので
今はそういう主義の時期です、
と言い張れるようになった(半ばやけくそ)。

この時期は農家も辛い。
暑くて作業も大変だし
暑さと日射量から、農家の夏野菜も
半端なく収穫できる。
だのに、市場流通は鈍い。
だから値崩れする。
市場出荷に頼っている品種は
すでに半値を切って、
それでも底が見えない状況で、
どんどん値下がり中。

7月の福井で
市場を当てにしていたら
野菜農家はつぶれてしまう。
思い切ってこの時期は
夏休みにしてしまいたい気分なのだが、
そうもいかない。

だから農園では、
流通量が減る二つの理由を
逆手に取ることにしている。
一つ目の理由の暑さで食欲減退し
暑くて調理する気が失せるということならば、
火を使わなくても食べられる野菜にすればいい。
あと外食と中食ターゲットの野菜を増やす。
二つ目の県民総家庭菜園という状況ならば、
みんなが家庭菜園レベルでは作れない野菜を
この時期作ればいい。
それは貴重品種でもいいし、
プロらしくこの時期栽培が難しいものでも良い。

ということで、
7月の福井の状況は、
その環境がいい野菜農家を育ててくれるのだ。
と、やけくそで思うようにしている。




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毎週、農園から野菜の詰め合わせを
個人の宅に送っている。
野菜おまかせ便だ。(詳しくはこちらのリンクへ

ちょっと珍しい野菜が入ったりもするので、
時々手におえないとお叱りを受けることもある。
それでも
楽しい食と農のサイクルを
ポジティブに楽しんでもらいたくて、
ついつい変わった野菜も入れてしまう。

前回のおまかせ便もそんな気持ちが
むくむくと起きてきて、
ついついこんな野菜を入れてしまった。

それは、花ズッキーニ。
冒頭の写真にあるように、
ズッキーニの雌花のことだ。
大ぶりの花に詰め物をして揚げて食べるのが
一般的(?)な野菜。

花を食することが
あまり文化として定着していない日本では
珍しいかもしれないが、
ヨーロッパでは一般家庭でも
普通に食卓に上るらしい。

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我が家でも
今年はこの花ズッキーニをずいぶんと楽しんだ。
ひき肉やチーズ、ハムなどいろんなものを
詰め込んで揚げて食べた。
花びらの食感がとても新鮮で、
それが癖になる、そんな野菜だった。

ズッキーニは夏のイメージが強いが
実は暑さにあまり強くない。
暑さが本格的になる7月には、
ほとんど収穫できなくなってしまうのだ。
だから、この花ズッキーニも
初夏だけの楽しみといえよう。

さて、この野菜をおまかせ便に入れたら
またお叱りを受けるだろうか、と思っていたら
意外にも楽しめたという連絡を
いくつかいただいた。
レストランでしか食べたことなかった野菜を
気軽に家で調理できて楽しかったそうだ。
食卓が華やいだ、とか
家族で取り合いになった、とか
花ズッキーニ一つで
食卓の場ができたことがうれしかった。

こんなやり取りができるから
僕はおまかせ便のような直販が好きだ。
僕らの農のリズムが
それを食べてくれる人たちの
日々の食卓のリズムにつながる。
もちろん嫌いな野菜や
調理しにくい場合は、食べてくれる人には
がっかりさせてしまうかもしれない。
なるべく、それは避けるよう努力していこうと思うが、
季節によってその野菜が育つリズムがあるので、
人様の好みではなかなかうまい具合にはいかない。
そんなイレギュラーも楽しめるような
おまかせ便の関係だと素敵なんだけどな。



僕の農園は無農薬ではない。
農薬散布はもちろん行う。
だが、皆さんが持っている「農薬=悪」という意識はない。
散布が常態化して、そういう感覚がなくなったわけじゃない。
積極的に農薬に向き合うことで、
一括りにされてきた「農薬=悪」に疑問を持っているだけだ。

ちょっと前のエントリーでゴッツAについて書いた。
農園の主流農薬である微生物農薬だ。
だが、微生物農薬だから安全って言いたいわけじゃない。
その農薬が人間に与える影響は、
化学合成だろうが微生物だろうが
大して変わらない。
場合によっては、
一本の煙草や一杯のコーヒーやお酒ほど
危険じゃない。

だが、ここで微生物にこだわる理由が
僕には少しだけある。
それは人に対してではなく、
虫に対してだ。

農薬はポジティブリストが導入されてからは、
使える農薬がぐっと減ってしまった。
リストになければ使えないし、
使用回数も制限を受ける。
ま、それは当然のことで、
ポジティブリストの議論以前が、
いい加減すぎたってことなんだけどね。
その頃は、結構有名な農薬の指南書でも
農薬の登録にない野菜にもで
こうこう判断してこうして使える、と
裏技的に書かれていたというのは余談。

さて、野菜の種類や回数制限を受けると
マイナー野菜をたくさん作っている僕は
やや防除に困る。
リストに載っていないマイナー野菜を
たくさん作っているからだ。
で、そんな時、微生物農薬は
とても重宝する。
なぜなら登録野菜がざっくり「野菜類」と
なっているものが多いからだ。
つまり野菜であれば、どれにでも使ってよい
ことになる。
ADI(1日の許容摂取量)やLD50(半数致死量)が
考慮されてのことなので、
人間様は大丈夫。
いらぬ心配はしないように。

で、ゴッツAもその一つ。
その効果は、
虫に菌が寄生して、体からカビが生えて死ぬ
というもの。
実際には、その条件をそろえないと効果が低いので、
これまでの化学合成農薬のように
散布するだけでOKというわけじゃないのが
やや面倒くさいのだが、
意外な効果も期待できる。
それは、害虫以外の他の虫への影響がすくないこと。
だから、この農薬を散布する圃場は
害虫を食べる天敵の昆虫が多い。

IMGP2461.jpg
これはアブラバチが
害虫のアブラムシに寄生した写真。
アブラバチがアブラムシの体内に卵を産み
その幼虫が薄皮一枚残して
アブラムシの体内を食べつくす。
金色のアブラムシが、その体内を食べつくされたやつだ。
食べつくすとエーリアンのようにその皮を破って
成虫になって、アブラムシに卵を産み付けていく。
1匹で300ほど卵を産むので、
いったんアブラバチが増えると、
アブラムシは僕が気付く前に、食べつくされていることが多い。

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もう一つが、この虫。
ヒラタアブの幼虫。
こいつらは貪欲な食欲で
コロニーを形成したアブラムシをすべて食い尽くしてしまう。
いったんコロニーを形成すると
増えていくスピードが速すぎて
アブラバチではなかなか対抗できなくなるのだが、
そんな時に現れるのが
このヒラタアブの幼虫。
コロニー丸ごと食べてしまうほどの食欲の持ち主。
この虫にかかれば、アブラムシの繁栄の道は閉ざされてしまう。

これらの天敵はとても敏感だ。
一回でも化学合成農薬をまけば
アブラムシよりも先に姿を消してしまうほどだ。
ゴッツAのような微生物農薬は
それ自体の効果は、言うほどではない。
条件がそろわないとあまり効果ないし
何度も散布しないといけない。
だが、副産物として
こうした天敵が害虫をやっつけてくれる状況を
作り出してくれる。
副産物と書いたが、
こっちの効果のほうが
素晴らしい防除結果を生み出す時もあるほどだ。

もう一度言おう。
微生物農薬だろうが化学合成農薬だろうが
人様への影響はほとんど変わりない。
微生物だから安心というわけでもないし、
化学合成だから危険というわけでもない。
ただ、
人様ではない、ただの虫に少し意識をして
(ポジティブリスト導入のおかげなんだけど)
こうして微生物農薬を使うと
圃場で起きているダイナミックな自然のやり取りを
観察できる。
僕はこの光景がとても好きだ。
ただそれだけ。



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立夏を過ぎ、
暑さを感じる日が多くなってきた。
いよいよ農繁期。
この時期になると、一つ作業が増える。
それは農薬散布。

農薬散布というと、もうそれだけで「悪」というイメージで
語られてしまうのが、僕ら農業者としても
とても残念でならない。
減農薬なんて言葉も、
その農薬を減らした方が良いという
とても安易な発想からきた言葉で
それは僕らの実情とまったく合わない。

農園では、できる限り微生物を主体とした農薬、
もしくは天敵、だけでなく、名前も知らないただの虫にも
影響の少ない農薬を利用している。
話題のネオニコチノイド系薬剤も
使っているが、ミツバチの問題で
一括にくくられて悪者にされているが
農園で使っている薬剤はアセタミプリドやチアクロプリドなど
問題視されているイミダクプリドといった
原体から比べたら数百倍ミツバチに影響がないものを
使用している。ということはまた別の機会で
説明しようか。
さて、この写真の農薬も微生物農薬で
僕の主力農薬の一つ。
アブラムシに効く農薬で、
アブラムシの体に菌糸がまとわりつき
白っぽいカビになって殺すというもの。
冬虫夏草みたいなものと言ったら
ちょっと飛躍しすぎるだろうか。
もちろん僕らの体には侵入しないので
ご安心ください。

さて、この農薬は
アブラムシの体に菌が寄生しなければ
効かない。
だから、これを散布するときは、
ハウス内の湿度や温度なんかも気を付けないといけない。
一回では寄生しにくいので、
3週連続で使ったりもするため
回数も当然増える。
減農薬とは言えない状況だね。
何をどう減らすなんて、
僕ら農家の現場で
農薬の中身を議論すれば
そもそも多いか少ないかなんて
意味がないのだ。

しかし、
誰がこの名前を付けたんだろう。
「ゴッツA」。
JAに電話で注文するたびに
真面目に
「ごっつえーください」というと
受け付けた女性が必ず
クスッと笑うこの名前。
言い難いったら、ありゃしない。
もしかしたらこれを名づけた人は
今の農薬の議論そのものを
バカにしているのかもしれない。
だとしたら僕も同感だな。
でも、ちょっと他では言い難い名前、
何とかならないだろうか?


5月に入った。
5月と言えばGW。
GWといえば、農作業。

農作業のスタイルをここ数年で
大きく変化させてきているのだが、
その変化のおかげで、
このGWは、以前よりも忙しくなくなった。

20年前くらいは、父が中心となって
野菜苗の生産に力を入れていた。
その頃は、GWは朝3時や4時起きで、
仕事が終わるのも夜9時近かった。
毎日配達に追われ、昼休みは配達の車の中だったりもした。

あれから農園は随分と様変わりした。
この時期の主力は野菜苗から野菜そのものへと
完全に移行した。
だから今は、あのころに比べたら、
あまり忙しくない。
ただ、その日の朝にならないと
その日の仕事が組み立てられなくなった。
野菜注文のメールと市場と業者からの電話が
深夜から早朝にかけて入る。
それをチェックし集計するまでは
その日の出荷量が決まらなくなってしまった。

そして今日がGW用の野菜の出荷の
最終山場。
ここを終われば、野菜出荷は一息つける。
野菜の苗を販売していたころは、
ここからもう二つほど山場があったのだから、
それに比べたら大したことはないよな。

この時期に、こんな時間から
豆をひいて入れたコーヒーを飲みながら
ブログを書いている自分に
なんだかしみじみしたGW野菜出荷の
決戦当日の朝だった。


そろそろ白状しておこうか。
立夏が近づき、
夏の暑さの片りんを感じる日が
多くなってきたこの頃、
数件の業者から問い合わせがあった。
それは夏のメニューについて。
夏と言えば、主役はナス!
で、たぶん、ナスの中で一番おいしいと思う
吉川なすは、みんなメニューに入れたい。
で、そのなすを格安で作っている農家は
僕ということで、
ここのところそのなすについて
電話をいただくことが多くなった。
ので、この辺りで白状しておこうと思う。

えーっと、今年、吉川ナスの苗づくり・・・
失敗しました

自分でもびっくりなんですが、
昨年の1/3も準備できていないです

接ぎ木を他の農家仲間に依頼していたが、
そこで苗立ち枯れ病が発症し、
次から次へと枯れ、
でもその中で、なんとか大丈夫なものを
農園に持ち帰って、
さらに選抜してポットに移植したが
ここでもまた発病。
最終的に昨年の1/3以下の苗しかない。
しかもその苗たちも
まったく元気がない!
ヨレヨレの状況で、定植日も決まらないありさま。

あわてて一昨年前のタネを播き直し、
タネ取り用のナスは確保したが、
出荷用のナスはほとんどない状況となった。

このなすは病気に弱く、
こういう事態でナスのタネを無くしてしまう農家が
多くいたとは聞いていたが、
それが自分のところで起きてしまうとは。

昨年は、たくさん取材もしてもらって、
たくさんの方から美味しいと言われて、
自分でも少し舞い上がっていたのかもしれない。
技術がない者が、あるようにふるまえば、
こうなるのは自明の理だ。


大変申し訳ありませんが、
今年の吉川なすはほとんど出荷できません。
もしうちの農園が出荷した吉川なすを見かけたら、
それはとても貴重なものなので、
大切に食べてくださいませ。
これから多大なご迷惑をおかけするであろう
昨年たくさん買っていただいた業者様、
また直接謝りに行きます。
本当に申し訳ありませんでした

今年の栽培を通して、
もう一度、栽培と採種の基礎を
勉強しなおそうと思います。





今年の12月から地元JAの直売所の
値段ラベルが新しくなる。
今日は、その説明会があり参加した。

直売所の値段ラベルには、
生産者名と商品名と値段が記載されており、
それらはこれまで比較的自由に発行でき、
生産者がそれぞれの生産物に貼り付け、
直売所に商品を並べていた。

今回の大きな変更点は2点。
まず1点目は、生産者がいつでも勝手に
ラベルを作れなくなった、ということ。
こう書くと少し語弊があるかもしれないが、
生産者の立場としては、こう感じることが
多いだろう。
「勝手に」作れなくなったというのは、
生産者がラベルを発行するのに
ある条件が必要になったからだ。
それは栽培履歴書を事前に提出という条件。
栽培履歴書とは、野菜の品目&品種、播種日や圃場の広さ、
使用した農薬や肥料など栽培に関する情報が
書き込まれたモノを指す。

トレーサビリティが
うるさく言われたころ(2007年ごろだったか?)から、
直売所でも栽培履歴書の提出をするようにと
言われていたが、実際には年に数回程度提出すれば、
それで値段ラベルを作って直売所に出荷できた。

それが今回から、すべての野菜において、
毎回栽培履歴書の提出を事前に行わない限り、
値段ラベルの発行はできないように
なってしまった。

もう1点の大きな変化は、
消費者がその直売所内にある専用端末で
野菜についている値段ラベルを読み取ると、
専用モニターにその野菜の栽培履歴が映し出される
ようになった。
これまでは消費者がそんなに手軽に
栽培履歴を見ることはできなかった。
それは栽培履歴のデータベース化がされておらず、
栽培履歴自体も生産者側の管理下にあったためだ。
もちろん、消費者が見たい、と言えば、
提示する義務は生産者にあることは当然だが。

さて、この2つの変化は何を生み出すのか。
一つは、消費者が生産物の履歴を確認しながら
買い物が可能になったということだろう。
より多くの情報を自らで確かめながら
購入することが出来るようになったことだろう。
このことで消費者の購入するきっかけが
大きく変化することもあるだろう。
これまで何気なく買っていたモノや
生産者のイメージや商品の見た目で
安心を得て購入していたモノでも、
自分でその栽培履歴を確認しながら
購入するかどうかを判断できるようになったのだ。

もう一つは、そういった目にさらされているという
意識を生産者に植え付けるという変化。
商品の履歴は、どこかで誰かが見ているだろうという
まるでフーコーが指摘した
監視システムの内面化とでも言おうか、
直売所もよくもまぁ、現代にぴったりのシステムを
創り上げたものだ。
内面化された監視のもとで、
僕らは生産をし、
情報の食い違いやちょっとしたミスも
『偽装』と疑われないように
細心の注意を払う必要が出てきたということだ。
当然のことと言われればそれまでだが、
精神的な窮屈さと
アドミの煩雑さが増したことは確かだ。
しかもそれは値段に容易に転嫁できず
僕らの負担は増した形だろう。

さて、これらの変化なのだが、
果たして健全な生産と売買につながるのだろうか。
少し疑問に思う節もある。
まず、消費者が栽培履歴を
正確に理解できるかどうかだろう。
今回の説明会でも、
栽培履歴の書き方で重要視されたのは
使用農薬の欄だった。
栽培履歴の大半は、どういった農薬を使用しているかを
書き込む欄で埋められている。
つまり、情報開示は使用農薬だといっても過言じゃない。
その農薬情報を消費者は
正確に理解できるかどうかが気がかりだ。

うちの農園では、使用する農薬は厳選している。
害虫ではない他の虫がしなないように、
ピンポイントで効くような農薬を使用し、
食べる側にも散布する人にも安全なものを
出来る限り使用する努力をしている。
だから農薬登録されていても、
農園独自基準で使用できない農薬も多々ある。

農薬間で環境に対する影響度合いは
大きく違うのである
(人体の場合は農薬登録されているのであれば、
ほとんど問題ないように思われる)。
その違いをその履歴から
消費者は正しく読み解きながら、
購入することが出来るのだろうか?

「農薬=危険」という構図は今も健在だ。
農薬を一滴でも使えば危ない、
と思っている人が多い一方で、
天敵昆虫も農薬資材に登録されている事や
微生物を利用した農薬があることも
あまり知られていないようにも思う。
しかもそういった資材も
一般の消費者では商品名だけで他の農薬と
判別することは難しいだろう。

すこし農薬名を書いてみよう。

アディオン乳剤
アドマイヤー乳剤
バイオキーパー水和剤
コルト顆粒水和剤
ゼンターリ顆粒水和剤
エルサン乳剤
ガンバ水和剤
ハチハチ乳剤
ジュリボフロアブル
アフィパール

と、ある野菜に使用した農薬情報が
並んでいても、
どれが天敵昆虫の農薬で
どれが微生物農薬か皆さん解りますか?

しかも、環境配慮型の農薬は
そうでないものに比べて散布回数が増える傾向がある。
だから、
栽培履歴の農薬散布回数だけを見ると、
たぶん環境に配慮しながら
農薬を使用している農家の方が使用回数は多くなり、
履歴の見た消費者の感覚では、
そちらの方がなんだか「危ない野菜」に
見えてしまうようなミスリードも起きかねない。

もう一つの懸念は、すべての生産者が
果たしてそれを正確に記述することが
出来るのだろうかと言うこと。
いい加減に書いても、
それをチェックすることはないので
とりあえず形ばかり提出をすることもあり得る。

いい加減に書いて、使用農薬を記載しない方が、
真面目に書いている生産者より
栽培履歴上の情報では、なんだかより「安全」に
見えてしまうだろう。
そういったシステムへのただ乗りを
どうチェックするかは、
今回の説明会ではなかったし、
たぶん、そんな機会はないのかもしれない。
抜き打ちで農薬検査でもすれば
良いのだろうが、
それも実はシステム上の別の問題が
発生してしまうので、現実的ではない。
さらにこれは、その次の問題にもつながる。

今回説明を受けたシステムでは、
栽培履歴を提出して生産者が値段ラベルを
発行できるまでの間は、約2週間とのことだった。
職員がシステムに慣れてくれば、
1週間ほどのタイムラグで値段ラベルは
発行できるらしい。
しかし、圃場では毎日変化する。
農薬でも収穫前日まで使用できるものが
増えており、その場合、
直売所に出荷する前日に農薬を使用した場合、
たとえ出荷と同時に申請したとしても
1週間のタイムラグがあるため、
その情報は消費者がいくら端末機に野菜をかけようと、
それが表示されることはなく、
その日の売買は成立してしまう。
もちろん、その農薬で健康被害が出ることはなく、
ほとんど無視できるレベルのはずなのだが、
それとこれとは問題がまた別なのだ。
少なくとも消費者が農薬を確認して
買うことが出来るというシステムが目的だった
はずなのに、申請してシステムに反映されるまでの
タイムラグがあること自体、
その目的が達成できていないのだ。
システムへのただ乗りをする生産者のために
抜き打ち検査をすれば、
タイムラグ間で生じる情報の違いも出てくるので、
やはりそこが逃げ道にもなる。
つまり、このシステムでは、
農薬の使用履歴を適当に書いた方が
得になってしまいかねない。

専門家と一般人の専門知識の差の問題と
市民感覚を科学へ反映させることは、とても重要なので、
情報開示と倫理観の共有は重要かもしれない。
だが、
今回のシステムが
消費者と生産者のコミュニケーションの向上に
つながるとも思えないし、
タイムラグなどのシステム自体の問題もあり
ただ乗りを防げないだろう。
多額のお金をかけて値段ラベル発行機を導入するのなら、
その辺りにも、もっと配慮すべきだったように思うが、
たぶんこの辺りが現実的に限界なんだと思う。

結局は、これまで通りに消費者は
生産者に託した「安全」でモノを選ばないといけないだろうか。
ブラックボックス化した「安全」が
本当に安全か、それともただの神話かどうかを
3.11以降、僕らは自覚して考え始めているのだが、
その対話の場は少ない。

さて、12月から導入される値段ラベル発行機は
実際にどんな「対話の場」になるのだろうか。
これからも注目していきたい。



今回の台風は、
少なくとも僕らの農園には大過なく、
過ぎ去ってくれた。

18号の時は大雨で、
特別警報がでるほど降ったため、
雨水がハウス内に侵入し厄介だった。
露地野菜も種まきを済ませた畑では、
多くが表土ごと流され、発芽率が下がってしまった。

では今回の台風はどうだったか?
今回は晴天と高温と強風の台風で
ほとんど雨が降らなかった。
そういうわけで大過なかったのだが、
実はこういう台風でも、僕らのような葉菜類を
主体にしている農家には結構つらい。

葉っぱ野菜はどうしても風に弱い。
熱風が吹きつけ、さらにそこに強い日差しが
降り注げば、葉っぱの蒸散量を超えてしまい、
葉っぱが焼ける現象が出る。
そうなってしまえば商品価値はなく、
損害も大きい。

ハウスのような施設であれば、吹き込む風をコントロールして
遮光ネットで強い日差しをカットできれば、
高温による障害が出ない限りはなんとか
やり過ごせるのだが、
露地の野菜はそうもいかない。
風はコントロールできないし、
日差しをカットするネットも張れない。
そんなわけで、露地野菜の一部にはそれなりに障害が出た。

そんな畑を見て、ふと思ったことがある。
以前、知人のFBの書き込みで、
農家は災害に弱く、努力が足りないんじゃないか、
というのを目にした。
自らを弱く示すことで、同情や援助を引き出そうとしている、
との論調だった。
はたしてそうなんだろうか?
たしかに前回や今回の台風で、被害を受けた。
準備していてもどうにもならない。
というか、もっと出来ることはあった。
排水ポンプをもっと大量につけるとか、
露地野菜じゃなくて、大根も施設で作るとか。
でもそれだと、それらすべて投資は、
価格に反映してしまう。
そしてそれは市場競争に耐えうるものではなくなってしまう。
1本100円を下回る大根の値段に合わせて、
僕らはまるで博打のような農業を
しているに過ぎない。
もちろん、生活が懸かっているわけなので
勝ちにはこだわる。
だから、
その条件下(価格内)で負けない準備は
出来る限りする。
ただそれだけのことだ。

売り方も努力はしている。
少なくとも僕の農園では総太りの一般的な大根は
作らなくなった。
高く売れる大根を、それを評価してくれる市場に出している。
それも当たり前といえば
当たり前のことだな。

災害に弱く見えるのは、
その努力を怠っているわけではなく、
災害と密接した自然を相手の現場で
作業をしているからだ。
自然を断ち切って植物工場にしてしまえば、
それですべてが済むわけじゃない。
レタスなどのほんの限られた一部の品目だけは、
その考え方で通用するが、
米なんてとても高コストになりすぎて、
とてもエネルギー的にも倫理的にも
許せる範囲で生産できないのが現状さ。
まぁ、根菜もマーケット的に無理だね。

同情を買おうとしてるように見えるのであれば、
それはその方の視点が、
すでに自然の営みから
遠く離れた場所に行ってしまっていて、
想像力が無くなっているからだろう。
僕ら農家は、同情はしてもらう必要はない。
というか、こちらからお断りしたい。

ただ僕らの眼差しとして、
マーケット的にも環境倫理的にも
技術的にもコスト的にも
見合う範疇で、
こういう生き様が好きで
自然相手に博打を打っているに過ぎない。

今年の大根は2つの台風で
ずいぶんと傷みが出て苦労をしているが、
ここからの盛り返しが、
僕らの本領発揮なのだ。
すでに台風を見据えて、
手作業の中打ち・除草を済ませ、施肥はした。
計算通り明日雨が来れば、
出荷は遅れるだろうが、
素晴らしい大根になってくれると
僕は期待している。

今年中に準備しなければいけない
マルチを張り終える。
うちでは、それ用の機械として
畝立て成形マルチのアタッチメントを
トラクターに取り付けて行っている。
これが来るまでは、
むらの蔬菜組合共有の
ハンドトラクター型専用機を使うか、
ガテン系で手作業でマルチがけを行っていた。
このアタッチメントを利用するようになってからは、
速度も効率も倍以上になった。
なかなか便利で、
自分でも良い買い物をしたと思っている。

しかし、
最近、その機械の調子が悪い。
事の発端は、とても小さなことだった。
春のマルチがけの時に、
右側のマルチを抑えるアームのネジが
折れてしまった。
そのため、業者に来てもらって
そのネジ割って新しいものと交換してもらったのだが、
その時に一度取り外したアームの位置が
今までとはちょっと違っていて、
微妙にマルチの掛りが悪くなってしまった。

この機械は、マルチ資材にあれこれテンションをかけて、
成形した畝にマルチをかけていく機械なのだが、
そのあれこれテンションをかけている
ローラー等の調整がやや僕には難しく感じる。
ローラーの高さや角度のちょっとが
マルチがきれいにかかるかどうかを左右するからだ。
両側のローラーのテンションも同じでなければ、
テンションの強い方にマルチがよれていくことも
よくあるのである。

買ったばかりの頃は、
スイスイときれいにマルチがかかったのだが、
ネジ一本折れてから、すこーしずつ何かが
狂ってしまった。
まったくマルチがけが
出来なくなってしまうような故障ではないのだが。

だから、
今回のマルチがけは、1本1本終えるごとに
少しずつ調整を繰り返しながら作業を終えた。

そんなストレスな作業の繰り返しだったからか、
この作業が、自分の身の回りの物事の流れに見えてきた。

何かをやり始めたころは、
あまり考えていないせいか、
意外にスイスイいったりもするが、
どこか一本のねじのように
ちょっとしたことが起きてから、
物事の流れが少しずつ狂い始めていく。
大過があるほどの狂いにはなっていないが、
微調整を繰り返さないと上手くまわらない。
それも微調整をしていていも、
以前のように上手くいかないことも多くなってくる。

40歳前なんてそんなもんなんだろうな。
思っていた以上に単純じゃない物事に
狂い始めてから人は初めて気がつく。
そういうことなんだろう。

畝立て成形マルチも、僕が思っていたような
単純ではない、微妙なテンションのバランスの上に
成り立っていたんだろうな。

そんなことを考えながらの
秋のマルチがけの作業だった。


8月も、もうすぐ終わる。
まだまだ暑い日が続いているが、
野菜農家の頭の中は、すでに冬の野菜で頭がいっぱいだ。

白菜の苗づくりや
キャベツ・ブロッコリなどの定植、
ニンジンの播種に、
大根の畑の準備などなど。

P1060134.jpg


巡っていく季節に合わせてと言うよりも
これから巡って来るだろう、
と期待する季節に合わせて、
僕らは作業する。

たぶん、この期待があんまり外れないのが
篤農の技なのかもしれない、と最近は良く思う。
自分の圃場の状況を考えれば、
冬に出すニンジンの播種適期は、
昔は何週間もあるように感じていたが、
最近は1週間ほどしか感じなく、
大根もたぶん思っている日にちの天気次第では、
5日間くらいが勝負なんだろうと思う。

これから9月中旬まで気忙しい毎日が続く。
農業をスローライフと言う人もいるが、
これのどこがスローなんだろうか。
期待する季節に合わせて、
お天気とにらめっこしながら、
数日勝負で種を播く。
期待が外れたり、播種後にゲリラ豪雨が来れば、
すべてがパー。
まさに農業は博打だ。
たぶん勝負師の人の方が
良くつとまるんだろうな。

日没に追われながら、
ブロッコリの定植をしながら
そんなことを考えていた。

近くの農業法人が今年、
国産小麦を栽培していた。
福井では大麦の栽培が盛んだが
(日本一の生産量らしい)、
これまであまり小麦は栽培されてこなかった。
福井の気候に合う小麦が無かったから、らしいが、
最近は県大3号のように
福井でも作りやすい小麦が登場してきた。

それもあってか、
その法人では今年小麦を作っていた。
小麦栽培に少し興味があったので、
収穫後にいろいろと聞いてみた。

価格面ではやはり高級小麦になるらしい。
製粉まで自分で出来て
かつ、売り先も見つけられれば、
それなりに儲けがありそうな話だった。
ただ、国産小麦のハードルは
品種や製粉・販売ルート以外にも
もう一つ大きなハードルがあった。
それは、他の作物の混入問題。
とくにソバが混入するのは致命的らしい。
昨今、アレルギーが増えている日本社会で、
国産小麦粉に、ソバがちょっとでも混入すれば、
とんでもないことになるからだ。

その法人では、米と麦とソバを
ローテーションを組んで栽培している。
米の後にソバを播いたり、麦の後にソバを播いたりと
同じ圃場で輪作を組んで栽培している。
減反政策とそれぞれの作物につく補助金とが
そういう作付けを生み出している。
さて、
ソバはどうしても実(種)が落ちやすいので、
雑草化しやすく、
麦の畑でも絶対ソバが生えてこないとは
言い切れない。
だから小麦を栽培した田んぼでも
以前にソバを作っていれば、
全く混入しないとは言い切れないのだ。
そういう小麦は、普通の小麦粉としては販売できないため
なかなか良い価格がつかないらしい。
その法人ではそば粉を販売しているので、
そのソバのつなぎ用として小麦を売るとのこと。
それならソバアレルギーとは関係がなくなるわけだが、
販路が限られてくるので、当然うまみも少ないらしい。

国産の小麦粉を実現させようと思うのなら、
小麦用の圃場を用意し、
小麦専用の機械と乾燥機を用意し、
製粉も、小麦専用を用意しないといけないらしい。
投資額も大きく、
機械の使用効率も悪くなるため、
なかなかビジネスにはなりにくいかもしれないな。
アレルギーが蔓延する社会と
減反による転作政策が
国産小麦粉を阻むハードルになっているなんて
なんとも皮肉だ。

そういえば何年も前の話だが、
オーストラリアで大規模に
日本向けのソバを栽培する話があったが、
その後どうなったのだろうか?
そのソバを栽培した畑で、
よもや小麦を栽培していないだろうな。
そんなことを
ソバ混入の話を聞いて思い出した。
07 31
2013

ここ最近、かかとの痛みに困っている。
とくに朝起きてからの一歩目の痛みといったら
けっこうなもので、
思わず声がでることも。

仕事も忙しくなってきているし、
つねに混んでいて面倒な
整形外科に行く気もなれず、
そのまま放置していたのだが、
そろそろ行かないと大変なことになるな、
と感じていた。

夏野菜が始まってから、
常に農作業が立ち仕事に変わった。
収穫調整の忙しさから機械に乗ることもなくなった。
また座って作業も出来るのだが、
夏季の人員増員で作業場が狭く、
僕だけ他の場所で立ちながら作業することも
多くなった。
そんなこんなで、
6月ごろからかかとが痛い。

今朝はさすがに今までにない痛みだったので、
医者に行こうと思い、ネットで調べると、
こんなサイトに行きついた。

http://sorari.com/kakato-itami/


どうやら足底筋膜炎というものらしい。
中高年や体重のある方がかかる、というのが
すこしひっかかるが、症状が似ているので、
素人判断でこれだろうと思った。
で、対処法にあるアキレスけん延ばしをしてみると、
嘘のように痛みが消えた。
やはり足底筋膜炎だったようだ。

「中高年や体重のある方がかかる」というくだりだけが
どうしても気に入らないが、
かかとが痛かったら、皆さんも試してみてほしい。

「最近ブログ書いてないね」と
先輩から言われた。
ので、ちょっとまとめて書くか。

さて今、
吉川なすの収穫が最盛期を迎えている。
が、今年は少しその最盛期に
ちょっと事情があって、枝を選定した。

昨年は、8月から某大手ビール会社の
飲食店のメニューに期間限定で吉川なすが載り、
大量の注文を頂いた。
8月いっぱいの限定メニューだったので、
9月からのナスの収穫は無視して、
木が疲れるのを無視して、ナスを取り続けた。
なんとか注文を上回る茄子を出荷し、
9月は予定通り早めに栽培を終了した。

ところが、今年はその企画がズレた。
担当者だった方が、北海道に転勤になり、
どうしても8月の目玉は北海道の野菜に
しなければいけなくなってしまったという。
どうも北海道の生産者団体から
ゴリ押しされたようだ。

さてそのような変更を
収穫を開始した6月になってから知らされた。
8月の大量注文に備えて、
昨年よりも面積を増やした僕には、かなり痛い変更だった。
ただその後、間に入っている業者さんの奮闘で、
9月から吉川なすの企画をすることにはなった。

しかし、ここ数年暑い夏が続いており、
福井では9月に良い茄子を取るのは、
丁寧な管理なしではなかなか難しくなっている。
だので、あまり剪定なんてしなかったのだが、
今年は思い切って茄子の木を剪定した。
上手くいけば、9月から大量のナスが取れるはずだが、
さてどうだろうか。

でも問題は、これで終わらない。
農園は多品目を組み合わせるように出荷している。
9月は、ナスの防風とバンカープランツを兼ねて
生垣のように植えたオクラが収穫最盛期を迎える。
例年であれば、ナスを終了させ、
オクラ栽培に集中するのだが、
今年は大手ビール会社の企画変更で、
9月にナスを収穫するので、
どうしてもオクラとナスが同時期に収穫を迎え、
農園のキャパを超えてしまうんじゃないかと
やや心配される。
どう作業をマネジメントするか、
そこに今、頭を悩ませている。

市場の変更は、いつも簡単に行われるけど、
それに付き合わされる現場はそう簡単にはいかない。
農業という自然現象を相手にした現場は、「特に」だ。
まぁ、これを何とかしてこそ
「プロ」なんだろうな、きっと。
がんばろっと。


6月に入ってから、
農園の周りでは雨が降らない。
毎日晴天続きで、真夏日の連続。
ハウスなどの施設がある場所は、
井戸などの灌水設備でじゃんじゃん水をあげられるので、
特に問題は無いのだが、
そういった設備の無い露地の畑は
とても苦労する。
特に、河川敷の畑など。

北から張り出した高気圧での晴天なので、
幾ら台風や南からの低気圧が
湿った暑い空気を運んできたと言っても、
湿度はせいぜい60程度。
太平洋高気圧下に置かれる
8月ごろの湿度80%に比べれば、
まだまだからっとしたいい天気と言えよう。
こういう天気の場合、
水さえしっかりと与えることが出来れば、
作物は無限に生長していくようにも思える。
事実、吉川なすやベビーリーフの生育は良く、
じゃぶじゃぶ灌水しても、病気すら出ない。
なので、この天気は歓迎したいところだが、
そうも言えない場所もある。

河川敷の畑は、国の管轄になっていて
単年度契約で耕作権が与えられている畑。
そこでは、法律上、構造物をつくることが出来ない。
そのため、ハウス施設はおろか
灌水用の設備を作ることもできない。
まったくの天水だよりの畑。
インドネシアではさんざん辛酸をなめさせられた
天水だよりの畑は、
意外にも自分の地域にも多い。
水をコントロールできなければ、
たぶん、近代農業技術の9割以上が意味をなさない。
だから、その状況で
僕にできることはほとんどない。
インドネシアで味わった無力感とやや似ているが、
経営の面での本気度と言う意味では、
河川敷の畑はおまけなので、
気楽なのは気楽。

まぁ、これまで大量に生産して、
近くの直売所で最安値をけん引してきた
僕のズッキーニが
ほとんど取れなくなったことや、
6月の今頃から出荷しようと画策していた
赤色ソラマメが全滅したり、
県外の販路で好評だった
小粒に作ってきたジャガイモのインカの眼ざめが、
全部枯れたりはしたので、
それなりに萎えたりもする。
ちなみにこのまま雨が少なければ、
さつまいももダメになるだろう。

こういう場所がまだまだ日本には多いのだろうか。
最近、市場の果菜類の価格が上がり始め、
それに呼応する形で葉菜類の値も一気に上がり始めた。
好天で乾燥しているので、
水さえじゃぶじゃぶあげられたら、
どんな素人でも良いものが作れる気候なのに、
やや日照量が多いことと気温が高いため、
たとえ施設があるからと言っても、
どうも野菜が焼けているのかもしれない。
もしくは、生育コントロールがつけられないか。
値が上がるのは、僕ら農民には大歓迎だが、
値が上がる時に限って、野菜の量は取れない。
というか、取れないから値段が上がるのか。
だから、あまり得した気分もない。
河川敷の畑もひどいもんだしね。

まぁ、そんなこんなで、
底抜けの晴天が恨めしい毎日である。

IMGP1393.jpg

吉川なすの最後の生産者だった
加藤さんが亡くなり、
その奥さんから種茄子を受け取ったのが
2009年のことだった。

それから3代、種を更新してきた。
昨年は種取りが上手くいかず、
今年のなす苗は一昨年の種も半分入っている。
形質の良い茄子の種を取り続ける
むずかしさとその危うさも
良く感じる。

今日、加藤さんの茄子から数えて
4代目になる茄子を定植した。
種を受け取った時から、
ずーっと後悔していることが、
加藤さんが生きている内に
どうして吉川なすの栽培について
教えを請わなかったのだろうか、
ということ。

ちょっと変わった伝統ナスがあるからと言って
吉川地区でもない人間が、
それを面白半分で栽培している、と
思われるのが嫌だったのだが、
図星、その通りだから、
その批判を嫌がってもしょうがなかったな、
と最近は良く思う。

種茄子を受け取るまでは、
ある意味、遊び半分での栽培だった。
本業の葉菜類の片手間のつもりだった。
でも、加藤さんから種を受け継いでから、
また加藤さんが居なくなった後、
市場でも期待を受けるようになってから、
僕の苦悩は始まった。

一度だけ、僕は加藤さんの茄子を
市場の業者から見せてもらったことがある。
加藤さんが不治の病に侵された後だったが、
そのなすは、
大きさも形も揃い、まるで
黒く輝く宝石のようだった。

その記憶自体も、
どこまで正しく記憶しているのかどうか
自分でも定かではない。
だが、もしかしたら美化されているのかもしれない
その記憶を
僕は毎年追いかける羽目に陥っている。
あの茄子に今年こそは追いつけるだろうか、と。

昨年の反省を今年に活かして、
若干栽培法を変更してみる。
剪定時期や種取り用の株の選定にも
もっと気を配らないといけない。


吉川なすは1400年の歴史があるらしい。
その種には2つのことを受け継いでいる。
一つは形質を伝える遺伝子。
1400年前から、僕ら農民が
何世代にもわたって、昨年よりも今年、と
少しずつ進化してきた中で、
とり続けた種の遺伝子。
そしてもう一つは、
その中に閉じ込められた物語。
僕と加藤さんのような物語が
その種にはこれまで1400年分まとわりついている。
その物語一つ一つは、忘れ去られてしまって、
僕らの手元には残っていないが、
今、まさに僕らはその物語を
つむいでいる最中でもある。

それらの想いが、
僕に今年もこのナスを作らせる原動力となっている。
歴史の中で選抜され続けた遺伝子と
それへの勝手な想いと、
全く個人的なエピソードに支えられ、
このナスは1400年の時を経て、
2013年もここで実を結ぶ。

そして、
たぶんこの作りにくいナスには、
1400年分の農民の苦悩が
詰まっているんだろう。
今年も僕の苦悩をこの歴史に刻もうと思う。


3月。
農業の円環の時間とは別に、
どことなく別れの寂しさがただよう季節。
寒く暗い冬が終わり、
春めいてくるこの時期は、
自然と共に生きる僕らは、
体中の細胞が活き活きとしてくる、
そんな季節のはずなのに、
幼いころから刷り込まれた年間行事が
癖になっているためか、
それとも年度末による人の移動を
社会的に感じるためか、
3月はどことなく寂しい季節でもある。

普段でもそんなどことなく寂しい3月なのに、
今年は、本当の別れがやってきてしまった。
農園のスタッフ・イブライが
3月31日をもって退職した。

イブライが農園にやってきたのは、
2008年9月だった。
大きくて、そして美しい黒。
それが僕の印象だった。
同じ人間なのに、
まるで違う身体能力だった。
僕らのご先祖は、母なる大地アフリカから出発して、
極東の小さな島国までやって来る間に、
なぜこんなにも退化した体つきになったのだろう?
普段なら思考の端にも上らないことを、
真剣に考えてしまうほどの
インパクトが彼だった。

彼はセネガルからやってきた。
彼の奥さん(日本人)と僕は知り合いで、
そのご縁で、彼は僕の農園にやってきた。
以前のエントリーでも書いたと思うが、
彼は初等教育をきちんと受けていない。
初めは、そのことがとても不安だったが、
それは杞憂だった。
彼はセネガルで長距離バス1台を経営していた。
バス会社に働いていたのだが、
お金を貯め、そして少し借金をして、
彼は独立した。
数人の若者も雇っていたという。
その感覚が、当時の僕にはとても貴重で、
彼と一緒なら仕事をしていけると思い、
彼を農園に受け入れた。

今もそうだが、当時の僕は、
農業が家族だけで営まれることに
違和感があった。
家族の中で当たり前にできあがるヒエラルキーが
生業にもそのまま直結することに、
不合理さを感じることが多かった。
今はもうちょっと違った考えも
僕は持っているが、
その当時の僕は、その固定化された関係が
永遠に続くようにも思え、
創造的な仕事である農業をしているのに、
気分がまったく創造的ではなかった。
だから、僕は前近代的な「イエ」を
農業という分野から切り離し、
チームによる農業を目指していた。

ちょっと余談が長くなったが、
そんな時に、バス経営の経験を持つイブライが
農園にやってきたのだった。
そして、ちょうどその2008年の4月から
インドネシアから研修第一期生である
ヘンドラが農園で研修をしていた。
すべてタイミングが良かった。

当初は黒人であるイブライが、
農園のある集落で浮いてしまうのではないか、
そんな不安もあった。
彼が来た当初は、村の人から
上手く形にならない不安の声を聞いたこともあった。
だが、それも杞憂だった。
彼は良く挨拶もしたし、
村の祭りや江堀活動にも参加して、
いつしか村の中で
アイドル的な立場を手に入れていた。

彼は目がとても良いので、
随分離れていても、大きな体をゆすって
村の人に挨拶をしていた。
そんな人懐っこさも、みんなから好かれた。
力も強かった。
村の飲み会での腕相撲は無敵だった。
そして彼はお調子者でもあった。
村の飲み会で、日本酒の飲み比べに挑み、
腰が砕けるまで一緒に飲んだりもした。

インドネシアの研修生とも
仲良くやっていた。
第一期生のヘンドラは、一人だったこともあり、
同じ外国人であるイブライとよく一緒に行動していた。
休日も一緒に出掛けていた。
彼の奥さんが出産したその時も、
ヘンドラと一緒に郊外の大型家電量販店に
遊びに行っていたほどだった。

そんな彼だったが、
パスポートと本国の家族の事情があって、
中短期で帰国することになり、
退職することになった。
別れはいつも突然だ。

彼の送別会の時に、
スタッフの佐藤が、
「農業の中で、イブライが一番好きな仕事は何?」と
質問した。
イブライは、にこやかに笑って
「バスの運転手」と答えた。

ただの聞き違いかもしれないが、
それが彼を取り巻く日常を
良く指し示しているようにも
僕には思えた。

彼は、4年以上日本で暮らし、
福井という田舎のため、
彼の母国語を話す人が彼の奥さん以外に
ほとんどいない状況だった。
ほぼ100%日本語の生活だった。
だのに、彼の日本語はお世辞にも
上手ではない。
後から来たインドネシア研修生の方が
ずっと上手だった。
初等教育を受けていないからかもしれないが、
言葉を習得する道筋が
まるで僕ら(インドネシア人も含む)とは
違っているようだった。
日本語を教えてくれる先生からも
さじを投げられたこともあった。

ちょっとしたコミュニケーションの
不具合が、お互いの意思疎通を阻み、
そしてお互いに不満が残ることもある。
彼の経験(バス経営)は、
言葉の壁と僕の根気の無さと
力を入れるベクトルの違いによって
僕らの経営に活かされるきっかけを
完全に失っていた。

昨年あたりから、
僕をとりまく風景が
変化してきていることを感じている。
たぶん僕は、
農園の経営とインドネシア研修事業に
より一層集中しなければいけない
時期に来ているのだろう。
そんな僕の態度や
状況の変化も、
もしかしたら
彼の退職につながったのかもしれない。
そんな取り留めもない考えが
イブライが農園を去ってから、よく湧いてくる。
そして僕はいろんなことに気が付いた。
たぶん僕はあまりにも勝手に、
イブライに求めすぎていたのかもしれない、と。
そしてその求めたモノは
彼にきちんと伝わらなかった。
彼は、たいていは好き嫌いを別に考え、
大人として農業に取り組み、
目の前の仕事をこなしていた。
ただときどき見せる彼の満ち足りない態度が、
僕には残念だった。
それは彼が、と言う意味ではなく、
僕がそれを活かすベクトルを持ち合わせない
ことへの失望でもあった。
もちろん、この社会は
好きなことを仕事にできるわけじゃない。
でも仕事にやりがいは見つけられる。
僕のやっている営農スタイルと
インドネシア研修事業は、
十分それを与える機会があると思っていたが、
あまりにも文脈が違うイブライは、
そこでのやりがいはどう感じていたのかは不明だった。

何はともあれ、4年以上勤めあげて
イブライは退職した。
彼の退職は、
僕にたくさんの宿題を与えてくれた。
少しずつだが、その答えを探していきたいと思う。

ありがとう、イブライ。


田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

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