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「技能実習生の帰国後就農・起業支援を通じた人材還流促進プロジェクト」の
キックオフミーティングが、9月13日
インドネシア農業省の農業訓練センターと
農業普及・人材開発庁と共に
行われた。

これだけ公式な場は、久しぶり。
たぶん、協力隊の時の
最終報告会以来かもしれない。

このプロジェクトでは
農園で行われてきた
ビジネスプラン作りの支援コンテンツを
農業省が派遣する年間約50名に
オンラインで提供する試み。
さらに派遣前訓練のカリキュラムを見直し
より日本のニーズに合わせた
訓練内容を作り
受け入れ農家が
外国人はこんなものだ、という
偏見を壊すための
受け入れの知恵袋的Webの整備、
帰国後の実習生への
起業支援を含めた
フォローアップ調査を実施する
体制づくり、と
派遣前から日本での職場状況改善、
帰国後の支援と
トータルで支援体制を組むプロジェクト。

プロジェクト期間は2026年まで続く。

今回のプロジェクトで驚いたのが
まず人材開発庁のナンバー2の秘書官が
実は2009年に
僕が福井農林高校へアテンドした
農業省のご一行で来日していたということ。

その時のエントリーがこれ
必要なのは、リーダーなのか仲間なのか 視察団との議論

こんなご縁があるなんて。
彼女がかなり好意的にプロジェクトを見てくれているため
スタートからかなりの好感触だった。

またキックオフミーティングに参加してくれた
JICAの次長は
2018年にJICA内部の勉強会に呼ばれて
話をしたのだが
その時に参加されていたようで、
これまた不思議なご縁だった。

大使館の書記官が隊員時代に重なっていたり、
インドネシア事務所の民間連携の担当者が
農園の野菜を購入していた履歴があったり
なんでもかんでも
これまでの何十年もの伏線が
このプロジェクトを中心に
一気に回収されていくような
そんな出張だった。











7月から9月に降る雨は
災害と考えた方がいい。
先日の8月4日と5日の雨量合計は
福井市で189ミリ。
農園のハウスは水没は免れたが
ハウス内に激しく水差しがあり
農作物への影響が出ている。

川の氾濫や土砂崩れが起こっている
今庄などはその二日間で400ミリ以上の雨量。
この辺で降った雨の2倍か。
それくらい降れば、農園のハウスも水没していただろうし
用水路も溢れてもっと被害が大きかったに違いない。
最悪、九頭竜川の氾濫もあったかもしれない。

昨年も7月に1時間に100ミリの雨があり
農園のハウスは水没した。
排水ポンプの装置を今年強化したおかげで
昨年以上の雨だった先日の雨でも
農園のハウスは水没しなかったが
それももはや紙一重。
これ以上の対策は
施設経費が掛かりすぎて
行いえないのが現状だ。

夏に雨が降る日は
それは災害を意味する時代になった。
気候変動にもはや
傍観は出来ない状況なのだ。


関連記事
これとよく似たタイトルで
これまでもブログをあげてきたと思うけど
今また
この問いにぶつかっている。

技能実習制度を
真っ当な制度にしようとした議論で
実習生が自分たちの希望の職種と
同じ仕事場で実習できるように
マッチングすべきだ
という議論がある。

これには2つの暗黙がある。
一つ目は、実習とは技術の移転の場であるということと、
二つ目は、希望の職種が
帰国後の仕事に直結している
という暗黙である。

ただ、本当にそうか。
まず二つ目の希望の仕事だが
大前提として実習生にとって
日本で働くのは出稼ぎが目的である、ということで
希望の仕事は必ずしも将来の仕事とは直結しない。
若者がかちっとしたプランを立てて
進路を選んでいるケースで
将来が決まっていることは稀で
それはその想像力の範囲でしか
プランニングできないという
人間の認知の檻から出られないからでもある。
ま、平たく言えば
若いほど世の中が見えないので
そのころに立てたプランのお粗末さは
自分の若い頃を思い起こしてみれば
大抵納得いく話だろう。
たとえ実習生が
これかな?と思っている職種があっても
その「これかな?」は状況と得られた経験値などから
簡単に変化する。
また効率よく出稼ぎをしたいと思う実習生も多いことから
人気の職種は
「室内で残業の多い仕事」らしい。
これはもはや職種でもなんでもなく
労働環境でしかない。
バブルがはじけた時代に大学生をしていた僕の時代は
みな安定志向で公務員であれば
何でもよかった時代でもあった。
実習生だけを笑うことはできない。
仕事の探し方なんて
たぶん時代や文化で多少の違いはあれども
こんな程度なんだと思う。
僕も青年海外協力隊にさえ行けば道が開ける
という程度でしか参加していなかったし。

就きたい仕事に就けないのは
外国人だけではないので、
マッチングというのは
大人のいらぬお節介かもしれない。

ただ仕事場を変えたいという時に
もっと簡単に変えられる制度はあってもいい。
結局都市部に流れるだけだ、というのなら、
転職できるエリアは限定してもいい。
人間関係の拗れは
国内外関係なく起こりえることで
仕事場を変えられないのは
実習生にとってかなり不都合だろう。
というのは余談。
というか、これが本命の解決策のような気もする。

次に技術移転。
この神話はなかなか崩れない。
技術が移転されるとする場合、
二つが想定される。
一つは技術が存在する状況や構造が同じで
それらの状況と構造を整えれば
その「技術」が役に立つ場合。
例えば僕が石川の農家を見学して
そんなやりかたがあったか!という技術があれば
明日にでも同じような機械や道具を用意して
その導入が可能となる場合だろう。
これが国をまたぐとどうだろうか。
その状況を整えらえるだろうか?
農園の特定技能であるダダン君は
福井県内の乳牛農家をインタビューして
乳量の決め手は餌の回数と
餌の質だと知ったのだが
回数は、何とか給餌の回数を増やせばできそうだが
いつまでの消化できない稲わらなどは
やらない方が良いと言われても
手に入る餌がそれしかない場合はどうだろうか?
餌の質もその農家がおすすめしてきたのは
海外からの飼料キューブで
それはインドネシアの農家では手に入らない。
インドネシアの農家は技術的に遅れている
と決定的に言えるわけではなく
ただそのインフラや揃えられる資材に
差があるだけかもしれないのだ。
次の技術移転が
意図していない技術移転の場合。
もともとの技術の方向性としては
違う方向性で伝わったり使われたりする場合。
トンネルを掘るためのダイナマイトが
戦争に使われたり、などがそうか。
インドネシアのマランのリンゴは
導入された当初は花が咲かず
実がならなくて、それでしょうがなく
枯らす目的で除草剤をかけたら
落葉ストレスから花芽が形成され
花が咲いて熱帯でも(高原だけどね)
実をつけることに成功した。
これも本来の目的とは別の技術の使われ方と言っても良いかも。
で、大抵の技術移転論者は
この2番目のイレギュラーな伝わり方を嫌う。
ま、技術屋さんならさもあらんだね。

なので、意図した形で技術移転を試みても
同じような状況を作り出せないので
そもそも意味がない。
可能性としては意図しない技術移転の方だけど
それを技術移転する現場で
故意にその方向性で研修することは
不可能だし
やる側のプライドとして許さないだろうね。

そんなこんなで
技能実習生に職場マッチングを
しようという努力というか議論は
ま、日本側の都合でしかなく
そこに参加する人たちの目線ではないという点で
お粗末でしかないと言いたい。

これでも
技術移転論に
とどめが差せないのだから
みんなの頭にこびりついている
常識ってやつの生命力のすごさに感心している。
かなり偉い人でも
この技術移転論は
平気で言ったりするので
本当びっくり。

さ、ねるか。



関連記事
気を抜くともう次の月になっている。
ブログの更新が
最近滞っているのは
やることがとてつもなく
多くなってきたから。

その一つが
技能実習生に対する
新しい試み。

それについて
今月の最後に
こういう勉強会で話をする機会を得た。

その様子はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=3X-EN5zfWJo

ここでの議論の肝は
現行の制度をどうのこうのっていう話ではなく
ここに参加する人たちのリアリティーを
その立ち位置から眺めて
出来ることってあるよねって話。

ロバートチェンバースの
Whose Reality Counts?の話。
読んだことのない方はぜひ。
これ読んで当たり前のことが書いてあるって
思ったなら
あなたはたぶん全然わかっていない、と思う。

技能実習生の話は
日本の文脈で考えるよりも
この制度に参加する
それぞれの国の若者の視点で
そのリアリティを一緒に見ることって
出来ますか?って話のような気がしている。



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多くの方とのご縁とご協力を得て
2020年から温め続けてきたある計画が
ようやく日の目を見ようとしている。

それは農園がこれまで受け入れた技能実習生たちに
指導してきたビジネスプラン作りのノウハウを
農園外の技能実習生にも
広げていこうという試み。

労力も費用もかなりかかるため
この案件をJICAの草の根技術協力というスキームに
応募していた。

この度、最終審査の結果
『技能実習生の帰国後就農・起業支援を通じた人材還流促進プロジェクト』として
採択を受けた。

この枠組みが出来たことで
いよいよいろんな方と一緒に
技能実習生の問題に向き合うことが可能になった。
インドネシアの送り出し機関に
受け入れ農家そして監理団体、
インドネシア農業省や
技能実習修了生の会も。

日本という場所を
技能実習生にとって
本当の学びの場所にする。
それがこのプロジェクトの
目的の一つ。

大変なことが始まることになるのだけど
たぶん、なんとかなるでしょう。
明日は明日の風が吹く、だから。



田谷 徹

Author:田谷 徹
農民です。

青年海外協力隊として3年(農業指導)、大学院生(ボゴール農科大:農村社会学専攻)として2年、計5年インドネシアにいました。

あれこれ寄り道・みちくさしましたが、再び農民にもどりました。これからは日本でぼちぼちやる予定です。

生産と生活が渾然一体となった農の営みを実践する毎日を送っています。

俳句もしております。「雪解」「街」「いつき組」に所属しております。

詳しいプロフィールは、カテゴリの「プロフィール」から「ちょっと長いプロフィール」をお読みください。

メールは
taya.tアットマークnifty.com
です。
(アットマークを@に置き換えて送信ください)

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